水中考古学者であること

以前、水中考古学とはどのような学問であるかを、海事考古学、船の考古学との比較を通じて考えてみました。今回は、オーストラリア海事考古学研究所(AIMA =Australian Institute of Maritime Archaeology) が提示する倫理規定(Code of Ethics)を参考にして、実際に学問を実践する水中考古学者とはどのような人達であるかを考えてみます。

いわゆるトレジャーハンターと呼ばれる人達と水中考古学者の間では、どのような違いがあるのでしょうか? 水中考古学者とはどのような人達を指すのか、そこでは色々な解釈が考えられ、定義することに難しいのは間違いありません。しかしながら、水中考古学とはどのような学問であるかを考える上で、それを明らかにすることは非常に重要です。

何よりもまず水中考古学に携わる人達を水中考古学者と考えることができます。オーストラリアでフリンダース大学、ジェームズ・クック大学、西オーストラリア大学(2005年末開講予定)といった研究機関が大学院レベルで水中考古学のプログラムを提供し、国内の水中考古学者が学生の指導に当たっています。また、オーストラリアでは、連邦法と各州の州法により沈船等の水中文化財を保護することが義務付けられていることから、水中考古学者とは、この法律の下で、水中文化財の研究・保護・管理に携わる人達を指すとも考えられます。一方で、各州では西オーストラリア州の様に、博物館が法律の実施を委任されているケースもあれば、タスマニア州のように州政府が専門の部署を設けている場合もあり、水中考古学者がどの機関に属しているかは州ごとに違いがあります。このように水中考古学の関連機関に所属するかたちで水中考古学者が存在します。

オーストラリア海事考古学研究所(AIMA)はその倫理規定(Code of Ethics)のなかで、明確に水中考古者の定義を提示しています。倫理規定によると、「海事考古学者とは、海事考古学もしくは海事考古学に関連する他の考古学分野における、大学院学位・業績を持つ者。あるいは州政府・連邦政府から海事考古学者として承認を得た上で、オーストラリア国内・領域内の遺跡を特定、評価、論評、研究することにおいて、海事考古学の理論・方法論・実践を適用する経験を最低2年半、専任として有する者」とあります。海事考古学者と呼ばれる人達すべてに、この定義が厳密に適用されるかどうかは別として、この倫理規定は一定の指針を示している点で意義があるとおもいます。倫理規定の中では、さらに海事考古学者の社会、同じ分野の研究者、仕事上の関係者に対する責任と研究を行う上での行動倫理が定められています。

トレジャーハンターと水中考古学者の一線を分けているのはこの行動倫理にあることは間違いありません。両者が法律を遵守することは当然のことですが、水中考古学者は倫理規定を守ることで、水中考古学の実践者として自らを定義できると考えられます。

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