水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

ユネスコ水中文化遺産会議~アフリカで開催

お馴染みのユネスコ水中文化遺産条約ですが、そろそろ加盟国が50国を超える勢いで伸びています。近年では、フランスなど大国の条約承認、そして、イギリスやオーストラリアでも承認の準備が進んでいます。

特にイギリスやオーストラリアなど、昔から水中文化遺産の取り組みが盛んな国では国内法とユネスコの条約の間に矛盾が生じないために、最初に国内法の整備が必要でした(現在ある水中文化遺産に対する保護法の整備など)また、州の法律と国の法律、そして、国際法のすり合わせなど時間を要しました。

そんななか、アフリカ(ナイジェリア)で地域(アフリカ大陸)の水中文化遺産を検討する国際会議が開催されました。アフリカ各国の専門家や政府役人などが参加し、アフリカ大陸でどのような水中文化遺産に対する保護が必要かなど検討・議論されたようです。まだ数は少ないですが、アフリカでもユネスコの条約を批准する動きが高まることでしょう。すでにナミビア、チュニジア、コンゴ、ナイジェリア、モロッコなどが批准しています。すでにアフリカの様々な地域で水中考古学の調査が着々と進められています。特に東海岸の国々が力を入れているようです。条約を批准せずとも調査をどんどん進めています。今回の会議で広く国際的な取り組みも進められていくでしょう。

水中文化遺産の取り組みは実はアジア地域では消極的です。アジア地域でユネスコ水中文化遺産条約を承認した国はイランとカンボジアだけ。もちろん、タイや韓国・中国では水中考古学の調査が積極的に行われていますし、近年では特に若い世代の研究者を中心にベトナムやインドネシアでも取り組みが始まっています。今回のアフリカの国際会議の成功をもとに、アジアでもこれからもっと盛んに取り組みが行われていくことが期待されます!

 

 

 

水中考古イベント情報 (訂正・延期のお知らせ!)

本日は、水中考古学の講演会のお知らせです!といっても、こじんまりとしたトークと勉強会・情報交換会のご紹介です。どちらも福岡で開催されますので、お近くの方はぜひお越しください!

イベントその1

博多塾「水中考古学の可能性を考える」 11月5日(火)18:30~20:00

~こちらは、毎月第一火曜日に集まっている博多の歴史ファンの方の集いです。アイリッシュパブでビールとおつまみ(Fish and Chips!)をつまみながら、1時間半ほどお話をします。テーブルを囲んでみなさんからの質問を受けながら、まったりと水中考古学の話をします。

場所:The Celts (ザ・ケルツ)福岡市中央区警固1-1-23〔薬院六ツ角のそば)

詳しくは、こちらのお知らせをご覧ください。または、ウェブサイトでも。

 

イベントその2

水中考古学勉強会 11月15日(金) 19:00頃スタート

いろいろな方から参加したかったがすでに用事がある!とのご連絡を承りました。勝手ながら、日程を変更いたしますので、ご了承ください!新しい日程は11月29日(金)を予定しております。場所は福岡・天神となります。あらかじめ参加人数を把握したので、参加ご希望の方はご連絡をお願いいたします。

~予定は未定ですが、水中考古学の勉強・情報交換会(オフ会?)を福岡で開催します。今のところ、11月15日11月29日を予定しています。こちらも参加者でテーブルを囲んで水中考古学についていろいろと話します。多くの参加者がいればそれぞれの意見・情報なども交換していきたいと考えています。以前、東京でも同じような会をしましたが、学生などを中心に10数名の方が集まっていただきました。福岡在住で水中考古学についてなんとなく興味がある方、ぜひご参加を!

参加希望の方は、フェースブック ツイッター もしくは、メールでお問い合わせください!

