水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

アジア・太平洋水中文化遺産会議

アジア・太平洋水中文化遺産会議が来年ハワイで開催されます。前回は初めてマニラで行われており、第2回目となります。マニラでの会議は多くの国から研究者が集まり、大盛況でした。特に若手の研究者が多く、東南アジアなどでも積極的に水中文化遺産の保護への取り組みが進んでいることがうかがえました。

水中文化遺産の保護は年々その重要度・注目度を増しています。来年も多くの研究者が参加することでしょう。

水中考古学と東海大学

去る2013年5月、鷹島海底遺跡の特定に寄与した茂在寅男氏が逝去された。当時の長崎県北松浦郡鷹島町沖で、元寇関連遺跡特定のため、初めての組織的な調査が行われたのは昭和55年のことである。東海大学海洋学部教授に在籍されていた茂在氏は、同調査において中心的な役割を果たされた。当時の調査手法には、考古学的見地から疑問の余地も投げかけられたが、昭和50年代の一連の調査が、その後の鷹島海底遺跡解明の動きの端となったのは事実である。東海大学には、文学部に考古学専攻があり、西表島では水没した貝塚で海洋学部と共同での調査が実施されている。また、同大学の海洋学部の海洋文明学科はアジア水中考古学研究所の調査などに参加している。東海大学の海洋資源学科の探査機器が、琉球大学との共同調査において、元軍船の発見に寄与したことは記憶に新しい。あえて付言をすれば、上述の東海大学と水中考古学の40年に及ぶ関わりは、一貫した研究体制や支援の下での出来事というよりは、水中遺跡の研究価値を見出した個々人の慧眼によるところが大きいようである。

世界のニュース(水中考古学)

水中考古学は世界では意外とポピュラーな学問です。このサイトでも世界の水中考古学のニュースを紹介していますが、それも氷山の一角です。

日本ではなかなか実感が湧かないので、今日は、ここ4~5日前から集めた水中考古学関連ニュースのリンクをご紹介します。

 

メキシコ湾(深海)での調査(ライブ映像)

http://news.nationalgeographic.com/news/2013/07/130719-shipwreck-gulf-mexico-archaeology-ocean-science/

 

ミシガン湖で子供のための水中考古学体験(水中ロボットなど)

http://www.jsonline.com/news/milwaukee/youths-explore-lake-michigan-shipwreck-with-underwater-robots-b9958552z1-216357391.html

 

マルタ島でのローマ時代の沈没船調査(ビデオあり)

http://www.timesofmalta.com/articles/view/20130722/local/Mellie-a-wreck-yielding-secrets-of-Roman-times.478994

 

シチリア島の沖から10万年前の象牙を発掘!

http://news.discovery.com/history/archaeology/fossilized-elephant-tusk-found-on-seafloor-130719.htm

 

こちらもシチリア島沖。ポエニ戦争で使われたアンカーなど発見

http://news.discovery.com/history/archaeology/ancient-anchors-sicily-punic-wars-130703.htm

 

アメリカ南北戦争時の沈没船発見

http://news.discovery.com/earth/oceans/civil-war-steamer-found-off-south-carolina-130630.htm

 

5万年前の水没林発見(考古遺物はないけど...)

http://live.huffingtonpost.com/r/archive/segment/50000-year-old-swamp-discovered-by-scuba-divers-off-alabamas-coast/51dc7b872b8c2a317c000167

 

海賊黒ひげの沈没船調査まだまだ継続中

http://www.carolinacoastonline.com/news_times/news/article_bd64c47c-e67c-11e2-857f-0019bb2963f4.html

 

(おまけ)

プーチン大統領と沈没船調査

http://www.3news.co.nz/VIDEO-Vladimir-Putin-explores-shipwreck/tabid/417/articleID/305095/Default.aspx
http://www.heraldsun.com.au/news/world/vladimir-putin-explores-underwater-shipwreck-in-gulf-of-finland/story-fni0xs61-1226679892098
http://www.nydailynews.com/news/world/putin-takes-submarine-bottom-gulf-finland-article-1.1399833?localLinksEnabled=false
http://www.theepochtimes.com/n3/179708-putin-visits-shipwreck-doesnt-find-treasure/

