水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

クロードさん

50年以上も水中考古学に関わってきたクロードさん(Claude Duthuit)が先日ニューヨークで心臓発作でお亡くなりになりました、ご冥福をお祈りいたします。私もほんの2-3日前までイーメールなどで連絡を取り合っていたので突然の知らせに驚きを隠せませんでした。

クロードさんはジャック・クストーの右腕ダイバーであったこともあり、1960年代のジョージ・バス先生とともにケープ・ゲラドニアなどでチーフ・ダイバーとして活躍してきました。彼はフランスを代表する名画家ヘンリー・マチスの孫であり、マチス氏の絵画コレクションを管理などもしており、その方面でも活躍をしておりました。

数年前に和歌山県串本町を訪れましたが、その際に地元のダイバーと一緒に潜り、50年に及ぶダイビングキャリアの実力を披露。70歳になっても水の中では魚のように自由に動き回る姿は印象的だったようです。

初期の水中考古学の発達を支えてきた世代の方々がお亡くなりになることが最近続いていますが、時代はどんどん進んでいるようです。新しい世代がドンドン育ってくれること、それもクロードさんが一番力をいれていたことでもあります。

ビンラディンの死体を探索計画

自称トレジャーハンターのエキスパートがビンラディンの死体を捜す計画を立てているそうです。基本的にトレジャーハンターはメディアなどからの注目を集め面白そうなプロジェクトを組むことで投資者を集めるビジネス。歴史的価値のある遺跡を発掘する考古学とは異質の存在です。

個人的にはこのようなプロジェクトに投資をする人がいるのであれば、日本の歴史に大きな意義のある遣唐使船や朱印船、もしくは中国のジャンク船などなんでもいいので、別の歴史・考古学的に価値のある遺跡の探索に投資して欲しいものです。

中国・ケニア合同調査

このサイトで何度かお伝えしている、中国・ケニアの合同調査。ケニアの沖で中国の沈没船を探すというプロジェクトですが、中国政府は特に明時代の大航海を築いた鄭和の船を捜すことが目的ではないとしています。中国のジャンク船が発見されても鄭和の船との特定は難しそうですし。

現在のところ何隻かターゲットを発見している模様。今年中にはそれぞれについて詳しく調べる新たなプロジェクトが開始されるそうです。すこしずつ成果が見えてきたような気がします。ジャンク船が特定されれば大発見ですね。インド洋の水中考古学に新たに注目が集まるかもしれません。

黒ひげの武器について…

海賊黒ひげが実際に使用した武器についてですが、いろいろと新しい事実が分かってきています。

カリブの海賊といえば、もちろん大砲をたくさん積んでいたわけですが、この弾が一風変わっていたようです。大砲の弾といえばあの丸い鉄の弾を普通連想しますが、海賊の船はちょっと違っています。いろいろなモノか作られていたり、その場でいろいろと工夫してあるもので殺傷能力を高めていたようです。たとえば、袋にいらなくなった鉄くずをつめてそれを発射したり、大砲の弾の後ろに鎖をつなげたりしていたそうです。

これらの弾がなぜ重要なのか?よく考えれば分かるのですが、これらの弾はそれほどまっすぐは飛ばないので、射程距離は短くなりますし、狙いも正確ではなくなります。また、船を壊すような威力などもなくなります。その代わりこれらの弾が発射されれば一風変わった音がする(であろう)ことと、これらのものが四方に飛び散るわけです。船を壊す鉄砲の弾ではなく、相手を傷つける能力に優れた飛び道具です。相手を殺したりすることもあったでしょうが、相手に傷を負わせて戦意を喪失させることが目的ではなかったのでしょうか?もちろん乗っ取る船もそれほど傷をつけることもありません。

このような工夫は良く知られていましたが、普通の軍船や商船に比べて変則的な弾が多いということだと思います。今までに知らなかった変わった武器も発見されているようです。その場で工夫して作っているわけですから当時の海賊の知恵のよさが伝わってきます。たぶん、失敗作もあったんでしょうが…さて、海軍などは遠くから弾を撃ちつけ船を壊したり、特に帆を壊すことが戦法の主流です。大砲により帆が壊れれれば、自由に動けないわけですから、こっちのもの。海賊は大事な船を傷つけずに獲物の船員に傷を負わせることが目的。戦いの目的によって大砲の弾も変わってくるわけですね。

このような弾はなんとなく日本の鷹島海底遺跡で発掘された「てつはう」にもなんとなく似ている気がします。これは13世紀の中国のものですが、丸い弾にたくさんの鉄片が詰め込まれていました。これは完全に対人兵器で船を壊す能力はありません。なかなか時代と地域が違っていても武器が似てくるのは面白いですね。

最近海賊の沈没船がよく話題になってます

映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」とか漫画「ワンピース」の影響でしょうか、最近は有名な海賊使用した沈没船が続々と発見・発掘されています。

1.黒ひげ(パイレーツ・オブ・カリビアンとワンピースどちらにも登場)-もちろん実在した人物です。本名は不詳。エドワード・サッチ、ティーチなど言われています。イギリス出身であるのは確かだと思います。彼の船クイーン・アン・リベンジ号がノース・キャロライナ州で発掘されています。数年前から長いこと調査が進められています。

CNNがちょうどビデオをアップしています。

2.キャプテン・キッド-こちらはパイレーツ・オブ・カリビアンに出てきたんでしょうか?覚えていません…海賊として捕らえられましたが、少し可愛そうな人かもしれません。また、彼の沈没船が海底ミュージアムとして公開されるようですね。

先日の記事をご覧ください。

3.ヘンリー・モーガンがパナマで失った船の大砲などが引き揚げられています。この人は海賊から足を洗ってジャマイカの総督になったひとです。ただし、海賊の活動を少しでも抑えようとイギリスが交渉していたそうですが、裏で自分の仲間の海賊に秘密で海賊行為を行わせていたとか。ラム酒の表紙のモデルとして現在も活躍中!

