水中文化遺産

日中韓文化遺産フォーラム 水中文化遺産の保護と活用

後ほど、詳しく再度お伝えいたしますが、とりあえず、やっと九博HPにアップされたので情報を提供いたします!

平成29年2月12日(日)に、文化庁・九州国立博物館の共催により、「日中韓文化遺産フォーラム:水中文化遺産の保護と活用」を開催いたしますので、お知らせいたします。
海や湖などに存在する遺跡(沈没船など)は、水中文化遺産と呼ばれ、世界でその保護が進められています。このたび、中国・韓国・日本の専門家を迎え、各国の先進事例と保護・活用の取組をご紹介いただき、今後の国際的な研究協力の促進に寄与したいと考えております。

平成29年2月12日(日)
10時00分〜15時45分(受付9時30分〜)
会場:
九州国立博物館1階ミュージアムホール
入場料:無料(定員250名)
事前申込み制・先着順

プログラム:
10時00分〜10時25分 開会挨拶
10時25分〜13時50分 講演(休憩11時55分〜13時10分)
〔1〕韓国における水中文化遺産の保護と活用の取組の歴史 李貴永(イ・クィヨン)(国立海洋文化財研究所)
〔2〕新安沈没船にみる活用とその意義 金炳菫(キム・ビョングン)(国立海洋文化財研究所)
〔3〕中国の水中文化遺産の保護と活用の体制 刘丽娜(リュウ・リーナ)(西安交通大学)
〔4〕南海1号沈没船の引き上げと今後の活用について 孙键(ソンチェン)(国家文物局水下文化遺産保護中心)
〔5〕日本の水中遺跡保護・活用の現状と課題 禰冝田佳男(文化庁記念物課)
〔6〕鷹島海底遺跡における水中考古学の歴史 池田榮史(琉球大学)
14時00分〜15時45分 討論会「日中韓の水中文化遺産」
司会:赤司善彦(福岡県教育庁)
パネリスト:李貴永・金炳菫・刘丽娜・孙键・禰冝田佳男・池田榮史・佐々木蘭貞(九州国立博物館)

参加希望者は申し込みをお願いいたします!

 

沖縄の水中文化遺産

 本日は、ブックレビューです。南西諸島水中文化遺産研究会編『沖縄の水中文化遺産』です。

タイトルからすると、少し堅苦しそうですが、実はとっても読みやすい本なんです。ずっと語り聞かせるような、お話を聞いているような、(話術の巧い人のプレゼンを聞いている?)ような…スタイルで統一されています。沖縄(南西諸島)の水中文化遺産・水中考古学の魅力を聞かせてくれる本です。テンポもよく、飽きが来ません。筆者のこの学問に対する情熱と、いろんな人に読んでもらいたい!そんな思いが伝わる本です。

第1章では実際の一つの調査例から水中文化遺産の研究の方法を見ることができます。淡々と調査の結果を語るのではなく、実際のプロジェクトの発端から苦労した点など物語のように描かれています。水中文化遺産の調査は水中に潜っての調査が多いかと思いますが、実は文献資料の整理や聞き込み調査など様々な側面があることを教えてくれます。また、筆者自身が知らなかった事実をどのようにして解明していったかとプロセスとその努力についてドラマ(ドキュメンタリー)のようです。事実や意見だけを述べる専門書ではなく、筆者の学びのプロセスも隠すことなく書いているので、歴史の専門書は苦手な人でも面白く読め、そして、共感を得ることができるのではないでしょうか?また、歴史の本が好きな人でも新鮮に感じ、そして、共感する部分が多いと思います。

第2章では世界や日本の水中文化遺産の事例、そして、第3章では沖縄と南西諸島の水中文化遺産について書かれています。こちらも、自分たちが調査した遺跡についてはその発見方法や調査方法、苦労した点などについて書かれています。遺跡の紹介だけでなく、その発見が大きな歴史の流れの中でどのような意味を持っているのかを捉えて紹介しています。水中考古学というと、どうしてもその特異性から「水中で発見されました、はい、すごいですね」で終わってしまうイメージがあるようです。特に、ニュースなどのメディアなどは「発見」だけがトピックとなってしまいがちなのですが、この本はちゃんと一歩踏み込んでくれます。沖縄の歴史についても初心者にわかりやすく情報を伝えてくれます。

そして、最後の第4章。水中考古学のメソッドなどについて書かれています。この本を通してのことですが、調査の様子などをわかりやすく、筆者の体験をもとに解説しています。水中での調査だけでなく、陸上の調査や文献資料なども詳しく書かれています。水中考古学とは、つまり特殊な学問ではなく、誰でも参加できる学際的な歴史の探求であることがよくわかると思います。

沖縄にある数例の遺跡の紹介ですが、水中考古学の世界がよくわかる1冊です。日本語で書かれた水中考古学の本はいまのところまだ珍しいので、ぜひとも読んでみたいですね。水中文化遺産はごく身近な存在であり、国民全体が共有の財産として保護していく必要がある貴重なモノであることを感じ取ってもらいたいです。

表紙もかっこいいです…

 

