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海事・水中考古学を学べる大学

海事・水中考古学を学べる大学のリストをユネスコが作成しています。

これらは、現在、大学(マスターレベル)でのプログラムが確立している大学の紹介ですので、例えば昔プログラムがあった大学や、水中考古学のクラスはあるけどプログラムがない大学は含まれていないようです。水中考古学のクラスがある大学はそれなりに(海外では)あるようです。

大学の数が多いのか少ないのか…まあ、人によって感じ方は違うでしょうか...ざっと眺めて、やはりヨーロッパはこの学問が一般的だなと感じることです。地域によってだいぶ差がありますね。

個人的には、これから10年、このリストがどのように変化するのかが楽しみです。

 

水中考古学を学びたいのですが...

「水中考古学を学びたいのですが...」から始まる質問は良く聞きます。必ず、「が」や「だけれども」などの言葉がついてくる質問です。どこから始めれば良いのか分からない、難しそう、将来仕事がなさそう、日本で出来ないけど英語ができないから海外行けない、などなど。たぶん、2つのタイプ(道筋)に分けることが出来ると思います。ひとつは、考古学など歴史はあまり勉強したことがないけど、関わりたい人が最初のタイプ。二つ目のタイプは、歴史・考古学を勉強してきて、そのまま水中にも興味があるが、自分に出来るか心配というタイプです。

この質問について、個人的な見解を示したいと思います。最初に、水中考古学とは本来とても学際的な学問であるということを理解することと、そして、水中考古学という定義は曖昧で、本当は「考古学」にしかすぎないことです。

最初に、タイプ1について。このタイプの人の道は基本的に簡単にお答えできます...水中考古学の調査は一見すると、実に大変そうです。事前調査のサーヴェイなどはソナーや時期探査機などを使ったり、水中ロボットも使い、海洋学やマリンエンジニアさながらです。そして、発掘になると潜って発掘して、力仕事ですね。さらには、保存処理。化学薬品などをつかって処理するさまはサイエンティスト。もちろん、遺物の分析などは考古学・歴史が大切。こう見ると、誰が見てもものすごく大変な学問としか見えません。しかし、これらは、どれもその分野の専門家と協力して行っています。つまり、水中考古学の成果のために、別の分野の人が時には雇われたり、協力して作業を行っています。つまり、様々な分野の人があるひとつの目標(水中文化遺産を保護・活用)することに協力をしています。

つまり、逆を言えば様々な分野に進んでも、「水中考古学」に関わることが出来るわけです。水中の文化遺産にロマンを感じれば、自分の好きな分野を伸ばしながら、それをどのように活かせるかを考え、協力することが出来るわけです。「水中考古学者の必要条件」というものはありません。あえて言えば、水中にも遺跡があることを理解して保護・活用していきたいと思う心、ではないでしょうか?

つまり、歴史が得意でなくても、泳げなくても、化学などが苦手、でも関係ないということです。水中の文化遺産を守るという意思があれば、あとは自分のできることで協力することが出来ます。新しいことはそれほど学ななくても、自分の経験を活かすことを考えるのが先決でしょう。また、水中考古学だけで生活をすることなど考えなくてもよいでしょう。他の自分の専門で生活をしながら、協力できるときに協力することが出来ます。たとえば、化学などが好きなら、普通に遺物の保存処理を学べば良いわけです。そのなかで、水中の遺物の対処法を考えて、協力することが出来ます。水中に特化することはないはずです。また、海洋学でも同じです。自分の分野でしっかりと学び、学んだ知識をどのように活かせるか考えてみてください。

実は、このような関わりを持ってくれる人が重要なのです。一見すると、部外者のように受け止められがちですが、それぞれ別の専門の道を極めた人に協力を得、調査をすることには大きな意義があります。

次に、「考古学・歴史好き」のタイプ2ですが...これも基本的にはタイプ1と同じです。最初に考古学の基礎をしっかりと学ぶ必要があります。その上で、水中調査に必要なことはタイプ1の専門家としっかりと対話できるだけの知識を付け足せば良いだけです。例えば、サーヴェイについては、ソナーや磁気探査などの基本が分かっていれば充分で、どのように考古学に応用できるかを勉強すれば良いわけです。そして、タイプ1の専門家と協議をし、有効な調査方法を見出していく方法をとります。保存処理なども、同じく、難しい知識や実践・実績ではなく、応用力が必要となります。しかし、重要なのは、考古学的な見方です。これらの専門家と協力して得られたデータを元に、研究の成果をだすのは、タイプ2を選んだ人の責任です。これは、まさに考古学的モノの見方です。水中考古学の父と呼ばれるジョージ・バス先生も口癖のように言っていた事に、「考古学者をダイバーに訓練することは比較的簡単だが、ダイバーを考古学者として育てるのは時間を要する」と。

