水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

東京海洋大学

今まで日本国内で水中・海洋考古学を学べる機関は存在していませんでしたが、2009年度から東京海洋大学で正式に学ぶことが出来るようになりました!

日本国内の今後の学問の発達に向け大きく前進したこととなります。まだ小さなプログラムですが、海外から積極的に研究などを受け入れ、海洋考古学の発達に貢献していきます。FAQのコーナーでも紹介しています。水中考古学の修士号(名目的には博士号も)がとれることになり、今後、拡大を目指しているそうです。さらには、日本で修士号をとってから、博士課程をTexas A&M大学のような国外で続けるというコースも検討されています。

シラバスの内容は下記をご覧下さい。

海洋考古学とは考古学の一部門であるが、海洋学やそれ以外の自然科学の理論や方法論がその分析に援用される学際的な学問分野でもある。海洋考古学の基礎講座として位置づけられる本講義の第一の目的は、当該学問の理論的側面の検討と実際の水中考古学調査の際に表出する具体的な諸問題の検証である。そのために、まずヨーロッパ諸国やアメリカにおいて蓄積され、実践されてきている海洋考古学あるいは海事考古学の諸理論と諸調査事例の吟味を実施し、日本の水中考古学研究との現状比較分析につなげていく。その中で、海洋考古学調査の対象、水中文化財の発掘や具体的な応用手段、その歴史的な分析や解釈、文化財保全や復元の技術、社会への公開などの諸課題に対する取り組みについても検討を加えていく。次に、海洋学や海洋人類学などが研究対象としている人類の海洋における活動をさらに具体的かつ実際的に理解するために、この海洋考古学という学問にどのような貢献が可能であるのか、水中文化財の発掘・分析が今日いかなる意味を持つのかという総合的課題についても、ユネスコの「水中文化財保護条約」などの脈略の中で分析を行っていく。講義の参考文献としては、G. P. Bass著『Beneath the Seven Seas: Adventures with the Institute of Nautical Archaeology』 London: Thames & Hudson(2005)とJ. P. Delgado編『Encyclopedia of Underwater & Maritime Archaeology』New Haven: Yale University Press(1997)を使用予定である。

オランダ東インド会社アヴォンスター号Avondsterの復元

現在内戦が続くスリランカからです。スリランカの南部の都市、ゴールはポルトガル、オランダ、イギリスの植民の跡を港として世界遺産にも指定されています。植民統治時代の要塞と旧市街がその主な文化遺産です。要塞が臨むゴール湾では、VOC(オランダ東インド会社)船籍の沈没船アヴォンスター号が発見されています。沈没船の遺存状況は大変良好であり、原位置での保存が実践されています。ニュースはこの沈没船の模型復元に関するものです。以前にも紹介しましたがアヴォンスター号は日本に寄港したオランダ船であり、水中発掘調査では肥前陶磁が回収されています。現在開発が進むゴール湾の事業には日本の企業も参加しています。要塞、旧市街地と同様にゴール湾に沈む沈没船も遺跡群の一部です。正しい保存と研究の進展が進むことを願っています。

トルコの水中遺跡

トルコ、イズミルの近くのウルラ海底遺跡で発掘が始まったそうです。この調査はアンカラ大学が主体となっています。

この遺跡は2007年に紀元前7世紀頃のイカリが発見されたことが今回の調査のきっかけとなっています。この遺跡は古代の港跡で、約6000年前から使われ始めたものだと考えられており、青銅器時代には主要な港であったと考えられています。紀元前7世紀に起こった地震の被害を受けた後は衰退していったもようです。

今回の調査はイスラエルのハイファ大学などからも協力を得て発掘を行っているそうです。

19 March 2009 | Archaeologists announced today they have begun underwater excavations of the prehistoric site of Limantepe in western Turkey.

The underwater research, headed by Professor Hayat Erkanal of the Archaeology Department of the Ankara University, explores the prehistoric settlement located in the coastal town of Urla near İzmir in western Turkey.

The harbour settlement was inhabited as early as starting from 6,000 years ago and, as such, it is one of the oldest known artificial harbours in the Aegean Sea. A big part of it, including a fortification wall, was submerged in the sea due to a massive earthquake which occurred in 700 BC, according to Erkenal.

Layers from three different periods have been found at Limantepe. The lowest layer belongs to the Early Bronze Age and dates from the third millennium BC onwards. The second one dates to the Middle Bronze Age from the first half of the second millennium BC onwards.

According to experts, evidence from these two early periods indicate cultural ties with the nearby prehistoric sites of Tepekule, Bayraklı within the city of İzmir and the Panaztepe site at the mouth of the River Gediz.

The third layer belongs to the Late Bronze Age and covers the time period from the fourteenth to the thirteenth century BC, with some artifacts discovered from this period suggesting a cultural proximity with the Mycenaean culture.

