水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

ノース・キャロライナ州の沈没船ー保存処理

2009年冬にノースキャロライナ州の海岸で船の一部が海岸発見されたニュースは以前お伝えしました。この船は約400年前のものだそうです。発見地点周辺では昔から16世紀ごろの遺物がよく見つかることが知られていたそうですが、たまたま嵐などにより埋まっていた船の一部が露出し、発見に至った模様。この船の全長は110フィートほどだとか。

現在、この船の保存方法が検討されているそうですが、なかなかどの方法をとるか決まらないそうですが、その間に木材の劣化が進んでいるようです。木材の保存にはいろいろな方法がありますが、果たしてどの方法がいいのか?ポリエチレングレコールを使うのが一般的ですが、すでに乾燥している木材をまた液体につけるのは劣化や変形を促すことになりかねません。瞬間凍結法もありますが、大きな部材は不向きです。バラバラにして一部材づつの保存になるのでしょうか?また、シリコンオイルを使うことも出来ますが、費用が掛かることと、再処理できないことなどが問題視されています…なにやら難しい話ですが、専門家が決められないでいる間に木材がどんどん劣化しているのは事実です。

個人的には保存処理のプランを立てるまで発掘をしないのが鉄則ですが、このようにたまたま発見された場合はそうもいえません。適切な保存方法を考え出し、充分な予算が立てられるまで埋め戻すことも可能でしょうか?まだまだ完璧ではない保存処理。水中考古学者にとって重要な課題です。

The Virginian-Pilotから引用

After enduring some 400 years buried beneath the Corolla surf, the oldest shipwreck yet found in North Carolina sits on concrete drying and cracking in the Outer Banks elements.

Experts are scrambling to figure out how best to save it: Submerge it in regular baths, soak it for years in a substance also used in antifreeze, coat it in sugar water, saturate it with an expensive silicone oil or freeze-dry it. Or maybe some combination.

“I’m not going to get a second chance on this,” said Joe Schwarzer, director of the Graveyard of the Atlantic Museum and the state’s maritime museums. “I’ve got to do it right the first time. If we fail, I’d like to know it was an informed failure.”

Advice is coming from several sources, including scientists working on remains of the Queen Anne’s Revenge that Blackbeard commanded and the Civil War-era warship Monitor.

Experts at East Carolina University are investigating the wreck in Corolla to determine what ship it was and how best to preserve it.

Eric Nordgren, a conservator with the Mariners’ Museum in Newport News, plans to learn more about protecting ancient waterlogged wood while on a trip to England.

“It takes a lot of time and resources to preserve a shipwreck,” Nordgren said, adding that funding is limited.

It may be that the 12-ton remains of the shipwreck might be better off outside, sitting on a concrete apron just outside the museum’s back door, Schwarzer said.

Schwarzer said he is using one short, thick beam to see which is better: indoor or outdoor storage. So far, the beam inside a climate-controlled room also shows signs of deterioration, he said.

In November and December 2009, storms uncovered most of the wreck on the beach not far from the Currituck Beach Lighthouse.

For years, beach combers Ray Midgett and Roger Harris had been using a metal detector around parts of the wreck sticking up from the sand. They found old coins from the early 1600s and other artifacts.

But once the wreck was exposed, the surf pounded it and carried it down the beach and back, breaking off parts.

Alarmed, Midgett began writing letters asking for help. With backing from state Sen. Marc Basnight, members of the Wildlife Resources Commission and volunteers used heavy equipment to drag the wreck to a lot near the lighthouse. In July, the wreck was moved to Hatteras.

“It’s very difficult, which is why we seldom recommend removing these things from the beach,” said Nathan Henry, lead conservator with the North Carolina Underwater Archaeology Branch.

Henry recommended getting the entire 17-foot by 37-foot remains indoors.

But he acknowledged, “You could debate this all day.”

For instance, a shipwreck on display in the Town of Nags Head has been in the elements for more than 30 years without extensive deterioration. But in a humid climate, insects and mildew can take a toll, Henry said.

A long-term soaking in polyethylene glycol, known as PEG, may be the best technique available to preserve shipwreck lumber, Henry said.

Parts of the Queen Anne’s Revenge soak in large vats of PEG solution. Ideally, pieces brought out of the water are quickly submerged before they dry out. The technique would not be as effective with the Corolla shipwreck because it has already dried and cracked, he said.

