水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

サンホセ号の発見について

さて、時は1708年。現在のコロンビア沖で、スペインのガレオン船サンホセ(San Jose)号は、大英帝国との戦いの中、爆発し沈没したと伝えられています。300年たった今、最新のテクノロジーを駆使し、ついにこの沈没船を発見することができました。コロンビアの大統領は、この貴重な沈没船を調査し、博物館を作り広く国民に歴史を伝える努力をしたいと報じられています。

この沈没船、爆発したと言われていますが、現在の遺跡を見る限りそこまで大きな爆発ではなかったようです。当時の軍隊の様子や船の上での生活、また、船舶の歴史などを知る上でも貴重な資料です。また、多くの方が実際に戦闘で亡くなっている、いわばメモリアルでもあります。この戦闘もスペインの影響力をさらに弱めるきっかけとなった歴史上重要な戦いでした。

そして、発見された場所が600mの海底にあるということ…潜水して潜るにはちょっと深すぎますね。逆に、水中ロボットなどの技術を試験的に試すにはちょうど良い深さではないでしょうか?そして、開発が及ばなかったためにほとんどノータッチの状態で、まさにタイムカプセルのような遺跡です。

コロンビア政府もこの「遺跡」を調査することにより、「水中文化遺産」の保護が進むことを期待しているようです。スペイン政府とも協議を持ち、一部の人々が得するような事業ではなく、世界で共有する遺産として調査し博物館を建てることなどを前提にすすめたと大統領が語っています。

と、ここまでは良い話…この船は、スペイン政府がイギリスとの戦争の軍資金としてかき集めた財宝を本国に持ち帰る船だったそうです。これは、どうやら史実らしい。この財宝を積んだ船を探すため、トレジャーハンター達がなが~い間調査をしてきました。過去には、コロンビア政府も財宝を目当てに彼らの活動を許していました。しかし、それも過去の話。今回の調査は、政府が外国の研究機関と協力して調査した成果ですので、売却を目的としたものではありません。すでに、世界では水中文化遺産保護に関する取り決めが進められています。

この発見を受け、以前調査していた会社が、その位置は自分たちがコロンビア政府に教えた場所だから、自分たちにも「遺物を所有する権利がある」と言っているそうです。なぜ、発見当時に引き上げなどを行わなかったは不明。政府も、発見したのは数年前ですが、はっきりとした証拠を掴んでから正式の公表に踏み切ったようです。

沈没船の財宝とか、そのような話になるとどうも考古学的・歴史学的な話からそれてしまいます。メディア側が誇張するのは仕方がないのかもしれません。しかし、どうでしょう...海外のメディアから出たニュースは、適当に訳されて、どんどんと真実から離れていきます。

南米で出ているニュース。

アメリカを中心に読まれているニュース

日本のニュース記事その1

日本の記事その2

上に4つのリンクがありますが、下に行くほど史実でないことや憶測・余計な情報が加わるようですので、翻訳機能などを使い読んでみると面白いです。本来は、歴史的価値のある物を守ろう!という話から、財宝・所有権争いなどが加わってきます。今回に限ったことではなく、いろいろな分野でも情報源・発信源から離れるほど全く違う話に変わっていくのは興味深いことだと思います。子供のころ遊んだ「伝言ゲーム」を思い出します。

 

番外編ニュース~2015年の発見当時、まだ正式な公表がなされる前の記事で、水中文化遺産や財宝にかかわるこれまでの例をいくつか挙げています。サンホセも、10数年前のようにならないように...というニュアンスで書かれています。

高校生のための、水中考古学ニュース

ちょっと古い記事です。こんなサイトがあったんですね。

高校生向けに書かれたニュース記事で、水中考古学入門といったところです。分かり易く書かれています。興味のある方は、どうぞ。

 

松浦党研究 鷹島で講演

松浦党研究会のお知らせです。

ウェブサイトなどであまり宣伝されておりませんが、一般参加大歓迎。元寇の島、鷹島で講演があります。お近くの方は、ぜひ。また、ちょっと遠くにお住いの方も、これを機会に鷹島までお越しください。資料館の見学もできますので、日本を代表する沈没船遺跡、蒙古襲来の証拠品の数々を御覧になってください。

講演は、午前と午後の二本立て。どうしても用事のある方は、ご都合に合わせてご参加ください。入場無料です。九大名誉教授の西谷正先生と私で講演します。世界の水中遺跡の紹介と、外から見た鷹島の評価。西谷先生は、日本国内の取り組みについてお話しされます。

 

松浦党研究連合会  第40回総会と研究大会

6月2日(土) 午前10時〜午後2時40分

鷹島スポーツ・文化交流センター  (駐車場あり)

☆研究発表

世界の水中考古学と鷹島 (佐々木) 10:50ー12:00

☆記念公演

「元寇と宗像の世界遺産」 (西谷先生) 13:00ー14:30

お待ちしています!

