水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

トレジャーハンティングのRST社に処分勧告が出たようです

日本初のトレジャーハンティング会社RSTに問題ありのようです。沈没船の引き上げを行い遺物の売買でその収益を配当するといい資金を集めていたそうです。しかし、実際には引き上げは実現しないまま集めた資金もほとんど用途使用不明だそうです。朝日新聞によると「証券取引等監視委員会はRSTの資金管理が不適切だったなどとして、金融商品取引法に基づく行政処分を出すよう金融庁に勧告した」そうです(2010年1月21日)。

UNESCOの水中文化遺産保護法が注目を集めてきている中、トレジャーハンターはその活動の場をうしないつつあるようです。20年ほど前までは沈没船の財宝を売買し利益を得ることは場合によっては可能でしたが、現在ではメディアなどを巧みに利用し資金集めに専念することが一般的なようです。直接遺物を売って得られた収入はあまりなく、その他の収入で活動を続けるケースがおおいようです。アメリカのOdyseeyMarine社(唯一正式に取引されているトレジャーハンティング専門株式会社)がその良い例ではないでしょうか?ただし、Odyssey Marine社は沈没船の引き上げを実際に行っています。水中文化遺産の保護が広く知られ、水中の遺跡にも地上の遺跡と同等の保護が適応される法律の整備などが世界各地で整えばこのような会社はさらに活動の場所を失うことになると考えられています。

さて、このニュースを機会に実際に学問としての海洋考古学、沈没船の研究があることを知っていただければ幸いだと思います。現在、沈没船に興味のある人の多くが沈没船を遺跡をしてきちんとみなし、陸上の考古学と同じように記録・調査し、研究をしています。沈没船を商業目的として利用しようとする人はそれほどおおくありませんが、今後、このような会社がでてこないようにするためにも法律の整備などが必要とされているのではないでしょうか?

『水中文化遺産と考古学』シンポジウムのお知らせ

今年1月のはじめにすでにユネスコの水中文化遺産保護条約が正式に20カ国以上で採択されてから1年が過ぎました。アジアでも水中文化遺産保護の動きが高まってもいるようです。去年は日本国内でもNHKなどが水中文化遺産保護に関連した特集などを組んでいました。今年は日本の水中考古学にとってどのような年になるのでしょうか?
今年はいろいろとイベントや調査などが行われるようですが、2月に東京でシンポジウムが行われます。一般を対象としたシンポジウムで興味のある人、ない人、どなたでもご自由に参加ください。

日本財団助成事業
2009年度「海の文化遺産総合調査プロジェクト」調査報告会
第3回『水中文化遺産と考古学』シンポジウム

日 時: 2010(平成22)年2月28日(日曜日) 10時30分~16時30分 
会 場: 日本財団ビル 1階バウルーム  東京都港区赤坂1丁目2番2号
     地図はこちら

参加費: 無料(資料は有料となります)
主 催: 特定非営利活動法人 アジア水中考古学研究所(ARIUA)

内 容: 
(午前) 2009年度「海の文化遺産総合調査プロジェクト」調査報告会
    1.アジア水中考古学研究所とプロジェクトの紹介
    2.調査報告
      ◯沖縄・奄美諸島 : 片桐千亜紀(ARIUA会員)
      ◯九 州     : 野上建紀(ARIUA副理事長)
      ◯瀬戸内・琵琶湖 : 吉崎 伸(水中考古学研究所理事長)
      ◯日本海域    : 小川光彦(ARIUA会員)
(午後) シンポジウム「水中文化遺産を理解する」
   [特別講演]「水中考古学にたいする夢」(仮題):中山千夏(作家)
   [基調報告]
     1.「水中文化遺産と水中考古学」:岩淵聡文(東京海洋大学教授)
     2.「海洋考古学の調査・研究の実例」:Randall J.Sasaki(ARIUA会員.テキサスA&M大学海事考古学研究所)
     3.「水中文化遺産と国際法-日本国内法制への示唆-」:中田達也(文教大学講師)
     4.「身近にある水中文化遺産を巡る」:林原利明(ARIUA理事)
   [討 論] コーディネーター 塩屋勝利(ARIUA理事)

 ※休憩時間等を利用して、山本祐司氏(ARIUA会員・プロフォトグラファー)による水中文化遺産(ARIUAの調査にともなう)の写真上映も予定しています。

東京でこのような、水中文化遺産・水中考古学に関する会を一日かけて開催することは、初めてではないかと思います。広くこの分野に興味をもっている方を対象した調査報告会・シンポジウムですので、興味がある方はぜひ、ご参加ください。多くの方に参加していただき、水中文化遺産や水中考古学を知っていただければ、幸いに思います。

