お知らせ

水中遺跡地図

いろいろとデジタルベース化が進んでいるのは、当たり前ですね。周知の遺跡地図も日本各地でGISベースで公開されています。開発などに際して周知の遺跡を調べるのに便利ですし、また、自分の家の近くの遺跡を調べたい!というときも便利ですね! 実は、私が前住んでいた家は周知の遺跡に隣接していたので、もし掘るとなると発掘許可が必要です。

さて、アイルランド周辺の海の遺跡の地図が先日一般公開されたので紹介していましたが、ニュース記事になっていたので、再度紹介します。

記事によると、355,000平方マイルの中に、3,554件の水中遺跡と思われるポイントが登録されているそうです。これは、開発に伴い発見されたり、漁師さんなどが発見したものです。しかし、これらのポイントの多くはいつの沈没船なのか、どのような遺跡なのか(もしくは単なる海底地形なのか)、わかっていません。周辺で開発などがあった際に調査をするようですが、「遺跡の可能性大!」というポイントを周知しているにすぎません。

そして、アイルランド周辺には、1万4000件ほどの海難の記録があります。その多くも、詳細がわからないようです。わからないことだらけですが、ポイントを押さえているのと、また、開発前の事前調査や遺物発見時には報告する義務などがありますので、ポイントはどんどん増えていっているようです。記録に残らなかった海難事故、そして、様々な理由により消滅した水中遺跡も多くあります。

さて、日本も同様に水中の遺跡を管理する必要があります。アイルランドの355,000平方マイルは、およそ92万平方キロ。日本の排他的経済水域と領海を合わせると、450万平方キロぐらいでしょうか。アイルランドの5倍ほどですね。

その5倍のなかに、どれだけの水中遺跡があるのでしょうか?全国の海難記録の総数を出すのは難しいですが、20世紀以前の記録で市町村に残されている文献だけでも8千件以上はあるかと思います。最近の海難記録までを含めると、1万件は超えるのではないでしょうか?さらに、記録に残らなかった海難事故を考えると…。

気が遠くなるような水中遺跡がありそうですね。アイルランド地図を見ていただくと分かりますが、多くの移籍は陸の近くにあります。海底ケーブルや浚渫、埋立地などで壊さないようにすることが大事です。しっかりとした事前調査と水中であっても工事現場には遺跡がある可能性は高いことを周知することが大切です。多い場所では20〜30mおきに遺跡があったり、時には数世紀離れた沈没船が重なって発見されることもあります。

TIMEが選ぶ偉大な科学者

アメリカ・タイムマガジン社がえらぶ偉大な学者( history’s greatest scientists)の中に、水中(海事)考古学の先駆者であるジョージ・バス教授が選ばれたようです。歴史的に著名な科学者の中の一人に選ばれたようで、ホーキング博士、心理学のフロイト博士、ガリレオさんなど偉人が並んでいます。水中という環境に人類の痕跡を求めて自ら調査に向かった姿勢、そして、そこから人類の交易の歴史の新たな形態を見出した点、その後の世界的な分野のひろがりなどが評価されています。

1960年代からトルコを中心に研究をはじめ、3300年前の沈没船、ウルブルン沈没船などを発掘しています。アメリカのテキサスA&M大学で1976年に世界で初めて水中考古学を専門で学べる大学院のプログラムを設立しました。その後、世界各地でこの分野を学べる大学が増えています。日本では、なぜか馴染みの薄い学問分野ですが、世界各地では陸も水中も分け隔てなく水中遺跡がきちんと管理されています。周知の遺跡もそれぞれの国で数千~数万件発見され、開発とのバランスを保ちながら遺跡の保護や研究が進んでいます。

タイムマガジンは、ニュースウィークなどと肩を並べるニュース雑誌の最大手ですね。日本の書店にも並んでいるのでしょうが、ネットでは元記事が読めないようです(残念)。ともあれ、バス先生は、アメリカ国家科学栄誉賞もいただいている方です。アメリカではノーベル賞に最も近い賞であると言われています。水中考古学が広く国民に理解されていることがよくわかりますね。

私がちょうど学生として入った時にリタイアしましたので、先生の最後の最後の学生です。生徒を自宅に呼んでオペラ鑑賞会をしていました。よく遊びに行きましたが、レッド・チェッペリンが嫌いだったようです…。和歌山の串本に一度遊びに来ていたので、那智滝に連れていったら感動していたことを覚えています。だいぶお年なので、今度アメリカに行く際には、時間を作って会いに行く予定です。

チチカカ湖の水中考古学を支援しよう!

チチカカ湖の水中遺跡発掘プロジェクトを支援!

