水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

Belitung Shipwreck

アラブ・インド・ペルシャの商人は中国の唐の時代に中国に船で出向いて貿易をおこなっていました。このころの船、9世紀あたりの船が以前インドネシアで発見され、トレジャーハンターによって発掘されました。しかし、トレジャーハンターも出来る限りの記録は残しており、いろいろと学術ジャーナルなどに出版を行ってきました。詳しくはこちらで。遺物の殆どはシンガポール政府が買い取り、現在新しくリゾートミュージアムの建設に取り掛かっているようです。

木材の樹種同定やその造船技術からインド洋の船だと考えられています。当時の船はこのほかには発見されていません。簡単な竜骨をもち、船体は縄で互いに結び付けられ、釘などは使用していません。このタイプの船は縫合船と呼ばれています。文献・絵画・伝統造船の研究などからインド洋の船と断定されました。この船はオマーンで復元され、航海実験などもされています

この度、スミソニアン博物館でこの沈没船の遺物が展示されることになったのですが、いろいろと話題を呼んでおります。というのも、この沈没船は考古学が目的で発掘されたのではなく、商業目的で発掘されたからです。スミソニアンや他の博物館は商業目的で発掘されたり売買された遺物などの展示は行わないことが原則です。

考古学者などがこの度この展示に意義を申し立てているわけです。しかし、一方で、この船はインドネシア政府が正式に許可を出し発掘を行っているので「合法」で「発掘」されているわけです。これはインドネシアなど水中文化遺産保護の法律が無い国〔日本もその代表例)ではどこでもありえることなのです。

ユネスコの水中文化遺産保護条約などが様々な国で採用されていますが、多くの国がまだ加盟しておりませんし、多くの問題点をのこしております。水中にある遺跡は陸上とは違うスタンダードを取る人が多くいることは事実であり、費用の調達などを考えると実際に発見したから直ぐに発掘と言う具合に進めるわけではありません。この沈没船は発見から発掘・保存処理・出版まで数年で成し遂げています。考古学のスタンダードで発掘をおこなうと、研究の成果を出すのに倍以上の時間〔15年ほどでしょうか)、費用も掛かります。また、トレジャーハンターの言い分では、世界の貴重な沈没船の多くは埋立地の建設や漁業により多くの船が発見されずに破壊されているので、考古学のスタンダードでは記録を残せずに消えていく船のほうが多いであろうということです。実際に堤防の建設や海の上に建物を建設する際には多くのエリアがまともな事前調査を行わずに埋め立てられているのが現状です。幾つもの貴重な文化遺産が今自分が立っているコンクリートに地面の下にあることも可能性としてはあります。

この当時のインド洋・東南アジアの沈没船は研究が進んでいないことから非常に価値のある文化遺産です。この沈没船の発掘ない世などはそれなりに調査され、出版されています。このように研究されずに破壊されている沈没船が幾つもあるかもしれません。考古学者が望むようなスタンダードではないかもしれませんが、それでも当時の海洋交流の歴史に一石を投じる貴重な発掘でした。考古学者の中にはこの沈没船の報告書などは自分の研究には使わないと言う学者も多くありません。

日本では水中考古学や沈没船の研究はあまり馴染みがないので、絵空事のように感じるかもしれません。また、同じ文化財であるはずなのにどうして水中にあるということだけで陸上の遺跡と別の扱いを受けるか疑問に思う人も多いのではないでしょうか?しかし、世界の多くはトレジャーハンターと考古学者の論争は活発になされています。日本では水中で遺跡を発見しても文化財保護法が適用されるかは現在のところきちんとした法律がないためケースバイケースとなっております。海難救助法が当てられるか、遺失物として処理されるか、はっきりしていません。実際に外国のトレジャーハンターが日本で活動を行っていることも事実として受け止めなくてはなりません。

この沈没船のようにある程度研究され出版されればまだ「まし」といいうことでしょうか?日本も水中文化遺産保護を真剣に考えなくてはならない状況にあると思います。少しでも多くの人が沈没船を貴重な文化遺産と受け止めキチンと保護するべき対象であると認知すれば状況は変わると信じています。トレジャーハンターなどは資金調達のために、自分達のプロジェクトに資金提供をしてくれそうな裕福層には大々的に宣伝を行いスポンサーや投資を募っていますが、多くの一般市民には積極的に広報活動を行っていないように見受けられます。一般の人々が沈没船研究の可能性と重要性に気がつくことが世界の水中文化遺産の保護の近道だと考えています。

SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト

トヨタ財団が後援していただいたSHIPWRECK ASIAプロジェクトからインターネット上でレポートをダウンロードすることが出来ます。

ここまでアジアの沈没船をひとつにまとめた出版物は他にないと思います。泉州・新安・蓬莱沈没船などのほか、南京の造船場発掘報告書概要などもあります。この造船場は鄭和の船団を作ったことで知られています。また、韓国の沈没船などの研究もあります。どれも沈没船などを紹介する内容になっております。アジアの沈没船研究の重要な文献となることでしょう。


SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト の詳細は »

お願い

今回の大地震と大津波は我々の想像をはるかに超えるものでした。被害の状況はまだまだわかりませんし、世界のメディアは日本のニュースがいつまでも流れている状態です。災害にあわれた方、現在避難所などで苦しい思いをしている方々に何か出来ることはないのか、いろいろと考えておりました。一刻も早く行方不明者が救出されること、少しでも新しい生活になれることを期待しております。

今回の地震により思わされたことは、水中考古学者は海の災害の跡地を発掘しているようなものです。例えばジャマイカ島のポート・ロイヤルも地震による液化現象と大津波に飲み込まれ壊滅した町です。水中考古学者がこの町を発掘したときに驚くほどにリアルな町並みが水中にあったことが確認されました。しかし、それは同時に災害の後であることを生々しくも語ってくれます。このような特別な遺跡を掘る者は安易な気持ちではいけないと思います。何百年前の悲劇であってもそれは水中に忘れられずに眠っていました。遺跡や遺構を発掘する際にはやはりそれなりの責任感や使命感がなければいけないのかもしれません。発掘を行う際に当時の人々の記憶をよみがえらせているのだと言う自覚が少し強くなった気がします。今回の日本の災害は何か新しい使命感のようなものを運んできたのかもしれません。今回の地震の話は何百年もすると忘れられてしまうかもしれませんが、もしかしたら将来の考古学者が発掘を行って我々の記憶を呼び覚ましてくれるかもしれません。

自分で出来ることは限られているように思えますが、出来るだけのことはしていきたいと思っています。ボランティアなどあるかもしれませんが、やはりプロに任せておくのが最善だとおもいます。そこで、日本財団の東北地方太平洋沖地震支援基金をお知らせします。

詳しくはウェブサイトでご覧ください。また、出来るだけ多くの方にこの基金のことを広めていただければ幸いです。

AJ Goddard

AJ Goddardという小さな船が100年以上前にカナダとアラスカの国境付近の湖で沈没しました。ちょうど、カナダのゴールドラッシュ時代の船ですが、殆ど歴史から忘れ去られていました。しかし、つい最近、この船が発見されて話題を呼んでいます。小さな船ですが、冷たい淡水で沈み、その後の開発なども付近で行われなかったため、保存状況が良く、当時の生活の様子が驚くほどよく再現されています。

特に、最新の水中3次元レーザー技術開発のためのテストとしても使われていました。また、当時のレコード〔蓄音機で使った)も発見されて現在そこの記録された音楽も復元されています。なかなか小さいながら面白い船です。リンクを幾つか紹介しますので、ご覧ください。

3Dモデルのビデオ

INAウェブサイト

ニュース(100年以上前のレコード)

「沈没船が教える世界史」書評の書評

「沈没船が教える世界史」メディアファクトリーから好評発売中です。様々なかたからいろいろと書評をいただいていますが、なかなか良いものが多いので非常にうれしく思います。まだ買ってない人は是非本屋さんへ!

