水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

大ベトナム展

九州国立博物館で現在おこなわれている『大ベトナム展』ですが、6月9日まで開催です。

最近は、ベトナムもいろいろと注目を集めておりますが、歴史・考古も目が離せません。九州という土地柄もあり、この特別展のテーマはアジアの中のベトナム、日本とベトナムの国際交流が打ち出されています。「ベトナム」展ではありますが、海を介した繋がりがメインですので、ベトナムに興味があまりない人でも楽しめるのではないでしょうか?

特にこの展示ではベトナムで発見された沈没船(ホイアン沖・クーラオチャム沈没船など)からの遺物なども見ることができます。また、朱印船の絵図などもあります。文献資料として、ベトナムから日本宛の手紙(戦国~江戸にかけて)などもあり、アジアの海事史を知るうえで貴重・重要な資料がそろっています。

九州国立博物館に行ったことがない人など、この機会に行ってみてはいかがでしょうか?

水中考古学を学ぼう!

弘安の役の終焉の地、鷹島海底遺跡が水中遺跡としては初の国の指定を受けた遺跡となりました。そんな動きもあり、最近は水中考古学の話題が絶えません。

そんななか、有名考古学雑誌が相次いで水中考古学特集を組みました。このように二つの雑誌が同時に水中考古学特集を出すことは今までのこの学問の歴史で初めてのことではないでしょうか?水中考古学に興味のある人は、ぜひこの機会にご購入あれ!

考古学ジャーナルは多少一般向けで内容も薄く、すぐに読めます。基本的には鷹島海底遺跡関連を中心に特集を組んでいます。10数年前にも水中考古学の特集を組んでいますので、比較してみるのも面白いかもしれません。専門で水中考古を学んでいる人には多少物足りなさがあるかもしれませんが、それ以外の人には読みやすく、わかりやすい内容となっています。詳しくなくても考古ファンでなくとも、読んでみると面白いかもしれません。ダイバーさんとか、なんとなく興味があるけど、考古学は難しそう!と思う人にもお勧めできます。

「考古学ジャーナル」 2013年5月号
水中考古学―元寇船最新研究の成果―
価格:1800円
特集は30ページ弱、字も大き目です。

次に、季刊考古学。こちらは、もっとディープな内容にまとまっております。鷹島海底遺跡が注目を得たことに端を発していますが、それほど鷹島中心ではありません。東アジアや多少なりとも東南アジアの水中・海事考古学について書かれています。内容は専門的ですので、少し難しく思う人もいるかもしれませんが、考古ファンなら問題なく読めるでしょう。考古学の本を一度も読んだことにない人には少しとっつきにくいかもしれませんが、逆に言うと、考古学を目指す人なら是非読んでいただきたい内容であると思います。

「季刊考古学」 123号
水中考古学の現状と課題
価格:2520円
特集は100ページほど。

ちなみに、もっと水中考古を知りたい方にはこちらの本もお勧めします。

文化遺産の眠る海: 水中考古学入門 ~ちょっと専門的ですが、考古ファンなら必読!

沈没船が教える世界史(新書)~初心者(学生)向け。水中考古学に興味のない人にこそ読んでもらいたい一冊。

九州国立博物館で『大ベトナム展』

4月16日から、九州国立博物館で『大ベトナム展』が開催されます!6月9日までですので、短い期間ですので、九州在住の方、もしくは九州に来れられ方はぜひ見にいかれてみてはいかがでしょうか?

このサイトでも紹介しているベトナムの元寇~白藤江の戦いの考古学プロジェクト~も紹介・展示されております。今、注目を浴びつつあるベトナムの考古学・歴史を知る良い機会です。また、常設展では日本の元寇の遺跡である鷹島海底遺跡の展示もあり、日本では数少ない水中遺跡から引き揚げられた遺跡を見ることのできる博物館です。

この機会お見逃しなく!

甦る元寇の船~神風の正体に迫る~

昨年、福岡のRKB毎日放送で「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」という番組が放映されました。九州限定の番組でしたので、関西や関東にお住いの方は残念ながら見ることができませんでした...ですが、番組を見れなかった方(見逃した方)に朗報です!

このたび、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」が、第54回科学技術映像祭で科学技術教養部門・文部科学大臣賞を受賞しまた!日本で作られたドキュメンタリー番組の中からみごとに準優勝にあたる賞にえらばれました!水中考古学という部門がそれだけ注目を集めて、また、認知されたことを意味します。メディアだけでなく、学術的な意義も評価された番組と言えます。

その受賞を記念して、この度上映会が東京でおこなわれます!科学技術映像祭・入選作品発表会なので、元寇以外の様々なドキュメンタリーが放映されるそうです。

日 時 4月19日(金) 11:30~(46分)
会 場 科学技術館・サイエンスホール(千代田区北の丸公園2-1)

参加費は無料だそうですので、気楽にご参加ください!

RKBは今後も元寇や水中考古学の番組を作っていきたいと考えているそうで、この受賞が良いきっかけとなりそうです。他の放送局も水中考古に関してすばらしい番組を作ってくださることを期待しています。番組制作者の方々おめでとうございます!

