水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

パラウで日本軍の沈没船から遺物が盗まれた

パラウでは約66隻の日本軍の船がいまでも眠ってます。そこから6点ほど盗まれた遺物がとある個人が所有するヨットから見つかりました。これらの遺跡は環境資源にもなっており、沈没船から遺物を引き上げるという行為はこれらの環境資源を失うことにもなります。これらを守っていくことは大切なことです。


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エジプトのローマ時代の水没遺跡調査 

最近、エジプトの考古学長官として何かと話題のZahi Hawassさんが新たな水中考古学プロジェクトを発表しました。アレキサンドロスの水没都市は有名ですが、これは別の遺跡です。ローマ時代の水没した遺跡があるそうで、こんど本格的に調査が始められることになったそうです。スエズ運河の東側にある町です。建物や砦、それに青銅の遺物、コイン、土器片などが確認されています。この遺跡はローマ時代の国境の町だったそうです。


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クック船長の船発見か?

ロードアイランド州、ニューポート沖で現在サーヴェイが行われており、今回の調査でアメリカ独立戦争時の船を含め6艘発見されています。その中に、ニュージーランドの地図を作成したことなどで有名なジェームズ・クック船長の乗っていた船、Endeavourがあるかもしれません。この船は名前を変えてしばらく使われていたため、クック船長とは直接関連のある遺物はないでしょう。この地域には他にも沈没船があり、特定の船を捜すのは難しいでしょう。さて、これらの沈没船は発掘の予定は今のところありません。サーヴェイにより遺物の有無を確認し、きちんと水中文化遺産保護の対象として守られます。発掘の費用、また、その必要があれば発掘が行われます。


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ICOMOS Heritage at Riskシリーズの水中文化財編

The ICOMOS International Scientific Committee of Underwater Cultural Heritage (ICUCH)のオーストラリア代表であるDavid Nutley氏より、イコモス文化財危機管理シリーズの水中文化財編がWeb-siteで利用可能とのお知らせです。アジア、南アメリカ、太平洋地域、北アメリカ、南アフリカ、ヨーロッパ地域にまたがる水中遺跡を事例としています。対象となる遺跡は沈没船に限らず、漁労活動に関する遺跡、海面変動で水中下に没した遺跡など、潮間帯から深海まで環境を問わず網羅しています。各事例の執筆にあたって様々な国から研究者が参加しています。

リッチランド 沈没船詐欺 本格調査

1年ほど前でしょうか?このニュースが発覚したのが?やっと本格調査に乗り出すようです。わざわざマイケル・ハッチャーさんまで呼んでいたそうです。(マイケルさんは、中国の陶磁器を大量に積んだ沈没船を発見・引き上げをおこない、遺物を売り払い一躍有名になった人物です。)このような詐欺を行っている人がいるために水中考古学およびサルベージのイメージが下がるのを嫌いますが、逆に学術的な作業を行っている我々を宣伝する良い機会であるかもしれません。

東京新聞から

出資法違反のリッチランド 詐欺立件へ
 「半年間で二倍の配当が得られる」などとうたって違法に資金を集めたとされる健康食品販売会社「リッチランド」(東京都北区、佐伯万寿夫会長)の出資法違反事件で、警視庁生活経済課は八日、八十人態勢の捜査本部を設置した。捜査本部は、同社が虚偽の投資話で全国一万人以上から約五百億円を集めたとみており、来週中に静岡、福岡両県警と合同捜査本部を設置し、詐欺容疑での立件を視野に捜査を進める。

 調べなどによると、リッチランドは、健康食品や家電製品の購入名目で一口五十万円程度の出資をすれば、沈没船の引き揚げの財宝探しやロシアの不動産事業などへの投資で二倍の配当を支払うなどとうたって、出資を勧誘。一九九九年十一月から約六年間に、金融業の許可がないまま、元本保証をして約五百億円を集めた疑い。