文化庁「水中遺跡調査検討委員会」

平成25年(2103年)2月、国内の水中に存在する遺跡の適切な保護と活用の方策を検討するために、文化庁の下に「水中遺跡調査検討委員会」が設置された。一般に海洋国家と呼ばれる日本で、海、湖沼、河川の水底に埋没する遺跡への理解を促進するうえでも、本委員会の設置は重要な意味を持つ。委員会の委員は、水中遺跡調査に携わる研究者以外にも、アジアの歴史学・考古学、埋蔵文化財行政、保存処理、海洋探査など多方面の専門家で構成されている。水中遺跡への学際的アプローチの重要性を踏まえて、委員会での議論が進展することを意図したものである。

史跡沈没船の調査を萌芽に20世紀中頃から進展をみせた水中発掘調査は21世紀においても飛躍をみせている。特に国外でその動きが著しい。第1回の委員会会合では、西谷正委員長より中国・韓国の国家主導による、特に近年の水中遺跡調査・保護体制の事例が紹介された。中国での水下文物保護管理条例成立と中国歴史博物館水下研究所の設置、韓国での新安船発掘を契機とする国立海洋遺物展示館(現国立海洋文化財研究所)の設立は1980年代に遡り、現在も海洋に眠る遺跡の発見に力を注いでいる。

日本においても、昭和55年(1980年)には文化庁によって水中に分布する遺跡把握方法について見当が行われ、岡山県の水ノ子岩遺跡、北海道江差の開陽丸、滋賀県琵琶湖の粟津湖底遺跡が調査対象となった。水中考古学の形容として沈没船調査があげられるが、我が国初の組織的な水中遺跡特定調査に、琵琶湖の湖底遺跡が対象となったことは注目すべきところである。平成元年~平成3年にかけて文化庁の水中遺跡保存方法の検討に関する事業では、全国の自治体で200を超える水中遺跡の存在が示唆されたが、このうちで沈没船以外の水没遺跡が多数を占めることは我が国の水中遺跡の性質を知るうえで興味深い。琵琶湖などの湖底遺跡は、地震の影響を受けて水没した遺跡もあると思われ、過去の自然災害や環境の変化を知る上で、国内の水中遺跡は重要な意味を持っている。

長崎県松浦市の蒙古軍襲来に関連する鷹島海底遺跡では、1980年代より調査が実施されており、先の文化庁事業でも、水中遺跡の探査方法の開発などの実践の場となってきた。大型の木製の碇に加え、蒙古軍の武具類が発見されるなど、歴史的戦場地のとしての水中遺跡という特異な地位にある。元寇に使用された船の発見は、水中遺跡調査検討委員会の発足を促し、委員会内でも同遺跡が国内の水中遺跡の保存と活用の整備を図る上で重要であると認識されている。また国内の沈没船でいえば、先の開陽丸以外にも、幕末史で重要な広島県宇治島沖のいろは丸、国際関係史で取り上げられる和歌山県串本沖のエルトゥールル号、地域史で特に知られるえひめ丸などがあげられる。こうした沈没船が史跡として管理され、保存・活用が進むかは、その方策を含め未だ課題となっている。

上述のように、これまでも国内の水中遺跡の実態把握は断続して行われてきた。水中遺跡調査検討委員会の発足がより継続性のある体制構築につながったと後に評価されるよう努力することが肝心である。最新の会合では、『行政目的で行う埋蔵文化財の調査についての標準』に相当する水中遺跡の保存と活用の指針作成を目的の一つとすることが確認された。埋蔵文化財行政に沿った日本の独自の体制づくりが、水中文化遺産への取り組みにおいて日本が国際的にも評価にもつながると信じるものである。

