水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

シドニー湾での旧日本小型海軍潜水艇発見のニュース

日本の全国紙でも記事になっていますが、オーストラリアのシドニー湾で旧日本海軍の特殊潜水艇がアマチュアダイバーによって発見されました。太平洋戦争中の1942年、オーストラリアを攻撃するために湾に侵入した3隻の潜水艇のうちの未発見だった1隻とのことです。オーストラリア北部の都市ダーウィンが旧日本軍に爆撃されたことは多少知られていますが、観光名所であるオペラハウスなどがあるシドニーが日本軍の攻撃を受けたことを知っている人は多くないでしょう。艇内には乗組員の遺体が残っている可能性もあり、オーストラリアの文化財局は保護措置を取っているようです。海外の海で発見される太平洋戦争中の旧日本軍の戦艦や戦闘機への盗掘は頻繁に行われ、インターネットオークションでこれらの盗掘品が売買されています。アメリカなどでは大戦中の沈んだ船に関しては、未だ海軍に属するとして無許可な引揚げ作業は認めていません。今回も日本政府へ照会があると思いますが、現在の日本ではこうした発見へのガイドラインは作成されていないでしょう。戦争中に旧日本軍の攻撃を受けた太平洋諸島の国々のなかには、水中に残る戦艦や戦闘機を自国の歴史の一部として、広島の原爆ドームと同じように保存しようとする動きもあります。水中文化財としての保護の問題とともに、関係者や遺族への配慮など複雑な問題が発生します。

7. 金属の処理 (電解還元法・ER)

みなさまのご要望にお答えするべく水中遺跡から発掘された金属製品の保存処理方法を紹介します。特に日本では水中遺跡からの金属片の処理に関してはあまり論文などもないので専門家の方々でも参考になると思います。今回は電解還元法(Electrolytic Reduction)---ER法について説明します。基本として理解することは、遺物の中で水素を発生させ遺物中に溶け込んだ化合物と水素が結合し遺物の外へ排出されることである。

前回のアップデートではERを行う前までのプロセスを解説したので、それを読んでいない方にはそちらを先に読むことをお勧めします。


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出雲の丸木舟

古代出雲歴史博物館で丸木舟が新しく展示されるそうです。
この丸木舟は県内で発見されたもので長さが5.5mあるとのこと。また焦がした跡もあり、火を使って加工したものの可能性もあります。

さて、火を使った丸木舟の加工は世界の民俗資料などによく登場します。半分に切った丸木の中で火を焚き、内側を削りやすくします。また、彫ったあとにも内側で火を使い暖めます。こうすることによって木が柔らかくなるので丸木を広げることができるといわれています。アメリカ大陸などではこのような事例が広く知られています。


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Shinan Underwater Relics and 14th Century Asian Marine Trades

International Syposium in Celebration of the 30th Anniversary of the Shinan Wreck Excavation

先にお知らせした新安海底遺跡の発掘から30年を記念するシンポジウムが無事終了しました。木浦市の協力と多くのボランティアに支えられ、韓国語、中国語、英語、日本語の通訳を交えながら14世紀を中心にしたアジア圏の海上交易や貿易陶磁の流通に関する多くの研究成果が発表されました。また韓国、中国、日本、フィリピン、スリランカ、フランスを代表する水中・海事考古学関係者の間では積極的な情報交換がされていました。新安海底遺跡から出土した遺物の最新の図録もこのシンポジウムを機に刊行されています。来年には現在の海洋遺物展示館が国立の博物館へと昇格するとのことであり、造船・海事史、アジア海上交易、水中考古学に関する研究が韓国でますます盛んになることは間違いありません。

国内最古の櫂 佐賀で発掘

佐賀県の東名遺跡で櫂が見つかったそうです。約7000年前のものだそうで日本最古のもの。有明海につながる川のそばであったことなどから川舟をすでに利用していたそうです。
長さ1.16m、先端が平たく最大幅は4.5cm。

丸木舟なども一緒に発掘されれば面白いでしょうね。また、実際に舟で運んだものの特定が出来ればより当時の暮らしが分かってくるでしょう。河川は交通に適しているため昔から人々が利用して来ました。(文明の発生地は川が重要な役目を果たしています)日本ももちろん例外ではないでしょう。


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水中文化遺産

[ 問題 ]

UNESCOの水中文化遺産保護の条約をご存知でしょうか?この条約では水中文化遺産の定義、その保護(売買の禁止)、そして専門家による調査の徹底などが決められています。さて、この条約はまだ正式に国際法として機能していません。UNESCOの条約が国際法と成るにはある一定の数の国が自国の法律として認めた時に初めて国際法として認められ効力を発揮します。つまり、一定の数の国が法律を認めると、それを認めていない国も国際法に違反することになります。その一定の数の国とは何カ国でしょうか?