レビューされたキーワードをピックアップして見ますと…

面白い
読み易い
知らないことがいっぱいあった
一気に読める
世界史のおさらいになる
内容が濃い

などなどです。ネガティブなポイントをリストしてみますと…

図・写真などが少ない
一つ一つの沈没船に対して情報量が少ない

など挙げられます。私も図や写真などをもっと入れたかったのですが、一般図書ですと著作権など写真の使用量などで経費がかさむこと、またページ数に限りがあることなどいろいろと調整が難しいです。それぞれの船に対しての情報が少ないのも、世界史の大きな流れの中でそれぞれの沈没船の重要性を押さえておきたかったでしょう。実は、今回出版した本では取り扱われなかった沈没船についてもすでに書いた原稿がありますし、今回この本で紹介された沈没船でも大幅にカットされた部分があります…いつか続きを書いてみたいですね…ただしもう少し沈没船一つ一つ詳しく書ければおもしろいでしょうね。雑誌などの月刊コラムなどに毎回違った沈没船を紹介できたらいいなと思っています。

この本を書くにあたって「読みやすさ」を重視していました。読んで欲しい人は高校生・大学生です。あまりそこまで専門では在りませんので、読んだ人が興味を持ってくれるように心がけました。特に沈没船、水中考古学、歴史に興味の無かった人に読んでいただいてこんな世界があったのか!と感じてもらいたいです。また、もともとこれらの主題に興味のある人はさらに読み進めて同業者として一緒に研究していきたいです。これからの若い世代に向けてかかせていただきました。

さて、レビュー〔書評)のなかに出てくるキーワードでもうひとつあるのが、漫画「ワンピース」です。海賊や船が活躍するストーリですが、昔の海賊の沈没船などが実際に水中から発見されるのはやはりこのマンがが好きな人には面白く読めるそうですね。ワンピースの作者の尾田栄一郎氏にも読んでもらいたいですね。なにかストーリーのヒントにでもなれば良いですが、どうでしょう?
 

トルコ水中考古学ー週刊朝日

現在発売中の週刊朝日にトルコの水中考古学について写真が載っています!グラビアで写真家の赤木正和さんがトルコの水中遺跡(水中ミュージアム)などで取った写真が掲載されております!赤木さんのウェブサイトも拝見して見てください!

「白鯨」ゆかりの沈没船、188年ぶりに南太平洋で残がい発見

詳しくはリンク先にCNNジャパンで読んでください。英語版もこちらから少し詳しく書かれています。

米作家ハーマン・メルヴィルが代表作「白鯨」を書くヒントとなったエセックス号の船長さんが帰還後に乗った船「ツー・ブラザーズ号」が発見されたそうです。「白鯨」ゆかりの沈没船…とありますが、そういうことです。なんだ、大々的なタイトルの割にはと思うかもしれませんが、当時の捕鯨船のはっくつ例は数が少なく、また詳しい資料も無い場合が多いです。マサチューセッツ州から出発した船が遠く太平洋、そしてインド洋などに出て行くころの船です。日本開国・明治維新にも繋がっていく船と考えれば良いでしょう。

当時のアメリカは捕鯨がメジャービジネスで、世界の海を巡り油などを取るためだけに鯨を狩ったため、鯨の数が激減しました。西洋の捕鯨の歴史を見直す良い機会となればと個人的には考えています。時代をもっとさかのぼればカナダ・レッドベイで発見されたイベリア半島(バスク)の 「San Juan号(1565年)」が特に有名な捕鯨船です。

水中考古学 注目の鷹島

2年ほど前に作られたビデオですが、こんなものが作られていたとは知りませんでした。

元寇終焉の地で知られる長崎県鷹島海底遺跡の紹介ビデオですが、子供向けに分かりやすく水中考古学のこと、保存処理など説明してあります。「子供向け」ではありますが、内容が濃く、実に面白く出来ています。大人でも楽しめますし、勉強になるでしょう。

近くにお出かけの際には鷹島に寄って実際の遺物を目で見ることをお勧めします。「百聞は一見にしかず」です。日本国内で水中遺跡の保存処理をこれだけの規模で行っている場所は他にありません。

ノース・キャロライナ州の沈没船ー保存処理

2009年冬にノースキャロライナ州の海岸で船の一部が海岸発見されたニュースは以前お伝えしました。この船は約400年前のものだそうです。発見地点周辺では昔から16世紀ごろの遺物がよく見つかることが知られていたそうですが、たまたま嵐などにより埋まっていた船の一部が露出し、発見に至った模様。この船の全長は110フィートほどだとか。

