AIA Meeting (アメリカ考古学学会)

この記事も以前のサイトにあってものでしたが、いまとなってはあまりタイムリーではないのでのせてませんでした。 読み返してやっぱりここにもう一度公表することにしました。 

1月7日ー9日にかけてボストンでAIA(アメリカ考古学会?)の総会が行われます。 AIAは1年に一回の総会があり、これが106回目です。 由緒ある学会でArchaeology Magazineなどポピュラーな雑誌から専門誌など発行しています。 基本的には地中海の考古学がほとんどです。

今年のメインテーマはもちろん水中考古学です。  欧米ではすでに一般化している水中考古学ですがやはり大きな考古学学会のメインテーマともなるとうれしい限りです。 私もこの学会で発表しました。 やはり水中考古学なのでTexas A&Mの卒業生が多いですが他にもいろいろな教授や院生などが参加。 その中でもお勧めのレクチャーをここでは紹介します。

今回初めてバラード先生とお会いすることができました。 バラード先生は例のタイタニックを発見した人です。  最初先生はタイタニックを完全にモニュメント化して記念碑として残しておこうと考えていたそうですが他の企業などが船の場所を探し当てて今では(金持ち専用の)観光地化してるそうです。 バラード先生の子供が風邪をひいたそうでしかも奥さんも忙しいとのことで自分のプレゼンテーションが終わったらすぐに帰ってしまいました。 他にもフランスの大水中考古学者ポメイ先生やギリシャ政府の水中考古学最高責任者のデラポルタ先生、カナダのグ二エー先生などとゆっくり話をするこができました。 日本の水中考古学はどうなってるのか?という質問が多かったです。 これからいろいろな研究結果が出てくるから期待していてくださいと答えておきました。 やはりみな鷹島海底遺跡について話は聞いて興味があるものの情報があまり回ってこないと言ってました。 なぜか最近は与那国の海底遺跡(?)も知ってる人が増えているようです。
ここではすべてのレクチャーについてではなく深海考古学(Deep Sea Archaeology)、キレニア号(The Kyrenia Shipwreck)、そしてその他・まとめ、の三項目について参加した感想をざっとかいてみました。 

DEEP SEA ARCHAEOLOGY

   歴史文献を調べると幾つか沈没船の記録が出てきます。 その記録をまとめると80%ほどが陸地の近く、10%が水深の深い場所(150m以上?)、そして残りの10%は記録がないそうです。 深海に沈んだと見られるこれらの船は今でも海の底に眠っています。 ROVなどを安く借りれるなど技術の進歩によりこれから深海でもとレジャーハンティングが盛んになるようです。 考古学者が今まで見たことの無い未知の世界が失われつつあります。 

   深海では波の影響やサルベージなどを受けにくいため保存状況が良いといわれています。 また深海の砂は密度が水に近く船が沈むとそのまま砂の中に埋もれるそうです。 砂の中は酸素がないので有機物を破壊するバクテリアやフナクイムシなどが存在せず木材などが腐らずに残るそうです。 そのためスキューバで潜れる範囲では想像も出来ないほど遺物がそのまま残ってます。 深海考古学を実際に行っている先生方は現在はだいたいサーヴェイを中心に行っています。 マルチビームらサイドスキャンソナーなどを使って沈没船の位置を確認します。 そのあとでROVを送り沈没船の時代を確認します。 発掘は行いません。 このようにして現在深海にある船が次々と確認されています。 サーヴェイは比較的安く行えるので考古学的に発掘する価値のある船を見つけることが目的です。 