According to Erkanal, Limantepe was a major sea transportation centre with large political significant in the Aegean Region in 3000 BC.

Interest in the site grew in 2007 when a wooden anchor dating from the seventh century BC was discovered wedged in the sea ground during underwater explorations. It is said that it could be the oldest such anchor ever found.

The current excavations are being carried out with the support of experts and equipment from Israel’s Haifa University.

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第1回ユネスコ水中文化遺産保護条約批准国会議

ユネスコ水中文化遺産保護条約は2009年1月2日
に批准された国際条約です。批准国は現在で22
ヶ国ですが、これら批准国による条約に関する
初の国際会議が3月26-27日にかけてユネスコ本
部のあるパリで開催されます。FIRST MEETING
OF STATES PARTIES OF THE UNESCO 2001
CONVENTION ON THE PROTECTION OF
THE UNDERWATER CULTURAL HERITAGE。
参加する批准国は条約の実践に伴う様々な提案と
決定権を与えられています。また非批准国やNGO
の専門家や研究者などがオブザーバーとして招聘
されています。オーストラリアからはAIMAや
Maritime Archaeology Program (Flinders University)
といった団体の専門家が会議に招かれています。

会議の重要項目の一つは、科学技術諮問委員会
(Scientific and Technical Advisory Body)
の設置とされています。ユネスコ水中文化遺産保
護条約の批准国は国内に専門家や設備を有してい
るわけではありません。委員会は批准国に専門的
見地からアドバイスを行うことを目的に組織され
ます。委員会のメンバーは批准国が推薦すること
ができます。推薦者の割り当て人数は、地域の批
准国数によって決まります。アジア・太平洋地域
ではカンボジア1ヶ国のみが批准国となっている
ため、この地域からはさらに1ヶ国が委員会に推薦
されます。

カンボジアでは現在水中文化遺産の保護や海事考
古学の専門家を育てる動きがあります。これまで
同国の考古学の発展には、日本の大学が少なから
ず寄与してきました。水中文化遺産保護・海事考
古学の分野での提携は未だ行われていませんが、
今後のこの分野で両国の協力が実現することを願
っています。国内の発展には、国外の組織との連
携が欠かせない時代となっています。ユネスコ条
約の批准国会議においてもこのような観点から建
設的な議論が行われることになります。

カンボジア政府 沈没船の保護を目指す

プノンペンポストからの記事によるとKoh Kong省で2006年に発見された沈没船をカンボジア政府が発掘を計画しているものの、カンボジア国内で水中考古学者がいないことなどや水中での発掘・保存などの専門的な知識が不足しているため、調査が難航していることを伝えています。また、沈没船から陶磁器などを盗掘に来るダイバーなどがいたため、海軍が海域をパトロールしているそうです。

この沈没船はKoh Sadech海岸沖で発見され、14-15世紀の中国の船だと考えられています。最初はロシアのダイバーなどを使い調査を行ったのち、中国政府に調査協力を依頼などもおこなったそうです。しかし、国内の研究者を使い考古学的手法を用いて発掘を行うことを目的としてオーストラリアなどでトレーニングを行っているそうです。国立博物館では水中文化遺産の保護などの強化に今後力を入れていきたいと語っている。     

HMS Victory トレジャーハンターによって発見!

1744年に沈没したイギリス海軍の船、HMSヴィクトリー号がトレジャーハンティング会社Odyssey Marine Explorationによって発見されたようです。ちなみにこの船はトラファルガー海戦(1805年)で活躍した同名の船とは違うものです。この船が沈没したとされる地点とは100kmほど離れた地点で発見されたそうです。まだ情報は少ないですが、保存状態はそれほどよくなく、また海域も引上げ作業にはあまり向いていないそうです。

ちなみに、軍船に関しては元の国に所有権があるため、発見した会社は遺跡に触れることができません。しかし、トレジャーハンティング会社はイギリスと交渉を行っているそうです。

第19回インド・太平洋先史学会ハノイで開催

2009年の11月29日から12月5日にかけてベトナムのハノイにてインド・太平洋先史学会が開催されます。先史考古学のテーマのみでなく、東南アジア地域での文化遺産保護や関連教育など幅広いテーマを扱うようです。Historical ecology and marine resource use in the Indo-Pacific regionなど海事考古学の立場から興味深いテーマもあります。

 

19TH CONGRESS OF THE INDO-PACIFIC PREHISTORY ASSOCIATION Co-organised with the Vietnam Academy of Social Sciences and the Vietnam Institute of Archaeology

SUNDAY 29 NOVEMBER TO SATURDAY 5 DECEMBER 2009

VENUE: Vietnam Academy of Social Sciences Conference Centre, Hanoi, Vietnam

ユネスコ水中文化遺産保護条約21番目の批准国

チュニジアが21番目の条約国となるようです。
3月にユネスコ本部のあるパリで開催される批准国
会議には21ヶ国が出席する予定となりました。

UNESCO has just advised that another country, Tunisea, has ratified the 2001 UNESCO convention for the protection of underwater cultural heritage. This brings the current number to 21 – the minimum of 20 signatories has now been passed even before the meeting of ratified State Parties in Paris at the end of March.

