生放送で言えなかったこと…

先日、アベマTVプライムで生放送出演しました。

アベマTV https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p1601

その後、内容のまとめたものがヤフーニュースに出ています。

内容は、放送を見ていただいたり、ニュースを読んでいただければと思っていますが、言いたかったこと、言えなかったことをここでは紹介しようと思います。長い文章になりますが、お付き合いください…

 

言いたいこと・知ってもらいたいこと概要

世界には数百万の水中遺跡があり、日本の周りにも数万件はありましたが、今、多くの遺跡が破壊の危機に直面しています。世界の水中遺跡の9割は、漁業関係者・工事関係者・海とかかわる人たちによって発見されています。つまり、水中遺跡の保護で最も重要な役割を担っているのが、考古学者ではない人達です。

 

実は、私は個人的には「水中遺跡」という言葉は嫌いです。なぜなら、水中であろうが陸であろうが、遺跡は遺跡であり法的根拠による保護が必要です。現在の日本では、水中にある遺跡はほとんど保護を受けていません。世界各地で水中の遺跡も保護する必要から様々な取り組みが行われています。開発に際して遺跡を発見して周知・保護していく取り組みを強化していく必要があります。

 

埋め立てなど護岸工事、漁業などにより、多くの遺跡が失われています。日本近海では数千~数万の遺跡がすでに消滅した可能性もあります。重さにすると数万トンの文化遺産が失われています。様々な事情により、すべての遺跡を守ることはできません。しかし、できるだけ多くの遺跡を守っていきたいと考えています。日本の「海と人の関係の歴史」が失われる前に、できるだけ多くの遺跡の記録を残し、次の世代に伝えていくことが私の使命だと考えています。

 

より多くの方に水中遺跡の存在を知ってもらいたい…それだけです。そして、少しでも遺跡保護の体制が整備され研究する環境が変わって欲しい…

 

以下は、ちょっとした解説です。TVを見ていただいたり、ニュース記事を読んでいただき、さらに興味があれば読んでいただければ幸いです。

水中遺跡の魅力

水中遺跡の魅力は、環境さえ整えば、陸では見ることのできない驚くほど保存状況が良いこと。当時の状況をそのままパックしている。そして、船に関しては、やはり、知られざる交易のメカニズムについて教えてくれることにあります。陸の遺跡は生産地と消費地に限られることが多く、また、いくつかの時代が重なって発見されます。水中遺跡は、交易の途中、その瞬間をそのまま残しています。まさに今にも動き出すかのような遺跡です。

 

研究者の数

日本では水中の遺跡の調査を行っている人は数名います。多くの研究者は、他の研究を行いながら水中遺跡の調査に関わっています。大学で研究を行っている先生方もいます。東京海洋大学、東海大学、琉球大学、九州大学等。また、沖縄県、静岡県、大阪府など行政の職員でありながら研究を行っている方々もいます。また、沖縄県では水中遺跡の分布調査などしっかりと把握が進んでいます。これらの研究は、世界的にもトップレベルの評価を得ており、海外の水中考古学関連の専門・学術ジャーナルなどでも出版されています。海外で活躍している日本の研究者もいます。研究者の数がゼロになるというのは、あくまで「行政のなかでそれを専門の業務として扱っている人」、のことです。

それでも、やはり諸外国に比べて研究者の数が少ないことは否めません。韓国では国立の専門機関・博物館が2館あります。中国では、国のセンターと地方行政の分担により成果を挙げており、中国全土で水中考古学に携わる研究者は80人程いるそうです。フィリピンではマニラの国立博物館が中心的な役割を果たしています。つい先日、新たに数名の水中遺跡の調査経験を有する職員の募集を始めました…。タイ、インドネシア、スリランカ、台湾でも専門の機関があります。

 

本当に国は何もやっていないのか?

文化庁も水中遺跡の調査を行う必要性を痛感し、様々な事業を実施しています。水中遺跡調査検討委員会を設立し、日本に相応しい水中遺跡保護体制の整備を検討してきました。その結果、陸の遺跡と同じように地方公共団体が中心となり遺跡を保護していくことを目指すとしています。『水中遺跡保護の在りかた』を作成し、地方公共団体にガイドラインを示しています。現在は、行政の担当官が使いやすい『水中遺跡調査のてびき』、いわゆる調査マニュアルの作成を進めています。

日本の遺跡保護は、地公共団体が遺跡の場所をしっかりと把握して、周知の遺跡として登録することが前提となります。周知の遺跡の周辺では、開発に際して遺跡の調査が行われますが、この費用を負担するのが開発を行なう業者です。いわゆる緊急発掘ですが、日本の発掘調査の9割は、このような調査です。

水中遺跡であっても、自治体により周知の遺跡として登録されていれば、開発の前に調査を行う義務が生じます。しかし、遺跡が「そこにある」ことを確認しておかないと、開発により破壊されてしまいます。陸の遺跡では、掘削など工事中に何か価値のあるものが出てくれば、工事を中断することもあります。しかし、この確認は主に「目視」に頼っているため、水中で掘削中に遺跡を目視確認する可能性は低いといえます。遺跡が有りそうな場合や広い範囲が開発される場合、工事の立ち合いや確認調査を実施することがあります。これらの作業は、開発会社と地方公共団体との間で協議が行われ、どのように開発を進めるか、遺跡をどのように守るかの調整が行われます。つまり、行政の担当者が水中遺跡のポテンシャルを理解していないと、水中遺跡の存在する可能性が高い場所でも工事にGOサインが出てしまいます。