つまり、水中考古学で「陸の考古学者」が見て難しいと思うことは、実は簡単に修得できることであって、それほど重要ではない。実は、もっと重要なのは、「考古学者としての素質」であると。いくらダイビングや他の技術を学んでも、考古学的素質や観察力などがなければ、技術も意味を持ちません。しっかりと学者として学ぶことが先決となります。実際に、資料などの分析などの時間を考えると、1日の発掘で得られた情報(1-2時間の作業)は数か月分のデスクワークに匹敵します。「水中考古学者」の仕事の時間的割合を考えると、実際に水中での作業は全体の1%にも満たないのかもしれません。爪先の技術ではなく、学問の体の幹の部分である考古学が最重要となります。水中であろうと、どこであろうと、考古学は考古学ですので、それをしっかりと学ぶこと。遺物や遺跡の見方・分析方法を学ぶことになります。

こう考えると、どこの大学に行けば良いとか、理系が苦手、留学はしたくない、将来仕事がない、などの問題は解決すると思います。考古学を学べば、考古学者として生活をしていくことができます。地中海などの歴史に興味があれば、留学も考える必要もあるかもしれませんが、例えば、日本の考古学を学びたいのであれば、留学する必要などあるのでしょうか?どこの大学でも、しっかりと歴史・考古学を学んでおけば必要な知識は得られます。モノの見方やセオリーなどドンドン学んでいきましょう。別に、水中の考古学がないから...と考える必要はありません。基本は全く変わりません。

さて、最後に...

今、水中考古学を勉強したい!と考えている人はじっくりと自分はどっちのタイプか考えてみてください。タイプ2の人は、この幹の部分が出来上がれば、それに付け足してフィールドワークに応用できます。そして、自分では分からない部分はタイプ2の人と協力します。タイプ1の人は自分の専門性を高めながら、どのようにタイプ2に人(考古学者)と協力できるか考えます。どちらのタイプも水中考古学の発展には必要です。自分の得意・不得意は誰にでもあります。抽象度を高く持ち、小さな概念にとらわれることなく、全体を見渡して、自分がどのように学んでこの分野に貢献できるか、考えてみてください。上にも書きましたが、それぞれが共通する点は、学んできたことではなく、「水中の文化遺産を保護・活用すること」です。この考えに賛同できる人は、水中考古学に関わりを持つことが出来る人であると思います。


自分で答えが分からない人はご相談にお答えしますので、お気軽に質問してください!

東京海洋大学

今まで日本国内で水中・海洋考古学を学べる機関は存在していませんでしたが、2009年度から東京海洋大学で正式に学ぶことが出来るようになりました!

日本国内の今後の学問の発達に向け大きく前進したこととなります。まだ小さなプログラムですが、海外から積極的に研究などを受け入れ、海洋考古学の発達に貢献していきます。FAQのコーナーでも紹介しています。水中考古学の修士号(名目的には博士号も)がとれることになり、今後、拡大を目指しているそうです。さらには、日本で修士号をとってから、博士課程をTexas A&M大学のような国外で続けるというコースも検討されています。

シラバスの内容は下記をご覧下さい。

海洋考古学とは考古学の一部門であるが、海洋学やそれ以外の自然科学の理論や方法論がその分析に援用される学際的な学問分野でもある。海洋考古学の基礎講座として位置づけられる本講義の第一の目的は、当該学問の理論的側面の検討と実際の水中考古学調査の際に表出する具体的な諸問題の検証である。そのために、まずヨーロッパ諸国やアメリカにおいて蓄積され、実践されてきている海洋考古学あるいは海事考古学の諸理論と諸調査事例の吟味を実施し、日本の水中考古学研究との現状比較分析につなげていく。その中で、海洋考古学調査の対象、水中文化財の発掘や具体的な応用手段、その歴史的な分析や解釈、文化財保全や復元の技術、社会への公開などの諸課題に対する取り組みについても検討を加えていく。次に、海洋学や海洋人類学などが研究対象としている人類の海洋における活動をさらに具体的かつ実際的に理解するために、この海洋考古学という学問にどのような貢献が可能であるのか、水中文化財の発掘・分析が今日いかなる意味を持つのかという総合的課題についても、ユネスコの「水中文化財保護条約」などの脈略の中で分析を行っていく。講義の参考文献としては、G. P. Bass著『Beneath the Seven Seas: Adventures with the Institute of Nautical Archaeology』 London: Thames & Hudson(2005)とJ. P. Delgado編『Encyclopedia of Underwater & Maritime Archaeology』New Haven: Yale University Press(1997)を使用予定である。

Journal of Maritime Archaeologyの最新号は海事考古学を大学でどう教えるかを議論

Springerから出版されているJournal of Maritime ArchaeologyのVol.3、Issue.2は「海事考古学における教育とトレーニングについて」の特集です。NASの新しいトレーニング教本を含めて、ここ最近では海事考古学で何を、どのように教えていくのかということに関して、改めて見直しが行われているようです。