ここ数年、何かと話題に挙がるネットを通したクラウド・ファンディングですが、UNESCOのバックを受け、チチカカ湖の水中考古学プロジェクトも支援を受け付けています。

チチカカ湖での発掘を支援したい!という方は、もちろん歓迎しますが、ビデオだけでも見てください。水中発掘の様子がよくわかります。インカ時代の遺跡がタイムカプセルのように残っているそうです!20遺跡ほど発見されているようです。

ペルーやボリビアなど、それほど文化財の保護にはお金をかけられないのですが、貴重な遺跡をなんとか調査し、保護を進めていくことを目指しています。

海の日について

「海の日」っていつだったか覚えてますか?

もともと7月20日は、「海の記念日」だったのが、国民の休日となりました。しばらくして、いわゆるハッピーマンデーとして変動することとなり、7月の第3月曜日になっています。子供にとっては夏休みである場合も多いですね。

7月20日の海の記念日の由来は実は古いんです。明治天皇が、それまでの軍艦ではなく巡視船の明治丸に乗って東北巡行に向かい、目的を終えて横浜に帰港した日を記念しています。現在、東京海洋大学のキャンパスにある明治丸です。

本日のニュースで 報道されていましたが、 2020年のオリンピックに際して、休日をまとめることが決められたそうです。オリンピック観戦や運営などをスムーズに行うことが目的なようですが。そもそも、史実に由来した記念日を好き勝手動かすと、その意味が薄れる気がします。例えば、ある都合により誰かの誕生日を動かすことってできますか?

まとめて休日が取りやすいようにとか、オリンピックがあるから動かすということは、「海を考える」ことよりも、それらの理由が優先されているように思います。明治天皇のイベントは、ひとつのきっかけとして、また、巡視船や訓練船として長いキャリアを誇り、多くの人に愛された明治丸も象徴として適していると思います。国民の「海離れ」が進んでいるのも確かなので、この際、少しでも真剣に考えていただければと思います。

私は「海の日」を、日本の歴史の中で海が果たした役割について考える日だと理解しています。海に囲まれた日本は、海無しには生きられず、全ての歴史事象は海と関わっています。例えば、今の自分と海は関係無い、と言えるでしょうか? 海と日本人の関わりはあまりにも深いので、逆に特定できないのかもしれませんが、例を一つ。まあ、ありがちな説ですが、非常にわかりやすいです。

日本の文化の象徴として、文字があります。もちろん、漢字は中国から伝わりました。海を介して伝わっています。日本は、早くから漢字に影響を受け、早くから独自の形に変えて、自らの文化としました。韓国やベトナムも漢字文化を受け入れ、ながらく中国の漢字の影響が強く、自らの文化として変化させていくのに時間を有しています。これは、海が文化を受入れるハイウェイとして機能し、また、必要であればバッファーゾーンとしても機能したことを意味していると言えます。日本人にとって、付かず離れずの関係を保つことができたのは、日本文化の形成に大きな影響を及ぼしています。

また、歴史以外で言えば、日本の気候でしょう。海があるから比較的緩やかな四季の変化を見ることができるとも言えますね。豊かな海の資源も健康な暮らしを支える役割を果たしています。

海の文化を忘れないためにも、海の日のきっかけとなったことも大切なのかもしれません。オリンピックは、大きなイベントです。ですが、日本の文化の礎である海をないがしろにしてもよいのでしょうか?

では、明日から海を介して日本に伝わったものを全て使うのやめましょう…。もう、インターネットも使えませんね、海外の技術を多用していますから。石油も日本じゃほとんど取れません。海があっての石油です。 魚も食べません。オリンピックも、海外から伝わったものですよね?マラソンも、ギリシャ側がペルシャの軍隊がマラトンに上陸したところを奇襲をかけて勝利した戦いに由来しており、まあ、制海権をめぐる争いです。

どれだけ海が大切か、考えるきっかけになれば良いと思っています。「海の日」を国民の休日としているのは、日本だけのようですので、それは誇りに思って良いことでしょう。

海を守り、人間と海の関係を調べ、考える。そんなきっかけとなってくれれば幸いです。海の日を動かしたことによって、その意味を調べてくれる人、考えてくれる人、そんな人が増えてくれれば、動かして良かったなと思えるのかも。海のようにおおらかに。

呂500号探査プロジェクト放送

私は、今回は関わっていませんが、旧日本軍の潜水艦関連のプロジェクト、最近増えてますね。見つけられたのかな?

ドイツの潜水艦で、実戦経験あり。日本が譲り受け訓練艦として使用されていたと伺っています。終戦後、米軍により若狭湾で破棄。

70年以上がたっていますが、海底に大きな鉄の塊があれば、地元の漁師さんは大体わかっていますからね。探査の基本として、成功の秘訣の8割が事前調査・下調べ。的確な機材を使用するかが残り、あと運が少し。

さて、6月12日、22時から放送予定だそうです。お楽しみに!

