一番印象に残っている戦争遺跡

よく、一番好きな水中遺跡は何ですか?とか、調査した遺跡で一番印象に残っている遺跡は?聞かれます。

今日は、8月15日と言うこともあり、「戦争遺跡」に特化した場合でお答えします。

一番印象に残っている戦争遺跡は、「特殊潜航艇」です。アメリカの海洋大気庁(NOAA)が、2016年の12月ハワイ沖で水中ロボット調査を行なうので、日本人の専門家として参加してくださいと招待されました。招待と言っても、「オンライン参加」です。水中ロボットから送られてくる映像をインターネットで全世界にライブ配信していましたが、専門家同士はチャットや音声などで参加するというもの。調査は、潜航艇が撃沈された日付を合わせて実施されました。

ここで、太平洋戦争に詳しくない人でも、特殊潜航艇12月ハワイ沖、と3つのキーワードを聞けば…そう、「ワード号事件」を連想するのではないでしょうか?

 

特殊潜航艇(水中ロボットからの画像)

 

真珠湾攻撃が始まる前、ハワイ周辺をパトロールしていたワード号が得体のしれない潜水艦のようなモノを発見します。発砲をし、どうやら命中したようですが、直ぐに沈んだようなので、確認はできなかったようです。

ワード号が攻撃したときは、太平洋戦争は真珠湾が攻撃される前です。

攻撃に向かう途中で発見され撃沈。太平洋戦争でアメリカ側が最初に打った一発で沈没したとも考えられます。真珠湾攻撃は飛行機だけでなく、小型の特殊潜航艇も参加していたことは、後にわかります。

 

ライブ映像配信の様子。自宅のパソコンから参加。

太平洋戦争最初の一弾の痕跡を確認。

 

そのような潜航艇ですが、コチラ...画面中央に小さな穴がみえますか?これが、ワード号による砲撃の跡、潜航艇を沈める原因となった、最初の一撃の跡です。

場所はソナーなどで特定されていたのですが、水中ロボットによる映像は、このライブ配信が初めてでした。ソナーからも潜航艇の残りは比較的よいだろうとわかっていましたが、それでも驚くほど良く残されていました。また、小さな一撃の跡までハッキリと残っているのは、驚きでした。

遺族の方、戦争という悲劇がもたらした影響など、様々な感情や意見があるとは思いますが、この調査は、戦争遺跡を考え売上でひとつの象徴的な存在であるのは間違いないでしょう。

ジリジリと劣化が進んでいるようです...

 

このように歴史的事件の確かな証拠が海の底に残されています。アメリカ政府は、このような戦争遺跡の現状の確認・モニタリングを通して、戦争遺跡の把握と必要な保護対策を講じています。しかし、自然による劣化は徐々に進んでいるようです。

残念ながら、この遺跡にも漁労によるダメージの痕跡、そして、現代のゴミもありました。海に沈む遺跡にもゴミの影響は確認されています。水中遺跡にとって、天敵は開発・漁業・自然による劣化、そして、ゴミ(ただし実際の影響はまだまだわかりません)です。開発、漁業、ゴミなどは、人々の理解があれば減らすことができます。

戦争遺跡に溜まるゴミ。ここだけの話ではありません。

 

太平洋戦争、最初の一撃の穴にプラスチックが絡まっていたら、ショックです。まあ、スクリューのそばのPepsi缶も嫌ですが…。戦争遺跡を守っていくためには、海も守らないといけないですね。また、「海を守る」とは、「海に存在する遺跡を守る」ことも含まれます、重要な課題です。

 

 

ダイジェスト動画がみれますので、ご覧ください!

引用元:https://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/explorations/ex1608_1609/media/dive5-1280x720.mp4

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