水中遺跡のニュース (鷹島海底遺跡など)

先日、鷹島海底遺跡で2隻目の元寇の際に使用した(可能性の高い)船が発見されたニュースが報道されました。

しかし、実際には世界各地、日本各地で様々な水中文化遺産が人知れず眠っています。海外では水中文化遺産の調査が盛んで、最近では中国やインドなども海洋政策の一環として経済だけでなく文化事業も明確に打ち出しています。

今日は、ここ2~3日の間に出た水中・海事考古関連のニュースを数件集めてみました。気になるリンクも載せていますので、ご覧下さい。

 

PADI連載コラム(海の遺跡)  ダイバーのための連載コラム。水中遺跡などをわかりやすく説明しています。

鷹島海底遺跡のニュース   グーグルでニュースを集めてみました。

ちょっと関係ない… 李舜臣の映画が韓国で大ヒットらしい  最近の韓国・日本の関係を考えると少し難しい内容かもしれませんが、歴史を学ぶきっかけとして。面白そうです。

 

ここから下は英語のみです。

アンティキティラ再調査のページ(かっこいい・ビジュアルが良い。英語が読めなくても満足)

ギリシャ・アンティキティラ島の沈没船(最古のコンピューター?) 最新の技術を使い、水中を再調査

カナダの総理大臣も喜びを表明!サー・ジョン・フランクリンがカナダ北極圏探検で乗った船が発見(1845年) 日本の首相も鷹島の発見は喜んだのか?

ニュージーランドで最古のカヌー? 最初の移民の定説とされる時期より100年早い…

1533年にクロアチア沖で沈没した船を調査(テキサスA&M大学)

スペイン・アルマダ艦隊の舵が発見

 

この他にも関連のニュースはいろいろありますが、今日はこの辺で。

 

文化遺産の眠る海~電子書籍でも

東京海洋大学の岩淵教授が書かれた水中考古学の専門書、『文化遺産の眠る海』が電子書籍化されました

興味のある方は是非ご購入を!

水中考古学についてもっと詳しく知りたいと思う方には必読の書です。少し難しいかもしれませんが、水中考古学の詳しく正しい知識を得たいとおもえば現在のところこの本しかありませんね。『沈没船が教える世界史』などを読んで物足りなかったり、もっとこの分野について知りたいと思った方はどうぞ。また、考古・歴史を学んでいる学生、大学院生、もちろん大学の教授や行政担当の人も水中考古学は聞いたことがあるが良くわからないと思っている人には是非読んでいただきたい良書です。

もちろん本屋さんやアマゾンでも買えます!

スペインとトレジャーハンターと考古学。現地保存も…

数年前、アメリカのトレジャーハンター会社が沈没船を引き揚げ、莫大な量の銀貨が発見されたニュースを覚えているでしょうか?その後、時価数億円と言われた遺物をスペイン政府が自国の船であり、文化財保護の観点から遺物の返還を要求しました。その後の裁判において、スペイン政府が勝訴し、遺物はスペインのものとなりました。現在、その遺物が展示されているようです。

さて、そこで、良く聞かれるのが、トレジャーハンターの言い分です。今日は、ちょっと詳しく水中考古学者の観点から見てみましょう。

トレジャーハンターの言い分・・・沈没船の発掘には莫大な費用が必用。いま引き揚げなければ数年後には盗掘や台風・津波、底引き網や開発などで失われてしまう。莫大な費用の見返りとして遺物の売却が必要である。すべて記録として保存・研究ができるので、歴史にも貢献できる。引き揚げないと遺物も歴史も失われてしまう・・・ということが良く聞かれるが果たしで本当でしょうか?

考古学の立場

確かに莫大な費用が必要で、それは船を丸ごと引き揚げる場合。また、一度引き揚げると保存処理などを行う必用があり、永続して湿度・温度を管理する必要があり、非現実的な方法であることは確かです。現在の考古学の常識では船を丸ごと引き揚げることは中国など一部の力のある国でしかおこなうことはできません。水中遺跡は現地で非破壊調査による記録を行い、現地保存を行うことが常識となりつつあります。ユネスコ水中文化遺産保護では現地保存を第一オプションとしています。Nautical Archaeology Societyの水中考古学トレーニングマニュアル(200ページ)にも水中の発掘は『他の方法で保存できない場合のやむを得ない』行為として紹介し、数ページしかその方法について書いていません。

現地保存とはなんでしょうか?そのメリットは?水中遺跡は海底で砂に埋もれていれば保存状態は良好であり、数百年単位で保存が可能であると考えられています。(数千年前の沈没船も発見されていますし…)つまり、遺跡を安定した状態に置き、バクテリアの活動や砂の動きなどをモニタリングし、常に遺跡を安定した状態に保つことにより、お金をそれほどかけずに遺跡を保護することができる、といえます。しかし、この方法では何も研究できない!と思うかもしれません。しかし、実際には非破壊(非発掘・小規模トレンチ)調査でも充分研究ができます。

