水中考古学遺跡ー初の国指定!

長島県鷹島の海底遺跡が水中遺跡としては日本で始めて国指定の遺跡に指定されました!30年以上も前から調査が進められ「やっと」たどりついたということでしょうか?

元寇終焉の地として知られる鷹島でモンゴル海軍(主に中国船)の積荷や船体の一部などが発見されてきました。いろいろな調査チームや先生方が関わってきた遺跡です。特にアジア水中考古学研究所が長い間調査に関わってきました。もちろん、私も鷹島にしばらく住んで調査をしたこともありました。今を思うととても懐かしいです。

ちなみに、現在、この鷹島海底遺跡の遺物が東京海洋大学で展示中です。2月末にはシンポジウムも行う予定です。 http://www.ariua.org/news/news20120129/

いくつかニュース記事などをまとめたので下にリンクを紹介しておきます。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagasaki/news/20120217-OYT8T01272.htm

http://blog.canpan.info/archaeology/archive/220

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/287727

http://blog.canpan.info/ariua/archive/568

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/287683

ちなみに、この鷹島海底遺跡は昔から世界では有名で頻繁に雑誌の記事やテレビなどの取材がありました。何年か前には世界の水中考古学発見ベスト10にも入っておりました。http://www.archaeology.org/0301/etc/kamikaze.html

やっと日本でも有名になった日本の水中遺跡ということになりますね。

水中遺跡は実はそれほど珍しいものではないのです。本当はどこにでもある存在なのです。これは、例えばアルバニア沿岸だけでも数週間の調査で百件近い水中遺跡が発見されていますし、アメリカのメキシコ湾の油田のパイプライン施設に伴う事前調査などですでに2千件以上もの遺跡が発見されていることをみれば明らかです。GPSなどが発達した今日でも船の座礁や沈没事故が頻繁におこっています。木造船の時代は今より海難事故多かったことでしょう。日本の歴史から海を切り離して語ることはできないことは明らかです。どこの海にでも沈没船はまだたくさん埋まっています。しかし、護岸工事などで壊されていることも多いのは事実です。海の上に作られた構造物は良く見かけますが、その下には今回の鷹島の遺跡よりももっと歴史的価値が高く保存状況の良い遺跡があった可能性も充分にあります。(逆に言いますと、鷹島遺跡の保存状況は世界の水中遺跡に比べ決して良いものではありません、ただし、歴史的背景が重要であることが評価されています)世界、そして、日本にはまだまだ保存状況が良い水中遺跡がたくさんあります。海に面した市町村どこでも水中遺跡が発見される可能性はまだまだ充分にあります。

日本では馴染みが薄いようですが、世界では水中考古学は意外とメジャーです。カナダなどは国立公園に水中遺跡がありますし、アメリカなども同じように国が中心となり水中遺跡のマネージメントを行っています。しかし日本はまだまだですが、この国指定が大きなステップになることは間違いないでしょう。日本以外で海に面した国で水中文化遺産保護がない国はほとんどありません。中国などは国家戦略の一環としてスリランカやケニアなどと合同で水中遺跡調査を行っていますし、韓国も国が水中遺跡の発掘に大きな力を入れています。東南アジアでも法の整備が進んでいます。日本の場合、この次の段階としては法の整備となるでしょう。今まで水中遺跡が発見されていなかったことの原因は、海上に建築物を作る際に事前調査が義務として課せられていなかったことにあります。世界ですでに数万件確認されている水中遺跡のほとんどが工事に先立つ事前調査や一般の人が偶然に発見したものです。法律の整備が進めば鷹島海底遺跡のようなすばらしい発見が日本各地でなされるでしょう。

日本の水中考古学の今後の更なる進歩に期待です。世界から見ればまだまだ遅れを取っていますが、充分世界に追いつける発見・研究をこれから重ねていけることでしょう。世界の動きをみて、今回の国指定を受け、日本らしい水中考古を築いていく礎としていただきたいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

トップに戻る