日本で水中考古学プログラムの設立を目指す!

世界に誇れる日本の考古学ではあるものの、日本では水中考古学を学べる大学が無い!これは誰が見ても明らかな事実です。まことに勝手ではありますが、大雑把に自分なりに大学のカリキュラムを作ってみました。

   そこで、世界に幾つかある大学のカリキュラムを調べてみました。どの大学もそれぞれの長所・短所があります。テキサスA&Mは保存処理が確立していることが強みであり、また、コネクションの幅が大きいのが強みですが、地中海、特に船だけに凝るところがあり、また技術を教えていないということが弱みでしょうか?オーストラリア、イギリス、イスラエルなどは水中遺跡のマネージメント、技術的な面もカバーしているようですが、保存処理がどこと無く頼りない感じがします。また、教授の幅が狭く所によってはワンマンショーのように見受けられる大学もあります。ECUは考古学ではなく、歴史学になりますが、職としての水中考古学に力を注いでいるようです。フロリダの大学二つともまだ駆け出しであるため、まだデパートメントとしての特色があまり感じられない気がします。これからに期待しますが、卒業生の活躍によるでしょう。詳しくは大学の紹介のページをご覧ください。

これらの状況を見て、まことに勝手ではありますが、大雑把に自分なりに大学のカリキュラムを作ってみました。日本でも将来可能であるかを考えながら、そして、それぞれのプログラムの良い点、悪い点を判断して作成しました。もちろん理想のプログラムではありますが、将来の職業としても考えなくてはならず、アカデミアとして大学に残る場合もできるよう考えてみました。これらの授業は誰が教えるのかと気になるかも知れませんが、現在、海外で学んでいる日本の大学院生が卒業をした後に何人か集えばこのようなプログラムの設立は可能です。

水中考古学といっても基本は考古学であり、その考古学のベースを養うことが大事です。また、遺跡が一括性の特色を示すため、その地域の歴史や言語などをさらに詳しく学ぶ必要があります。それらの授業はここでは触れていません。私が考える”水中考古学“は3つの柱があります。一つは海事考古学(Nautical Archaeology)でこれは船や港の考古学です。もう一つは海洋考古学(Maritime Archaeology)で、海洋文明、人と海の関係、人類学的アプローチによる人類がどのように水という環境を克服してきたかを学ぶ学問です。島の考古学などもこの分野にはいります。最後は水中考古学、これは保存処理、サーヴェイの方法、発掘技術、パブリック考古学、法律などです。

この3つの柱を選考としてカリキュラムを作ってみました。基本のクラスはレクチャーと実習を含みます。このクラスは基本となることで必修として考えています。セミナーは生徒の自主的な研究とその研究発表を中心としたクラスを考えています。セミナーは海事考古学の生徒、また海洋考古学の生徒が中心となるクラスで、おもにアカデミア向けの内容になります。実習クラスは水中考古学の専門となります。主に職業としての水中考古学を身につけ実践の考古学を学びます。トピッククラスは現在ホットな内容の授業を取り込む予定で、授業形態などはとくに考えていません。パブリック考古学などは今後必要となる授業でしょう。水中考古学は一般に自分の仕事をアピールすることが成功の秘訣であることは欧米の成功の例をみるとはっきりしています。

さて、授業数ですが、日本の大学については良く調べていないので単位数などはかなり適当です。基本(必修)の7クラス、そしてほかの3つの部門から5つの計12クラスほどでしょうか?これに先ほど書いたように考古学・歴史・言語を加えます。現段階では簡単な構想を練っている状態なのでまだまだ雑なカリキュラムですが、もう少し日本の大学の制度を勉強し、より現実的なプログラム計画を作る予定です。また、これらそれぞれのクラスについてもより細かい内容も考えていく予定です。

基本クラス

水中考古学の基礎

海事考古学(Nautical Archaeology)

海洋考古学 (Maritime Archaeology)

水中考古学実習 I (サーヴェイ・発掘)

水中考古学実習 II (写真・実測など)

保存処理 I

水中考古学の諸問題 (法律・水中文化遺産保護など)

セミナー・ディスカッションクラス

セミナー 水中考古学史

セミナー アジアの船

セミナー 船の歴史 ルネサンス以前

セミナー アメリカ・ヨーロッパの船

セミナー 人類と水 

実習

実習 水中考古学実習 III (ダイブマスター・ROV・CGなど)

実習 保存処理 II (金属・無機物)

実習 保存処理 III (有機物)

水中考古学トピック

トピック 深海考古学

トピック パブリック考古学 (博物館・バーチャル考古学など)

