うみで何かを発見したら…

北海道、積丹半島から30㎞沖で、旧日本軍の大砲が引き上げられたそうです。30kmなので、接続水域内にあたります。厳密には領海の外側になりますね。(海底1000mから引き揚げたと書かれていますが…おそらく間違いでしょう)
漁師さんが引き上げたのですが…、大砲を引き揚げたのは初めてだそうです。この大砲、明治39年に呉で造られたものだそうです。
これまで、近くに海底障害物の記録などはないみたいですが、文献資料などに記録は何か残っているかもしれません。この大砲の正体がきになりますが、製造したさいのプレートが残っているので、積まれていた船もわかるでしょう。
明治39年製造ですので、115年ほど前でしょうか。もしかしたら、水没したのは100年以上前のことになるのかもしれません。そうなると、ユネスコの定義では、文化遺産とみなされ、保護対象となります。ユネスコの基本は現地保存です。本来は、引き揚げは原則として行わないことになっています。今回のようにたまたま発見された場合は仕方のないことです。
しかし、このようなことがないよう対策を取ることが求められています。そして、この後の対応をどうするか…。

文化遺産を守る観点から見て最も良いパターン

①磁気探査やサイドスキャンソナーによる探査を実施し、他に海底に遺物がないかを調べる。
②何かあったら、水中ドローンなどで目視確認をする。
③周知の遺跡として登録~海上保安庁や漁協などに周知し、その周辺での漁業活動(網を引くなど)を制限する
④フォトグラメトリーなど3次元で記録を残す
⑤定期的なモニタリングを行ない、劣化の状況を観察する
⑥船体の残りが良い場合は、ドローンを活用した観光・見学会なども検討

 

これがベストですね。ここでは、敢えて最も危惧するパターンは書きません。

おそらく起こりうるパターンを書きます。

①自治体は何かしようとおもったが、特段なにもしない
②ニュースは忘れ去られ、数十年の月日が流れる
③30年後、ボロボロに朽ちた別の部材が発見され話題となる~この時には水中遺跡調査も理解が進んでいるので、探査が実施される。
④朽ち果てた船体を発見⇒あ~30年前に調査しておくべきだったね、なんであの時は、何もしなかったんだろうとの話しになる。
⑤当時、あのブログを書いていたじーさんの画いたそのまんまだね、と話題になる。

ここで、幾つか問題があります。

①接続水域内であろうこと。領海の外になるので、市町村の管轄ではない。県なのか?じつは、日本は、接続水域内・排他的経済水域で発見された文化遺産についての規定が全くないという世にも珍しい国なんです。

 

30㎞離れていたそうなので、接続水域になるのかと…『海知る』のデータには周囲に沈船や海底障害物はありませんね…

②今回は、明らかに旧日本軍の所有物であるので、特に問題はありませんが、これが商船のものであったり、高価な物、もしくは、外国船籍の場合は、かなりヤバいです。他国の遺物を海で発見した場合、文化的につながりのある国に報告することが良いとされています。

義務ではありませんが、「should」です

例えば、スペインのガレオン船の遺物を引き揚げた場合、スペイン政府が日本政府に対して抗議をする可能性も十分にあります。引き揚げて処分した場合などは、国際問題になるでしょう。日本の文化遺産保護体制の遅れがいっきに暴かれます。このような発見に対して何もしてこなかったのはなぜか?
多くの国では、接続水域や排他的経済水域内などにおいて発見した遺物などについては、どのように対処するか規定があります。引き揚げた際には、自治体・国が保護をすることが求められています。また、このような文化遺産の破戒が起きないように、あらかじめ遺跡のありそうな位置を文献史料などから探し出し、各自治体に通達しています。遺跡があるだろうと思われる海域は、漁業に規制がかけられます。
また、開発に際して環境アセスメントの一環として文化遺産の調査も実施されます。これらの取り組みにより、多くの国で数万件に上る水中文化遺産のポイントが登録されています。おそらく、世界には数百万の水中遺跡があり、その多くは、すでにこのようにポイントとして抑えられ、周知されています。

うみの上に見えるツブツブ…すべて水中文化遺産の可能性のあるポイントです。日本の地図を重ねてみると、いかに水中遺跡が多いことかわかります。水中遺跡は、どこにでもある、ごく普通の遺跡なんです。

 

参考にまで、こちらの論文を…。

日中における水中文化遺産の保護および保全に関する制度的研究―関連する国際法および国内法の比較検討を通じて

中国と台湾、UNESCO、そして、日本の規定を比べています。日本は、シンプルですね(褒めてません)。国連海洋法は日本も批准していますが、その303条には、接続水域内の文化遺産についての規定があります。
また、アメリカのSunken Military Craft Actの制定の際に、アメリカは各国と水没した軍用機の取り扱いについて文章を交わしています。
アメリカ海軍のページはこちら
https://www.history.navy.mil/research/underwater-archaeology/policy-and-resource-management/sunken-military-craft-act.html
日本が合意した内容などについては、こちらで文章が確認できます。
https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2004-02-05/html/04-2488.htm
Japan: ``According to international law, sunken State vessels, such 
as warships and vessels on government service, regardless of location 
or of the time elapsed remain the property of the State owning them at 
the time of their sinking unless it explicitly and formally 
relinquishes its ownership. Such sunken vessels should be respected as 
maritime graves. They should not be salvaged without the express 
consent of the Japanese Government.'' Source: Communication from the 
Government of Japan, September 13, 2003
簡単に解説すると…

  如何なる場所であろうと(他国の領海含む)軍用の船舶等は旗国の所有物とみなす。それらは戦争のメモリアル(墓地)として適切に保護され、政府の許可なく引き揚げを行なってはならない。

 

何はともあれ、今回の引き揚げですが、旧日本軍の所有物ですので、特にそこまで問題はないかと。きちんと報告しているので、漁師さん、Good Jobです。まあ、大砲引き揚げて報告しないのもおかしなことですが…。
まあ、あと、壺や木片、その他、なんでも些細なモノを見かけたりひろったらしたら、報告を。もしかしたら、今世紀最大の発見に繋がるかも?意外と、海で見つけた物ってゴミだと思ってその場で捨ててしまうこと、あるんですよね。
曜変天目茶碗もすでに引き揚げられて、捨てられている可能性もあるでしょう。

 

ちなみに、韓国の新安沈没船も漁師が白磁を拾ったことがきっかけです~厳密には、漁師の兄弟が「犬の餌皿」が中国の高級陶磁器であることに気がついたから…。

何度も書いてますが、

世界の水中遺跡のそのほとんどは、偶然の発見。

水中遺跡の常識は、

「漁師さんや海に関わ人たちが遺跡を見つける」

「考古学者がそれらに価値を与える」です。

引用元:https://www.uhb.jp/news/single.html?id=24358

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