お知らせ

ギリシャの国立博物館 アンティキティラ島沈没船

ギリシャ国立博物館で「アンティキティラ島沈没船」の特別展示が行われているそうです。この沈没船は、今から100年ほど前に発見され、発掘されたものであり、いわば、水中考古学のルーツのような存在の遺跡です。

古代ローマ時代の様々な遺跡が保存の良い状態で発見されています。この当時は、考古学者ではなく、ハードヘルメットを被ったスポンジダイバー達を遺物を引き揚げて、それを陸にいる考古学者に渡していました。今の水中考古学の位置記技術とはかけ離れていますが、まあ、100年前のことですから...

さて、この遺跡の最も有名な遺物といえば、「コンピューター・天体観測装置」です。小さな箱に大小様々な歯車が入った装置ですが、ここまで精密な機械が当時実際に作られていたことが実証されています。同等の技術を持った遺物は類がありません。この機械については、ウィキペディアなどで、読んでみてください。

その沈没船の展示が行われているそうです。時間とお金があれば是非いきたいですね。100年前に発掘された遺跡でも魅力は満載です。リンク先のビデオなども良くできてますので、興味のある人はご確認ください。

第4回水中・海事考古学セミナー開催決定!

去年から今年にかけていろいろと水中考古学が新聞やテレビなど様々なメディアに取り上げられております。また、今年は水中考古学に関連した書籍も幾つか出版されており、いよいよ日本でもこの学問の認知度が高まってきた気がします。

しかし、日本の水中考古学の取り組みは世界の国々に比べ遅れているのは、確かです。韓国やインド、フィリピンなど国の機関が水中考古学を先導しています。また、海に面した国で水中文化遺産の保護を法律で明確にしていない国は世界でも珍しいです。これらは事実として受け止めるべきですが、しかし、日本の考古学の成果を見ると、まだまだこの分野で充分に力を発揮していける力はありますし、貴重な遺産を守っていく必要があるのは当然です。

鷹島海底遺跡がクローズアップされていますが、実は日本にはたくさんの水中遺跡があり、列島各地で成果を挙げております。そこで、第4回水中・海事考古学セミナーの開催が決定いたしました!このウェブサイトを長年愛読していただいている皆様には懐かしい企画ではないでしょうか?第2回目の開催では100名近くもの参加者に来ていただき、水中考古学の魅力をお伝えしました。

今回のセミナーは日本各地の水中考古学の研究成果と、様々な時代の遺跡を紹介します。縄文・弥生の遺跡はもちろん、中世や近世の遺跡、そして、近・現代の研究成果をお伝えします。数名の専門家による講演、そして、その後のお客様を交えたディスカッションなどを行います。水中考古学の成果を発表するのはもちろんですが、この学問の魅力もお伝えします。もちろん、元寇の鷹島海底遺跡の船についての研究の発表などもあります。

詳しい内容などは後日発表いたします。このウェブサイト、フェースブックやツイッターなどでも情報をお伝えいたします。

【日時】 10月6日(土曜日)午後

【場所】 桜美林大学四谷キャンパス

【主催】 桜美林大学大学院国際学研究科

お問い合わせは、このウェブサイトからお願いいたします。

『旅する長崎学』「蒙古襲来 神風の島 鷹島 -水中考古学が語るもの-」が開催されます。

ちょうど鷹島海底遺跡での調査が先日終わったそうです。メディアなどで少し取り上げられるそうですので、インターネット・新聞・テレビなどで鷹島の情報を探してみてください。

そんななか、東京で鷹島海底遺跡についての講演が長崎県が企画しているようです。『旅する長崎学』「蒙古襲来 神風の島 鷹島 -水中考古学が語るもの-」が開催されます。

8月21日の一日だけのイベントですが、当日11:00から、会場前のロビーにおいて、「鷹島海底遺跡」の遺物展示を行い、  パネル展示やパンフレットの配布など、長崎県の魅力や情報を発信するそうです。

午後(17;00~)には高野晋司先生(長崎県学芸文化課専門員)や池田榮史先生(琉球大学教授)による対談もあります。

場所は江戸東京博物館 1階ホール(東京都墨田区)です。申し込みが必要とのことです。

台風接近に伴い...