トピック 自然科学と水中考古学

水中考古学の基礎

この授業では水中考古学という学問の存在意義、歴史・考古学研究における重要性を学びまず。また、日本では曖昧であるこの学問の定義を行います。ごく簡単ではありますが、Nautical Archaeology, Maritime Archaeology、そして Underwater Archaeologyの違い、それぞれの学史を学びます。また、調査の基本的な流れである事前調査、サーヴェイ、発掘、記録・実測、研究、保存処理、出版、遺跡の保護と活用を学びます。学生の最初の必修授業となり、これから水中考古学を学んでいく上で最低限必要な基礎知識を身につけます。

海事考古学 (Nautical Archaeology)

海事考古学、つまり、船舶・船・港の考古学を学びます。古代の船(丸木舟や葦船)から始まり、ギリシャ・ローマ時代、アラブの船、中世アジアの船、大航海時代の船、鉄船の出現、そして現代に残る伝統船大工に至るまでの船の発達の歴史を勉強します。また、船の考古学に必要な船体用語や船の構造について詳しく学びます。主に船の構造哲学、建造方法の変遷、港の構造などについて学びます。

海洋考古学 (Maritime Archaeology)

海洋考古学、簡単に解説をすると人が海(および水)とどのような関係を保ちつつ現代の社会が形成されてきたかを学ぶ学問です。船の研究においても特にその社会的重要性を強調します。また、海岸にある遺跡、湖の遺跡、水没遺跡なども学びます。狩猟・農耕のほかに海からの資源に頼る文化、ポリネシアなどの島の考古学など多岐にわたり、海洋文明について研究します。

水中考古学実習 I (サーヴェイ・発掘)

水中考古学はその環境により多少の技術的制約を受けます。また、水中では地上で当たり前に行うこともできない場合があります。水中で無駄なく、安全に作業する技術を身につけます。サーヴェイの方法、ソナーや時期探査の基礎、水中実測の基礎、水中写真の取り方などを実践で学びます。安全面を確実に確保できるようなプランの立て方などを学びます。 

水中考古学実習 II (写真・実測など)

水中での発掘は水中考古学のほんの一部であり、考古学の研究は発掘後の遺物の管理・保存、実測、そして研究・解釈に重点が置かれます。この授業では発掘後の作業の実習を行います。データベースの作成、写真撮影、実測図作成、遺物・遺跡の展示・活用を学びます。また、船のラインの作成、簡単なモデル作成を行います。

保存処理の基礎 I 

水中での発掘の際に欠かせない技術、それが保存処理です。長い間水に浸かっていた遺物は空気に触れると破損が始まります。適切な保存処理なくしては発掘をした意味が無くなり、盗掘・トレジャーハンティングのほうがまだましということになります。このクラスではなぜ保存処理が必要なのかということ、また遺物に対する取り組みから始まります。保存処理に必要な基礎的な化学を学んだ後、有機物及び金属などの無機物の処理を学びます。主にレクチャーが中心ですが、少し実験・ラボなども組み込みます。

水中考古学の諸問題 (法律・水中文化遺産保護など)

水中考古学と陸上の考古学の大きな違いは水中の遺物は法律上なぜか陸上とは違った扱いを受けています。このことを理解し、また、日本以外の国に法律、国際法などを学びます。国連の海の法律、UNESCO・ICOMOSの水中文化遺産の取り組み、そしてアメリカ・イギリス・オーストラリアなどの例も見ます。トレジャーハンターやサルベージなどの問題点も論議し、水中文化遺産保護への活動についても論議します。また、日本国内での関心の低さについてもどのように対処していくべきかなどもトピックに考えています。

セミナー 水中考古学史

水中考古学の発達の歴史を見ていく授業です。最初は技術的な問題をどのように解決してきたかを学びます。スキューバの発達、発掘技術の確立、サーヴェイ機器の発達と応用などを実際の調査に使った例から学びます。保存処理の応用の実例、例えばヴァーサやメリーローズ、ベル号について紹介します。テクニカル的なことを学ぶより、どのようにその技術を応用してきたかを重要なポイントと考えています。また、簡単にではありますが海事考古学の歴史、海洋考古学の歴史も学びます。そのほかとくに水没遺跡についてもここでは取り上げてみます。

セミナー アジアの船

タイトルどうりの授業になるでしょうが、まだアジアでは資料が少ないため歴史や文献資料などが中心になるでしょう。大きくインド洋も含めています、ただし、東南アジア、インドの船が中心です。船の発達から始まります。船の構造の発達を中心に進めていきます。隔壁の発達、東南アジアの縫合船、日本の丸木舟、準構造船から遣唐使船、関船などを経て最終的に弁財船、そして西洋の船との融合を見るまで学びます。ジャンク、そしてヨーロッパの登場による地域への影響なども学びます。また、東南アジアのトレジャーハンティングの問題についても軽く触れます。

