シャクルトン南極探検隊のエンデュアランス号の発見について思うこと…

南極大陸探検隊、シャクルトン氏の船

エンデュアランス号が発見!

今、世界中で注目を集めています。

南極の氷の下、3,000mにあるその木造船の保存状態の良さには驚かされます。私も、最初見たときは、迷わずツイッターなどにあげました。今でも、その話題で持ちきりです。

この船を有名にしたのが、シャクルトンの困難に立ち向かう姿勢、リーダーシップ、冒険物語。20世紀最大の冒険ノンフィクションとでも言えるでしょう。

で、一歩下がって考える。

この船、良く知られた船であり、設計図や記録がしっかりと保管されています。また、沈没地点についても、ほぼ確定していました。南極の氷の下、3,000mにあるから到達できなかったわけです。また、保存状態についても、冷たい海なので、良く残っているだろうと考えられていました。

そして、調査にかかった費用が10億円以上。プライベート・ドーナーだそうです。

しかし、考古学・学術的価値のみを考えた場合、果たしてなにか本当に発見できたのだろうか?そう問いかけている研究者もいます。私は、そのような意見に基本的には賛成です。ただし、「純粋に考古学・歴史的価値のみを追求した場合は」と付け足しましょう。

とはいえ、私は、この調査には反対意見はありません。多くの人が沈没船の研究や海事文化、歴史に興味を持ってくれるきっかけを作ってくれた!と言えます。おそらく、この発見がなければ、水中考古学に興味を持つこともなかったという人も多いのではないでしょうか?パンダのような「調査」です。研究ではない…。

南極に住む生物の研究、木材の劣化進行速度の研究、その他、諸々な分野との共同研究は十分にあり得ます。しかし、お金がかかりすぎる。ただし、「お金がかかるから調査はしない」だと、分野の発展はのぞません。

新しいことに挑戦することで、その分野を広げていく、そのための象徴的な発見なのかもしれません。

 

そして、さらにもう一歩下がってみます。

ヤフーニュースのサイトを見ました。この記事の下にscrollすると、そこに現れたのは、ヤフオクで出品されている骨とう品・海揚がり品でした。

海揚がり品とは、海で発見された遺物のこと。つまり、我々の身近な海で水中文化遺産が気がつかれずに破壊されているのです。開発や漁業活動でたくさんの水中遺跡が失われています。海揚がり品がある、つまりは、近くに沈没船があったが、それが破壊され、売却されているのです。

「エンディアランス号スゲー」といいながら、自分の身近にある遺跡破壊をみていない。それが、現実です。多くの国では、海揚がり品には報告の義務があり、売却は犯罪になります。この発見を通して、日本の水中遺跡の現状に目を向けてくれることを願っています。

先ほど、この船は「象徴的な発見」と書きました。水中考古学という分野を広げていくためのシンボル的な存在になりうるからです。ただし、逆に、そこから先の他の遺跡を見ないと、ただ単に「大金を使って船を発見しただけ」という、残念な調査の象徴になってしまいます。

 

問題は、調査にかかった費用。確かに、水中ドローンは最新鋭であり、挑戦する心は大切です。でも、これだけのお金があったら、いくつ水中遺跡を探すことが出来るのだろう。小さなプロジェクトには、それほどお金がかかりません。数百万円あれば、立派な水中遺跡調査ができます。

日本の周りには、たくさんの水中遺跡があり、多くは破壊されていく運命にあります。近くの遺跡に目を向けてくれる人がいれば、救える遺跡があります。世界には、数百万件の水中遺跡があると言われていますが、日本では数百件しか知られていません。イギリスやデンマークでは、それぞれの国で万件単位で水中遺跡が確認されています。

それらの多くは、名もなきほどの小さな遺跡です。小さくても、設計図も何の記録もない沈没船の発見や水没遺跡の発見は、学術的に価値があります。良く知られた沈没船と、全く何の情報もない時代の水中遺跡…。弥生時代や古墳時代の船、鎌倉時代の船でも構いません。どんな形をしていたのか、どのように作られたのか、何が運ばれていたのか。実は、詳しいことは分かっていません。

数億円あったら、いくつの水中遺跡の探査が出来たのだろうか…。

シャクルトンの船に全く興味を示さない人もいるでしょう。となると、10億円は何だったのか?しかし、自分の育った町の海、いつも見ている風景の海の底に、弥生・古墳時代の舟、江戸時代の船、もしくは、旧石器時代の遺跡や縄文の遺跡がある!とどうでしょうか?

そんなわけで、丹後地方。

 

ここに一人の高校生がいます。彼女は、1冊の本を読み、自分の地元の海にもきっと水中遺跡がある、知られざる歴史が詰まっている、それを自分で見つけて、できれば地域の活性化にもつなげたい。

決して大きな夢ではありません。自分の故郷の海。そこには、何かがある。海と人を繋ぐ歴史のカケラが眠っている。それを、自分の手で探したい。

 

彼女のSNSへの投げかけを、たまたま私が見つけ… 話していくうちに夢は大きくなりました。クラウドファンディングで資金を集めて調査をしようと決まりました。

  そして、数か月かけて準備を進め、プロジェクトが発足。今、高校生が地元に眠る水中遺跡を探すために、奮闘しています。私は、そのお手伝いをしています。

 

【高校生の挑戦】丹後の海で水中遺跡を見つけたい

クラウドファンディングは、こちらから

 

このプロジェクトを通して、地域の海を見つめなおすきっかけになって欲しい。考古学や水中考古学は、開発前の単なる業務としての記録調査、ある特定の人々の学術的な調査だけではありません。特に今回のエンデュアランス号の発見は、水中考古学はお金のある人の趣味・特権階級の遊びに見えてしまうかもしれません。実は、そうではありません。水中考古学も「身近な海に自分たちの祖先の記憶がある」ことの認識から始まっています。

 

考古学って、そもそも、郷土を思う心から始まった。それがいつしか、開発前の単なる業務、専門家の特権のようなイメージに変わってしまった。

彼女の挑戦は、新しいことのようにみえるが、実は、古き良き考古学への回顧。

詳しい話は、リンク先で読んでもらえればうれしいです。

彼女の挑戦は、エンディアランス号とは対極をなす挑戦ですが、どちらが重要でしょうか?答えは、人それぞれかもしれません。

 

支援・拡散、宜しくお願い申し上げます。

 

丹後は古代から近世まで続く日本海交易の中心地。大陸との交易も盛んにおこなわれていました。台風や津波などの自然災害も少ない地域なため、水中遺跡がそのまま残されている可能性が高い。そして、現在は開発がほとんど行われておらず、太古の海の様子をそのまま残しているところもあります。そんな水中遺跡の発見のポテンシャル3拍子揃ったところですが、水中遺跡調査がほとんど行われたことがありません!

是非、ご協力ください!

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/09e4b68fa5ce1987b5e8e2532f3bbe6866dcf591

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