都市の下に眠る沈没船

さて、上の写真について。
左はサンフランシスコの発掘調査で明らかになった船の遺跡を示しています。サンフランシスコはちょうどゴールドラッシュの時に、港を拡張する際、土砂などと一緒にゴミ、そして船もそのまま残して埋め立てています。そのため、今でも街を掘れば船が出てきます。昔は海、今は埋め立て地。そのような場所には実は掘り下げると貴重な遺跡がみつかることもあるようです。これらの遺跡は、埋め立て地の再開発の時に、当時(主に19世紀~20世紀初め)の埋め立てした層よりも掘り下げて発見されています。

 

右の写真。日本の某所の遺跡地図になります。遺跡は赤で示しています。昔海だった場所には埋め立て地が作られていますね。昔の陸地のラインまで遺跡があるのがわかります。さて、本当に昔海だった場所、埋め立て地の下には遺跡が全くないのでしょうか?日本の場合、埋め立て地や昔海だった場所は、周知の遺跡範囲がありません。そのため、調査をおこなう法的根拠がありません。
法的根拠がなくても遺跡はある…
「水中考古学者」という名前で呼ばれることが多いですが、私の専門は船舶や海事文化。海事考古学者なんです。そのため、船は重要な研究テーマです。山の上だろうと、埋め立て地の下であろうと、船が発見されれば調査します。海事文化・船は、歴史の勉強の上では、貴重で重要な研究材料です。
それを踏まえて、ここ数日のいくつか気になるニュース…

 

カタールのアルジャジーラからのニュース

中東のニュースですが、スペインが進めている海難記録のデータベース事業について。自国の水中文化遺産を守るため、文献資料などから沈没記録を集めています。ユネスコ水中文化遺産締約国や水中文化遺産の保護に協力的な国を中心に、スペイン船の所在地を調べています。主に大西洋を中心に、700件の記録があるようです(1492年から19世紀末まで)。記録に残らなかった船もあるでしょうが、概要を掴むには十分ですね。
これらの記録を調べると、9割は天候・荒らしなどによる事故のようです。戦争・海賊による被害は、数字の上ではほとんど気になるほどないようです。さて、沈没地点ですが、ほとんどが岸のそば…

 

“Ships are a little like aeroplanes,” said Leon. “They usually crash on take-off or landing. In this case, the vessels sank in shallow waters near ports, or as captains were trying to shelter from storms by bringing their crafts into ports.”

 

飛行機事故のほとんどが離着陸時であるように、船もほとんど変わらないようです。嵐など天候が悪化すると、風を避けるために山の陰などに入ったときに座礁、また、港から出入りする際にも起こるようです。
また、事故が起こるのは決まった場所のようです。一つの湾内に、多い時には18隻の海難事故の記録があるケースも

https://www.aljazeera.com/news/2019/12/deep-water-meeting-spain-sunken-treasure-hunter-191211215215376.html

 

沈没船は、岸に近い場所、また、湾内など人が多い場所に多いようです。遺跡を探すには、海岸線のそば、歴史ある湾内が最適のようですね。また、湾内などはシルトの堆積が多いため、船が沈没すると埋もれて有機物などが良く残ります。特殊なケースとして、ヴァーサ号などもありますが…

 

17世紀の軍艦ヴァーサ号=ストックホルム湾で発見。船体がほぼ完全な形で残ってました。

 

 

ストックホルム繋がりで、最新のニュース

ストックホルムの都市の下から、16世紀の商船が発見されたようで…30m程の比較的な大きな船です。船体の残りも非常に良いそうです。

https://sputniknews.com/society/201912191077624785-30-metre-16th-century-shipwreck-found-in-the-middle-of-stockholm/?fbclid=IwAR22EllYQCb5jqSZ0rs9Bl43wE6HBFowoXH277zY2HfYPb70JCnztk8aH9U

 

埋め立て地の下から沈没船や船などが出てくることは、実は頻繁にあります。

 

イスタンブールの沈没船

ヤェニカピ沈没船たち…イスタンブールの地下鉄駅工事の際にたくさんの船が発見されました。今は工事なども済んでいますが、どんどん船が出てきて大変だったようです。

 

”archaeologists also uncovered 37 exceptionally well preserved shipwrecks of 5th- to late 10th- or early 11th-century AD date”.

 

5~11世紀の沈没船が37隻発見されたそうです。

 

ニューヨークでも!

はい、ここでも埋め立て地のしたから船が発見されています。再開発の時でもしっかりと調査しているようです。独立戦争のころの船かと考えられています。商業の街ですから、大陸からたくさんの船が来たようです。
さて、問題。ニューヨークのどこで発見されたのでしょうか?

 

はい、正解はワールドトレードセンターの地下です。9.11のテロ事件で破壊されたビルの解体工事中に発見されました。もう20年ほど前の事件なんですね。時がたつのは早い...昔、ニューヨークに行ったことがある人は、ちょうどこの船の上に立っていた可能性もありますね。

 

https://www.nationalgeographic.com/news/2014/7/140731-world-trade-center-ship-tree-rings-science-archaeology/

 

さて、最初のサンフランシスコに戻りましょう…

サンフランシスコは、ちょっと特殊な事情があってたくさんの船が埋め立てられていますので、他の都市は、これほど船が地下に埋もれている可能性は少ないようです...極端な例として。

 

ゴールドラッシュ時は、町がどんどん拡張していきます。どんどん次の船が来る。古い船は、通常は解体したり使えるパーツを外して破棄するのですが、お金がジャンジャン沸いてくるため港の拡張が先決。そこで、ちょっと古い船は埋め立て地のゴミや土砂と一緒に埋められていきます。(その前に船が陸に挙げられて倉庫として使われるケースもあったそうです)。

https://www.nationalgeographic.com/news/2017/05/map-ships-buried-san-francisco/

ほんの数例ですが、埋め立て地の下から見つかった船たちを紹介しました。また、文献史料からでも湾内に多くの遺跡が残されていることがわかります。海岸のそばには、遺跡があります。埋め立て地の下にもあったでしょう。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です