ナショナルジオグラフィック・ジャパンが記事を書いているようです。

4.ポート・ロイヤル - 海賊の巣、ジャマイカのポート・ロイヤルの港です。17世紀末の地震とその後の津波、液化現象で壊滅した町です。水中に路や家などが残っています。また、津波で押し寄せられた船などが家の中から発見されており、当時の津波の威力を物語っています。海中から引き揚げられた懐中時計は地震の時間を記録しています。

テキサスA&Mが以前に発掘を行っています。そろそろ最終報告書が出るそうですが…

 

有名な海賊関連の遺跡としてピックアップしてみました。他にも海賊船の発掘などが行われたかもしれませんが、遺物から海賊と特定することは非常に難しいとされています。民間の商船も武装していましたし、軍船との区別も。海賊は他の国の船を略奪して使うので、さらに国の特定なども難しくなります。海賊の旗でも残っていれば…水中では有機物の保存が良いので、「残っていない」とはいいきれませんね。もしかしたらそのうち発見されるかも?

海賊の船については詳しくは沈没船が教える世界史でお読みください。ページ数はあまりないですが、いろいろと書いています。

 

 

日本考古学協会第77回総会

日本考古学協会第77回総会の図書交換会でアジア水中考古学研究所も参加するそうです。

海底遺跡ミュージアム構想のブログより引用

今月28日(土)・29日(日)に
日本考古学協会第77回総会が國學院大学渋谷キャンパス(東京都渋谷区東4-10-28)で開催されます。

総会では、公開講演会・セッション・研究発表会・図書交換会が公開されます。
場所やプログラム等の詳細については、日本考古学協会のホームページでご確認ください。
http://archaeology.jp/index.htm

総会のプログラムへは、参加費無料(レジュメは有料)でどなたでも参加できます。
日本国内の研究者が一堂に会し、
国内および日本の研究者がかかわった外国の最新の調査成果や研究成果が公開されます。

日本考古学界最大のイベントですので、
興味のある方は、ぜひ参加してみてください。

なお、29日の図書交換会では、
全国から持ち寄られた最新の発掘調査報告書や研究誌がみられ、購入することもできます。

図書交換会へは、アジア水中考古学研究所も参加します。
神奈川県のブースでの参加となりますので、ご参加される方はぜひお立ちよりください。

キャプテン・キッドの沈没船=海底ミュージアム

キャプテン・キッドの沈没船が確認されたのが数年前このサイトでも紹介しました。この船はドミニカ共和国のカタリーナ島で発見され、その一部がインディアナ大学のチームによって発見されました。積荷の記録や、樹種同定などから有名なキャプテン・キッドの沈没船の判断され、話題を呼びました。この度、観光客にそのまま展示する海底ミュージアムとして遺跡を活用していくことが決まったそうです。以前から話はありましたが、予算なども後援する団体などが正式に決まった模様です。

ニュースサイト1

ニュースサイト2

キャプテン・キッドの沈没船については「沈没船が教える世界史」〔メディアファクトリー新書)でもふれられていますので、詳しくはそちらをご覧ください。

ジョージ・バス教授がBandelier Award受賞

アメリカ最大(?)の考古学協会ーArchaeological Institute of America (AIA)が考古学に貢献した人に与えるBandelier Awardが今年はジョージ・バス先生に与えられました。何年か前、同じ賞がハリソン・フォード氏に与えられていろいろと騒動になったので覚えている人もいるかもしれません。

バス先生は水中考古学の一人者でこの学問をしっかりとした研究として世界に認めさせたことで有名です。1960年代にトルコで沈没船の発掘を初めました。陸上の考古学手法を考古学者自らが水中に持ち込んだことに意義があるとされています。バス先生はテキサスA&M大学で世界で始めて水中考古学が学べる学部を設立。

2001年にはアメリカ国家科学栄誉賞も受賞しています。

サイパンの水中考古学

アメリカの一般向け考古学雑誌「Archaeology」にサイパンで行われている第二次大戦の水中遺跡についての記事が掲載されています。

もちろん遺物は戦車や戦闘機など水中に沈んだものですが、陸上の戦争遺跡なども視野に入れサイパン島全体の遺跡の分布を調べています。現在の状況のまま放置しておくと劣化が進み将来は調査ができなくなってしまうでしょう。これらの遺跡がなくなる前に調査を行いサイパン島の歴史の研究に役立ていくそうです。

これらの遺跡・遺物は戦争遺跡ですので発掘などは伴わない事前調査です。多くの日本人の方に知ってもらいたいプロジェクトです。この調査はフリンダース大学などが中心隣進めています。

ヴァーサ号引き上げから50年

17世紀、スウェーデンが国の威信をかけて建造したものの、最初の航海でストックホルム湾内で沈没したヴァーサ号は有名です。1960年代に発見され引き揚げ、発掘、保存処理が行われ、現在では船が丸ごと見れる博物館が建てられました。北欧で入場者数ナンバーワンを誇るヴァーサ号ミュージアムも船体の保存処理に20年、未だにまだ保存処理が行われていない遺物や研究もまだまだこれからという部分も多く残っています。

実は今年はヴァーサ号引き上げから50年!いろいろなベントなどあるようです。北欧にお住まいの人、近くに旅行に行く予定のある人は是非ヴァーサ号を見てきましょう!