沈没船を丸ごと引き揚げると確かに膨大な資料が手に入ります。もちろん、これらの情報を今すぐにでも得たい気持ちもあります。それでは、例えば、陸の場合の考古学を見てみましょう。同じような状況が考えられないでしょうか?(我々水中考古学者は「水中と陸」の考古学の境をなくすことが目標。しいていえば、水中考古学者と呼ばれることに一番抵抗を感じるのは水中考古学者自身。実際にこの名称は対外的な名前で、水中考古学と自分では呼ばない研究者が多いです~この点に関しては後日解説しましょう!)膨大な量の考古学資料を得られる遺跡として、平城京跡地を見てみましょう。今、平城京跡地をすべて完掘する計画を国民は受け入れることができるでしょうか?もしくは平安京、博多遺跡群など。同じような莫大な資料を得るとともに、莫大な費用も掛かるし、研究も追いつかないでしょう。そのため、陸では開発行為がある場合においてのみ調査が行われる場合がほとんどです。これらの陸の遺跡を発掘するための費用を出土した遺物を売ることで賄うという考えは生まれますか?それよりも今、発掘できるところを小規模ながら進めていき、研究もすこしづつ進めていく方法を取っています。これが陸であれ水中であれ考古学という学問が置かれている状況にあると思います。そのための現地保存があります。

水中遺跡の多くは開発との共存が比較的楽であることが考えられています。海の上に構造物を建てる際には多くの場合、数10メートル単位でプランの変更をすることが可能です。実際に、アメリカ・メキシコ湾では、海の上に構造物をつくる際には考古学の事前調査を行うことが義務化されており、油田から敷かれたパイプライン工事の事前調査などで2000件以上もの水中遺跡が発見されています。他の国々でも、工事に先立ち水中遺跡が発見されるケースは多く、それらの遺跡を保護するため工事の計画を少しずらして行う場合がほとんどです。この場合、遺跡の特徴など非破壊調査で記録を残すことが重要です。

さて、現地保存のメリットをもう少し見てみましょう。遺跡保存の考え方の一つに活用という観点があります。地域に遺跡の重要性を知ってもらい歴史を守る大切さを考えてもらうこと、とここでは簡単に説明をします。無機物など比較的水中で安定した状態にある遺跡は一般公開をし、地元だけなく観光客を相手に遺跡ツアーを行っている場所も多くあります。太平洋やカリブ海の小さな島などはダイビング産業で地域の経済が成り立っている町や村も存在しています。そこに住む人々にとっては大切な文化資源として水中遺跡があります。その経済基盤を研究目的で莫大な費用をかけて引き上げることはできるでしょうか? それよりも、地域と協力をし、可能な限り現地で保存をしながら研究を進めることが最善であると考えられます。もちろん、定期的に訪れる研究者も地域の経済にプラスの効果をもたらすので、お互いの関係は継続してプラスになっていくことでしょう。

少し余談になりますが、世界の海難事故のデータを見ると、沈没事故の9割は港の近くなど水深50mよりも浅い場所で発生しています。つまり、陸に近く今でもアクセスしやすい場所です。陸に近いと実は水中遺跡の保護には向いていません。溶け込んだ酸素の量が多く(有機物が腐りやすい)、また、砂の動きも多く、ダイバー、漁業、開発なども遺跡の破壊につながることが多々あります。そのため、しっかりと水中文化遺産の保護の観点から遺跡の場所を把握し管理することが最も望ましいと考えられています。その逆に、深海(公海)には沈没船はほとんどありません。深い海ほど遺跡は安定した状態にあり、今、手を付けなくとも数百年その状態を保つことができると考えられています。安定した状態にある遺跡を掘る必要は特別歴史的価値のある遺跡でない限りあまり考えられない、というのが考古学者の考え方のようです。

ここまで少しダラダラと文章をつづってきたが、まとめてみましょう。遺物を引き揚げ売却を行う行為(または場合によっては地域の現状を考えない研究行為)は、その時だけは誰かが得をするけど、継続してみんなが共有することはできなくなります。また、遺物の金銭的価値を基準とするため、本当に歴史的価値のある遺跡が発掘されるケースも少なくなります。大量生産された商品は考古学・歴史価値が少ないので、あえて発掘する必要はあまりありません。水中遺跡で行う研究は、1)遺跡がどのように地域の人々と関わっているか、2)遺跡がどれだけ安定した状態であるか、3)非破壊調査や小規模発掘などからどのようような歴史・考古学価値のある遺跡であるか、などを主に考えることが第一目的です。それらの情報をもとに、どのように保存・活用していくかを考えます。様々な条件を吟味し、もしくは、発掘というオプションも考えられます。その場合、遺物は地域に還元するために博物館などでしっかりと管理されるべきでしょう。

中国の水中考古学

中国の水中考古学について、日本語で読める記事があったので。

中国は国家プロジェクトとして水中考古学を推し進めています。他の国に比べてもこの分野への熱の入り方はけた違いです。これ自体は素晴らしいことなのですが、この記事の抜粋でいくつか気になる点を挙げます。