PEG, a chemical used in a wide variety of products, including antifreeze and medicine, replaces the water in the soaked wood. It comes in a variety of forms from liquid to powder. Typically, the solution used for shipwrecks has the consistency of warm syrup, Nordgren said.

A shipwreck known as the Vasa in Sweden was sprayed with polyethelene glycol for many years. Later, curators discovered the presence of sulfuric acid within the wood that could cause deterioration. Experts are not certain how much PEG had to do with the formation of the acid, Nordgren said.

Ancient canoes saved from Lake Phelps in Washington County were soaked in a sugar water solution and have held up so far. There are some concerns, however, that in the wrong environment, sugar water could attract bacteria or insects, Nordgren said.

Some parts of old ships have been freeze-dried, but they should be treated first with PEG, Henry said. The trick is finding a freeze-drying machine large enough to handle the Corolla wreck, Nordgren said.

Silicone oil is one of the latest techniques developed for preserving wrecks, but treatments are typically used for small parts due to the cost. The silicone oil treatment, however, is irreversible, Nordgren said, and conservators would rather not use a treatment that is irreversible, since something better may come out later.

“If it doesn’t work, you’re out of luck,” he said.

Some wreck remains are bathed in fresh water to remove salt, Nordgren said. In that technique, the bath water should be changed regularly or the salt can crystallize and cause the wood to crumble.

Experts, with the aid of computer models, calculated that the ship found in Corolla was 110 feet long by 20 to 30 feet wide. It was broad and slower-moving and most likely used for hauling merchandise, Schwarzer said. Its 12-inch by 12-inch beams were made from European white oak, he said.

The wreck dates from the early to mid-1600s, making it the oldest among the hundreds of shipwrecks found on the North Carolina coast.

“If this ship were carrying a full load of cargo, it would have been a devastating loss to whoever was funding the ship,” Schwarzer said.

And now, Schwarzer and others are trying to make sure it isn’t lost again.

Jeff Hampton, (252) 338-0159, jeff.hampton@pilotonline.com

アルバニアの水中考古学

最近、アルバニアの水中考古学が話題となっております。

アルバニアってヨーロッパのどこ?と思っている人も多いのではないでしょうか?ボスニアやモンテネグロとかが並ぶバルカン半島にあります。イタリアの向かい側です。

近年まで非常に排他的で独自の政策を取ってきた国ですが、水中考古学に力を入れてきております。もともと、ローマ時代などにはイタリアとの関係が強く海を通した貿易が盛んでした。また、古代から中世にかけ海賊が多いことでも知られています。しかし、貿易が少ないところに海賊がいるわけがないですから、それだけ活発な海上活動があったことの証となります。また、ローマ時代後半になると、アルバニアなどで作られたガレー船などがローマ海軍の主力部隊となります。

最初に注目するべきことは2009年にユネスコ水中文化遺産保護条約を承認していることでしょう。また、ただ承認するだけでなく、国として水中文化遺産保護の対策を打ち出していることで非常に重要な意義があります。ユネスコの保護条約を認めつつもただペーパーの上でのみ承認され、国としてなにも行っていない、もしくはいまだにトレジャーハンターがいる国もあります。アルバニアは国が豊かではないにも関わらず政府が積極的に水中文化遺産保護に対して取り組んでいる非常に良い例でしょう。

RPM Nautical Foundation(RPMNF)という組織が近年アルバニアの海のサーヴェイを行っており幾つもの沈没船を発見しております。マルチビームを使用したり、また、ROVも使用して沈没船の分布図データベースを作成しております。これらの作業では遺物の引き揚げは殆ど行いません。沈没船それぞれの特徴などを掴み、国がデータベースの管理を行います。将来研究目的があればそのデータベースから沈没船を選んで発掘などを行うことになります。

アルバニアはダイビングが禁止されていたこともあり、また、海外からの調査やトレジャーハンティングを遮断していました。そのため、殆どの沈没船が無傷で海底に残っているのです。世界でも珍しい例ではにでしょうか?海底開発などが遅れていたこともまた、保存状況の良さに関係しています。ただ、ひとつ問題なのがトローリングなどにより「網」が沈没船を破壊しているということです。現在ではこのような漁業が禁止されています。

アルバニアの調査報告ですが、RPMNFのウェブサイトから詳しく知ることが出来ます。他の国もアルバニアの例を見習って水中文化遺産の保護を進めていく必要があるのではないでしょうか?

