ドッガーバンクと…

さて、ちょっと興味深い論文、ニュース記事があったので、それから思ったことなどを書いてみます…

元記事はこちら

ニュース記事はこちら

今から1万年ほど前、いわゆる氷河期時代ですが、今よりも海水面は低く、地形も全く異なる世界でした。ヨーロッパ北部、大西洋(イギリスとオランダ・デンマークの沖)は地続きだったようです。この土地はドッガーランドと呼ばれています。

ドッガーランドについて

 

しかし、気候が暖かくなり、海水面が上昇し、ドッガーランドはどんどん水没していきます。ちょうどヨーロッパで農耕が始まりつつある頃だと考えられています。そして、約8000年前、巨大な津波がヨーロッパ北部を襲います(ストレッガ海底地滑り)。これにより、ドッガーランドは消滅したと考えられていました。

 

ストレッガ海底地滑りについて

 

 

 

今は、ドッガーバンクがあります。バンク、つまり浅瀬です。現在、このドッガーバンクの海底の調査が進みつつあり、様々な新しい証拠が見つかっています。海底に埋もれた旧河川の跡や旧地形を復元し、遺跡がありそうな場所のモデルを作成し、ピンポイントで海底の調査を行なう計画が進んでいるようです。海洋探査の技術が発達し、様々な調査が可能になった今だからこそ、見えてきた研究です。

 

 

Early Holocene landscape features mapped by the North Sea Palaeolandscapes Project GaffersMiddle 

イギリス沖のドッガーランドの復元地形図

 

海底の調査が進むと、いろいろなことが分かってきます。

1)ドッガーランドの消滅に新たな説を考える必要があるかもしれない!

 今までは、津波によりドッガーランドに住んでいた人々は壊滅的な被害を受けたと考えられてきましたが、どうやら、断片的にドッガーランドの一部は水没せずに残っていたようであり、そこで人々の生活が継続していたのではないかと…。

 

2)ヨーロッパの農耕の起源を考えた場合、ドッガーランドは重要な意味を持つ!

 ドッガーランドで人々が住んでいた時代は、ちょうど農耕が発展してきた時期。基本的に、海沿いやデルタは資源が豊かであり、また、交通の便が良く、内陸に比べて農耕が発達し、また、文化が伝播しやすかったと考えられています。現在のヨーロッパで発見されている陸にある遺跡は、当時は丘・山の上であり、文化的には後進的な地域。進んだ文化はデルタ地方(ドッガーランド)で発達したと考えられています。農耕や文明・文化の起源はドッガーランドにあったのでは?

 

海底遺跡(ドッガーランド)の調査が進めば、ヨーロッパの先史時代について新しい見解が生まれそうですね。また、水中遺跡は有機物の保存が良好であり、数千年前の遺物でもきれいに残っていることがあります。日本でも低湿地の遺跡は木器が沢山出てきますね。

丘の考古学の成果からではわからないことがわかる、そんな魅力が水中考古学にはあります。

さて、このドッガーランドの調査、洋上風力発電と密接にかかわっています。なぜでしょう?

 

考古学調査の9割は開発対応です。水中遺跡も、これは同じ。海洋開発・洋上風力発電の建設に先立って海底遺跡の有無を確認する調査が実施されています。遠浅で比較的安定した風の吹くデンマーク沖などは風力発電のメッカとなっています。そして、現在、風車建設により水中遺跡調査ブームが起こっています。

 

 

デンマークのRoskilde博物館 水中考古学調査を担っています

 

 

クリーンなエレルギーとして注目されるエレルギーですが、環境や水産業、景観へ与える悪影響も懸念されています。それらに影響がないよう、アセスメントを実施しています。厳格なスタンダートをもとに調査し、悪影響がないとわかったうえで進めることで、真にクリーンなエレルギーとなります。

じつは、文化遺産も洋上風力発電や海洋開発に際しての重要なアセスメントの一つの要素となっています。デンマーク、オランダ、イギリスでは、すでにアセスメント事業で数万件の水中遺跡が発見されており、その中には農耕の起源や伝播の謎に迫る発見もあるわけですね。SDGsの取り組み(持続可能な開発)にも水中文化遺産の保護は含まれています。

 

最期に、元記事からコピー

 

 「洋上風力発電は、考古学者にとってPhenomenal Opportunity(驚異的?スバラシイ?機会)を提供している…。たくさんの考古学者が洋上風力発電会社と協力して貴重な遺跡の調査を行なうことでしょう」と書かれています。

これは、世界各地で同じことが言えます。現在、日本では法の整備・体制整備が遅れています。即急に洋上風力発電会社と一緒に歴史の遺産を守る取り組みを始める必要があります。文化遺産保護を想定していない海洋開発は、クリーンではなく、グレーもしくはダークなエレルギーとなってしまいます。

貴重な遺跡を海洋開発で破壊してしまうのではなく、発見して歴史に貢献していく。それが、出来ている例がドッガーバンクです。

 

 

 

おまけ

 

ちなみに、ドッガーバンク…日露戦争の時、日本へ向かうバルチック艦隊が起こしたドッガーバンク事件が有名ですね。日本の魚雷艇が潜伏して攻撃してくると思ったバルチック艦隊。あやまってドッガーバンクで操業していたイギリス漁船に向かってバンバン打ちまくり…。おかげで英国民の世論はいっきに反ロシアへ。イギリスの妨害行為が始まります。

ドッガーバンク事件について

イギリスは当時、世界の「無煙炭」を独占していた。バルチック艦隊への無煙炭の供給を拒否したため、バルチック艦隊は質の悪い燃料しか得ることが出来ず…。日本海海戦で一方的な勝利を得た一因であったとも言われています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

トップに戻る