現在、この船の保存方法が検討されているそうですが、なかなかどの方法をとるか決まらないそうですが、その間に木材の劣化が進んでいるようです。木材の保存にはいろいろな方法がありますが、果たしてどの方法がいいのか?ポリエチレングレコールを使うのが一般的ですが、すでに乾燥している木材をまた液体につけるのは劣化や変形を促すことになりかねません。瞬間凍結法もありますが、大きな部材は不向きです。バラバラにして一部材づつの保存になるのでしょうか?また、シリコンオイルを使うことも出来ますが、費用が掛かることと、再処理できないことなどが問題視されています…なにやら難しい話ですが、専門家が決められないでいる間に木材がどんどん劣化しているのは事実です。

個人的には保存処理のプランを立てるまで発掘をしないのが鉄則ですが、このようにたまたま発見された場合はそうもいえません。適切な保存方法を考え出し、充分な予算が立てられるまで埋め戻すことも可能でしょうか?まだまだ完璧ではない保存処理。水中考古学者にとって重要な課題です。

The Virginian-Pilotから引用

After enduring some 400 years buried beneath the Corolla surf, the oldest shipwreck yet found in North Carolina sits on concrete drying and cracking in the Outer Banks elements.

Experts are scrambling to figure out how best to save it: Submerge it in regular baths, soak it for years in a substance also used in antifreeze, coat it in sugar water, saturate it with an expensive silicone oil or freeze-dry it. Or maybe some combination.

“I’m not going to get a second chance on this,” said Joe Schwarzer, director of the Graveyard of the Atlantic Museum and the state’s maritime museums. “I’ve got to do it right the first time. If we fail, I’d like to know it was an informed failure.”

Advice is coming from several sources, including scientists working on remains of the Queen Anne’s Revenge that Blackbeard commanded and the Civil War-era warship Monitor.

Experts at East Carolina University are investigating the wreck in Corolla to determine what ship it was and how best to preserve it.

Eric Nordgren, a conservator with the Mariners’ Museum in Newport News, plans to learn more about protecting ancient waterlogged wood while on a trip to England.

“It takes a lot of time and resources to preserve a shipwreck,” Nordgren said, adding that funding is limited.

It may be that the 12-ton remains of the shipwreck might be better off outside, sitting on a concrete apron just outside the museum’s back door, Schwarzer said.

Schwarzer said he is using one short, thick beam to see which is better: indoor or outdoor storage. So far, the beam inside a climate-controlled room also shows signs of deterioration, he said.

In November and December 2009, storms uncovered most of the wreck on the beach not far from the Currituck Beach Lighthouse.

For years, beach combers Ray Midgett and Roger Harris had been using a metal detector around parts of the wreck sticking up from the sand. They found old coins from the early 1600s and other artifacts.

But once the wreck was exposed, the surf pounded it and carried it down the beach and back, breaking off parts.

Alarmed, Midgett began writing letters asking for help. With backing from state Sen. Marc Basnight, members of the Wildlife Resources Commission and volunteers used heavy equipment to drag the wreck to a lot near the lighthouse. In July, the wreck was moved to Hatteras.

“It’s very difficult, which is why we seldom recommend removing these things from the beach,” said Nathan Henry, lead conservator with the North Carolina Underwater Archaeology Branch.

Henry recommended getting the entire 17-foot by 37-foot remains indoors.

But he acknowledged, “You could debate this all day.”

For instance, a shipwreck on display in the Town of Nags Head has been in the elements for more than 30 years without extensive deterioration. But in a humid climate, insects and mildew can take a toll, Henry said.

A long-term soaking in polyethylene glycol, known as PEG, may be the best technique available to preserve shipwreck lumber, Henry said.

Parts of the Queen Anne’s Revenge soak in large vats of PEG solution. Ideally, pieces brought out of the water are quickly submerged before they dry out. The technique would not be as effective with the Corolla shipwreck because it has already dried and cracked, he said.

PEG, a chemical used in a wide variety of products, including antifreeze and medicine, replaces the water in the soaked wood. It comes in a variety of forms from liquid to powder. Typically, the solution used for shipwrecks has the consistency of warm syrup, Nordgren said.