「南シナ海には1000艘もの沈没船が眠っていることが確認されているが、水中で作業できる考古学関係者は100人にも満たず、作業は困難を極めている」

さて、沈没船の数ですが、とびぬけて多い数ではないということ。スウェーデンでは3000件以上の水中遺跡が保護対象の遺跡として登録されています。しかし、スウェーデンで実際に水中専門で作業している考古学者はそれほど多いわけではありません。ここではスウェーデンという国を例にとりましたが、メキシコや他の国でも状況はそれほど変わりません。何十万とある水中遺跡のマネージメントをごく少人数でおこなっています。

この記事を読んだときに私が最初に感じたのは、「水中遺跡」というものを陸上とは違う「特別なケース」としてみていることです。

日本では年間8千件以上もの陸上遺跡が発掘されていますが、まだまだ陸上の遺跡が無数にあります。遺跡のある場所は「周知の遺跡」として認知され遺跡台帳に登録されます。周辺で開発があった場合に破壊されるために、保存記録として発掘を行います。遺跡がそこにあるとわかっており、重要な遺跡であっても発掘しないケースがほとんどです。陸上の遺跡をただそこに遺跡があるからガンガン掘っていくなどは考古学者の数や資金の面から見ても相当困難です。でも、困難だからといってニュースでそれが取り扱われることはないですね…というよりも、現在の経済状況や世界の考古学行政(および学術調査)の常識から考えて、遺跡があるという理由のみで発掘することはないと考えられます。

遺跡が開発によって破壊されるときにのみそのエリアを発掘すること、これが行政考古学の前提となっています。そのためには、周知の遺跡の範囲をしっかりと把握すること、新しい遺跡の発見、開発業者などにもしっかりと遺跡を大切にすることを認識させ遺跡があった場合の対処が重要となっています。陸上の考古学ではその時の経済の状況などを考え開発とのバランスを取りながらマネージメントを行っています。日本(と世界)の陸上の考古学は調査だけでなく、遺跡の保存・活用と開発のバランスを図るマネージメントが重要です。そして、水中考古学が発達している国では水中であっても陸上と同様なマネージメントを行っています。陸と水中の遺跡の区別がないことが重要であり、水中考古学という言葉は使われません

海の上で開発が行われるケースは陸に比べて多くはなく、そして、そのほとんどが、自治体主体で行われる開発や、大企業でも国・県などから補助金などをもらって行うことが多いようです。開発の範囲に水中遺跡があっても、工事の範囲を動かすことが可能な場合が多いようです~陸に比べて工事範囲に関しては計画の段階から遺跡の範囲を考えてプランを立てれば、融通が利く場合が多いようです(海は広いですから)。開発のエリアを変更することができずに、やむを得ず水中で発掘を行わざるを得ない場合、特に発掘を行った経験のある考古学者が遺跡発掘の監督を行います。実際の作業は潜水ができる作業員が行い、記録などを取る場合に考古学者が行うことが多いようです。日本でも陸上の発掘で実際に掘っている作業員さんは考古学の訓練はとくに受けてないですね?水中でも同様に対応できるというのが、大体の国において行われています。

しかし、中国の記事を読むと、「水中遺跡があるから掘らないといけない」という印象を受けます。開発があった時のみではないようです…また、発掘を行うのも専門の訓練を受けた人のみなのでしょうか?これでは、どう考えても困難になるのは当たり前ですね?ユネスコが進めている水中文化遺産の保護ですが、こちらも開発とのバランス、遺跡の現状保持を第一のオプションとして捉えています。中国はちょっと異質な感じがします。

ユネスコの水中文化遺産を承認した国は2014年中には(私の予想では)50か国を超えると思われます。それらの国々は基本的には開発とのバランスを考え、陸の遺跡と水中の遺跡との対応の違いを無くすことを目的として取り組んでいます。現在、日本では水中考古学の体制が整っていませんが、どのように国としての体制を作るか考えたとき、参考になるのは、中国ではないような気がします。もちろん、資金や人員が確保でき、そして保存処理もきちんと対応できれば中国のような対応もできますが、日本の現状を考えるとそれは無理な気がします。しかし、現状維持を前提とした場合は充分対応できるのではないでしょうか?その方法などについては、また後ほど…

ユネスコの水中文化遺産について 

 

アジア・太平洋水中文化遺産会議

アジア・太平洋水中文化遺産会議が来年ハワイで開催されます。前回は初めてマニラで行われており、第2回目となります。マニラでの会議は多くの国から研究者が集まり、大盛況でした。特に若手の研究者が多く、東南アジアなどでも積極的に水中文化遺産の保護への取り組みが進んでいることがうかがえました。

水中文化遺産の保護は年々その重要度・注目度を増しています。来年も多くの研究者が参加することでしょう。

アジアで進む水中文化遺産の保護

ここ1-2年の間にアジアでもどんどん水中文化遺産保護の動きが高まり始めています。韓国や中国はもちろんですが、一見すると経済的に水中文化遺産をマネージメントするのは難しいのでは?と思える国も進んで水中の文化遺産の保護を国の政策として打ち立てています。

今日は、ここ1ヶ月以内ほどに入ってきたアジアでの水中文化遺産保護の動きについて書かれた一般ニュース記事を集めてみました。どの国も「現状維持」をベースにマネージメントを強調しているのが特徴といえます。水中考古学はお金がかかるというイメージがありがちですが、ユネスコなどが打ち出している水中文化遺産の保護はどれも遺跡のマネージメントで現状での保存を最優先しています。つまり、お金がそれほどかからないことになります。発掘をするという考古学のパラダイムから遺跡をどのように保護・管理しながら情報を得るかというパラダイムへの返還が顕著に見て取れるのではないでしょうか?

