遺跡

海洋環境と水中遺跡

2016年3月に、とある記事を書きました。

水中考古学の「範囲」…オイルと環境アセス

という内容でしたが、メキシコ湾の原油流出事故により海洋生物への影響のほか、歴史的沈没船などにも悪影響をおよぼしているという内容です。特に、沈没船は、海洋生物の住みかとなり、生物学者なども研究対象としています。2016年の時点では、原油流出事故が沈没船とそこに住む生物たちへの影響について研究を行っているという内容でしたが、今回は、その研究成果が科学雑誌「ネイチャー」で発表されました!というお知らせです。

日本語のニュース記事

論文(English)!

原油流出事故のあった周辺の沈没船にいくつか重点を当ててモニタリングなどをおこなった結果を示しています。考古学者と生物学者が共に目的意識を持って調査したことは、意義のある研究だと思います。水中にある文化遺産の位置の把握だけでなく、そこに住む生物や環境に配慮し、また、開発やそのリスクなど、様々な問題を総合的に見る必要があります。そもそも、これらの遺跡は開発に伴う事前調査によって発見されたものです。

水中文化遺産のマネージメントが数人の専門家によるものではなく、国として取り組んでいく対象として捉えることが出来るかと思います。

水中考古学50年

今年、2010年は水中考古学が誕生して50年の節目の年となっています。いつからが水中考古学の始まりかと聞かれると、人によっては違う意見もありますが、一般的にジョージ・バス先生によるケープ・ゲラドニアでの発掘だといわれています。ケープ・ゲラドニアで始めて考古学者自らが潜って、陸上とまったく同じ(もしくはそれ以上の)正確なスタンダートで沈没船を発掘・記録したことに紀元があるとされています。今年は、その発掘から50年目にあたります。

これを記念して、夏にケープ・ゲラドニアで再び発掘が行われました。当時は沈没船すべてを発掘できなかったので多少残っていた部分などもあったようです。50年前に発掘に携わったジョージ・バス先生も実際に水中に潜り遺跡をその目で再確認しました。また、当時のメンバーのうちまだ潜れる数名が遺跡を訪れています。著名な画家のヘンリー・マチスの孫であるクロードさんも50年前とそして今回も海に潜っています。当時のメンバーは陸の上ではもうすっかりおじいちゃんですが、水に入ると若い人顔負けの凄腕ベテランダイバーに返信します…

ナショナル・ジオグラフィク社がケープ・ゲラドニアの記事を書いていますので、リンク先をご覧ください。当時の写真の今年の写真があります。

これから50年先はいったいどんな水中考古学が発達するのでしょうか?これからはアジアや日本にも期待がされています。ちなみに、ケープ・ゲラドニア遺跡を始め、世界のほとんどの水中遺跡を発見したのは考古学者ではなく漁業関係者やファンダイバー達です。水中遺跡かな?と思ったら触らずに専門家に連絡を取りましょう。水中では陸に比べて保存状態が驚くほど良いことがあるので、昨日沈没したように見える舟でも何百年も前に沈んだ船である可能性もあります。水中文化遺産は人類共通の遺産であることを認識し、ダイバーと考古学者など協力して文化遺産の保護に取り組んでいきましょう。