こちらから〜ニコ生で放送

 

セントーサ島と35億円

シンガポールのセントーサ島がここ数日話題となっています。米朝首脳会談が行われるそうです。が、我々水中考古学者、特に東南アジアの沈没船事情について詳しい人にとっては、何となくなく馴染みのある島の名前です。というのも、セントーサ島に有名な沈没船があるわけではないのですが、別のとある理由です。

1990年代後半、インドネシアのBelitung島から唐の時代の沈没船が発見され話題を呼びました。中国からアラビア半島に向かう船であったようで、唐の時代の貴重な遺物を多く積んでいました。おそらく、ダウ船の原型ともなる船だったと思われ、縫合船でした。

この船、いわゆるトレジャーハンターによって発掘されてしまい、ろくに調査もされなかったのです。引き揚げられた陶磁器類や金製品など、その取扱いをどうするか...最終的に一括で遺物を買い取ったのが、セントーサ島を管理する国営の会社でした。その値段が、32,000,000 ドル(USD)だったそうで、日本円にすると… 35億!

UNESCOなどは、発掘の方法や売買について、好意的な意見はもっていません。一応水中で記録は簡単取られていますが、学術的スタンダードとは言えません。貴重な遺物ではありますが、出土地点がいまいち判明しないものなど。しっかりと調査すれば、もっと様々な検証ができたはずですが、遺跡の珍しさやその価値から「引き揚げ」が優先されてしまいました。遺物は一応見ることが出来るとはいえ、発見場所のシンガポール、目的地だったアラビア半島(?)、また、出港地である中国には、なんのメリットがあるのでしょうか?引き揚げで得をしたのは、引き揚げた外国の業者とシンガポール(観光・活用で元がとれれば)となっています。

最終的に、一括史料としてシンガポールで見ることが出来る資料となっていますが、その陰に隠れて様々な問題が抱えています。トレジャーハンターに言わせると、「我々が引き揚げなければ、地元住民の漁、台風・津波など様々な要因で破壊されて遺物を一つを見ることもできなかっただろ!」となります。まあ、確かに多くの水中遺跡は人知れず破壊されていく運命にあります...が、それも一昔前の話。近年は、世界各地で水中遺跡の保護が進んでおり、破壊されるケースは減ってきています。オランダなど数万件の遺跡と思われる地点が周知の遺跡ポイントとして登録されています。海の上で開発がある際には、そのポイント周辺の調査をしてから開発に臨みます。

この唐時代の沈没船ですが、考えてみると、そう、まさに「遣唐使船」のイメージに近いものがあります、行先が違っていたら。日本近海でも発見される可能性があるかもしれませんね。そのためにも、自治体などがしっかりと水中遺跡の周知の遺跡データベースを作ること、開発に際して妥協せずに調査をすすめることでしょうか?

夢は、遣唐使船の発掘!もちろん学術調査を行うことですね!

黒石号などとも呼ばれます~Belitung Shipwreck

現在は、こちらの博物館で見ることが出来ます~ASIAN CIVILIZATION MUSEUM

参考にまで…。洋上の開発の際のアセスに関して

さて、陸上で建物などを建てる場合、いろいろな制約があります。洋上の開発でも、環境アセスなど手続きが色々と大変です。が、やはり海に眠る文化遺産を守るために必要なことなのです。

現在の日本の現状では、水中に存在する文化遺産にたいする事前のアセスメントがほとんどできたいません。開発工事中に文化財と認められるものが発見された場合には届出が必要とありますが、埋め立ててしまう作業では、そもそも気がつきません。また、土砂の中に混じっていても、すでに壊してしまっていることが多いでしょう。やはり、環境アセスと同様にシステムに組み込むか、海の上にもしっかりと周知の遺跡地図を作成する必要があります。

下に紹介するpdfは、風力発電に関する手引書です。海外の事例なども多く紹介されており、その中で、歴史遺産に対するアセスなどについても言及しています。日本の手続きについても詳しく書かれていますが、文化財に関しては十分とは言えません。

自治体の関係者の方や海の仕事に携わる方に少し考えていただきたいと願っています。日本の水中遺跡の数は、諸外国の水中遺跡数に比べると、一〜二桁の違いがあります。(日本は数百、諸外国は数千から数万件。多いところだと遺跡が重なっていたり20-30mおきに遺跡が点在している場所もあります )。 それは、海の上の開発に際して事前の調査や発見時の報告の仕方がしっかりとしていたことに一因があります。また、水中の遺跡は珍しいものではなく、陸の遺跡と同じく、どこにでもあるごく普通の一般的な存在であるという意識が育っているからです。

