Maritime Archaeologyについて

フリンダース大学で学ぶことができるMaritime Archaeologyは日本語訳にすると「海事考古学」となります。同様にこのサイトで扱っている水中考古学は’Underwater Archaeology’の、「船の考古学」は’Nautical Archaeology’の訳語にあたります。それぞれの学問領域は重複する部分がある一方で、専門研究分野は異なります。ここではMaritime Archaeologyの定義とは何かを、「水中考古学」、「船の考古学」と比較しながら考察します。

 Maritime Archaeologyの定義について、イギリス・ケンブリッジ大学のキース・マッケロイ(Keith Muckelroy)は著書「Maritime archaeology」の中で「海上における人の活動の痕跡を科学的に研究する学問」として上で、海事考古学、船の考古学、水中考古学の学問領域を図によって示しています。この図では、それぞれの専門性を6つの領域に分けています。

a:船の考古学において、例えば舟形石棺など、水中環境とは無縁な船そのもの関する学問領域。
b:海事考古学、船の考古学において現在は水中には没していない、陸上で確認される船の研究。
c:海事考古学において、上記と関連し特に船だけでなく人の海上活動に関わる全ての陸上の遺跡。
d:海事考古学において、水中考古学、船の考古学全てに関係する学問領域。
e:海事考古学において、航海に関するあらゆる研究領域。
f:水中考古学において、海面の上昇により現在は水中に没した旧陸上地形面に残された主に旧石器時代の遺跡など、人の海上における活動とは直接関わりの無い学問領域。

 すなわち、海事考古学では航海に代表される過去の人の海上における活動に焦点を当て沈船を含め、港湾施設、船の積荷などの遺跡・遺物を扱うことを提唱しています。しかしながら、ここでマッケロイが示した概念はあくまでMaritime Archaeologyを中心に据えたものであり、現実には考古学者が「海事考古学」、「船の考古学」、「水中考古学」の3つの学問分野にまたがって、研究を行う場合も少なくありません。一方でテキサスA&Mにおける「船の考古学」は学問の中心をあくまで考古学的な(特にClassical Archaeologyを主体とした)船の研究に置いており、そこから導き出される人の活動を明らかにすることを目的にしています。欧米で提唱された海事考古学と船の考古学は人の水上における活動に主眼を置くという部分で共通していますが、これはNew ArchaeologyとAnthrolopogyの台頭が両分野において強い影響を与えたためであると考えられます。この問題についてはやや話がそれるため、また別の機会に述べたいとおもいます。

 オーストラリアではMaritime archaeologyが考古学の一領域として確立していますが、この背景を考えた場合には、イギリスの影響と共に、考古学者が水中の文化財に目を向ける契機となったのが、西オーストラリア州(Western Australia)でのオランダ東インド会社(VOC=the Verenigde Oost-Indische Companie)の沈船の発見という事実があります。レジャーダイビングの普及とトレジャーハンターの活動が沈船に与える影響は、考古学者が無視できないほどの状況になり、沈船の研究と保護を目的に海事考古学が発展していきます。後には、オーストラリア国内においては国民が自らのアイデンティティを歴史に求める動きがあり、これが初期の移民船の研究につながっていきます。また、オーストラリアを代表する河川であるマレー川流域においては、水上活動に関する考古学的研究が実施され、国内の研究者の間では高く評価されています。重ねてオーストラリアの海事考古学では、歴史考古学(Historiacal Archaeology)との連携は非常に重視されています。

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