大型の台風4号が日本に接近していますが、皆さんご注意を。さて、台風ですが、もちろん元寇と馴染みが深いのはご存知ですよね。今年、水中遺跡としては初の国指定を受けた鷹島の元寇関連海底遺跡ですが、今月に調査が予定されています。台風4号が九州に接近しているため、少し調査の進み具合が懸念されます。今回の調査は短期間ですので、どれほどメディアに取り上げられるか判りませんが、ニュースなどが出て来次第お知らせします。海底調査も台風では発掘出来ないのは当然です。ですが、実は台風は水中考古学者にとっては調査ができない以上に複雑な関係があります。

特に風の強い台風は、波も強く、海底面にも影響を及ぼします。海底の砂やシルトが波の影響でかき混ぜられることが良く在ります。そうなると、海底の底に埋まっていた遺跡も撹乱されてしまうことが多いようです。もちろん、撹乱されれば遺跡内の遺物の位置関係もバラバラとなり、遺物なども劣化が進んでしまいます。こうなると、台風は考古学者にとって悪いことばかりに考えられるかもしれません。しかし、実は台風が考古学者にとって良い結果を生む場合もあります。

砂に埋もれた海底遺跡はなかなか発見できるものではありません。ソナーやマルチビームなどの音波探査機は「音の反射」で海底面を映し出す機械ですから、砂に埋もれた遺跡は見ることができません。磁器探査期やサブボトム・プロファイラーなどは砂に埋もれていても反応しますが、これらの機材だけでは何が埋もれているか判断することは難しいです。そこで、沈没船などの遺跡の発見に最も効果的なのが、一般の海に関わる人々からの情報です。実際に世界の殆どの水中遺跡が偶然に考古学者以外の人によって発見されています。

つまり、話を元に戻しますと、台風などで撹乱されると、海の地形が大きく変化します。そこで、それまで埋もれていた遺跡が顔を出すことがあります。そのときが遺跡を発見できるチャンスとなるのです。しかし、時間が経つと遺跡が劣化してしまうのは確かです。現在、海底面にある遺跡は、つまり、ごく最近の台風などにより「たまたま」海底面に露出している状態になります。この機会を逃すともう遺跡が失われることになります。沈没船遺跡は何百年も沈んだそのときの状態のように見えるため、そのまま放置しておいてもずっと残っていると思われがちですが、実はどんどん劣化が進むのです。遺跡が露出した状態なら、それは、貴重な遺跡を調査するまたとないチャンスなのです。

水中考古学が一般の間でもポピュラーで指示されている国や地域では、台風の後に、良く市民が海外に出かけてビーチコーミングなどを行います。イスラエルなどは大きな嵐のあとには良く沈没船の発見のニュースが相次ぎます。また、アメリカ東海岸でも、ハリケーンが去ったあとには似たようなニュースが飛び込んでくることがあります。

台風が去った後に、海岸に出てみたり、海に潜ってみませんか?もちろん、安全のため、完全に台風が通過してから海に行ってください。そして、何か不可思議な物体や、遺物が散乱していたら、市町村の教育委員会に連絡をしてください。また、アジア水中考古学研究所や、このページを通してもご連絡していただければ、何か大きな発見につながるかもしれません。大きな発見に繋がれば、自分の名前を水中遺跡の名前につけることも可能だったり?

 

 

ケニアと中国

何度か紹介していますが、中国はアフリカ東海岸の各地で水中考古学調査を試みているようです。鄭和の大航海の痕跡を探すことが目的ですが、本当に国を挙げて精力的に活動をしています。

その一環で、ケニアと中国は合同で訓練や調査を進めています。今年の11月からケニアのモンバサの近くの海域で合同発掘調査を行うようですが、中国船ではなく、ケニア(か周辺地域)の船で150-200年ほど前に沈没した船のようです。

今後もこの2国の水中考古の体制は強化されていくことでしょう。中国はがんばってますね。

海に沈んだタイムカプセル 水中考古学の世界

BSフジで放送中の番組、ガリレオXで水中考古学特集が組まれます!