ここにあげた例は、一つにすぎませんが、洋上における開発のプロセスについて、ある程度学べる資料かとおもいます。ちょっと内容は難しいですが、下のリンクからpdfをダウンロードできます。

pdf は、こちらから。

戦艦大和の遺物が引き揚げ

戦艦大和の遺物の引き揚げ

昨年、戦艦大和の調査が行われ、その際に大和の遺物18点が引き揚げられていたそうです。引き揚げられた遺物は呉市に寄付されたそうです。

大和に関する史料の多くは破棄されており、内部構造など多くのことはわかっていません。そのため、大和を知る上で貴重な資料であるとされています。

どのような保存処理が行われたのか(予定されているのか)分かりませんが...きちんと処理しないと錆が進行するので注意が必要ですね。また、きちんと発見された地点の位置記録は取っているのかな...貴重な資料であれば、なおさら出土位置が重要な情報となります。

今後は、学術的な調査が望まれますね。

 

 

 

 

 

 

サンホセ号の発見について

さて、時は1708年。現在のコロンビア沖で、スペインのガレオン船サンホセ(San Jose)号は、大英帝国との戦いの中、爆発し沈没したと伝えられています。300年たった今、最新のテクノロジーを駆使し、ついにこの沈没船を発見することができました。コロンビアの大統領は、この貴重な沈没船を調査し、博物館を作り広く国民に歴史を伝える努力をしたいと報じられています。

この沈没船、爆発したと言われていますが、現在の遺跡を見る限りそこまで大きな爆発ではなかったようです。当時の軍隊の様子や船の上での生活、また、船舶の歴史などを知る上でも貴重な資料です。また、多くの方が実際に戦闘で亡くなっている、いわばメモリアルでもあります。この戦闘もスペインの影響力をさらに弱めるきっかけとなった歴史上重要な戦いでした。

そして、発見された場所が600mの海底にあるということ…潜水して潜るにはちょっと深すぎますね。逆に、水中ロボットなどの技術を試験的に試すにはちょうど良い深さではないでしょうか?そして、開発が及ばなかったためにほとんどノータッチの状態で、まさにタイムカプセルのような遺跡です。

コロンビア政府もこの「遺跡」を調査することにより、「水中文化遺産」の保護が進むことを期待しているようです。スペイン政府とも協議を持ち、一部の人々が得するような事業ではなく、世界で共有する遺産として調査し博物館を建てることなどを前提にすすめたと大統領が語っています。

と、ここまでは良い話…この船は、スペイン政府がイギリスとの戦争の軍資金としてかき集めた財宝を本国に持ち帰る船だったそうです。これは、どうやら史実らしい。この財宝を積んだ船を探すため、トレジャーハンター達がなが~い間調査をしてきました。過去には、コロンビア政府も財宝を目当てに彼らの活動を許していました。しかし、それも過去の話。今回の調査は、政府が外国の研究機関と協力して調査した成果ですので、売却を目的としたものではありません。すでに、世界では水中文化遺産保護に関する取り決めが進められています。

この発見を受け、以前調査していた会社が、その位置は自分たちがコロンビア政府に教えた場所だから、自分たちにも「遺物を所有する権利がある」と言っているそうです。なぜ、発見当時に引き上げなどを行わなかったは不明。政府も、発見したのは数年前ですが、はっきりとした証拠を掴んでから正式の公表に踏み切ったようです。

沈没船の財宝とか、そのような話になるとどうも考古学的・歴史学的な話からそれてしまいます。メディア側が誇張するのは仕方がないのかもしれません。しかし、どうでしょう...海外のメディアから出たニュースは、適当に訳されて、どんどんと真実から離れていきます。

南米で出ているニュース。

アメリカを中心に読まれているニュース

日本のニュース記事その1

日本の記事その2

上に4つのリンクがありますが、下に行くほど史実でないことや憶測・余計な情報が加わるようですので、翻訳機能などを使い読んでみると面白いです。本来は、歴史的価値のある物を守ろう!という話から、財宝・所有権争いなどが加わってきます。今回に限ったことではなく、いろいろな分野でも情報源・発信源から離れるほど全く違う話に変わっていくのは興味深いことだと思います。子供のころ遊んだ「伝言ゲーム」を思い出します。

 

番外編ニュース~2015年の発見当時、まだ正式な公表がなされる前の記事で、水中文化遺産や財宝にかかわるこれまでの例をいくつか挙げています。サンホセも、10数年前のようにならないように...というニュアンスで書かれています。

高校生のための、水中考古学ニュース

ちょっと古い記事です。こんなサイトがあったんですね。

高校生向けに書かれたニュース記事で、水中考古学入門といったところです。分かり易く書かれています。興味のある方は、どうぞ。