平成22年度金沢大学公開講座「日本海の水中考古学」

日本海域水中考古学会と金沢大学が公開講座を行うそうです。

平成22年度金沢大学公開講座「日本海の水中考古学」
金沢大学サテライト・プラザ
2011年1月22日(土)10:30-16:00
佐々木 達夫「日本海に沈む歴史と水中考古学」
小川 光彦「沈没船と積荷の海底調査風景」
酒井 中「能登半島の海岸から歴史を探る」
垣内 光次郎「日本海から引き揚げられた珠洲焼」
佐々木 花江「海揚がり陶磁器と金沢城下町の発掘品」

なかなか興味のある発表がそろっているようです。お時間のある方は是非参加してください。詳しくは日本海域水中考古学会まで。

アジア水中考古学研究所ー連絡会のお知らせ

アジア水中考古学研究所の関東・東北会員の連絡会のお知らせです。

・開催日:2月19日(土)
・時 間:13:30~17:00
・場 所:東京海洋大学越中島キャンパス3号館4階405室(東京都江東区越中島2-1-6)
場所の詳細は,以下を参照ください
http://www.kaiyodai.ac.jp/info/access/43.html
※当日は,直接,会場へお越しください.

内容は,あらためてお知らせしますが,
プロジェクト関連調査の報告とともに,外部講師をお招きしてお話をしていただきます.

今回,お招きする講師の方は,
現在のプロジェクトのパートナーとして,瀬戸内海沿岸域の調査を担当していただいている
NPO法人水中考古学研究所の水野恵利子さんです.

NPO法人水中考古学研究所がこれまでに携わってきた調査のお話などをしていただきます.
昨年話題になった坂本龍馬の「いろは丸」の調査もおこなっており,
水中考古学から明らかとなった龍馬関連の興味深いお話も聞けそうです.

尚、連絡会は研究所会員対象となっておりますが、一般の参加も可能です。お手数ではありますが、会員でない方で興味のある方は事前に連絡していただくようお願い申し上げます。

多くの方のご参加をお待ちしております.

アジア水中考古学研究所 理事
質問・お問い合わせは林原利明までお願いいたします。

ツイッター始めました

ついにツイッター始めました!

なにやらサイトのあちこちにブルーの鳥のマークなどがありますが、ツイッターへのリンクです。このサイトで紹介するほどでもないようなささいな水中考古学ニュースをいち早くお届けします。できれば1-2日に1回は何かつぶやいていく予定にしています。

すでにアカウントをお持ち方はフォローしてください。まだ、ツイッターを使ったことが無い人、いったい何のことか分からない人も是非始めて見ましょう。特に難しいものではないので…

トルコ軍艦「エルトゥールル号」保存処理進行中

和歌山県串本沖で発見された19世紀末のトルコ軍艦「エルトゥールル号」の調査で回収された遺物の保存処理が行われています。この沈没船はトルコと日本の友好を深めるきっかけになった船です。遭難した船の乗組員を日本の大島・串本の住民が介護をしたことで有名です。

保存処理は遺物によっては何十年と掛かることがあります。鉄は特に厄介で、錆が進行すると、周りの遺物や砂、貝がらなどを取り込んで膨れ上がります。てんぷらの衣のようになります。一見するとコンクリートのようにかちこちですが、中に遺物が詰まっているため、海中でばらばらにするよりもまとめて引き揚げて、保存処理をしながら解体していく作業になります。そのため、発掘してから何年もしてから貴重な遺物が見つかる場合もあるのです。

エルトゥールル号の今年の調査は発掘は行っていないようですが、このコンクリーションの中からさまざまな遺物がでてくることでしょう。今回発見されたのはコーヒーミルだそうです。

「エ号」関連のニュースはいろいろありそうです。映画が作成されているとか?いや、発掘の映画ではなくて、「エ号」についての。トルコの映画っていままで2-3作しか見たことがないのですが、日本でも公開されるようですね。

海賊黒ひげの剣

お馴染み海賊黒ひげの沈没船調査から剣が発見されたようです。ただの剣ではなく、金などで装飾が施されていた模様。詳しくはナショナルジオグラフィック社のニュースをご覧ください。また、「沈没船が教える世界史(メディア・ファクトリー)」にも海賊黒ひげの調査について書いています。