 

それでは、最初にスリランカから。

Daily Mirrorからの記事を少し解釈を加えて解説します。元の記事はこちら。No salvaging of wrecks

記事を読む限り、国として方針が定まったように感じられます。また、”strictly implement the law against any form of salvaging of ship wrecks”とありますので、すべての沈没船において(遺物などを持ち去る行為を)禁止することになったようです。沈没船などは良い漁場にもなりえるので、そのことも評価されているようです。ただし、沈没船はダイバーからの観光収入もあるので、沈没船ダイビングについてはOKが出ているようです。現在のところ、スリランカ周辺では約50隻の沈没船が確認されているとのこと。

ひとつ興味深いのは、「コマーシャルダイバーが沈没船を調査することを禁止したわけではない」こと。ただし、遺物を持ち去ることは出来ない。また、引き揚げは国からの許可・指導を受けないと行えないそうです。ユネスコのスタンダードに沿った政策のように感じられますね。ただ、沈没船のパトロールなどを行わないといけないかもしれませんね。まだ多少解決していクべき問題はあるでしょうが、大きな一歩を踏み出した様子です。

 

さて、次にインドネシアはこちらの記事から。Indonesia’s Shipwrecks Mean Riches And Headaches (PHOTOS)

Huffingtonpostからですが、写真などが幾つかあるので、ご覧ください。

インドネシアは現在までに、国が把握しているだけでも500隻ほどの沈没船が確認されています。9世紀のインド洋からの船で中国と貿易をしていた船や、ジャンク船、ヨーロッパの船など実に様々です。2010年に水中文化遺産を保護する法律が出来るまでは、サルベージ会社(トレジャーハンティング)が介入し、国の合意の上(賄賂が横行していたようです)で遺物などを売買していました。しかし、今日ではこれらの行為が違法とされているようです。これまでに国に届出をせずに盗掘された沈没船もあるでしょう。インドネシア周辺の海には1万隻ほどの沈没船がまだ残されている計算もあるようです。

しかし、国の管理などが行き届いていない面もあるようです。漁師などが遺物を引き揚げて売ることはごく一般的に行われているようです。なかなか漁師すべてに禁止令を出したりパトロールをするなど課題は残されているようです。

 

それでは、最後に台湾から。Taiwan Todayからの抜粋です(記事ID Publication Date:03/09/2012)

日本語のニュースなので、抜粋をご覧ください。台湾については個人的な意見は書きませんので、読者のみなさまの自由な意見でお考えください。

台仏水中考古学協力で、海洋文化遺産の保護へ

行政院文化建設委員会とフランスの水中・海底考古学調査部は6日、4年を1期とする、「台湾・フランス水中考古学協力行政協議」を締結すると共に、座談会を開催した。文化建設委員会資産総管理処準備室では、水中文化遺産の保存・メンテナンスおよび宣伝は世界各国が日増しに重視しつつある課題であることに鑑み、澎湖島から台湾海峡にいたる範囲における水中文化遺産の長期的な調査作業に積極的に取り組んでいる。

同準備室ではまた、法令の制定で水中文化遺産を破壊や盗難から守り、関連の歴史文献の収集などで研究を助けられるよう期待。専門的な実験室と修復室を設けて引き揚げられた遺物の保存と修復を行うと共に、海底調査や撮影、発掘、修復の専門人員の育成にも努める。同時に、海洋文化遺産に対する国民の認識を向上させ、特に「それぞれの場所での保護」と「盗難防止」などの国際的な観念の普及を進めて世界との連結を図る。

(中略)

...当時、南シナ海と台湾本島、澎湖島、東南アジア諸国、日本、朝鮮の間の「アジアの地中海」で頻繁な海上貿易があったことの証拠である。古代において台湾は「海のシルクロード」の重要な拠点の一つであり、豊富な水中文化遺産に対する研究と保護が待たれている。

 

 

 

 

 

本の紹介

今日は本の紹介です!東京海洋大学の岩淵先生が書かれた水中考古学のちょっとした専門書です!日本では本当に数少ない水中考古学の本です、是非ご購入検討お願い致します!

 

水中考古学って発掘とか保存処理とか大変なの?