南海1号ミュージアム オープン

中国宋代の沈没船南海1号ミュージアムがオープンしたそうです。中国政府の水中考古学(中国では水下考古学)を立ち上げるプロジェクトのひとつとして度々話題となっています。この沈没船は発見されてから10年以上たちますが、引き上げ計画が打ち出され、沈没船を丸ごと新設したミュージアムに「持ってくる」ことで一躍有名になった船です。現在、このミュージアムで発掘をおこないながら遺物の展示などをおこなっているそうです。また、余談ですが中国政府は各地で水中考古学のトレーニングなどを行っており、相当な数の沈没船を発見、調査しています。これらの遺物はもちろん売買などの目的ではなく国の遺産として保護されています。

 

日本語のニュース記事を探していますがまだ出てきていないのでしょうか?

中国語と英語の記事をリンクしてみました。

 

http://bjyouth.ynet.com/article.jsp?oid=59244339

http://english.cctv.com/program/cultureexpress/20091204/101525.shtml

東南アジアでUNESCO主催の水中文化遺産保護ワークショップ開催

UNESCOが水中文化遺産保護に関するトレーニングを目的にタイで沈没船の発掘を主催しています。このワークショップにはカンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、スリランカ、およびタイから研究者が多数参加しています。タイの研究者によると、現在までにタイには64件の沈没船が確認・調査されています。しかし、これらの貴重な沈没船(文化遺産)も金銭目的で盗掘を行うとレジャーハンターによって脅かされています。これらの沈没船の保護には訓練を受けた考古学者、そして地域の理解が必要不可欠です。

貴重な水中文化遺産の保護のため、アジア地域でINESCOがこれらのトレーニングを開催しています。オーストラリアなどから専門家を招き基礎から実際の沈没船の調査から学んでいきます。タイの考古学者は2001年のUNESCOの水中文化遺産保護法案が適応されることを願っており、また、カンボジアから参加した考古学者は自国の研究がもっと進むことを願っています。カンボジアはすでに水中文化遺産保護条約を可決し、水中文化遺産の保護を進めています。しかし、沈没船の研究を行っている専門家はまだ少なく、技術や方法論もまだこれから学んでいくことが必要だと語っています。このワークショップに刺激され、参加者は各国で水中文化遺産の保護のためそれぞれ活動を開始する予定でいるそうです。

 

 

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Treasures of the deep gain protection (Bangkok Post)

The exploration is part of Unesco’s six-week training on underwater cultural heritage preservation.

The divers are from Cambodia, Indonesia, Laos, Malaysia, the Philippines, Sri Lanka and Thailand.

They have been picked for an underwater heritage protection programme organised by the United Nations Education, Scientific, and Cultural Organisation (Unesco) and the Fine Arts Department’s Underwater Archaeology Division (UAD) which runs from Oct 26 to Dec 6.

Division head Erbprem Vatcharangkul said Thailand has 64 underwater archaeological sites. He said all of them, especially those in shallow water, were under threat from treasure hunters.

Protection of the sites required well-trained staff and cooperation from local people, including fishermen.

Other countries in the Asia-Pacific region face similar problems which prompted Unesco to set up the regional field training centre to promote underwater heritage protection in the region and to exchange conservation information.

The centre plans to hold four training courses. The course in Rayong was the first.

Trainees will be taught by experts from Australia, the Netherlands and Thailand.

“The participants will be trained in underwater archaeology protection from basic to advanced levels, both in theory and practice,” Mr Erbprem said.

On the 15th day of the course, the trainees were assigned to dive to a depth of 18 metres to measure the length, width and height of a wooden shipwreck which was found two nautical miles west of Koh Mannok, off Rayong’s Klaeng district.

“The boat structure and some ancient coins which were found at the site could [reveal] the age of the sunken boat which belonged to the early period of King Rama VI [early last century],” he said.

“This shipwreck is another piece of the jigsaw that will help give a clear picture of history.”

The official called on fishermen to help safeguard the archaeological site by stopping their use of destructive fishing practices in the area.

He said the government should also ratify the 2001 Convention on the Protection of Underwater Cultural Heritage for better protection of the country’s underwater heritage from commercial exploitation.

Nudy Phann, 38, deputy director-general of the General Department of Cultural Heritage, Ministry of Culture and Fine Arts in Cambodia, who took part in the training, said he believed his country had several underwater archaeological sites, but only one shipwreck had been discovered so far.