参加したいけどその日は予定があるという方もご連絡を。日程変更もまだ可能です。

 

鷹島海底遺跡から

お馴染み鷹島海底遺跡の元寇沈没船。今年も琉球大学の池田先生によって調査が行われています。調査の内容が簡単ではありますが、ニュース・ビデオで見ることができます。

今回はアンカーが新たに発見されたそうです。20年前の調査でも数本のアンカーが発見されていますが、船体の確認が期待されます。ちなみに、20年前に引き上げられたアンカーはすでに保存処理も終わり、鷹島に行けば見ることができます。6m近くある大きなモノで、アジアでは最大規模です。中国やベトナムなどで発見されている数件の中には鷹島のモノに匹敵するサイズのモノもありますが、やはり日本国内で現物を見ることができるのは素晴らしいことですね。

鷹島海底遺跡では数隻の沈没船が沈んでいることが考えられますので、むやみに引き揚げることなく、現状維持で調査を続けながら歴史の解明に貢献できればよいですね。今後も鷹島からのニュースを度々お伝えすることになるでしょう。

アジア水中考古学研究所 関東・東北会員連絡会

日本の水中考古学をリードするアジア水中考古学研究所からのお知らせです。

2013年度 アジア水中考古学研究所 関東・東北会員連絡会
日時:10月12日(土) 14:00~17:00
場所:東京海洋大学・越中島キャンパス 3号館4階会議室(405号室)
            東京都江東区越中島2-1-6   http://www.e.kaiyodai.ac.jp/access.htm

 

講演は2本あるようです。そのうちのひとつは、岩淵聡文先生(東京海洋大学教授・アジア水中考古学研究所会員)によるです「ドイツ南部の杭上住居址(世界文化遺産)について」。

岩淵先生は水中考古学の専門書も書かれています。日本では唯一といえる水中考古学の専門書です。内容は少し難しいですが、考古に興味のある人なら問題なく読めるお勧めの良書です。

なお、当日の参加費は無料です。

この分野に興味がある方はぜひご参加ください。 会場準備の関係がありますので、ご参加の方は underwater03@gmail.com までご連絡をお願いいたします。

2020年、東京オリンピックが決まりましたが...

東京オリンピックが決定して連日のようにメディアでは話題となっている今日この頃。新たな会場整備など建設業もこれから大忙しとなりそうです。ですが、建設の前には埋蔵文化財の調査が必要となってきます。東京(関東)の考古学行政関係者はこれからしばらくは大規模工事に伴う事前調査で忙しくなるのではないでしょうか?

そのような大規模事業のなかで、特に建設で破壊される土地が大きいのが羽田空港の新たな滑走路の建設ではないでしょうか?敷地面積も相当な大きさです。長さだけでも3000mもあるのではないでしょうか?これだけの大きな土地ですので、羽田空港の滑走路の建設に考古学調査に割り当てられた予算がどれくらいあるのでしょうか?答えは、みなさんで予想してみてください…

実は、日本では水中に建造物を作る場合でも考古学調査が行われることがほとんどありません。陸上ではきちんと考古学調査を行う義務がありますが、水中ではその義務が曖昧で、水中にある文化遺産を保護する法律もありません。ただ単に現在は海であるために、過去に陸上であった土地は考古学調査がなされないようです。水中に埋もれた遺跡では陸上では残りにくい有機物などが多く発見されます。

数年前までは水中にある遺跡を発見することは難しかったのですが、最近では音波探査や磁気探査機など海洋探査機材が発達し、低コストで水中の探査を行うことができます。家庭用ノートパソコン、ゴムボート、それに30~40万円ほどの機材(サイドスキャンソナー)があればそれなりの探査ができます。もちろん、もっと高性能の機材を使うべきでしょうが、これで最低限で事前調査ができます。

中国やベトナムなど世界各地ですでに水中文化遺産を保護する法律があります。また、アメリカではメキシコ湾では油田のパイプラインなどの施設の前に事前調査が義務として課せられています。2013年の夏に、1330mの海底で水中ロボットを使って沈没船の(発掘)調査が行われました。この沈没船(遺跡番号15577)の深海調査の様子はインターネットを通してライブ映像で全世界に配信され、600,000,000回のアクセスがったようです。一番多い時で1万2千人が同時にアクセスしてライブ映像を見ていたそうです。