 捜査本部は、同社が昨年春ごろには配当が滞っていたのに、会員を募ったり、集めた資金の大部分を投資に回していなかった疑いがあるとみている。

 同課は昨年六月、出資法違反容疑で同社本社など約三十カ所を家宅捜索し、押収した資料の分析を進めていた。

潜水艦ハンリー(Hunley)の保存処理

独立戦争時代の潜水艦、ハンリーが引き上げられてから6年が過ぎます。ハンリーは潜水艦としては初めて敵艦を沈めたことで有名です。引き上げられてから、潜水艦内の発掘や保存処理などが行われています。ほとんどの人は、水中遺跡が発掘(引き上げ)されれば後の仕事は楽なように思っているようですが、実は引き上げた後に本当の大変で大切な(また費用がかかる)仕事が始まるのです。
ハンリーの保存にはすでに日本円にして6億円かかっており、またこれから7-10年ほど保存処理に時間がかかります。この間、1年に1億円ほど費用を必要とします。このプロセスを早めるために新しい鉄の保存法などが開発されています。この方法とは、遺物を薬品と一緒にタンクの中にいれ加熱・加圧します。これにより鉄の中に溶け込んだ塩分が本体から外に溶け出すそうです。
どうして単なる潜水艦にこれだけのお金と時間をつぎ込むのかよく聞かれるそうですが、歴史上重要であった潜水艦であるため、それだけ費用を使ってでも完全に保存処理を行い、将来にまで伝えていく努力が必要とのこと。また、テキサスA&Mで保存処理を行っているベル号も10年以上時間をかけて保存を行っていきます。


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沈没船リスト

新しい記事を書きました。沈没船のリストを作ってみました。簡単な解説ともっと詳しく調べたい人のためにリンクもあります。沈没船・水中考古学に興味のある人はどんどん活用してください。

沈没船リスト

去年にジョージ・バス先生が編集した本が出版されました。この本はこれまでのInstitute of Nautical Archaeology(INA)の関連したプロジェクトの総まとめのようなものです。今回ここではそのプロジェクトの簡単な紹介をします。なお、著作権の問題があるのでこれらの写真を見れるサイト(主にINA Virtual Museum)にリンクをしてあります。Artifact Image Galleryをクリックするとたくさんの写真を見ることができます。


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タイのプーケットで日本軍ではなくイギリス軍の小型潜水艦発見

以前、旧日本軍の潜水艦がタイで発見されたとお伝えしましたが、これはイギリス軍の小型潜水艦の間違いでした。小型潜水艦を使ったのは日本軍だけだと勘違いしておりましたが、イギリス軍もHuman Torpedoを使用していたそうです。訂正してお詫び申し上げます。

 タイのプーケット沖で2隻の小型潜水艇が沈んでいるそうです。イギリスのサルベージ会社が引き上げを行いたいとタイ政府に申請しています。タイでは水中にまで文化遺産保護法などが適応され、文化庁などから許可を得る必要があります。タイ政府の発表によると、2隻とも約9m、3cmほどの厚みのある装甲がされているとのこと。

  

航海記録から地球の磁界の変遷を見る

特に船の考古学ではないですが、航海記録を地質学者が研究するという専門学域を超えた学際交流研究は我々水中考古学者が積極的に取り入れていくモデルだと考えています。また、この研究で得られたデータは考古学にももちろん有効に使えます。

ヨーロッパの航海者達は航海記録(ログ)を毎日とっていました。これは日々の記録、特に船のスピードや位置などを記録していました。この記録をもとに地球の磁界の変化を突き止めようとする研究が行われています。1590-1840年までの記録をもとに磁界の強さなどを調べていました。もちろん、過去の記録はそれほど正確ではなかっため、いろいろなエラーがありましたが、それを修正しながら研究を進めているそうです。また、1840年以降のログの調査をしていないのは、それ以降は磁界のきちんとしたデータが取られているため、ログを基にする必要がないとのこと。
  これらの調査の結果、磁界は過去にはある程度一定だったものの、250年ほど前から1年に0.05%ずつ磁界の力が弱まっていることがわかったそうです。磁界の力が弱まるのは地球の磁界がひっくり返る(Polar Reversal--北と南が入れ替わる)前兆だと考えられています。これは約百万年に一度起こると他の研究からわかっています。


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