“No one has yet studied the shipwreck,” he said. “We don’t have expertise, equipment, or sufficient knowledge to explore underwater cultural heritage – that is why I am here to attend the training.

“Underwater cultural heritage is new for my country even though we ratified the convention in 2007.

“I am happy to be here and when I go back to my country I plan to set up a team to start surveying shipwrecks.”

Thai trainee Duangpond Kanya Singhasanee, 29, a graduate student from Silpakorn University’s historical archaeology faculty, said the training was extraordinary because participants were allowed to visit sites which were normally hard to reach.

Ms Duangpond is a diving master and had visited several archaeological sites.

“This training has inspired me to work in the field of underwater archaeology,” she said.

サン・フランシスコ号 「日本見聞録」 現代意訳

1609年に千葉県御宿沖で座礁したサン・フランシスコ号は今年が400周年記念ということもあって話題になっているようです。サン・フランシスコ号にのっていたドン・ロドリゴは日本での体験談を書いています。それが、日本見聞録です。すでに日本語に訳されて出版されてはいましたが、かなり古い本であったので、入手しにくく、また、読みにくかったのですが、今回、現代意訳され、新しく出版されるそうです。この本を通して多くの人にサン・フランシスコ号が日本(と世界)の歴史の中で価値のある事件であることを知ってもらえれば幸いです。また、単に事件ではなく、沈没地点もほぼ特定されていますから、文化財として保護されるべき価値のある遺跡だと考えられます。

ふるさと文化研究会理事長の安藤操さんが「たにぐち書店」から出版されています。「ドン・ロドリゴの日本見聞録 安藤操意訳・解説」 Amzonや一般本屋では探しにくいみたいです、興味のある方はネットで探してみてください、何か面白い発見があるかもしれません。

泰安沈没船から竹簡発見

去年韓国で発見された泰安沈没船(約800年前に沈没)は今年も引き続き調査が行われていました。多数の木簡が発見されたのと今までに発掘された高麗時代の沈没船の中で最大級であると推測されることからなどで、考古学的価値が非常に高い沈没船として注目を集めています。今回、木簡の他に竹簡も発見されたことでNewsになっています。荷物がどのように運ばれたのか、航海・貿易ルートの解明などに新たな資料を提供することとなり今後の調査に期待がもたれます。

 

The National Research Institute of Maritime Cultural Heritage under the Cultural Heritage Administration of Korea announces yesterday that it found bamboo poles with shipment records, including types and amount of loads, departure dates, destinations and recipients. The poles were found inside the Mado ship, an ancient cargo ship that sailed about 800 years ago during the Goryeo Dynasty (918-1392), that was discovered under the sea near Taean, South Chungcheong, last June. The institute said the poles will serve as a valuable reference to determine precise dates when shipments were made and shipping conditions at that time. [YONHAP]

舟から船へ

千葉県立関宿城博物館で10月6日から11月29日まで「舟から船へ」(平成21年度企画展)が行われています。

日本の舟・船の変遷をたどる展示のようです。ふねがニホンの人々に与えた影響などを時代を追って、船の変遷とともにたどっていく企画のようです。

興味のある方はぜひ足を伸ばしてみませんか?

日墨交流400周年  サンフランシスコ号

  千葉県御宿町で400年前(1609年)にスペインのガレオン船、サンフランシスコ号が座礁・沈没しました。この船はマニラから出発し、メキシコ(アカプルコ)に向かう途中で、マニラ前総督なども乗っていました。言い伝えによると御宿(岩宿町)の住民が沈没船の乗組員などを救助したと伝えられています。当時、キリスト教の布教などを進めるスペインと日本では衝突状態にありましたが、この事件をきっかけに一時日本とスペインの関係が緩和されたこともありました(結局はいわゆる鎖国、布教活動の禁止に踏み切ることになりますが)。この事件を記念して今年、日本とスペイン、メキシコなどが日本メキシコ交流400周年記念式典などを企画し、皇太子さまなどが出席をされたそうです。

  さて、この沈没船ですが、海外のサルベージ会社などが調査を企画したり、いろいろと海洋考古学者のなかで話題にあがることの多い船です。沈没した地点は文献資料などからほぼ特定されていますが、海女さんの活動が活発であるにも関わらず沈没船や散乱した遺物の情報などがないことや、海域が荒く海底地形が沈没船の保存の状況に適していないこともあり、船体の確認にはいたっていません。しかし、バラストの下に木材などが埋もれている可能性もあり、今後の調査しだいでは発見の可能性もないとはいえません。