  1. 常任理事国すべてと10ヵ国
  2. 20ヵ国
  3. 30ヶ国
  4. 40ヵ国
  5. 50ヶ国


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南インドの水中遺跡 本格的に発掘始まる模様

南インドのMahabalipuramの水没遺跡(神殿など)については何度かここでも紹介しています。インドの考古学者が最近になりまた新たに水没遺跡を発見したようです。ここでは岩を積み上げた、もしくは長方形に切り取った跡などがあり、本格的に調査を始めるそうです。
この地方では紀元3-7世紀ごろに最も栄えたそうで、その頃の遺跡と考えられています。この地方では現在5-6件の水中遺跡の調査が行われており、さらに地域の水中遺跡の把握に貢献しそうです。


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サルベージの合法化 アラブの船

2000年に紀元10世紀の沈没船がインドネシアで発見されました。遺物は主に中国産の陶磁器、そして宝石類(ラピスラズリなど)です。この船はアラビア半島で作られたと考えられており、船員もムスリム商人だったと想定できます。中国の船は東南アジアに進出するのは12世紀ごろでそれまではインド・アラビアからの船が中国まで赴き貿易をしていました。この沈没船は当時の物質文化、貿易のメカニズムなどを知る手がかりになります。

ただし、ひとつ問題があります。この沈没船の遺物がオークションで売られるからです。インドネシア政府は収益の半分をサルベージ会社とシェアすることが決められています。$40,000,000ほどの収益が見込まれています。これらの遺物が売られれば今後の調査などがほとんどできないことになります。しかし、インドネシア政府はこれらの遺物に証明書をつけて正式に沈没船から引き上げられて調査されたもののみを売却できることにしたそうです。これにより、政府が関与していない沈没船から引き上げられた遺物はすべて非合法となるため、基本的にはインドネシア政府が決めるスタンダードの元で発掘調査?が行われます。このため泥棒のように沈没船を荒らすとレジャーハンターはある程度少なくなるでしょうが、遺物が売られるのは同じことです。またこれによりスタンダードの高い考古学調査よりサルベージが増えることになるでしょう。


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韓国で新安船発掘30周年記念の国際シンポジウム

2006年11月17日から19日にかけて、韓国木浦にある国立海洋遺物展示館で国際シンポジウムが開催されます。テーマは14世紀のアジアの海上交易と新安海底遺物であり、日本を含め10ヶ国から招待された研究者が発表を行います。以下研究発表の内容になります。

1 新安海底発掘の意義         
– ‘新安海底発掘の成果と意義’  鄭良謨(前国立中央博物館長)
– ‘新安海底遺跡の歴史的意義’  李益柱(ソウル市立大学校教授)

2 アジア海上シルクロードの歴史と文化 
– ‘東アジア海上シルクロードとイスラム’ 洪錫俊(木浦大学校教授)
– ‘東南アジア海上シルクロードと貿易活動
:ヨーロッパ人の渡来前マラッカ海峡周辺の貿易形態’
Singgih Tri Sulistyono(インドネシアDiponegoro大学史学科長)
– ’14世紀アジア船運と文化交流―韓中関係を中心に―’
楊昭全(中国吉林省社会科学院教授)
– ‘中世東北アジア交易都市(港湾)の立地と環境’
藤田明良(日本 天理大学教授)

3 アジア海上貿易と交易品
– ‘台湾で発見された清香壺に関して’ 謝明良(国立台湾大学教授)
– ‘琉球から見た中世東北アジアの交易路と交易品’ 池田栄史(日本 琉球大学教授)
– ‘新安発見陶磁の重要性―スリランカとヨーロッパに向かった元代の貿易陶磁―’
John Carswell(中国陶磁研究)
– ‘イスラム世界の中国陶磁’    Regina Krahl(中国陶磁研究)

4 新安海底出土陶磁器の生産と流通   
– ‘新安海底出土中国陶磁の現況と性格’ 金英媛(国立中央博物館美術部長)
– ‘中国龍泉窯青磁の対外輸出’  沈岳明(中国淅江省文物研究所主任)
– ‘中国景徳鎮窯の宋・元時期の磁器輸出と新安沈没船の磁器’
江健新(中国景徳鎮市陶磁考古研究所副所長)
– ‘新安船出土高麗青磁の性格と意味’ 韓盛旭(国立海洋遺物展示館専門委員)
– ‘新安船出土貿易陶磁の用途と意味’ 小野正敏(国立歴史民俗博物館教授)

5 アジアの水中考古学の成果と展望
– ‘韓国水中考古学の現況と展望’   金聖範(国立海洋遺物展示館長)
– ‘中国水中考古学の基本原則と方法の適用’
張威(中国国家博物館水下考古研究センター主任)
– ‘日本水中考古学の現況と展望’
林田憲三(日本 アジア水中考古学研究所理事長)
– ‘ヨーロッパ水中考古学の現況と展望’
Jean-Luc Massy(フランス水中考古学研究所長)
– ‘中国蓬莱水城古船舶発掘と成果’
袁曉春(中国山東省蓬莱市蓬莱閣管理処文物科長)
– ‘ブルネイ沈没船発掘:15世紀末ボルネオ海岸を中心としたアジア海上貿易’
Michel L’Hour(フランス水中考古学研究所 部長)

2000年前の沈没船スペインで発見

スペインのヴァレンシア地方で紀元1世紀の船が5年目に発見されましたが、本格的な調査が始まったようです。約30mの長さがあり400トンほどの船だそうです。ローマへ向かう途中だったと考えられています。

1500個ほどのアンフォラがあり、当時の船と比べて大きな商船であったようです。遺跡は陸の近くの比較的発掘しやすい環境にあるそうです。最初にニュースが公になったとき、ダイバーなどがこっそり遺物を盗みに来たそうなので大きなケージで遺跡を囲む処置を取らざるを得なかったそうです。

現在ではきちんと保護され一部発掘が行われるそうです。


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