水中遺跡の調査報告書

考古学関連のお仕事をされている方や学生にとっては、遺跡調査の報告書の重要性について、今更書くこともありませんが、多くの人にとっては、「難しそう」と思うでしょう。そして、そもそも、そんなものがあったのか、と思うかもしれません。それ以上に、「どこで手に入るのか?」が一番の問題。

発掘調査の報告書は、遺跡のあるそれぞれの自治体で管理していますが、近年のものであれば、デジタルデータ化(pdf)されており、無料でダウンロードできます。

奈良文化財研究所のページからダウンロードできます

いろいろと、キーワードで検索もできるので、水中遺跡、沈没船、鷹島などなど検索してみてはいかがでしょうか?

ここ数年、沖縄の水中遺跡の悉皆調査が進んでいるので、おススメです。探してみよう!元寇の島、鷹島の海底遺跡もお忘れなく!

ミクロネシア、コスタリカ、新たに水中文化遺産保護条約を批准

ユネスコが薦める水中文化遺産保護条約。ミクロネシアが批准したようです。また、ほぼ時を同じくして、コスタリアも。ここ数年、アフリカやアラブ諸国などの批准が目立って増えている傾向にありました。エジプト、クウェート、マダガスカル、ガーナなどなど。経済的に豊かでない国や内陸国も批准していますが、アジア・太平洋地域ではあまり進んでませんでした。

ミクロネシアは、旧日本軍の軍艦や商船などが数多く沈んいます。それらを、文化遺産として国が守っていくことになります。沈没から100年立つと遺跡となります。それでは、日本の船はどうなるのか?なかなか難しい問題のようですが、所有権などに関しては、国同士で決める必要があります。保護の対象となるので、荒らされることへの対応が迫られます。

他国の軍艦(大航海時代のガレオン船含む)など所有権が明確な沈没船などは、旗国に属する考えですので、勝手に触ってしまっては国際問題に発展する可能性もありますので、ご注意を。浚渫や海浜の工事中に何か見つけたら、もしかしたら沈没船があるかもしれません。

ユネスコ条約、2020年までには70か国まで行けるか… オランダ、イギリス、ドイツ、オーストラリアなども準備を進めているそうです。太平洋地域にも、水中文化遺産を批准する動きが着々と進んでいるようです。

連載最終回 「水中考古学へのいざない」

毎月産経WESTに連載されていた、「水中考古学へのいざない」が今月で最終回となりました。全23回で完結となります。

これまで、日本各地の遺跡、アジアや世界各地の遺跡についての紹介や、水中考古学の方法論、魅力など、様々な話題について書かれてきました。

今回は、これからの日本の水中考古学について。どのように進化し発展していくのか?これまでの取り組みや現状、今後の方針など書かれています。

海洋考古学入門

ここ数年、日本国内でも毎年のように水中考古学に関連する本が出版されています。人々の関心もだいぶ高くなっているようで嬉しい限りです。日本国内でも水中遺跡の保護が進むことを期待しています。

そのようななか、これまで、なかなか教科書的な本はありませんでした。今月発売されたこの本は、学問の定義、これまでの学史、方法論など世界と日本の事例から解説しています。

一般向けではありませんが、考古学者であれば知っておくべき内容であることは間違いないでしょう。また、水中考古学ではなく、海洋考古学としていますが、その理由ものべられています。

水中と陸の考古学など本来は切り分けるべきではありません。水中考古学は、あくまで方法論でしかありません。人と海の関係を学ぶ学問として発達してきた学問、それが海洋考古学、海事考古学などと呼ばれます。