このライブ映像ですが、Nautilus号という調査船の様々な海底調査の様子をライブで見ることができます。海外では海底の地質・生物とともに考古学も重要な一部を占めています。基本的には他の海底調査と同じ調査・探査方法で考古学調査・発掘ができるので、海洋学の中の応用として探査をおこなっています。日本でも同レベルの探査は可能です。海洋地質・生物の分野では世界的に見ても素晴らしい研究を行っています。また、陸上の考古学も世界トップレベルの研究を行っています。

沈没船を含む海底遺跡は陸に近い場所に多く存在しています。つまり、比較的発見しやすく、また、大掛かりな組織や機材がなくとも発掘できるものが多い問い事実があります。1000mを超える水深での調査もありますが、それは、水中遺跡の総数の内の0.1%にも満たない数です。水中遺跡は水深50mよりも浅い地点で、人口が多い都市のそば、つまり東京湾・大阪湾などに多く存在していると考えられます。

環境に配慮したオリンピック施設や「おもてなし」など良いスローガンを掲げています。これらに加えて、文化財への思いやり、特に水中文化遺産への影響も考慮した準備を進めていければ世界に誇れるイベントとなることでしょう。しかし、何も大規模工事だけ注意してみればよいのでしょうか?実は、水中遺跡のほとんどは一般の人が偶然発見したものです。

世界最古の沈没船・トルコ青銅器時代のウルブルン沈没船(3300年前)、韓国の新安沈没船、その他有名な沈没船は考古学者が発見していません。水中遺跡を発見するエキスパートは、海底工事施設会社や漁業関係者です。普段何気なく見つめている海、じつは歴史という名の宝が埋まっています。何か遺跡らしいものを発見した場合は、直ぐに最寄りの市町村の教育委員会、そして、同時にアジア水中考古学研究所などに連絡を取ってください。

 

ベトナムで中世の沈没船があいついで発見されています

ベトナムで去年あたりから、沈没船発見のニュースが頻繁に聞かれるようになりました。これはうれしいニュースではありますが、どれも発見されるとすぐに漁師さんなど近くの人々が集まって遺物を取りに集まってくるようです。

この夏だけでも数隻の船が発見されています。基本的に中世~近世にかけての商船で重要な考古学遺跡です。実は水中から発見された遺物の収集は法律により禁止されています。ベトナムではすでに水中文化遺産の保護が義務として課せられています。しかし、一度発見されると話題になり、近くの住人が集まってきます。また、このようなニュースを聞いているので、いままで人知れずに眠っていた情報もどんどん流出しているようです。

実は、水中考古学のユニットがすでに発足しており(Phòng Khảo cổ học Dưới nước)トレーニングなどの活動を中心に進めていくそうですが、今回の一連の発見に対応できないのが現状です。

漁師さんなどが集まって遺物を拾っていくのに海上保安庁などとの衝突もあったそうです。なぜ禁止されているのに集まってしまうのでしょうか?一攫千金を夢見ているのでしょうか?実は、以前、ベトナム政府は外国のサルベージ会社と合同で引き揚げ作業を行い、遺物の売却などを行った経緯があります。これも、当時は水中文化遺産への理解が浅く、また、他の東南アジアの国々も同じように沈没船の引き揚げで利益を得ていたので、しかたのないことです。ベトナム政府も今ではきちんと水中文化遺産への理解を示し、トレーニングの開始や法律の整備も進んでいるので良い方向に向かっているのは確実です。ただし、漁師達にとってみれば今まで国が同じことをしてきたのに、なぜ自分たちがしてはいけないのか?ということでしょう...

なかなか難しい問題です。ですが、沈没船の引き上げなどから博物館などができれば観光収入にもなるでしょうし、文化的遺産にはそもそも金銭価値はつけられません。遺物の売却によって儲かるのは一握りの人間で、しかも、一時的な現象です。しかし、きちんと調査すれば、文化的価値は永続し共有することができます。

もちろん、ベトナムの多くの人たちがそのことを理解していますし、遺物の引き上げに来ている人でもすぐに理解すると思います。しばらくは、似たようなニュースが続くかもしれませんが、見守るしかないのかもしれません。国も対応しているので、落ち着いて、すぐに水中文化遺産の保護が一般への理解も含めて進んでいくと思っています。その最初のステップが始まっているようです。

 