  今回の400周年でスペインではサンフランシスコ号について脚光を浴びつつあります。さらには、あるサルベージ会社にスペイン政府が沈没船の保護をめぐり勝訴したことなどをきっかけに、スペインは海外での自国の沈没船などの海洋文化遺産の発掘・保護に力を入れだしています。UNESCOの水中文化遺産の保護条約が日本でも話題を呼びつつあることもまた事実ですので、スペイン政府と日本の考古学団体などが協力をし、調査を行う良い機会といえるのかもしれません。

 

  

タイタニックと水中文化遺産

東京雑学大学で,中田達也さん(文教大学国際学部非常勤講師)が,
「タイタニック号の財宝と国際法」と題する講義をされますので,
お知らせいたします.

詳細は,以下のとおりです.

・主催:特定非営利活動法人 東京雑学大学
     http://www5.ocn.ne.jp/~tzu61017/
・講義:第702回講義
     http://www5.ocn.ne.jp/~tzu61017/kougiyotei2tuki.htm
・日時:10月8日(木) 14時~16時
・会場:多摩交流センター
     東京都府中市寿町1-5-1 府中駅北第2庁舎6階
     TEL:042-335-0100
    http://www.tama-100.or.jp/tama/aboutus.html#map

   [サテライト会場](映像生中継)    
   むさしのヒューマンネットワークセンター
     武蔵野市境2-10-27武蔵境市政センター2F
    http://www.mhnc.jp/use/index.html

・申し込み:不要.当日受付.
・参加費:無料(ただし,資料代100円程度)

中田さんは,国際法をご専門にされており,
タイタニック号をはじめとする沈没船の国際規制等について,
ご研究されています.
ARIUAの関東・東北会員連絡会へも毎回,参加されています.

今回の講義では,1912年に沈没したタイタニック号の遺品引き揚げの経緯・問題点を通して.
「UNESCO水中文化遺産保護条約」を踏まえて,解説されるそうです.

水中文化遺産(とくに沈没船)は,その取り扱いにおいて,
国際法の規制を受ける事例が多くあります.
(先日,NHKでも二夜連続で関連の番組が放映されましたね)

水中文化遺産と国際法との関係を知る良い機会とも思います.

平日昼間に開催される講義ですが,
興味がある方は,参加してみてください.

なお,当日の講義のもようについては
後日,インターネット上で公開するそうです.
http://tsgn.dyndns.org/tsgn/

NHKでもユネスコ水中文化遺産

先週、NHKでユネスコ水中文化遺産について取り上げられていました。おもに今年1月に20カ国がこの条約を採択したために日本国内でも水中文化遺産保護の動きが出てきたことによるものでしょう。

 

9月9日「クローズアップ現代」(NHK、第一)

http://www.nhk.or.jp/gendai/

9月11日「きょうの世界」(NHK、BS2)

http://www.nhk.or.jp/kyounosekai/lineup/20090907.html

 

このプログラムをみた人は何か意見でもあればぜひ書き込んでみてください。番組はおもに水中文化遺産のおかれている諸問題を取り上げています。遺物の商業目的での売買を禁止するユネスコ側の主張とインドネシアなど商業的見返りがなければ水中文化遺産の調査・保護には資金を捻出できない国、そしてとレジャーハンター側の主張を対比させています。とくにNHK側の主張などもなくいろいろな意見を取り入れ、情報を伝えるという意味では良くできた内容でした。

 

個人的にもう少し詳しく取り上げてもらいたかった面は

1)もし売買が公に認められれば商業価値のある沈没船が引き上げられ、考古学価値のある遺跡は無視される可能性があること

2)考古学価値のある遺跡の調査のあとに博物館などの設置により地域の経済の活性化が行える可能性も十分あること

3)なぜ水中に遺跡があるというだけで売買が可能という論議が産まれるのか?地上であれ水没した遺跡であれ、ともに考古・歴史の価値はかわらないのでは?遺跡の立地条件だけで遺跡の価値を判断できるものなのか?

4)ユネスコの条約ではガイドラインがあっても違法行為の取り締まり罰則などについては何も触れていない。そのため、執行力にかける条約であること。この条約の問題点としてよく取り扱われていますが、ここでは触れられていませんでした

5)上の2)にも関連しますが、考古学調査で成功した例をもう少し取り上げてほしかったこと。例えばオーストラリアやトルコなど水中文化遺産保護に積極的な国の成功例など