今回は水中考古学の調査は本当に大変なのか?ということを題材に自分の意見を少し書いてみました。少し長いですが、お楽しみください。

水中遺跡は一括性の遺跡であり、保存状況が良好であることが多いため、陸上の遺跡以上に考古学・歴史の謎を解く情報が多く詰まっていることが多い。これらの遺跡の調査は費用がかかるからと思いこんでいたら、多くの貴重な情報が失われてしまう。ここでは、水中遺跡の重要性について触れるのではなく、では、実際にどのように対処すれば良いのかを考えてみたい。沈没船を研究する意義や実際に何がわかるのか、なぜ、この研究が必要か?などの論点はこのウェブサイトのほかのページや水中考古学関連の刊行物を参考にしていただきたい。このページを書いた目的はもっと多くの人に、実際に水中考古学はそれほど大変な作業ではないことを知っていただきたいことにある。「水中考古学が日本でなかなか発達しない原因は?」と一般の人々や考古学者が聞いて連想するには以下の事柄が挙げられる。

1.遺跡の発見が困難であり遺跡の数が少ない

2.発掘に特別なトレーニングなどが必要で難しいし、保存処理にもまた資金が必要となる

「水中考古学は大変だね」という人はだいたい水中考古学を理解していない人である。実は、これらの問題は大部分が解決されているからだ...しかし、これらの「問題点」はもちろん大変な課題その通りである。水中考古学を発達させるに当たりこれらの問題を解決する必要がある(あった)...しかし、「解決」には必ずしも「正面から攻略」する必要もなく、考古学の遺跡へのアプローチの仕方ひとつでこれらを「回避」することもひとつの解決策と捉えることができる。海外で水中考古学が成功した背景には水中遺跡に対する考古学の手法を変えることによりこれらの問題に対処してきた。日本の場合、長い間培われた考古学遺跡へのアプローチの方法があり、世界に認められる成果を残してきた。簡単ではあるが日本の考古学の特徴(また、遺跡に対する姿勢)を述べてみる。遺跡はほとんどが緊急調査であり、発掘をせざるを得ない状況にあるため、「すべての記録をそのまま残す作業」が重視されている。また、遺跡の件数が多いため、緊急発掘を通して得られた情報から編年研究が発達している。つまり、緊急発掘で得られたデータをもとに、学術的な小さな手がかりを掴んで、ある定理の証明に必要なデータ提示する方法を取る。しかし、水中遺跡を陸の遺跡と同じように考え、考古学のアプローチを水中にある遺跡に組み込もうとするために上述した「問題」が発生するのである。では、これらの問題を「解決」した海外の水中考古学とはどのようなアプローチを取っているのであろうか?

 

1.遺跡の発見が困難であり遺跡の数が少ない

答え:遺跡をわざわざ探さないことである。

現在までに考古学発掘が行われた水中遺跡で実際に考古学者がお目当て遺跡を「探し当てて」調査に臨んだ遺跡は実は非常に少ない。海底から沈没船などの海底遺跡を見つけるのは、サイドスキャンソナーやサブボトムプロファイラー、さらには磁器探査機などを使用し海底面をくまなく探索する。同じ海域を何週間も行ったり来たりするのである。もちろん、何週間も調査をしても発見できないことが多い。しかし、これは「遺跡の数」が少ないわけではない。ここでポイントとなるのが、「考古学者が発見した遺跡」の数が少ないことである。現在までに調査が行われた水中遺跡のほとんどが実は「考古学者でない人々」が発見しているのである。主に護岸工事関係者(パイプラインの施設など)、漁業関係者、スポーツダイバーや歴史に興味のある人々である。例えば、アメリカのメキシコ湾岸には多くの油田(と海底パイプライン)があるが、これらの施設工事の際には海底の事前調査が行われ、すでに2,000件以上の海底遺跡が発見されている。また、漁師や海岸に住む人々などが発見することもある。地中海なども数千件の海底遺跡が報告されているが、ここでもスポーツダイバーなどが発見するケースが多い。お隣の韓国でも漁師が陶磁器などを発見したことから沈没船の発見に繋がることが多いようである。

つまり、「遺跡を発見するのが困難である」ことに対する解決策は「遺跡を発見する努力はなるべく最小限に控える」ことである。では何をするべきか?答えは簡単である。一般の人々(今これを読んでいる人)が水中遺跡を発見する可能性が充分にあることを自覚することである。少なくとも、私のような専門家よりも、護岸工事や埋め立て・浚渫事業に携わる人のほうが水中遺跡を発見する可能性は高い。これには、もちろん色々な人に水中考古学を知ってもらうと同時に海の上にモノを建設する際にはきちんと事前調査を義務化する必要がある。日本は水中にある遺跡に対して特定の法律が存在しない珍しい国である。考えてみれば、日本の陸上の考古学遺跡は大きな道路沿いに点在している...これは道路など公共事業の建設に先立って行われた事前調査・緊急発掘の賜物である。もし、陸上の遺跡に対して保護する法律がなかったとしたら、どうだろうか?これだけ膨大な資料が集まるはずはないのは誰が考えても結論は同じである。水中も全く同じである。逆にどこで水中と陸地を分けるのか疑問である。海の水位が上昇すれば現在の陸地は海となるわけで、例えばこれから100年後、東京の一部が水没したら、その場所は調査対象外となるのか?水中も陸上もきちんと事前調査を義務化しなければならない。

