ケニアで水中遺跡ミュージアム構想と世界の動き

2015年末現在、インターネットで水中考古学や沈没船関連の検索をすると、とある国の大統領が発表した沈没船発見のニュースで賑わっているようです。国として「貴重な文化遺産として保護し広く国民と共有する」と宣言しているにも関わらず、メディアなどの部外者が財宝だどうだの騒いでいます…そもそも遺跡として保護することを明確にしているにも関わらず、一部のアメリカなどのメディアが遺物の価値が重要であるように報道してしまったため、日本のメディアもそれが重要であるかの如く報道しています…現実には、多くの国で水中と陸上の文化遺産は全く同等に扱われているのが普通です。日本とアメリカの一部のニュースと、それ以外の国のニュースを比べると微妙な温度差があるのがわかります。残念なことです。

さて、それを踏まえて次のニュース。個人的にはこちらのニュースのほうが大ニュースであり、今後の研究の起爆剤になる重要な動きであることは、間違いありません。

アフリカ東海岸のケニアでは大航海時代のポルトガル船などの水中遺跡がありますが、海底遺跡ミュージアムパークを設立するそうです。この地域では、ほかにもモザンビーク、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、マダガスカル、ナミビアなどの国がこの事業に関わり、地域の水中考古学の発展に貢献できるよう協力して取り組んでいるようです。インド洋でも広く水中文化遺産の保護の動きが活発になっています。これらの国は、どれも日本のGDPと比べると経済的に弱い国でありながり、水中の文化遺産の保護に向けて積極的に活動を強めています。

また、つい先日、グアテマラもユネスコ水中文化遺産保護条約の締結国のメンバーに加わりました。台湾も、国際的な立場からユネスコと関わっていませんが、その条約を基に水中文化遺産の国内法を整備しています。ユネスコの条約に批准せずとも、水中文化遺産の保護が世界的な動きとして定着しています。特に、世界では開発に伴う調査で多くの遺跡が発見されています。

水中には多くの遺跡があります。デンマークやオランダなど日本と比べると小さな国でも数千件の水中遺跡があります。日本には多くの水中遺跡がありました…残念ながら、その多くは護岸工事や埋め立てなどにより破壊されてしまいました。これは、開発に伴う考古学調査が陸上では当たり前でありながら、水の上では行われてこなかったことが大きな原因です。例えば、アメリカのメキシコ湾では、油田開発に伴うパイプラインの施設工事の事前調査だけで2000件以上の水中遺跡が報告されています。日本でも、最近は幾つかの水中遺跡の発見が報告されていますが、破壊された遺跡はその数千倍でしょう。

残念ながら、真面目に水中文化遺産を保護する取り組みを始める時期はとっくに過ぎているのかもしれません。真面目な水中遺跡の保護について考えてみる機会になれば幸いです。近年、水中文化遺産や水中考古学についての本などが出版されていますので、ぜひご覧ください。

 

 

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