気候や自然条件の変動により、人類活動の痕跡は水中にも残る。これらの解明は、現代社会においても、人間の営みと人類社会が、環境とのバランスの上に成り立っていることを気づかせてくれる。海洋への進出が著しい今日、水中の遺跡は、自然資源と同じく希少でより疲弊し易く破壊されがちな遺産として認識される必要がある。水中遺跡の重要性を沿岸・河川域と陸上にある遺跡との関連で明らかにすることも、その価値を明示していくうえで重要となる。

水中遺跡調査検討委員会委員(敬称略、五十音順)

池田 榮史 琉球大学法文学部教授

伊崎 俊秋 福岡県教育庁文化財保護課長

今津 節生 九州国立博物館博物館科学課長

小野 正敏 大学共同利用機関法人人間文化研究機構理事

木下 尚子 熊本大学文学部教授

木村 淳 マードック大学アジア研究所研究員

高妻 洋成 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所埋蔵文化財センター保存修復科学研究室長

坂井 秀弥 奈良大学文学部教授

佐藤 信 東京大学文学部教授

土屋 利雄 独立行政法人海洋研究開発機構観測技術担当役

西谷 正 宗像市立むなかた館長

御堂島 正 大正大学文学部教授

林田 憲三 アジア水中考古学研究所理事長

 

 

 

潜ってびっくり!! 海は歴史のタイムカプセル

~訂正とお詫び~

予定されていた全国放送が諸事情により放送されなくなったそうです。NHK担当者の方から連絡がありました。これからも水中考古学の番組があればお知らせしますので、楽しみにお待ちください!

 

テレビ番組のご案内です。鷹島海底遺跡で近年調査を行っている池田先生が出演いたします。夏休みということもあり、子供向けの内容ですので、面白そうです。先生が小学生に授業するそうです。水中考古学の調査や魅力などを子供にも理解できるようわかりやすく説明する内容だとか...

九州・沖縄で放送された後、全国でも放送されるそうです!

「きん☆すた 潜ってびっくり!海は歴史のタイムカプセル」 7月26日(金)総合・九州沖縄地方 午後8:00~8:43

全国放送決定!
「ろーかる直送便」8月1日(金)総合 午後3:15~4:00

今年も深海の沈没船探査ライブ映像配信!

ナショナル・ジオグラフィック社や様々な研究機関が関わる深海探査プロジェクト、Nautilusが今年も始まっています。

タイタニックを発見したバラード博士なども関わっており、水中ロボを駆使しています。沈没船探査が主ですが、深海生物などの探査も行っているようです。24時間交代で作業を進めているので、日本の昼間はお休みとかいうことはありません。ただ、移動中やお休みなどあるので、面白いものが見れるときと見れないときなあります。暇があったらのぞいてみてください。潜ってない場合は、上のほうに次のダイブの時間が書かれている場合があるので、時間を見計らって戻ってみてください。

去年、私が見ているときに古代の沈没船が発見されました。世紀の発見が見れるかもしれません。ロボットからの映像、モニター室の映像など、いくつかカメラを切り替えることもできます。また、モニター室の研究者などにチャットで質問もできます。私の友人も参加していたので、挨拶しました...

間違いなく、世界の水中考古学(特に深海考古学)の最先端を行くプロジェクトです。ちょっと覗いてみて損はないはずです。沈没船に興味がない人も楽しめます。また、ハイライトシーンのビデオもたくさんあるので、ぜひご鑑賞ください。

ベトナム水中考古学調査

ベトナムの水中考古学のプロジェクトページが新しく設立されました。お馴染みのベトナムの元寇遺跡である白藤江の戦いプロジェクトだけでなく、現在ベトナムで行われている様々なプロジェクトの紹介をしています。ベトナムでは各地で沈没船などが発見され始め、話題を呼び始めています。ベトナムの考古学者も水中遺跡の保存を真剣に一つの課題として取り上げる必要を感じ、活動を開始しています。

