B29の引き揚げについて…

数日後には、ちょっと詳しいアップデートを書きたいと思ってますが、とりあえずお知らせとして。

 

アメリカ空軍のB29の一部が木更津に沖から引き揚げられました。漁師さんの網にひっかかったので引き揚げたそうです。民間の方のご厚意により緊急的な保存が試みられたようですが、市がパーツを引き取り保管しているとのこと。「市は漂流物や沈没品の取り扱いを定めた水難救護法に基づき」保管としています。

だらだらと書いていますが、特に政府関係者の方が知っておくべきことです。

 

 

この騒動(?)いくつか問題があります。

1.遺物の所有権について

アメリカ空軍は1961年よりも前の軍用機に関しては、所有権は無効になるとしています。そのため、今回は所有権に関しては「問題なし」です。

2.遺族への配慮は?

遺族はどう思っているのでしょうか?アメリカには活発(?)な遺族会(POWMIA)がありますので、コンタクトをして、どう取り扱うべきか談する必要があります。それには、このパーツがどの機体のものであるか、を調べる必要があります。そのためには、このパーツが発見された場所の周辺の調査を実施することでしょう。また、引き揚げたパーツに機体番号が残されている可能性があります。それを調べることが先決です。

 

3.考古学的価値は?

考古学的な価値は?これが難しい。地域にとってB29がどれだけ重要か…。また、所有権はすでに破棄されているものの、アメリカ国民が歴史的に重要であるかと考え、残すべきである!と思っているかが重要となります。ユネスコによると、100年よりも古いものは、自動的に文化遺産としてみなされます。戦時中の遺跡ですから、まだ100年たっていません。遺族会との絡みもあります。例え話として、乗っていたパイロットが後に大統領になっていた…ことが分かった場合、歴史的に重要だと考える人もいるでしょう。現実の例で言えば、『星の王子様』の著者サン=テグジュペリが乗っていた飛行機が発見され話題となりました。もしくは、女性として単独で大西洋横断飛行を成し遂げたアメリア・イアハートの飛行機も文化・歴史的価値が高いでしょう。(まだ発見されていません!)

 

引き揚げるべきだったか…

さて、どうでしょう。正体がわからないものが海底にある場合、引き揚げずに確認作業をするべきでしょう。

 

というのも、アメリカ空軍は所有権を破棄していますが、アメリカ海軍は時代や場所に関わらずすべて所有権が継続しているものとみなしています。自国の海軍の歴史価値のある遺物は、無断で現状を変更することを禁止しています。

つまり、これが航空機ではなく、アメリカ海軍の船の一部だった場合、アメリカ海軍は「それなりの処置」を取る可能性があります。また、ロシア、スペインなど多くの国も同様な考えを持っています。

 

知らずに引き揚げたら大問題となります。引き揚げてしまった…で済む可能性もありますが、引き揚げた後に放置し、保存・保管環境が悪く劣化した場合、責任問題が問われます。場合によっては裁判に発展する可能性も十分あります。乾燥する前に、海に戻す(港の中で水に浸けておく)などの対処が必要かもしれません。

水中文化遺産の保護は世界の常識

水中の未確認のモノは引き揚げない

行政の担当部署に連絡を取る

専門家による調査を実施する

 

現在、国として水中文化遺産をどのように扱うか、ガイドラインが曖昧であり、市町村でも困惑・混乱があるかと思います。「海洋法に関する国際連合条約」や国際慣習、また、世界の多くの国で水中文化遺産保護のスタンダートとなっているICOMOS憲章、そろそろ70か国が批准となりそうなユネスコ水中文化遺産保護条約などもあります。

 

 

他国の水中文化遺産を発見した場合の対処方法は、

  「報告」、

  「状況の確認」、

  「劣化を防ぐための処置」、

                 です。

 

 

 

他国から非難を受けるのは内閣・政府です。発見される可能性に対して十分な対策や国民に対して説明をしてこなかった責任があります。

自治体の関係者や発見者には責任がありません。国際社会の一員としての国(内閣府など)の責任です。

識字率70%、海岸線の長さ100km未満の国でも水中文化遺産の保護を義務教育で教えています。内閣の方々には、参考となる国(例えば、アフリカで言えば、セネガル、トーゴ、ナミビア、マダガスカル、ケニアなどの事例)をしっかりと見習ってもらいたいものです。

参考にまで、

こちらのアメリカ政府の文章(の抜粋)に日本政府の見解が公表されています。https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2004-02-05/html/04-2488.htm

 

Japan: “According to international law, sunken State vessels, such as warships and vessels on government service, regardless of location or of the time elapsed remain the property of the State owning them at the time of their sinking unless it explicitly and formally relinquishes its ownership. Such sunken vessels should be respected as maritime graves. They should not be salvaged without the express consent of the Japanese Government.” Source: Communication from the Government of Japan, September 13, 2003.

 

簡単に言うと、日本政府は「他国にあっても旧日本軍の所有していた軍用機などは、所有権が日本にある」としています。自国の所有権を相手に主張しながら、他国が所有権を主張しているものを蔑ろにすることはできません。

 

特に、考古学的な価値観だけでなく所有権に関わる問題です。発見していながら報告を怠る、劣化する状況にさらす(放置する)など、他国の文化遺産の破壊だけでなく所有物の破壊になります。

引用元:https://www.tokyo-np.co.jp/article/76287

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