詳しい続きは、本の中に書いてありますので、ぜひ。

埋め立て地について

以前から時々書いてますが、埋め立て地について…

水中考古学のサイトでなぜ埋め立て地の話?と思われるかもしれませんが、実は、世界では「水中考古学」という言葉はあまり使われていません。遺跡はどこにあろうが、その意義は全く変わりませんし、水を抜いてしまえば、陸の考古学とおんなじですね。また、海面上昇や隆起によって、水位が変われば、陸にある遺跡も海に沈んでしまいます。船舶考古学や『海と人の関係』を探る考古学、海洋史観から歴史を探る考古学が主流であり、海事考古学、海洋考古学、船舶考古学などの呼び方が適切でしょう。

 

その船ですが、歴史的価値の高い沈没船などは、どこを探せばよいのでしょうか?じつは、ものすごく身近な場所にあります。船は陸のそばで沈没することが多いですし、また、使えなくなった船を港の端で破棄して埋め立て地を作る際に一緒に埋めたりしています。イギリスなどの保険の記録や、東インド会社の記録などを見ても、9割近くが当時の港の目と鼻の先で沈没・破棄されています。つまり、沈没船などの遺跡を発見するのに最も可能性の高い場所は、港ということになります。日本の水運の歴史を見ても、ほとんど陸から離れない場所の航海がノルマです。また、水没遺跡や住居跡なども、やはり陸の近くに存在しているはずです。深い海には、ほとんど遺跡なんて存在していないのです。

さて、埋め立て地に話を戻しましょう。

以前、こんなニュースをお伝えしました→ワールドトレードセンターの下から沈没船発見!

実は、埋め立て地の下から、たくさんの船の残骸が発見されているんです。今回お伝えしたいニュースはこちら。

では、日本の埋め立て地はどうでしょうか?

日本の埋め立て地の総面積、ちょっと調べようと思ったんですが、1,500平方キロ~2,000平方キロぐらいあるのではと思われます。正確な情報は、調査中です…つまり、浜松市以上東京都未満。残念ながら、これだけ広大な土地が、遺跡調査されずに開発されてしまった土地なんです。が、実は、その下にまだ埋もれている可能性も残されているのかもしれません。

海洋開発や浚渫などを行う前にはその周辺に遺跡がないか調査をするのが普通なんですが、日本ではまだまだ未整備な点が指摘されています。下の写真ですが、アメリカ・テキサス州のほんの一部ですが、工事などに先立ち、調査されて発見された水中遺跡(の可能性のあるポイント)が示されています。ポイントがまっすぐに伸びていますが、そこが調査により発見されたポイントです。一昔前の日本の遺跡地図も、開発によって道路に沿って遺跡が点在していました。

リンク先は、こちらで見れます。

 水中(だった)遺跡は、実は足元にあるかもしれません。これから海の近くに行くことがあれば、ぜひ海を見てください。そして、今、立っている場所は、もともと海だった可能性も高いです。地中深く、実は掘り起こせば沈没船があるかもしれません。そして、これから海の周りで開発があれば、その周辺の遺跡の調査も行う必要があります。陸上であれば、浜松市程のエリアが遺跡調査無しに開発されたとなればビックニュースですね。

水中考古学の世界で活躍する!研究者のブログ

だいぶ前から、こつこつと書き溜めていたのは知っていましたが、大幅に内容を書き加えたようで、この度、紹介することになりました。

アメリカの大学で水中考古学を学び、現在も海外で活躍している水中考古学者の山舩さんのブログです。写真も多く、また、親しみやすい口調で水中考古学について、自身の研究などについて書かれています。

こんな世界があったんだ!と驚かれることでしょう!ぜひご覧ください!

 

U-3523 発見!

さて、見出しだけだとなんだかわからない人も多いでしょうが、おそらく一度は耳にしたことのある潜水艦です。

U-3523はナチスドイツの潜水艦(Uボート)で、おそらく最も有名なものでしょう。当時の最新鋭の技術を積み込んで完成させたものですが、行方が分からなかったそうです。この度、デンマーク沖で発見が確認されたと報道がありました。この潜水艦は、潜水したままで一度も浮上せずに大西洋を渡りきることが出来たと言われています。

この潜水艦は、噂ではヒトラーが乗りこんでいたと言われています。この潜水艦で南米のコロンビアに逃げ延びたとか、多くの金塊を積み込んでいたとの伝説があります。実際には、イギリスの船に、未確認の敵潜水艦として撃沈されていたようです。

潜水艦は、海底に突き刺さった状態で発見されていますね。