実は海底遺跡は本当はものすごく身近にあることが多い。水没した遺跡というのは、もともと陸であった場所が、水没したわけであるから、現在の陸に近い場所にあるのが普通である。深海のど真ん中に水没遺跡がある可能性はほぼない。では、沈没船はどうか?これも、基本的には陸に近い場所で沈没するケースが多いのである。沈没の原因は接触事故や浅瀬に乗り上げげたり、岩礁にあたるなどが多い。2012年の1月に豪華客船の事故があったが、浅瀬に乗り上げて座礁したようである。また、港の近くは交通量が多く、接触事故も多い。イギリスの保険会社の報告によると、過去300年ほどの統計でみると、沈没したケースの90%が実に水深50mよりも浅い地点で沈没しているのである。イギリスやオランダの東インド会社の記録もやはり、港や陸に近い場所で事故にあっている。日本の海運についての詳しいデータについて自分は勉強不足だが似たようなケースが考えられると思う。つまり、日本において、比較的浅い場所・陸から近い場所に水中遺跡があると考えると、開発が及ぶ地域、もしくは、すでに埋立地となった場所に多くの遺跡がある(あった・すでに破壊された)ことになる。

以上のことを考えると、日本において水中考古学の遺跡の発見数を増やすには一般の人に興味を持ってもらうこと、そして、法の整備が先決となる。考古学者だけがいくらがんばっても現実問題として、無理な話なのである。考古学者の役割とは、誰かが発見したときにより詳しく調査できる体制をとることと、情報の公開、そしてデータベースなどの管理が必要となってくる。このデータベース管理ということが後々キーワードとなるが、ここでは簡単に触れておくのみで次の項目に進みたい。

 

2.発掘に特別なトレーニングなどが必要で難しいし、保存処理にもまた資金が必要となる

答え:遺跡の発掘を控え、遺物も必要以上に引き揚げない

水中ではさまざまな制約があるのはもちろんだ。時には透明度も悪く、暗闇での発掘も珍しくはない。また、海流の流れも強く泳ぎながらの作業もある。そして、何よりも作業時間が短い。水圧が体にかかった状態で圧縮された空気を吸うわけであり、急に浮上すると体に溶け込んだ空気が気泡となってしまう。これを防止するにはゆっくり浮上することはもちろんだが、深い場所で長時間潜ることが出来ない。水深50mの地点では作業時間は10分ほどで、一日2回しか潜ることができない。安全性の確保のためにきちんと水中での作業のためのトレーニングを積む必要はある。しかし、この点ばかりが強調されているが、実は「考古学者」を育てるほうが難しい。ダイバーには訓練次第で誰でもなれるが、考古学者になるには時間がかかるし、何よりも根気が必要だ。ダイビングの訓練よりも考古学者としてのトレーニングを重視するべきである。さて、次に保存処理であるが、これもなかなか難しい問題である。水中にある遺物は陸上のある遺物よりも保存状態が良いことが多い。しかし、問題はきちんと保存処理を施さないと空気に触れたとたんにボロボロに崩れだすこともある。これを防ぐには遺物を長時間(時には10年から20年)薬品に浸す必要がある場合もある。スウェーデンの有名な沈没船ヴァーサ号は20年以上も保存処理が行われていた。つまり、発掘を担当した人が遺跡の保存処理を終え、最終報告書を出すころにはすでに引退をしていた場合もある。

さて、これらの問題をどう「解決」するのか?これも、答えは意外と簡単である。発掘が難しいのあればわざわざ掘る必要はない。そして、保存処理も、しっかりとした予算がないかぎり引き揚げずに現地保存をおこなう。これで、問題は回避できる。いや、これでは考古学ではないと思うかもしれない。発掘を行わないとはどういうことだろうか?詳しく説明をしよう。

水中の遺跡は開発が直ぐに及ぶことが少ないという特徴がある。例えば、パイプラインの施設の事前調査で遺跡が発見された場合、別の場所にラインを通す。陸の道路の場合はコースの変更は他の住宅地などもあり難しいので、発見されれば緊急発掘となる場合が多いであろう。しかし、海はまだ開発の余地があるケースが多いので、そのまま現地保存が可能となる場合が多い。もちろん、陸に近い場所では海の上であってもなかなか工事のプランが変更できないこともあろう。しかし、前述したように、基本的には発掘が困難になるのは水深が深い場所であり、浅い場所ではそこまで発掘が困難ではない。また、工事以外に、例えばスポーツダイバーの方が遺跡を発見した場合などは開発が直ぐに及ぶこともないので現地での保存が優先される。現地保存をしても台風や津波などで海底面が荒らされてしまう場合もあると思う人もいるだろう。そこで、オーストラリアやインドなど世界各地で水中遺跡を台風などから守るために水中に防護壁や網をはったり埋め立てるなど現状保存方法の研究が進んでいる。それ以上に人間が破壊するケースが多いので、そちらを先に解決したい。ユネスコの水中文化遺産保護法案も現地保存を第一目的とし、それが可能でない場合にのみ対処方法を考えることを原則としいる。現地保存をすれば、もちろん、費用のかかるトレーニングや保存処理など必要ない。また、最近の水中考古学の現状は、このような遺跡のマネージメントや現状保存の研究などが重要な課題となって研究が進んでいる。