海事考古学のオンラインミュージアムと称して様々な活動を行っている団体の一ページとして作成してあります。他の国の様々なプロジェクトなども紹介してありますので、そちらもご覧ください。

大ベトナム展

九州国立博物館で現在おこなわれている『大ベトナム展』ですが、6月9日まで開催です。

最近は、ベトナムもいろいろと注目を集めておりますが、歴史・考古も目が離せません。九州という土地柄もあり、この特別展のテーマはアジアの中のベトナム、日本とベトナムの国際交流が打ち出されています。「ベトナム」展ではありますが、海を介した繋がりがメインですので、ベトナムに興味があまりない人でも楽しめるのではないでしょうか?

特にこの展示ではベトナムで発見された沈没船(ホイアン沖・クーラオチャム沈没船など)からの遺物なども見ることができます。また、朱印船の絵図などもあります。文献資料として、ベトナムから日本宛の手紙(戦国~江戸にかけて)などもあり、アジアの海事史を知るうえで貴重・重要な資料がそろっています。

九州国立博物館に行ったことがない人など、この機会に行ってみてはいかがでしょうか?

水中考古学を学ぼう!

弘安の役の終焉の地、鷹島海底遺跡が水中遺跡としては初の国の指定を受けた遺跡となりました。そんな動きもあり、最近は水中考古学の話題が絶えません。

そんななか、有名考古学雑誌が相次いで水中考古学特集を組みました。このように二つの雑誌が同時に水中考古学特集を出すことは今までのこの学問の歴史で初めてのことではないでしょうか?水中考古学に興味のある人は、ぜひこの機会にご購入あれ!

考古学ジャーナルは多少一般向けで内容も薄く、すぐに読めます。基本的には鷹島海底遺跡関連を中心に特集を組んでいます。10数年前にも水中考古学の特集を組んでいますので、比較してみるのも面白いかもしれません。専門で水中考古を学んでいる人には多少物足りなさがあるかもしれませんが、それ以外の人には読みやすく、わかりやすい内容となっています。詳しくなくても考古ファンでなくとも、読んでみると面白いかもしれません。ダイバーさんとか、なんとなく興味があるけど、考古学は難しそう!と思う人にもお勧めできます。

「考古学ジャーナル」 2013年5月号
水中考古学―元寇船最新研究の成果―
価格:1800円
特集は30ページ弱、字も大き目です。

次に、季刊考古学。こちらは、もっとディープな内容にまとまっております。鷹島海底遺跡が注目を得たことに端を発していますが、それほど鷹島中心ではありません。東アジアや多少なりとも東南アジアの水中・海事考古学について書かれています。内容は専門的ですので、少し難しく思う人もいるかもしれませんが、考古ファンなら問題なく読めるでしょう。考古学の本を一度も読んだことにない人には少しとっつきにくいかもしれませんが、逆に言うと、考古学を目指す人なら是非読んでいただきたい内容であると思います。

「季刊考古学」 123号
水中考古学の現状と課題
価格:2520円
特集は100ページほど。

ちなみに、もっと水中考古を知りたい方にはこちらの本もお勧めします。

文化遺産の眠る海: 水中考古学入門 ~ちょっと専門的ですが、考古ファンなら必読!

沈没船が教える世界史(新書)~初心者(学生)向け。水中考古学に興味のない人にこそ読んでもらいたい一冊。

九州国立博物館で『大ベトナム展』

4月16日から、九州国立博物館で『大ベトナム展』が開催されます!6月9日までですので、短い期間ですので、九州在住の方、もしくは九州に来れられ方はぜひ見にいかれてみてはいかがでしょうか?

このサイトでも紹介しているベトナムの元寇~白藤江の戦いの考古学プロジェクト~も紹介・展示されております。今、注目を浴びつつあるベトナムの考古学・歴史を知る良い機会です。また、常設展では日本の元寇の遺跡である鷹島海底遺跡の展示もあり、日本では数少ない水中遺跡から引き揚げられた遺跡を見ることのできる博物館です。

この機会お見逃しなく!