お金について...

ここ数日、アジア水中考古学研究所の海底ミュージアム構想のブログのエントリーがなかなか的を得た内容です。

水中文化遺産調査は,お金がかかる?
「水中考古学」を学ぶには?
「水中考古学」と「水中遺跡」,そして「水中考古学者」

どれもなかなか鋭い指摘です。中には、「え?そうなの?」と思うようなこともあるかもしれません。

さて、私個人の意見ですが、少しまとめてみました。

水中考古学にお金がかかる!と思うのは「もったいない」ことだと思います。また、水中遺跡は別に珍しくもなんともない、「普通の遺跡」なんです。その普通の遺跡にお金が掛かるから...というのは少しおかしなことだと思います。

お金がかかるというイメージ(幻想)は、たぶん、世界の有名な沈没船の事例によるものだと思います。世界の大規模な事例を見ると(ヴァーサ号・メリーローズ・新安沈没船・南海1号船など)どれも、成功を収めていますが、莫大な費用を必要としました。また、他の水中遺跡に目を向けられなくなる期間が続くことが懸念されますし、実際に各国でそのようなことが起きました。韓国も、本当に水中考古学に力を入れることが出来るようになったのも、ここ15年ほど前からです。

今、世界では大きな沈没船が発見されても大規模な発掘をしないことがほぼ前提となってきています。これには、小さな遺跡にこそ大きな価値がある場合が多いことが長年の調査を積み重ねることにより、分かってきたからです。そして、水中遺跡がどこにでもある普通の遺跡であることが認知されています。大きな遺跡を発掘しなくても、素晴らしい成果が得られています。International Journal of Nautical Archaeologyをはじめとした、専門のジャーナルなどでその成果は見ることができます。
 
たしかに、これらの大きな沈没船プロジェクトから得られた成果は素晴らしいですが、学問全体としてみると、どうなのでしょうか?大きなプロジェクトでなくても、各地に多くの水中遺跡があります。これらの遺跡を周知させ、保護することが実は重要です。大きなプロジェクトの影で小さな遺跡が破壊されては、お金を費やした意味がありません。大規模なプロジェクトが水中文化遺産の重要性を知るきっかけとなったのは確かです。1960年代から始まり、世界各地で大きなプロジェクトが行われて、水中考古学という学問が発達する契機となりました。しかし、日本でも同じように「きっかけ」が必要なのでしょうか?他国の例で充分なのではないでしょうか?

小さなプロジェクトはそれほどお金を必要としません。また、「陸の遺跡」に費やす費用も日本全体のトータルで見ると莫大なお金です。それに比べると、水中の遺跡に掛かる費用はそこまで大きくはないでしょう。また、日本のように火山の多い場所の地質は有機物の保存に適していません。しかし、水中は有機物の保存に最適な環境となる場合が多くあります。そのため、陸上では珍しい有機物(木材など)を多く含んだ遺跡が発見されることが多いようです。昔から豊かな自然に恵まれ、木材を大切に使ってきた日本人の文化の一部を陸上の遺跡もよりも鮮明にみることが出来ます。また、日本文化は海外との交流の中で育ってきた文化です。外国の影響が入る唯一の手段が船です。そのメカニズムを物質文化から解明できるのは沈没船だけなのではないでしょうか?

このような水中遺跡なのですが、「普段は目に見えない」のでその周知が遅れているのは事実です。しかし、日本全国で小さな水中遺跡がたくさんあります。アジア水中考古学研究所の調査事例を調べていただくとわかりますが、実は、水中遺跡は日本各地に存在しています。どこにでもあるものなのです。調べてみると、自分が良く行く海の前に遺跡があることでしょう。

学者・専門家が行うことは発掘調査などの成果を発表すること。研究会なども行われていますし、ジャーナルなどもあります。興味のある人は調べてみると新しい発見があるはずです。

アジア水中考古学研究所(ARIUA)

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