下にいくつかニュースのリンクがありますので、ご覧下さい。

こちらはひとまとめにニュースです。

http://tuoitrenews.vn/features/10550/cemetery-of-ancient-shipwrecks-in-quang-ngai

http://tuoitrenews.vn/features/10627/drying-up-the-sea-to-find-shipwrecked-antiques

http://tuoitrenews.vn/features/10757/aquatic-archaeology-in-vietnam-inadequate

 

先日からの発見のニュース

http://english.vietnamnet.vn/fms/art-entertainment/82375/another-ancient-shipwreck-discovered-in-quang-ngai.html

http://www.thanhniennews.com/index/pages/20130820-old-shipwrecks-keep-showing-up-down-central-vietnam-waters.aspx

http://treasureworks.com/news/treasure/995-vietnamese-fishermen-find-another-old-shipwreck-near-central-coast

村上水軍博物館

中世瀬戸内海の海軍(海賊?)といえば、村上水軍。長崎の松浦党とともに、日本を代表する水軍です。

その村上水軍の歴史を展示している博物館が、村上水軍博物館です。愛媛県今治市にあり、他の観光でも訪れやすい場所です。近くを通る方がいればぜひ!7月~9月は水中考古学の関連展示を行っています。また、9月1日には特別講演会もあります。

特別展   瀬戸内海・中世沈没船の謎

特別講演  瀬戸内海の水中考古学(9月1日)

 

もうそろそろ終盤となる夏休み...小・中学生の自由研究などに水中考古学はいかがでしょうか?

 

詳しくは、村上水軍博物館のホームページをご覧ください

 

水中考古学論文などなど

ネット社会とか言う言葉もあまりにも当たり前(というかすでに古臭いのかもしれません...)となった今日、論文などはPDFでアップロードして無料で提供しているサイトなどがたくさん増えてきています。特に、海外では研究成果や論文を広くオープンにして読んでもらい、研究などを活発化させることを目指しています。フェイスブックなどとも連携をし、アカデミックなソーシャルネットワークサービスなどもあります。

そんなサイトの一つにAcademia.eduがあります。ここでは自分の論文などをアップデートできるようです。もちろん、水中考古学関連の論文やレポートなどあります。興味のある人はのちょっと覗いてみてはいかがでしょうか?英語の論文がほとんどですので、難しいかもしれませんが、世界の水中考古学の学術のレベルを知る上でも勉強になることでしょう...あまり学術に興味のない人でも、写真が多い論文もあるかもしれません。

アジア・太平洋水中文化遺産会議

アジア・太平洋水中文化遺産会議が来年ハワイで開催されます。前回は初めてマニラで行われており、第2回目となります。マニラでの会議は多くの国から研究者が集まり、大盛況でした。特に若手の研究者が多く、東南アジアなどでも積極的に水中文化遺産の保護への取り組みが進んでいることがうかがえました。

水中文化遺産の保護は年々その重要度・注目度を増しています。来年も多くの研究者が参加することでしょう。

水中考古学と東海大学

去る2013年5月、鷹島海底遺跡の特定に寄与した茂在寅男氏が逝去された。当時の長崎県北松浦郡鷹島町沖で、元寇関連遺跡特定のため、初めての組織的な調査が行われたのは昭和55年のことである。東海大学海洋学部教授に在籍されていた茂在氏は、同調査において中心的な役割を果たされた。当時の調査手法には、考古学的見地から疑問の余地も投げかけられたが、昭和50年代の一連の調査が、その後の鷹島海底遺跡解明の動きの端となったのは事実である。東海大学には、文学部に考古学専攻があり、西表島では水没した貝塚で海洋学部と共同での調査が実施されている。また、同大学の海洋学部の海洋文明学科はアジア水中考古学研究所の調査などに参加している。東海大学の海洋資源学科の探査機器が、琉球大学との共同調査において、元軍船の発見に寄与したことは記憶に新しい。あえて付言をすれば、上述の東海大学と水中考古学の40年に及ぶ関わりは、一貫した研究体制や支援の下での出来事というよりは、水中遺跡の研究価値を見出した個々人の慧眼によるところが大きいようである。