個人的な見解ではこれが海賊黒ひげの剣と言えるかと問われると、答えるのは難しいですね。彼は船を座礁させて、自分は逃げたわけですから、高価なものは持っていったはずですよね。それか、どこかに隠してあったものか。もしくは、彼はもっと高価な剣を幾つか持っており、今回発見されたのは、別に捨てても良かった剣だったか?あまり使いやすそうな剣ではないですね。

黒ひげ本人が描かれた試料など残っていますが、剣の細部まで詳細に残されているものは、どこまで信頼できるのか?この発見の考古学的価値は?これも難しいですね…装飾品などは個人の好みが反映されやすいのでスタイルなどが統一されていないのが普通です。なので、土器などと違いどこの時代に誰がどのように作ってどう流通したかを探るにはあまり向いていません。土器などは専門家が見れば特定は直ぐに出来ますが、このような発見は、それ単体がユニークであるが故、特定が出来ない場合が多いです。この破片から剣が作られた場所などが特定できれば良いでしょうが…どうでしょう。 

日比野克彦が迫る 海底遺跡の謎

もう今頃は巷に出回っている月刊ダイバー2月号で去年行われた日比野克彦さんと水中考古学者林原利明のトークショーの内容が取り上げられています。

興味のある方は書店でお求めください。

もしくはこちらから

歴史考古学総会

1月4日ー9日にかけてSociety for Historical Archaeology(歴史考古学学会)が主催する歴史・水中考古学総会がテキサス州のオースチンありました。この学会は早くから水中考古学、おもに沈没船の研究に力を入れており、毎年何百人もの水中考古学者が集まり最新の研究を発表しています。プログラムはジェネラルセッション、陸上考古学セッション、水中考古学のセッションに分けられています。

プログラムを見る限り今年は、不思議といろいろと節目の年であったようですね。水中考古学誕生50年のセッションはジョージ・バス先生のトークから始まり(私もこのセッションでベトナムの調査について発表しました)、地中海ももちろんですが、カナダのゴールドラッシュの船、カリブ海のヘンリー・モルガン(あのラム酒のラベルで使われている海賊の人)など世界のいろいろな地域の調査が紹介されました。ヴァーサ号も50周年だとか。もうそろそろすべての遺物の保存処理と分析などが完了するそうです。最新のデジタルレコーディングなどを使ってヴァーサ号の船体を記録しているようです。メキシコ水中考古学誕生30周年でもあったようですね。メキシコは資金がないなか地域の協力を得ながらいろいろとがんばっているようです。また、短期のプロジェクトなどは低所得者層や災害で職を失った人をトレーニングしているそうです。保存処理などは単調な仕事などがあるので、効率が良いということでしょう。

その他のセッションでは最新のROV(水中ロボット)やサーヴェイの方法などなどいろいろと面白い発表がありました。また、サイパン戦争遺跡の全体的なサーヴェイも行われており、GISを使い遺跡の位置のデータベース化など行われているようです。私も子供のころサイパンに行って海の中にある戦車で遊んだ記憶があります。2010年にプロジェクトが始まったばかりなので、これから日本からも協力を得たいとのことです。特に発掘などはおこなわず、遺跡郡全体の把握を目的としています。

この学会には世界から水中考古学者が何百人と集まるわけですが、アジアからの参加は私が知っている限り無し…今後アジアでもこの学問が発展してくれることを願っております。

 

ペリーのお兄さんの船発見!

ペリーと言えば皆さんご存知、日本に開国を迫ったあの、ぺりーさんです。実は彼の家は名門海軍一家。彼のお兄さんも有名な海軍の船長でした。つい先日、お兄さんの船がアメリカ・ロードアイランド州沖で発見されたようです。1811年沈没で、今年がちょうど200周年!

実は地元ダイバーにより数年前に発見されていたそうですが、極秘?で調査がされていたようで、200周年に合わせて発表されたそうです。発見者は独自の調査により99%ペリーの船だと確信しているそうです。

専門家により調査はほとんどおこなわれていないようですが、アマチュアダイバーによって発見・調査されることはそう珍しくありません。貴重な水中文化遺産はこのように地域の人たちによって守られていくのが、今後の良いシナリオではないでしょうか?

You Tubeのビデオ