本放送 5月13日(日)朝 9:30~10:00 再放送 5月20日(日)朝 9:30~10:00

元寇の遺跡ー鷹島海底遺跡はもちろんのこと、初島沖の瓦を積んだ沈没船など、話題は盛りだくさんのようです。

お楽しみに!

 

 

フィリピンと中国:領海問題

フィリピン国立博物館が調査を進めていた中国船の発掘が一時中止になったようです。というのも、中国政府から発掘を中止してくれとの要請があったようです。

スカボロ礁といわれる場所での調査ですが、以前から中国との領土問題が発生していた場所のようです。フィリピン政府は今回の調査の中止は中国政府の要請とは関係がないとは発表しているようですが...中国は元の時代から中国の領域であると主張。考古学調査が行われていた間も軍用機などが「嫌がらせ」のために接近していたり、軍用船が停泊したりと問題ありのようです。

このような問題は今後も起こりそうです。水中文化遺産も資源として管理・活用していく必要がありますが、領土など国際問題に発達する可能性もこのように秘めております。尖閣諸島などでも、もし日本が水中遺跡を発見したらどのように中国が出てくるのでしょうか?色々と考えさせられる問題であるように思います。

 

アジアで進む水中文化遺産の保護

ここ1-2年の間にアジアでもどんどん水中文化遺産保護の動きが高まり始めています。韓国や中国はもちろんですが、一見すると経済的に水中文化遺産をマネージメントするのは難しいのでは?と思える国も進んで水中の文化遺産の保護を国の政策として打ち立てています。

今日は、ここ1ヶ月以内ほどに入ってきたアジアでの水中文化遺産保護の動きについて書かれた一般ニュース記事を集めてみました。どの国も「現状維持」をベースにマネージメントを強調しているのが特徴といえます。水中考古学はお金がかかるというイメージがありがちですが、ユネスコなどが打ち出している水中文化遺産の保護はどれも遺跡のマネージメントで現状での保存を最優先しています。つまり、お金がそれほどかからないことになります。発掘をするという考古学のパラダイムから遺跡をどのように保護・管理しながら情報を得るかというパラダイムへの返還が顕著に見て取れるのではないでしょうか?

 

それでは、最初にスリランカから。

Daily Mirrorからの記事を少し解釈を加えて解説します。元の記事はこちら。No salvaging of wrecks

記事を読む限り、国として方針が定まったように感じられます。また、”strictly implement the law against any form of salvaging of ship wrecks”とありますので、すべての沈没船において(遺物などを持ち去る行為を)禁止することになったようです。沈没船などは良い漁場にもなりえるので、そのことも評価されているようです。ただし、沈没船はダイバーからの観光収入もあるので、沈没船ダイビングについてはOKが出ているようです。現在のところ、スリランカ周辺では約50隻の沈没船が確認されているとのこと。

ひとつ興味深いのは、「コマーシャルダイバーが沈没船を調査することを禁止したわけではない」こと。ただし、遺物を持ち去ることは出来ない。また、引き揚げは国からの許可・指導を受けないと行えないそうです。ユネスコのスタンダードに沿った政策のように感じられますね。ただ、沈没船のパトロールなどを行わないといけないかもしれませんね。まだ多少解決していクべき問題はあるでしょうが、大きな一歩を踏み出した様子です。

 

さて、次にインドネシアはこちらの記事から。Indonesia’s Shipwrecks Mean Riches And Headaches (PHOTOS)

Huffingtonpostからですが、写真などが幾つかあるので、ご覧ください。

インドネシアは現在までに、国が把握しているだけでも500隻ほどの沈没船が確認されています。9世紀のインド洋からの船で中国と貿易をしていた船や、ジャンク船、ヨーロッパの船など実に様々です。2010年に水中文化遺産を保護する法律が出来るまでは、サルベージ会社(トレジャーハンティング)が介入し、国の合意の上(賄賂が横行していたようです)で遺物などを売買していました。しかし、今日ではこれらの行為が違法とされているようです。これまでに国に届出をせずに盗掘された沈没船もあるでしょう。インドネシア周辺の海には1万隻ほどの沈没船がまだ残されている計算もあるようです。

