伝馬船復元
朝日新聞 長崎から引用
経済成長とともに姿を消した手こぎの木造和船「伝馬船(てん・ま・せん)」の復元に、松浦市の船大工、鍵本茂さん(77)が取り組んでいる。記憶を頼りに、材木とクギだけで船を造り上げていく職人技だ。5月には完成し、発注した佐世保市の西海パールシーセンターに引き渡される。伝馬船は7月から、九十九島をめぐる航海に就く。
星鹿漁港に面した「鍵本造船所」の一角に据えられた伝馬船は全長約7・5メートル、幅約2メートル。鍵本さんは、仕上げの作業にあたっていた。「木材は1枚1枚違う。そこが難しい」
伝馬船は接着材を使わず、杉材とクギだけで造る。作業を手伝うおいの勇さん(56)は「木材の曲げ方も、木と木の組み方も、まねできない技術です」。
設計図はなし接着剤使わず
鍵本さんが、船大工だった父に船の造り方を一から教わったのは18歳のころから。当時、漁船として活躍していた伝馬船も多く手がけた。
しかし、60~70年代ごろからは繊維強化プラスチック(FRP)製が登場。伝馬船の発注はなくなった。
忘れかけた伝馬船を再び手がけたのは02年。松浦商工会議所から「造船技術の継承のために」と依頼され、40年ぶりに3隻を造った。
しまい込んでいた昔ながらの道具を取り出し、記憶を頼りに材木と格闘した。「伝馬船には、ちゃんとした設計図なんて残っていない。自分の目と、手の感触だけが頼りだった」。いま、その3隻は地元の祭りの時に、海に出る。
鍵本さんの技術に目をつけた西海パールシーセンターから、再び伝馬船の注文が舞い込んだのは今年1月。材木を乾かす作業から始めて、3カ月で、外板を組み立てる作業が終わった。船の内部の仕切り板を取り付け、船が完成するのは5月の連休明けになる予定だ。
西海パールシーは7月から、観光客が手こぎで九十九島を巡る「手こぎ体験ツアー」に伝馬船を活用するという。
担当者は「昔懐かしい伝馬船の姿を楽しんでもらうと同時に、職人の技も感じてもらいたい」と話している。





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