   すでに何年か前からインターネット2を調査に使っています。 インターネット2に機械を繋ぐことで自宅や学校などどこにでもオペレーシンセンターを作ることが出来ます。 機材と船と技術者だけを発掘現場に残してロボットのコントロールなどは別の場所から行えます。 深海で発掘に適していることは暗闇であることだといいます。 つまりいくらでも光を持ち込めるので、その光をコントロールできればいつでも同じ環境で写真撮影などが行えます。 地上だと太陽の影響で写真のコントラストが変わる場合がありますが、深海ではその必要はありません。 またモニターを見ながらコントロールするので仕事の時間は関係ありません。 交代で24時間作業を続けることが出来ます。 現在使われているロボットの手は触ったものの感触をオペレーションセンターで感じることができるそうです。 つまりロボットが石を触ればその感触が再現できるそうです。 また、ロボットの手はミリ単位で動かすことが出来ます。 遺物を引き上げ途中にオペレーターがコーヒーを飲みたくなったらその場に固定させることが出来、10分ー20分経っても位置は変わらないそうです。 人間の手に合わせて動かすことが出来るためブラシも使えます。 これらを考えると人間が発掘するよりもより正確に発掘することができます。 

   しかしこのようなオペレーションには莫大なお金がかかると思っている人が多いようです。 もちろんこれらのロボットなどを開発するのにはお金がかかりましたが、考古学だけでなく様々な分野でこれらの技術は使われています。 すでに深海で発掘するテクノロジーは存在します。 これらの機材は様々な団体が持っており貸し出しも行っています。 実際にバラード先生が出費する費用は作業員の給料と機材の輸送などだけだそうです。 もっと考古学者が海洋学などの専門家などに積極的にアプローチして行くべきだとの結論でした。

THE KYRENIA SHIP 

    キレニア沈船はキプロス島で1960年代に調査された紀元前3世紀頃の船です。 キレニア号はキプロス島の人にはなじみが深いようで紙幣のデザインにもキレニア号が使われているそうです。 75%ほどの船材が残っており現在でも分析が行われています。 キレニア号は発掘で得られた情報をもとに復元されました。 すべて当時の技術で完全に復元されました。 世界を回りました、日本にも立ち寄ったそうです。 キレニア号の復元されたものからレプリカが日本でも作られ現在福岡の博物館の裏庭に展示してあります。 復元された船を元に様々な実験が行われているようです。 舵の取り付ける位置、帆の大きさ、角度などなど。 また当時の主な航海ルートなどを実際にアンフォラなどのレプリカを積んで航海実験を行っています。 
   木材などの分析もいまだに行われています。 加工痕、特にノミやのこぎりなどの跡などを正確に調べ、船を作った人それぞれの特徴を見出すことも出来ると言います。 また、キレニア号は何度か修理された船であることが加工痕の違いで何人もの全く別の人によって修理されたことがわかったそうです。 航海実験から向かい風に対して75度まで走行可能だとわかりました。 いろいろな風の方向、強さ、波など違った状況で船がどのような操作が可能かなども詳しくデータを取っているそうです。 これらのデータをもとに古代の貿易ルートの解明など役立ていくそうです。   

その他のレクチャー まとめ

    沈没船はいわゆるタイムカプセルのようなもので当時のそのままの状態で残っていることがすくなくありません。 それだけに発掘後の分析作業にはかなりの時間を要します。 他のレクチャーもいろいろと勉強になりました。 港のサーヴェイなども磁気探査機やマルチビームで行うことで港の枠組みの下部構造などが上部構造を動かさずに確認することができます。 また当時の海岸の再現や貿易ルートの解明とともになぜ港がその場所に作られたのかなど様々な研究がなされています。 何度も言ってるようですが日本の水中考古学もこれぐらいできれば良いと思います。 全体を通して感じたことは世界では海洋学や機械学などさまざまな分野の人々が協力して歴史の解明に力を入れている様子が伺えます。 学際交流がさかんなのでしょう。 これからもっといろいろな分野に水中考古学を売り込んで協力を得たいと考えています。 磁気探査、ソナー、マルチビームなどは一般的なテクノロジーであり、現在のコンピュータの情報処理量を考えると安く、正確に、しかも簡単に水中の様子を調べることができます。 これからサーヴェイを中心に日本の水中考古学を発達させていくことが必要かもしれません。 

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