ヨーロッパ先史時代の水没遺跡と水中考古学に関するセッション

今年9月イタリアで開かれるthe European Archaeologists’ Association (EAA) conferenceにてヨーロッパでの水没遺跡と水中考古学に関するセッションが設けられるようです。現在発表論文も受け付けているとのことです。国際プロジェクトに関する発表にフォーカスしているとあります。

Dear Colleagues, we would like to invite you to contribute a paper to the proposed session at the 15th Annual EAA Meeting to be held in Riva del Garda, Italy, September 2009:

Underwater archaeology and the future of submerged European prehistory
with keynote papers by:
– Dr. Anders Fischer (National Cultural Heritage Agency, Denmark)
– Professor Geoff Bailey (University of York, United Kingdom)

Major events of human prehistory, such as the post-glacial recolonization of Northern Europe and the spread of agriculture though the Mediterranean, took place across landscapes that are now, at least partially, underwater — the consequence of global sea-level rise and regional crustal subsidence since the Late Pleistocene. Much of the submerged landscapes lie at depths accessible to divers and can be investigated archaeologically. Prehistoric underwater research has emerged in recent decades from the western Baltic to the eastern Mediterranean and methodology can be applied to coastal regions throughout Europe and its surrounding environs. Moreover, there is a growing awareness of the potential for underwater archaeology to transform our ideas about key events in prehistory. This session will examine new developments in the field of submerged prehistoric landscapes. Contributions will cover not only in the results of current underwater research, both archaeological and paleoenvironmental, but also underwater methodology and techniques for site discovery, excavation, conservation, and interpretation. Emphasis will be placed on international collaboration and prospects for future research.

Paper title and abstract (200 word max.) by February 28, 2009 to Jonathan Benjamin with “Submerged Prehistory 2009” in the subject line.

Dr Jonathan Benjamin
Dr Catriona Pickard
Clive Bonsall
School of History, Classics & Archaeology
University of Edinburgh
EH1 1LT Scotland

あけましておめでとうございます

2009年もいよいよスタートです。皆様にとって2009年が有意義のある年でありますように。

今年の水中考古学はいったいどのような動きがあるのでしょうか?世界的に景気が悪くなっているようですが、この学問は景気に意外と左右されやすい性質を持っていますが、それはどの学問も大体同じなのではと考えていますし、逆にこのようなときこそ情報を発信し人々の興味のある研究を紹介していきたいと考えています。

今年最初のニュースはユネスコ水中文化遺産保護法が正式に採択されて機能し始めることではないでしょうか?1月には動きがみえてくることでしょう。国や地域で水中文化遺産の保護・活用を考えることが現在必要になってきています。水中遺跡の発見やデータベースの作成、自治体の水中遺跡に関する認知度の向上などは資金が少なくても出来ますし、またひとつの遺跡の発掘よりも将来的に大きな意義を持つ活動だと考えています。2009年こそ日本国内で組織だった水中考古学・水中文化遺産を組織的に組み立てていく骨組み・基礎を築くのに良い年ではないかと思います。

さて、海外の動向ですが、なかなか何が発見されるからないものですが、景気を考えるとすこし深海考古学の発達の動きが鈍る可能性も考えられます。しかし、良いアイディアを持った民間企業が逆に伸びる可能性もあり、実際に有効的・効果的なテクノロジーに焦点をあわせた開発が進む可能も充分ありそうです。また、テクノロジーとの融合だけではなく、他の分野ー海洋学・地質学などーとも共同研究が行われています。地中海やアメリカなどでは大発見と言うようなものはそれほどなさそうですが、今まで発掘されてきた遺跡を総合的に研究し、他の考古学・歴史学の分野との融合を深める動きも見られるようです。10年前まで一部で存在していた「水中考古学は遊び」のような雰囲気は欧米では全くなくなっています。地中海などではウルブルンのような大きな発見などは期待できませんが、今まで研究がされていなかった地域はまだまだ発見がありそうです。

今後はアジアやアフリカでの発見が期待されています。アフリカのナミビアで発見されたスペイン船の今後の研究の動きも気になります。中国や韓国の研究者はやはり海外の研究者との結びつきを重要視し始めています。南海1号や蓬莱沈没船の研究事例が少しずつではありますが、世界の研究者の注目を受け初めています。また、鷹島海底遺跡に関する関心も海外で強まってきています。2010年以降は交際的・学際的な研究がより重要視されるものと思います。