A shipwreck known as the Vasa in Sweden was sprayed with polyethelene glycol for many years. Later, curators discovered the presence of sulfuric acid within the wood that could cause deterioration. Experts are not certain how much PEG had to do with the formation of the acid, Nordgren said.

Ancient canoes saved from Lake Phelps in Washington County were soaked in a sugar water solution and have held up so far. There are some concerns, however, that in the wrong environment, sugar water could attract bacteria or insects, Nordgren said.

Some parts of old ships have been freeze-dried, but they should be treated first with PEG, Henry said. The trick is finding a freeze-drying machine large enough to handle the Corolla wreck, Nordgren said.

Silicone oil is one of the latest techniques developed for preserving wrecks, but treatments are typically used for small parts due to the cost. The silicone oil treatment, however, is irreversible, Nordgren said, and conservators would rather not use a treatment that is irreversible, since something better may come out later.

“If it doesn’t work, you’re out of luck,” he said.

Some wreck remains are bathed in fresh water to remove salt, Nordgren said. In that technique, the bath water should be changed regularly or the salt can crystallize and cause the wood to crumble.

Experts, with the aid of computer models, calculated that the ship found in Corolla was 110 feet long by 20 to 30 feet wide. It was broad and slower-moving and most likely used for hauling merchandise, Schwarzer said. Its 12-inch by 12-inch beams were made from European white oak, he said.

The wreck dates from the early to mid-1600s, making it the oldest among the hundreds of shipwrecks found on the North Carolina coast.

“If this ship were carrying a full load of cargo, it would have been a devastating loss to whoever was funding the ship,” Schwarzer said.

And now, Schwarzer and others are trying to make sure it isn’t lost again.

Jeff Hampton, (252) 338-0159, jeff.hampton@pilotonline.com

アルバニアの水中考古学

最近、アルバニアの水中考古学が話題となっております。

アルバニアってヨーロッパのどこ?と思っている人も多いのではないでしょうか?ボスニアやモンテネグロとかが並ぶバルカン半島にあります。イタリアの向かい側です。

近年まで非常に排他的で独自の政策を取ってきた国ですが、水中考古学に力を入れてきております。もともと、ローマ時代などにはイタリアとの関係が強く海を通した貿易が盛んでした。また、古代から中世にかけ海賊が多いことでも知られています。しかし、貿易が少ないところに海賊がいるわけがないですから、それだけ活発な海上活動があったことの証となります。また、ローマ時代後半になると、アルバニアなどで作られたガレー船などがローマ海軍の主力部隊となります。

最初に注目するべきことは2009年にユネスコ水中文化遺産保護条約を承認していることでしょう。また、ただ承認するだけでなく、国として水中文化遺産保護の対策を打ち出していることで非常に重要な意義があります。ユネスコの保護条約を認めつつもただペーパーの上でのみ承認され、国としてなにも行っていない、もしくはいまだにトレジャーハンターがいる国もあります。アルバニアは国が豊かではないにも関わらず政府が積極的に水中文化遺産保護に対して取り組んでいる非常に良い例でしょう。

RPM Nautical Foundation(RPMNF)という組織が近年アルバニアの海のサーヴェイを行っており幾つもの沈没船を発見しております。マルチビームを使用したり、また、ROVも使用して沈没船の分布図データベースを作成しております。これらの作業では遺物の引き揚げは殆ど行いません。沈没船それぞれの特徴などを掴み、国がデータベースの管理を行います。将来研究目的があればそのデータベースから沈没船を選んで発掘などを行うことになります。

アルバニアはダイビングが禁止されていたこともあり、また、海外からの調査やトレジャーハンティングを遮断していました。そのため、殆どの沈没船が無傷で海底に残っているのです。世界でも珍しい例ではにでしょうか?海底開発などが遅れていたこともまた、保存状況の良さに関係しています。ただ、ひとつ問題なのがトローリングなどにより「網」が沈没船を破壊しているということです。現在ではこのような漁業が禁止されています。

アルバニアの調査報告ですが、RPMNFのウェブサイトから詳しく知ることが出来ます。他の国もアルバニアの例を見習って水中文化遺産の保護を進めていく必要があるのではないでしょうか?