分布調査を進めること、工事に際して何らかの対応を取ること、地方公共団体の職員にしっかりと水中遺跡の存在を知ってもらうことが必要です。文化庁は、まさにそれを喫緊の課題として捉えています。

時間はかかるとは思いますが、着実に地方行政の中にも水中遺跡に対する興味は芽生えています。文化庁の事業を進めていくことが日本の水中遺跡の保護にとって「なくてはならないこと」だと思います。

また、「目視」以外による確認方法もきちんと検討する必要があります。海の工事に際して、地質調査や音波探査を実施しています。その中で、不自然な反応が必ずあるはずです。しかし、工事会社などは、そのような不自然なモノがあっても、それがなんであるかを知る必要がありません。遺跡が有るという認識がないからです。工事前の海域の探査データを自治体に提供してもらうことも可能だと考えています。目で見ていなくても、データで海底を見ているわけですから、何かを「発見」したことには変わりません。遺跡の可能性のあるモノを発見した場合には報告の義務があります。文化財保護法では、「出土品」の発見とあるので…新たな解釈が必用かもしれません。

 

参考にまで、文化庁埋蔵文化

 

何が問題か?

1.圧倒的に周知の水中遺跡の数が少ないことが問題であり、周知の遺跡の数を増やす必要があります。しかし、その数を増やすシステムがありません。諸外国では、洋上風力発電など工事の計画段階で、工事会社の負担で事前に水中遺跡の有無を確認するアセスメントが行われます。日本でも漁業に関する調査や環境アセスメントが行われますが、遺跡に関するアセスメントは行われていません。

重要なのは、世界の水中遺跡のそのほとんどが事前調査・アセスメント、また、漁師やダイバーなどの情報をもとに発見されていることです。洋上風力発電など海洋開発は、水中遺跡数の莫大な増加に貢献しています。簡単に言うと、考古学者は水中遺跡を見つけるのが下手です。それ以外の人が、これ遺跡じゃないの?と言ってもらわないと見つけることが出来ません。民間レベルで水中遺跡について広く知ってもらう必要があります。

2.市町村・都道府県の海域が明確でない。領海の外は無法地帯。海の上は、市町村の境界が明確でない場所もあり、その場合、どこの市町村が調査を担当するのか決めることが出来ません。実際には協議により決める必要があるのですが、明確なガイドラインがないことが問題です。また、12海里よりも外だと、だれが担当するのでしょうか?誰のものでもない土地で考古学調査をする法的根拠がありません。

実は、日本の水中文化遺産は領海の外にこそ多く眠っています。戦争遺跡(沈んだ飛行機や船舶など)は、広く太平洋に分布しています。これらを遺跡と捉えるかには様々な意見がありますが、少なくともユネスコは100年を経過したものは文化遺産とみなします。すでにミクロネシアはユネスコの水中文化遺産保護法を批准しているので、ミクロネシアの領海内に存在する日本の戦争遺跡は、あと25年後には文化遺産として守る義務がミクロネシア政府に生じます。それに対し、日本政府はどのように対応するのでしょうか?政府が水中遺跡についてしっかりと国際的な視野を持つ必要があります。

 

仕事がなくなることについて…

私の仕事の任期がなくなることについて話題となっていましたが…博物館では任期付き雇用の期限が5年間と決まっています。これには例外はありません。ただし、文化庁の予算が無くなったわけではありません。もともと、存在しないはずの研究職を文化庁の予算から作り出した架空の職でした。問題は、そもそも水中文化遺産の専門職を国で雇う必要性を政府が感じていないことなのだと思っています。庁のレベルでは、必要性を理解していますが、省、その上には現状が理解されていません。

 

色々と書いていますが、一番言いたいことは…

日本の周りには数万の水中遺跡があったはずですが、その多くは開発などにより破壊されてしまっています。海洋開発が進むと、遺跡の破壊がさらに進みます。それを食い止める方法は、国がしっかっりと文化遺産が破壊されていることを理解すること、そして、多くの人にそれを知ってもらうことが必要です。

  ①水中遺跡を発見するのが、工事会社・漁業関係者など(考古学以外の人、一部行政担当者)

  ②その遺跡に価値を調査して価値を与えるのが考古学者 (考古学者、文化庁)

  ③遺跡の保護のガイドラインを決めるのが国 (政治家、大臣、大学の理事など)

②の方々は、水中遺跡の重要性を理解しています。水中遺跡の重要性を理解してもらいたいのは、①と③に含まれる方です。一般の方々に水中遺跡の存在を知ってもらうこと、そして、国が責任をもってその遺跡を守り、保護に関する指針を示すことが重要です。

 

引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200117-00010004-abema-soci&p=1

One Comment

  1. 先生すごいことを研究されていますね。これはちゃんと国が先導を切ってやっていかないといけないことだと私もこのことを聞いてそう思いました。
    私の子どもにも伝えたいと思います。
    世の中にはわかってないことがいっぱいありますことを勉強させてもらいました。

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