では、考古学者って何をするの?と思うかもしれない。ここで、データベースがキーワードとなってくる。考古学者は遺跡が発見されたときに、その遺跡に潜り、発掘を行わず出来るだけあらゆることを記録する。発掘はせずに、その船の遺物の特徴から沈没年代の特定やどのような船であったかを考察する。これらの記録は一般に公開し、様々な専門化の意見を問う。沈没船は遺跡の種類が豊富なので、一人で研究をすることはほぼ不可能であり、歴史家や様々な考古学のスペシャリストの助けが必要である。逆に言えば、発掘する意義のある研究が出来る人が育つまで発掘を延期していると考えることも出来る。前述したが、水中遺跡は偶然に一般の人によって発見されることがほとんどである。つまり、発見されたものが最良の遺跡であるかは分からないのである。何億円もの費用を費やして10年研究を続けた後、ほんのその30m先に同時代のもっと保存状態が良好で、発掘環境も良い遺跡が発見される可能性も否定できない。そうなると、今までの努力が無駄であったと思ってしまう人もいるのではなかろうか?では、データベースの蓄積によって好条件の遺跡を待っていたら、いつまでたっても発掘できないし、どうやって成果をだすのかと悩むところである。しかし、ここでアプローチの違いが出てくる。水中考古学は事前調査によって遺跡を発見し、学術調査によって成果を出す学問である。水中考古学者は水中遺跡のデータベースをもとに、今、何が知りたいのか?今ある遺跡から何を学べるのか?どの遺跡がそれを答えてくれるのかを慎重に吟味する必要がある。つまり、はっきりとしたリサーチ・クエスチョンを提案し、どの遺跡のどの部分を調査するのか明確に打ち出してから、部分的発掘を行うのである。例えば、17世紀から18世紀にかけての舵と舵幹の接合部について研究したいとすれば、その部分が残っている沈没船を探し出し、その部分だけを水中で記録する方法をとる。海外では遺跡のマネージメントの他に研究の的を絞りピンポイントで発掘を行うスタイルが確立されつつある。または、ひとつの遺物の種類に絞って研究することも考えられる。

もちろん、すべての遺跡が現地保存できるわけではない。時にはどうしても工事のプランを変えることが出来ずに発掘に踏み切ることもある。しかし、この方法での利点は遺跡を破壊しないことと、費用がかからないこと以外にもメリットがある。それは、考古学者ダイバーの実践トレーニングが出来ることにある。このような小さなプロジェクトを積むことにより、実際に工事などで緊急発掘が必要となっても実践で訓練されたダイバーが充分育ってくれているのである。また、少数の遺物を引き揚げ、保存処理の研究を行い、今後起こりうる大型船の緊急発掘に備えノウハウを積むことが出来る。

 

結論

水中考古学の調査や発掘には様々な壁があるように捉えられている。特に、遺跡の発見が困難であり、また、発掘や保存処理には費用と時間が掛かることが考えられる。しかし、陸上の緊急発掘をベースとした日本の考古学の考え方では大きな障害に見えても、実際にはこれらの問題点は少し違った視点(特異な遺跡への対処方法)から眺めることで解決できる場合が多い。つまり、考古学者は水中文化遺産保護へ向けての啓蒙活動と情報収集に従事し、明確な研究対処にそった小規模の(非破壊)調査を繰り返すことを第一目的とすることにある。

全体的に少し理想論的な部分もあったが、実際に水中考古学先進国ではこのような動きが最近顕著に現れている。また、もちろん水中考古学の発達にはさまざまなパターンがあっても良いわけで、日本の土地にあった手法を考えなくてはならない。しかし、すでに多くの水中遺跡が開発により失われており、また、世界に比べこの分野では国家の取り組みが殆ど無いことは非常に大きな問題であり、ひとつの解決策として提案してみた。しかし、アジア水中考古学研究所などが中心となり、日本の水中遺跡のデータベースの作成を行っている。これらの成果は世界からも評価されるべき動きである。このデータベースをもとに、地方自治体や政府が真剣に国としての対策を検討する必要がある。また、これを読んだ人で、海で作業をする人であれば、何か思い当たることがあるかもしれない。水中文化遺産保護のために自分で何をするべきか、何が出来るか考えてみていただきたい。小さなステップであれ何か大きな発展に繋がるかもしれない。

最後に、水中考古学って発掘とか保存処理とか大変なの?と聞かれたら、こう答えましょう。

「陸上の発掘の常識やアプローチをそのまま水中に当てはめると大変そうに思えるが、水中遺跡を巧くマネージメントすることにより現地保存を前提とし、非破壊調査で少しづつ成果を蓄積していく方法をとるので、思っている以上に難しいものではない。しかし、これを実現するためには、一般の人々の理解を広めることや、政府関係者が法の整備に着手することが先決である。」