オスマン帝国の沈没船…誰のモノ?

オスマン・トルコ帝国の沈没船の発見がニュース記事に上がっていました。レバノンとキプロス島の間で発見されています。17世紀頃の商船で、大量の積み荷がそのまま海底に残されているそうです...中国からの輸出品が多く、また、トルコなどで使われていたコーヒーポットなどなど数多くの貴重な遺物が発見されています。水深2,000m。この深さだと、時間が止まったように沈んだままの状態で残されていることが多いです。

 

今後の調査に期待が持てそうです...が、いろいろと問題あり。どうやら、遺物の売買を目的としていたらしい...いわゆるトレジャーハンターによるもの、かもしれない。回りくどい言い方ですが、はっきりとしない部分が多いです。残念ながら、まだ考古学・歴史学的な情報はあまり入ってきていません。

詳しくは、リンク先の記事(英語)を読んでください。

 

以下は、要約と問題点。

 

発見されたのは、レバノンのEEZ(排他的経済水域内)。

国連海洋法によると、EEZ内では資源の利用の権利は沿岸国にありますが、文化遺産の利用は、「あいまい」です。そのため、ユネスコが水中文化遺産保護条約を作りました。批准国は、水中の文化遺産を守る必要があります。レバノンはこの条約を批准していますが、キプロスは未批准。ただし、キプロスは国内法で水中文化遺産について保護する法律がありますし、大学でも水中考古学が学べるプログラムもあります。

この沈没船の調査に「出資」したのはイギリスの会社ですが、キプロスで調査船が停泊していたところ、監査が入り…発見された大量の遺物。しかも、それらの遺物は積み荷リストに掲載されていなかったようです。この会社、積み荷は商品ではないので、申告する必要がないと主張、また、引き上げ遺物もレバノン側から何の問題もない、とその会社は主張。これらの遺物は、博物館など公共の財産として利用するために引き上げたとしています。レバノンからの正式発表は、まだありません。

 

さて、「出資」ではなく「調査」をした会社が、Odyssey社。この会社、世界各地で金銭的価値の高い船をサルベージしてスポンサーからお金をもらっている会社です(本社はアメリカ)。以前、ジブラルタル沖でスペインの船を見つけて大量の銀貨を引き揚げ話題となりました...スペイン政府が調査にストップをかけました。この会社は、スペインの船ではないと主張。スペイン政府はアメリカで裁判を起こし、勝訴。スペイン船と特定され、引き上げ遺物はスペインに返還、また、罰則などもあり、会社は大損害…。現在、この船はスペイン政府が調査を行っています。遺物は国で管理。

 

少し、話が脱線したので、元に戻しましょう。

Odyssey社ですが、2009年にベイルート離陸後に消えたエチオピア航空機を捜す依頼を受けていたようですが、この調査中にいくつかの沈没船を発見していたようです。

少なくとも、ギリシャ時代1隻、ローマ時代2隻、ウマイヤ朝1隻、オスマン帝国8隻。今回の船は、1630年頃の物で、全長43m、アレキサンドリアから出港し、イスタンブールへ向かっていたそうです。

 

記事の最後に、トルコとキプロス両国の大学で海事・水中考古学の専門家にインタビューを載せています。まあ、どちらもOdyssey社に対して批判的ですね。貴重な文化遺産を守る必要があると。多くの海難記録も残っており、調査すれば歴史的価値のある発見が待っている。遺物の売買は許してはならいと。また、貴重な水中遺跡は開発に際して調査が行われるが、深い所では、ほとんど開発が及ばないので、遺跡を保全数るのに安全な場所だとしています。

 

最後に、私の個人的な意見です。このような「お話」は決して対岸の火事ではありません。日本でもトレジャーハンターが入ってきたことがあります。また、海揚がり品はネットオークションでも時々出品されています。世界の多くの国では、引き上げ遺物の売買は、違法行為です。日本近海でも、このようなことが起こることは十分あり得ますね。

 

 

さて、そこで、この沈没船は誰のモノ?という質問。

EEZ管理下のレバノン政府、見つけた会社が売却できる、遺物が置かれているキプロス、現在のトルコ、出港地であるエジプト、もしくは、積み荷ごとで仕分ける(中国陶磁器は中国のもの)??? 私個人としては、レバノン政府かトルコ。どこか責任を持って公共の財産として研究・管理できる国がベストだと思っています。

 

 

引用元:https://cyprus-mail.com/2020/05/10/battle-over-shipwreck-treasure-cultural-heritage-is-not-ours-to-sell/

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