ドイツの提案

ドイツの国立科学アカデミー・レオポルディーナより、興味深い報告書が提出されたようです。バルト海とドイツの水中文化遺産の保護・調査について提言をされています。ドイツの水中文化遺産保護の現状、取組、政府への要望などが詳しくわかります。

ドイツについての記事ですが、同じことが他の地域、日本近海にも当てはまります。特に政府への提言は、そのまま日本でも適応できる内容です。

国立科学アカデミーリンク

『Traces under Water – Exploring and Protecting the Cultural Heritage in the North Sea and Baltic Sea (2019)』 報告書ーPDF

 

以下、方向の内容を簡単に述べますが、英語のニュース記事がまとめていますので、そちらもご覧ください。

現状…

海には貴重な遺跡がたくさんある。

特に海面水位が低かった時代の遺跡、沈没船タイムカプセルとして価値がある。

水中は保存状況が良く、陸とは性質の異なる遺跡がある。

人類の歴史の理解に不可欠な情報を得ることが出来る。

しかし、陸の遺跡に比べ調査の確立したスタンダードや法律も曖昧である。

政府や学術機関内でも水中遺跡の調査を行っているのは少数、いまだ認知度が低い。

多くの遺跡が消滅の危機にさらされているが、それらを守ることが喫緊の課題。

水中遺跡は数千件以上~海底面に人工物がある場所などポイントを押さえている。

その内容については調査が必要、まだまだ多くの遺跡が眠る。

環境の変化により遺跡が消滅することはわかっている。

しかし、そのメカニズムの解明はできていない。

開発(パイプライン、洋上風力発電、護岸工事など)により遺跡が破壊されている。現在の工事前の調査では不十分であり、遺跡破壊を防げていない部分がある。

排他的経済水域では、現状調査が不十分。

 

 この現状を踏まえて、以下の提案をしています。

 

〇水中考古学の積極的なプロ―モーション。

隣接する国との協力、海洋学や地質学との連携も必要。

〇大学等研究機関との連携。企業と研究とのタイアップ~バルト海の水中遺跡の魅力をプロモート。

博物館や自治体も「海との関り」を真剣に考え、観光資源として活用する。

〇海洋公園・ジオパークなど考古・歴史以外の分野から積極的にアプローチする。

〇法律の整備・政府の積極的な関与が必要不可欠。

〇ユネスコ水中文化遺産保護条約の批准し、政府の専門組織(部署)を作る。

〇欧州評議会バレッタ条約を領海内だけでなく、排他的経済水域や大陸棚などにも広げる。

〇海洋開発・漁業など産業と連携し水中文化遺産保護を徹底。

〇パイプラインや風力発電など遺跡の事前調査の徹底。

〇開発の際には水中文化遺産保護の観点からアセスメントや開発承認のプロセスに組み込む。

〇環境保全など他の分野と同列に捉える。

まとめると、こんなところでしょうか...読めば読むほど、そりゃそうだよね~、と納得のいく報告となっています。細かい所では、海揚がり品の報告の徹底したシステム化、水中遺跡の情報システムの構築などなど…。

国立科学アカデミーという大御所ですからね…現存する世界最古の学会で、ドイツの最高峰の学術団体。国に助言をする立場にあるようで、コロナ・ウィルス対策に際しては、いち早く情報を収集し、政府に指針をしたそうです。そんな学術団体が政府に提言しているので、ドイツの基本方針として政府が打ち出してくるのでしょう。

詳しくは、Wikipediaで。

 

オマケ…

ドイツが把握している沈没船(遺跡)のポイントを示した地図。もちろん、報告されていない遺跡、発見されていない沈没船は多くあり、ここには水没遺跡や水際の遺跡(港跡など)は含まれていない。海揚がり品のポイントも相当あると考えられる。

水中考古学が学べる(プログラムを持つ)大学と専門部署のある研究所。[水中遺跡の展示がある博物館も示してくれればよかったのに…]

引用元:https://phys.org/news/2020-05-endangered-cultural-heritage-seafloor-underwater.html

2 Comments

  1. K.

    はじめまして。ツイッターでこちらの記事を知りました。ドイツで(陸ですが)考古学研究をしています。ドイツは海岸線があまり長くないこともあるせいか、ドイツの海に関する水中考古学の話題自体あまり聞かないような気がします。他方、湖は多いので例えばPfahlbautenのような「湖底遺跡」の方が水中考古学の対象としての知名度が高いような気がしました。ドイツは海に対する憧れが強い人が割といるように感じるので、アウトリーチなどで上手くアピールできればこれから人々の関心もより高まると思います。

  2. ご意見ありがとうございます! 

    ドイツは、確かに内陸の水中遺跡のほうが有名ですね。ですが、コグ船などハンザ同盟時代の船などは有名ですし、石器時代の遺跡が陸に近い場所でどんどん発見されているようです。

    これから急速に伸びると期待しています。
     

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