海と列島の中世

海と列島の中世
海と列島の中世
網野 善彦
講談社 (2003-04)
文庫 (ASIN: 406159592X)

価格: ¥ 1,208 (税込)
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どうやらかなり有名な本のようですが、ここでも紹介しておきましょう。 聞くところによると斬新なアイディア、新しい”海からの視点”で歴史を見直していこうということをといかけた先生だそうです。 つまり、日本の歴史学者は一般的にこの視点から歴史を見たことが無かったのです。 しかし、この”海からの視点”は水中考古学者には欠かせないモノの考えかたであり、同じ視点で歴史を見ればだいたい似たような結論にたどり着くのではないかと思ったのです。 水中考古学者として考古学資料や歴史資料を見てきた私には網野先生の唱えた論は斬新ではなく、あまりに同意できるためどうして新しい説を投げかけるような文章の書き方をしてるか理解できないところがあったのです。 逆に、この”海からの視点”を全く知らない人にはものすごく斬新な歴史の考え方に見えるそうです。 

網野先生の本は考古学、歴史学を使い、実は日本海民はかなり広域な範囲で活動をしていたのだと説いています。 中世の日本は、現在の日本人が考える”日本の領域”とは全く違う日本の領域を持っていました。 思うに、中央集権国家であった日本は北と南の端にいた人々の生活には興味が無く、彼らの生活は書きとめられることなくこの人々の歴史は忘れ去られました。 そして、彼らは海民には興味を持っていなかったようです。 しかし、日本の北と南に住んでいた人々こそ海民でした。 そして、現在、歴史学者が”中世の日本”を考えるとき、現在の日本の領域と中世の日本の領域が同じものだと考えて歴史資料を読むため、日本には海民はいなかったという考えが出来上がってしまうのです。 

網野先生の説は納得がいきますが、今ひとつ資料に足りないように思います。 それはなにかというと物質的証拠です。 この証拠を提供できるのが水中考古学であると思います。 国際交流が頻繁に行われていた地域を徹底的にサーヴェイをすれば中世の船、もしくは古代の船も発見されることでしょう。 そして、この資料をもとに日本の新しい歴史の解釈ができるのだと考えます。 網野先生の考えかたである”海は陸と陸をつなげるもの”であったことの証拠をしめす、それが水中考古学です。 おきにいりの一冊です。     

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