しかし、国の管理などが行き届いていない面もあるようです。漁師などが遺物を引き揚げて売ることはごく一般的に行われているようです。なかなか漁師すべてに禁止令を出したりパトロールをするなど課題は残されているようです。

 

それでは、最後に台湾から。Taiwan Todayからの抜粋です(記事ID Publication Date:03/09/2012)

日本語のニュースなので、抜粋をご覧ください。台湾については個人的な意見は書きませんので、読者のみなさまの自由な意見でお考えください。

台仏水中考古学協力で、海洋文化遺産の保護へ

行政院文化建設委員会とフランスの水中・海底考古学調査部は6日、4年を1期とする、「台湾・フランス水中考古学協力行政協議」を締結すると共に、座談会を開催した。文化建設委員会資産総管理処準備室では、水中文化遺産の保存・メンテナンスおよび宣伝は世界各国が日増しに重視しつつある課題であることに鑑み、澎湖島から台湾海峡にいたる範囲における水中文化遺産の長期的な調査作業に積極的に取り組んでいる。

同準備室ではまた、法令の制定で水中文化遺産を破壊や盗難から守り、関連の歴史文献の収集などで研究を助けられるよう期待。専門的な実験室と修復室を設けて引き揚げられた遺物の保存と修復を行うと共に、海底調査や撮影、発掘、修復の専門人員の育成にも努める。同時に、海洋文化遺産に対する国民の認識を向上させ、特に「それぞれの場所での保護」と「盗難防止」などの国際的な観念の普及を進めて世界との連結を図る。

(中略)

...当時、南シナ海と台湾本島、澎湖島、東南アジア諸国、日本、朝鮮の間の「アジアの地中海」で頻繁な海上貿易があったことの証拠である。古代において台湾は「海のシルクロード」の重要な拠点の一つであり、豊富な水中文化遺産に対する研究と保護が待たれている。

 

 

 

 

 

本の紹介

今日は本の紹介です!東京海洋大学の岩淵先生が書かれた水中考古学のちょっとした専門書です!日本では本当に数少ない水中考古学の本です、是非ご購入検討お願い致します!

 

放射性廃棄物とローマ時代の沈没船

以前に放射性棄物の保管・安全性の確認に沈没船が使われる理由の記事で、アメリカなどの研究者が中心となり、ローマ時代の沈没船から発見されたガラスを研究していることをお知らせしました。これは、考古学の研究ではなく、ガラスの耐久性を調べて、廃棄された放射能物質の保管に本当に適しているかを調べる研究です。ガラスは少しずつ劣化していくので、現在のガラスが本当に何千年も危険な物質の保管に適しているのかを調べる方法はなく、あくまで、推測することしかできません。しかし、実際に古代のガラスでしたら自然環境の中でどのように変化したか判るわけですから、より現実的な「実験」といえるのではないでしょうか?

さて、atom probe tomography systemという機械を使うそうですが...分子トモグラフィーとでも言いましょうか、日本語訳はまだ調べていません。ちなみに、英語版ウィキぺディアには多少システムの説明があります。簡単に説明すると、物体の構造を分子レベル(に近い)状態でみることができるという機械だそうです。CTスキャンとXRF(蛍光X線分析)を足したようなものでしょうか?

まだ研究は初期段階だそうですので、これからもっと情報が出てくればここでも紹介していきたいと思っています。今のところ、マグネシウムの層が2ナノメーターほど分離しているのが確認されたそうです。それが何を意味しているのか、ちょっとわかりませんが、ガラスの耐久性に影響するのでしょう。

このテクノロジーは考古学の研究にもどんどん使えそうですね。まだ値段は高いようです。ですが、このような研究は人々の将来(これから何千年後)の生活を守るためには重要なことだと感じます。特に、放射能に関しては「漏れない」とか「危険ではない」といわれても、千年後は大丈夫?のような質問にはなかなか答えられないでしょう。そこで、沈没船から得られた考古学遺物が役に立つのは非常に有意義なことだと思います。

なによりも、ローマ時代の沈没船から発掘されたガラスを放射線物質の管理状況のテストに使うという発想には驚きです。それだけ沈没船の研究というテーマが海外では研究者や一般の人に知られているといことも意味しています。