サーヴェイについてひとりごと

日本で水中考古学がなかなか発展しない理由の一つにサーヴェイをほとんど行っていないことが挙げられると思います。サーヴェイとは磁気探査、ソナーなどを使った沈没船を探すための調査です。これは、基本的には船の後ろ(もしくは横)などに探査装置を取り付け調査海域を行ったり来たりして、海底面の様子を調べることです。先週ぐらいに見たニュースで、たいしたニュースではなかったのでここでは紹介しなかったのですが、そのニュースによると、数日間、ワシントン州では嵐に見舞われていたそうです。その後、1960年に沈没したクルーズ船が姿を現したそうです。海底面や海岸線が動いたので沈没していた船が出てきた、とのこと。 このことに関してちょっと一言コメントしてみたいと思います。

このようなニュースは良く聞く話です。イスラエル沖やデルタが出来る場所などは海岸線がめまぐるしく変わります。その都度、沈没船が発見されたり、また完全に砂に埋もれてしまったりします。水深が浅い場所は波の影響を受けやすいので沈没船などは埋もれたり埋まったりの繰り返しを行います。この状態では船の保存はあまり期待できません。有機物が保存されるには無酸素状態であることが最適です。深い場所で沈んだ船だといったん砂に埋もれれば安定して保存状態が良いことが分かっています。完全に砂に埋もれてしまえば保存はされますが、それを見つけるのは至難の業です。しかし、このような大きな嵐の後などには海岸線の変化により波の流れなどが変わり今まで見えなかった沈没船も見えることがあります。ただし、日本近海の場合、埋立地やドレッジ、海岸線の変化が激しいためどれだけの船が失われたのでしょうか?深海の場合はどうでしょうか?堆積率が低いのでカルゴなどが埋まらずに水底に突き出ていて発見されることが多いです。木材は残ってないですが、砂に埋もれた部分では残っています。

歴史、考古学資料をみるとほとんどの沈没した船は浅い場所です。特に、イギリスのロイド社などが船の記録をまとめ始めてからは面白い資料となっています。17-18世紀以降、80%以上の船が浅い場所や陸に近い場所で沈没しています。10%は遠洋、そして残りの10%は不明です。基本的にいったん海に出てしまえばほとんど沈没することがありません。浅瀬が船にとっての大敵。簡単に言うと次のことが言えます。

浅い場所に沈んだ船  大多数  保存状態は悪い  見つけにくい 
深海に沈んだ船   ごく少数  保存状態は良い  見つけやすい 

1月にニュースで紹介しましたが、海難事故の発生件数,昔は船の数が少なかったとしても安全性が低いとも考えられること、また、海外の資料な
から1年で日本近海で約500隻の船が沈没したと考えています。500隻のうちの10%、つまり1年で50隻は水深の深い場所にあります。大型船15m以上の船が一般的となった中世以降、1000年前から考えても1000x50隻の船が日本近海にあります。

地中海では2000件以上もの沈没船が発見されていますが、ほとんどが浅い場所で発見されています。そして、正確な数はわかりませんが、75%以上は偶然に漁師などにより発見されています。トルコで沈没船の調査が多いのはスポンジダイバーのおかげです。彼らがスポンジを取りに海に潜ったときに沈没船に遭遇します。見つけにくい浅瀬でもこれだけの船が見つかっています。深海にある船はほとんど誰も捜しに行かないため、発見される機会が少ないのです。深海のサーヴェイを行っているバラード博士は、イタリアとチュニジアの中間地点を調査した際、1回の調査で(2-3週間)で5-6隻の沈没船を探し当てました。深海は海底面の起伏が少ないため、何か物体があると特徴的に見えます。また、サイドスキャンソナーなども水深の深い場所では効率良く使えます。サーヴェイさえ行えば見つかるのは確実なことは誰の目で見てもはっきりしています。
では、どこを探せば良いのでしょう? 重要なトレードラインはもちろんですがいくつか考えるべきことがあります。それは、船が深海ではほとんど沈まないため深海でも船が沈みやすいところを当たることが考えられます。それはどのようなところでしょう?

トルコにヤシアダという遺跡がありますが、ここでは4世紀、6世紀、16世紀の船などまとまって発見されています。特に4世紀と6世紀の船は重なり合うように発見されました。ヤシアダというのは平たい島というトルコ語から来ています。回りの海は水深が30mあるのに、ここだけ針のように突き出て浅瀬になっています。そして、島が平らなので視界が悪いと島が見えにくくなり浅瀬に乗り上げてしまう。そのため、この場所には沈没船が幾つもまとまって発見されています。また、天候が変わりやすい場所や海流の変化が激しいところも船が沈みやすい場所です。もちろん島と島の間など航路が狭い場所には沈没船が多いことはいうまでもありません。このような場所を中心にサーヴェイをおこなえば沈没船の発見につながるのでしょう。

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