一家に一冊水中考古学の本

Beneath the Seven Seas: Adventures With The Institute of Nautical Archaeology
Beneath the Seven Seas: Adventures With The Institute of Nautical Archaeology

以前にも紹介しましたが、ぱらぱらとページをめくっただけで紹介してしましました。この本を手に入れた後、直ぐに日本へ帰ったため、読む時間がなかったので、今改めて紹介したいと思います。

ひとことで言うと、水中・海洋考古学に全く興味の無い人でも買って損はしないと思います。1960年代から始まった水中考古学。その学問の常に先頭を走ってきたInstitute of Nautical Archaeology(INA)の歴史が刻まれています。考古学関係の仕事をしているのであればなおさら読んでおくべきではないでしょうか?水中考古学を知らない、どこから読んでいいのか何をしているのか?そんな疑問があればこれ1冊で解決します。

時代別にINAが関わった重要な沈没船の紹介がたくさんあります。ウルブルン、ヤシアダ、ベル号はもちろんのこと、第2次大戦の遺跡まで紹介されています。一つの船につき2-10ページほどの紹介がしてあります。それぞれの調査団長などが書いた原稿をまとめてあります。内容は調査の様子、カルゴの説明、船の構造、歴史的背景など。ほとんど難しい専門用語もなく一般向けに書かれています。調査の様子なども個人に名前を使い、物語を読むような雰囲気でまとまってあります。船の構造なども解釈は簡単に分かるように書かれています。また、もっとこれらの沈没船について知りたいのであれば本の後ろに文献リストがあるので直ぐに詳しい情報が探せます。それぞれの沈没船について誰が発見したのか、何を運んでいたのか、いつ沈んだのか、なぜ歴史的に重要なのか?などはそれぞれの沈没船について一通りまとめてありますので、簡単な情報はこれ一冊でカバーできます。中学・高校の自由研究などではこれでだいたい必要な情報があるはずです。また、写真もかなりの数使ってあり、見るだけでも楽しくなる本です。このような本は英語ではCoffee Table Bookと呼ばれています。つまり、コーヒーを飲むテーブルに置いてあるような気楽な読み物です。実際にコーヒーを一杯飲みながら(私は個人的には緑茶が好きですが…)1日1個の沈没船について読んでも良いですし、好きなところだけ読んでもかまいません。簡単な内容ではあるものの、水中・海洋考古学とは何であるかを知るためには充分な情報が詰まっています。気軽に読めてしかも充実した内容、そして値段もこれだけカラー写真を使っているにも関わらず安い。すべてオールカラーです。

褒めてばかりいるようですが、多少気になる点もあります。一つは、日本語訳がまだ出版されていないこと。意外と読みやすいので英語の勉強にも最適かと思います。されど英語。読めない人は写真を楽しんでください。写真集としても楽しめます。次に、自分はINAと関係が深いため、ここに出てくる人達を個人的に知っている場合が多いので、誰が誰だか直ぐに分かり、またそれが面白く読めたのです。しかし、何も知らない人には、Greenさんが何とか言ったとかSteffyさんがどうとか言ってもさっぱり分からないのではないか?これは私の考え過ぎかも知れません。実際に知らない人が読んで違和感を感じるか、親近感を持つかはその人次第でしょう。もう一つの点は、海洋考古学を専門で学ぶには物足りない気がするということです。これは、この本が完全に一般対処に書かれているので仕方の無いことなのでしょう。船体構造の移り変わりなどぱっと読めば、読んだか読んでないか分からず、内容を理解せずに読み進むことが出来てしまう。専門で学びたいのであれば後ろの参考文献に価値があるのでしょう。また、最後になりますが、これはINAの弱点ともいうべきでしょうが、地中海を中心として活動しているので、それ以外の地域についてはあまり触れられていないことがきになります。この本はINAの40年以上に及ぶ歴史の紹介であるため仕方のないことなのかもしれません。これを読んで地中海中心に船が発達したかのように見受けられるので多少の注意が必要です。アジア地域でももっと沈没船の調査が盛んになればこの本の改訂版ではもっと広い視野で水中・海事考古学の歴史が語られることでしょう。

最後にまた、ひとこと。この本は水中考古学に携わってきたある一つの機関・組織の歴史をまとめたものです。それでも様々な調査例があることをお分かりいただけると思います。しかし、世界にはINAのほかにもオーストラリアなど研究組織がたくさんあります。また、沈没船の調査はおおきなビジネスであり、トレジャーハンターもいるため水中文化遺産保護はこれからますます盛んになってくるでしょう。世界的に大きく遅れている日本ではありますが、水中考古学を広めるためにはこの本を読んでみることを勧めます。

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