35億

セントーサ島と35億円

シンガポールのセントーサ島がここ数日話題となっています。米朝首脳会談が行われるそうです。が、我々水中考古学者、特に東南アジアの沈没船事情について詳しい人にとっては、何となくなく馴染みのある島の名前です。というのも、セントーサ島に有名な沈没船があるわけではないのですが、別のとある理由です。

1990年代後半、インドネシアのBelitung島から唐の時代の沈没船が発見され話題を呼びました。中国からアラビア半島に向かう船であったようで、唐の時代の貴重な遺物を多く積んでいました。おそらく、ダウ船の原型ともなる船だったと思われ、縫合船でした。

この船、いわゆるトレジャーハンターによって発掘されてしまい、ろくに調査もされなかったのです。引き揚げられた陶磁器類や金製品など、その取扱いをどうするか...最終的に一括で遺物を買い取ったのが、セントーサ島を管理する国営の会社でした。その値段が、32,000,000 ドル(USD)だったそうで、日本円にすると… 35億!

UNESCOなどは、発掘の方法や売買について、好意的な意見はもっていません。一応水中で記録は簡単取られていますが、学術的スタンダードとは言えません。貴重な遺物ではありますが、出土地点がいまいち判明しないものなど。しっかりと調査すれば、もっと様々な検証ができたはずですが、遺跡の珍しさやその価値から「引き揚げ」が優先されてしまいました。遺物は一応見ることが出来るとはいえ、発見場所のシンガポール、目的地だったアラビア半島(?)、また、出港地である中国には、なんのメリットがあるのでしょうか?引き揚げで得をしたのは、引き揚げた外国の業者とシンガポール(観光・活用で元がとれれば)となっています。

最終的に、一括史料としてシンガポールで見ることが出来る資料となっていますが、その陰に隠れて様々な問題が抱えています。トレジャーハンターに言わせると、「我々が引き揚げなければ、地元住民の漁、台風・津波など様々な要因で破壊されて遺物を一つを見ることもできなかっただろ!」となります。まあ、確かに多くの水中遺跡は人知れず破壊されていく運命にあります...が、それも一昔前の話。近年は、世界各地で水中遺跡の保護が進んでおり、破壊されるケースは減ってきています。オランダなど数万件の遺跡と思われる地点が周知の遺跡ポイントとして登録されています。海の上で開発がある際には、そのポイント周辺の調査をしてから開発に臨みます。

この唐時代の沈没船ですが、考えてみると、そう、まさに「遣唐使船」のイメージに近いものがあります、行先が違っていたら。日本近海でも発見される可能性があるかもしれませんね。そのためにも、自治体などがしっかりと水中遺跡の周知の遺跡データベースを作ること、開発に際して妥協せずに調査をすすめることでしょうか?

夢は、遣唐使船の発掘!もちろん学術調査を行うことですね!

黒石号などとも呼ばれます~Belitung Shipwreck

現在は、こちらの博物館で見ることが出来ます~ASIAN CIVILIZATION MUSEUM