セミナー 船の歴史 ルネサンス以前

船の発達の歴史を学びます。メソポタミア、エジプトなどの船を学び、ギリシャ・ローマ時代の豊富な考古学資料から船体主体構造の変遷、海事考古学の発達の歴史も学びます。また、北欧の船、ヴァイキングの船、ハンザ同盟のコグ、そして大型船の登場まで学びます。アラブの船、アフリカの船についても地中海世界との関連で紹介します。地中海に多数存在する港についても学び、船体構造だけでなく船と人類の関係についても学びます。

セミナー アメリカ・ヨーロッパの船

ルネサンス期のイタリアの都市国家が発達させた貿易から始まり、スペイン・ポルトガルの大航海時代の船も学びます。ヨーロッパ諸国のアジア・アフリカ・アメリカへの進出の歴史、貿易ルートの確立、そして地域社会への影響を船と人の観点から見ます。また、アメリカ住民の船についても簡単に学びます。大型船の発達、武器の発達、そして木造船から新しい素材への変遷について学び、最後は第二次世界大戦と飛行機の発達を含めます。

セミナー 人類と水 

海洋考古学のセミナーです。水中考古学では技術やテクニカルな側面、そして保存処理を学び、他のセミナーは船の構造などについて詳しく見ましたが、このセミナーは人類学的アプローチを取ります。海と人間がどのような関係を保ちつつ現在に至ったのかを主な主題とします。海岸での海との生活、島の考古学、人類のたどった道のりを学びます。また、遺跡のマネージメントも実例を紹介します。

実習 水中考古学実習 III (ダイブマスター・ROV・CGなど)

水中考古学実習I・IIでは水中考古学を学ぶ者に最低限必要な技術を教えますが、この実習ではさらに高度なテクニカルな技術の習得を目指します。プロジェクトを行う際に実際にマネージメントを行うことを目指す生徒を対象とします。レスキューダイビング、洞窟でのダイブなど特殊な技術を習得します。ダイビングでは安全面を確実に確保できるようなプランの立て方などを学びます。  また、水中ロボットの簡単な構造、マルチビームなどの情報処理など海洋学のテクニカルな側面も学びます。その他、写真や実測図、CGの作成など発掘後の作業についても詳しく習得します。

実習 保存処理 II (金属・無機物)

保存処理Iはセオリーを中心に学びましたが、保存処理IIでは実際の遺物などを使い保存処理のプランを自分で作成し、それに沿って保存処理を行います。金属は薬品処理、錆びの除去、ER法による鉄の処理を学びます。石器や土器については復元や合成樹脂の使い分けを学びます。

実習 保存処理 III (有機物)

保存処理IIIも基本方針は保存処理IIと同じです。ただし、有機物の保存を行います。木材をPEG(ポリエチレングレコール)、糖アルコール、シリコンオイルなどによる処理の方法だけでなくメリットやデメリットも考えます。木材のほかに布、紙、皮などの遺物、さらには骨などの動物(及び人間)の一部の保存も行います。

トピック  深海考古学

深海考古学とは水中考古学の分野でも特にスキューバを使っての発掘が現実的でない水深50m以下にある遺跡を対象とする考古学です。なぜこのような水深にある遺跡の発掘が必要なのか、そしてアプローチの方法を紹介します。ROVやソナーなどの基礎知識、発掘方法などを調査例などから学び、現実的な学問の成立を目指します。

トピック  パブリック考古学 (博物館・バーチャル考古学など)

パブリック考古学とはつまり考古学者が一般の人々とどのように向き合って考古学、文化遺産の保護を理解してもらうかということを考えることです。遺跡の活用法について学びます。マスコミと考古学の対立・協力、一般向けの出版、インターネットの利用などです。また、博物館のマネージメントも考えます。水中考古学は考古学者以外から非常に注目されやすい分野ではありますが、発掘などのプロジェクトが大掛かりなことが多く税金などを使い国が中心となりこの学問の発達に勤めなければならないのは明らかです。しかし、それができていない国とできている国の差があるのはなぜか?そしてそれを変えていくのは一般の理解が必要です。

トピック  自然科学と水中考古学

考古学は近年になり様々な自然科学をその研究に取り込んでいます。もちろん年代測定などはそのおもな内容です。保存処理には化学の基礎が’必要ですし、海で作業をする水中考古学は海洋学も学ぶ必要があります。そして木材の樹種判別、花粉・プラントオパールの研究、動物考古学など自然科学の基礎を学びますが、水中考古学に応用された例も取り上げてその問題点なども学びます。そのテクニックを身に着けるのではなく、それぞれの応用法、また研究を依頼するにも自分である程度の理解が必要です。遺跡をマネージメントしていく上で必要な情報を見につけます。

 

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