Maritime Archaeology Field School

フリンダース大学大学院ではコースワークの一科目として、水中考古学実習(Underwater Archaeology Field School)を実施しています。2005年2月にはタスマニア州で、実習が行われました。ここではフリンダース大学の水中考古学実習の紹介をすることで、大学が提供する水中考古学プログラムへの理解を深めたいとおもいます。

フリンダース大学は水中考古学実習を通して学生に水中での調査・発掘方法、図面作成、ビデオ・写真撮影の方法等、水中考古学のフィールドワークに必要な技術を学ぶことができるプログラムを提供しています。実習期間中にはAIMA(Australian Institute for Maritime Archaeology)とNAS(Nautical Archaeology Society)が提供するAIMA/NASプログラムのパート1を学ぶことが義務付けられています。実習は大学院生を対象に実施されていますが、学部生も参加することが可能です。また、実習は大学院コースに正式に組み込まれているため、単位として加算されます。

 プログラムは1998年よりフリンダース大学とジェームズ・クック大学(James Cook University)の協力の下、学部生を対象に開始されました。1998・1999年はマグネティック島にてジェームズ・クック大学主体にプログラムが実施され、2001・2002年は南オーストラリア文化財局の協力を得て同州・ポートビクトリアで、2003・2004年はオーストラリア・ビクトリア州でビクトリア文化財局の協力を得て、プログラムが実施されています。2005年の実習は2月1日~18日までオーストラリア・タスマニア州のポートアーサーを拠点に行われました。

  ポートアーサーはタスマニア南部、州都ホバートから南西に100km程に位置し、その歴史的背景からタスマニアでも有数の観光地として知られています。ポートアーサーは地域一帯が文化遺産として指定されており、今でこそ風光明媚な場所ですが、その歴史を遡ればオーストラリアでも特に重い罪を犯した囚人を服役させるための場所として植民されました。服役所は1830年代から70年代後半にかけて機能し、地域に残る建物が史跡として指定されています。

  実習中に調査対象となったのは、ポートアーサー史跡地域の内外に点在する関連遺跡です。周囲には囚人が採掘した石炭を輸出した桟橋跡、船の建設場跡が確認されており、より詳細なデーターを収集することが学生に課せられます。約2週間の実習期間中に、学生は4名からなるチームに別れて、2つの遺構・遺跡を調査し、最終的に報告書を作成します。調査方法は教授から直接指示を受けるのではなく、チームに一任されます。各チームにはそれぞれ、平均2名の監督者がダイビングの安全確保と指導に当たります。この他、タスマニア州政府の水中考古学者、ポートアーサー史跡管理局の考古学者、考古学コンサルタント、アルスター大学(University of Ulster)の考古学者らが今回の実習では指導にあたりました。

 実習は学生にフィールド調査技術の習得、水中考古学の方法論の習得、水中遺跡に対する適切な解釈法、調査マネジメントの習得を目的にデザインされています。最終的に、学生はこの実習に参加することでAIMA/NASプログラムのパート1を修了することになります。フリンダース大学の実習はAustralian Institute for Maritime Archaeology=AIMAのプログラムと密接に連携し、オーストラリア国内ではMaritime Archaeologyコースを提供する他の大学も同様の方針を取っています。現在オーストラリア国内ではフリンダース大学、ジェームズ・クック大学、西オーストラリア大学が水中考古学に関連するプログラムを提供していますが、これらの大学では水中考古学実習を通して、学生にAIMAのプログラムを実践する機会を与えています。

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