学位・博士論文集

水中考古学の名門、テキサスA&M大学の生徒が書いた学位・博士論文がダウンロードできます。

世界で最初に水中(海事)考古学のプログラムをスタートさせた大学ですので、過去から現在にかけての研究の動向がわかります。若い学生などがこれに目を通して、何か研究のテーマでも見つけるヒントにでもなれば幸いです。

なぜかダウンロードに時間が要しますが、気長に...

良くある質問にお答えします!

水中考古学のサイトを運営していると、いろいろな質問が寄せられますが、圧倒的に多いのが、「@@@なんですが、水中考古学ってできますか?」という質問。一か月に2~3件このような質問をいただきます。それだけ、この学問をやりたい!と思っている人が多くなってきている証拠ですので、非常にありがたく思います。

そこで、すでに何回かこのサイト内などでも書きましたが、そのような質問に対しての簡単な私の意見を再度述べたいと思います。質問をしていただいた方にもお答えしますが、こちらも読んで参考にしていただければ幸いです。

ポイントとしては、水中考古学は特別な学問ではなく、単なる「考古学」であること。単なる考古学ではあるが、調査は学際的になるため、様々な形の専門家が必要になることです。そして、誰でも調査にかかわれるので、「自分の得意な分野で水中考古学のどのようにかかわれるか」、言い換えれば、「自分の分野のアプローチからどのように水中考古学に貢献できるか」を探ってみてください。つまり、道は二つあると言えます。考古学者としての道を進むか、もしくは、別の分野(歴史学・海洋学・保存処理など)をマスターしながら考古学調査に関わるかのパターンになると思います。

最初に、考古学者として目指すパターンについての説明です。水中考古学の父と呼ばれるジョージ・バス先生も、「水中で発掘を行う考古学は、多々単に考古学と呼ばれるべきだ」と言っていますし、「考古学者をダイバーに育てるのは簡単だが、ダイバーを考古学者として育てることは非常に難しい」と言っています。つまり、過去の人類が残した痕跡やモノから過去の生活を探る考古学の基礎が最重要になってきます。モノの見方、考古学の学史、方法論などを学びます。これは、考古学の講座がある大学ではどこでも学べるはずです。これは、海外でも日本でもOKですし、水中にこだわる必要はありません。「水中」考古学の基礎の98%は「陸」の考古学です。

次に、他の分野からこの分野に貢献するパターンについて。主に、文献史学、海洋学などがメインでしょう。水中考古学は、特に沈没船の調査などにおいて、タイプカプセルのような一括性の遺跡を発掘する機会が多く、また、一つの歴史の出来事の遺跡を検証します。 この場合、考古学者だけではなく、やはり歴史を学んだ専門家の意見が必要となります。そのため、歴史の分野での研究成果と考古学の発掘の成果を融合させるためには、考古学と歴史の両方面からのアプローチが大切になります。考古学者は歴史学から、そして、歴史学者は考古学から学ぶことがたくさんあります。お互いの研究を補えるはずでしょう。海洋学ですが、水中遺跡を見つけるためには、事前調査(サーヴェイ)が必要となります。これは、サイドスキャンソナー、マルチビーム、磁気探査、サブボトム・プロファイラーなどなど名前からすでに難しく聞こえる海洋調査機材を使用します。これらのデータ処理や実際の使用に際しては、やはり、海洋学の専門の先生が調査をしたほうがより効果的であることでしょう。

考古学者が歴史学をマスターしたり、海洋調査機材を覚えることも可能かもしれませんが、それよりも、その分野の専門家との共同・学際調査がより効率が良いことは明らかでしょう。しかし、考古学者もこれらの分野のことを少しは知っておかないと巧くこれらのメソッドを活用できないでしょう。また、協力するほうも考古学を少しは知っておくべきでしょう。水中にある文化遺産に興味を持つ人も多いでしょうが、この分野の発展には、そのように興味を持った様々な人たちの協力を得て研究を進めていくことが大切です。

最後になりますが、「水中考古学という学問」で成功をした人はいませんが、「考古学」でしっかりと成果をだして、水中考古学を行っている先生はいます。海外ではジョージ・バス先生などがその一人です。また、タイタニック号を発見したロバート・バラード先生も、「海洋学」で成果をだし、水中考古学に貢献しています。地球の70%以上を占める世界の海は広く、そして、その内の5%ほどしか人類はまだ見ていないそうです。研究の可能性は十分にあると思います。どの道を進むかは、本人次第ですが、今の自分の能力をさらに高めてそれをどのように水中にある文化遺産の保護・活用に役立てることができるかを考えるのが今後の進路を決める手掛かりになるのではないでしょうか?

アポロ11号のエンジン引き揚げ!

月面着陸に成功したアポロ11号のエンジンが大西洋海底から引き揚げられたそうです!

厳密には考古学調査とは言えませんが、なかなか面白いプロジェクトです。出資者は、ネットで有名なアマゾンの会長。ちょっとした映像が見られますが、最近のROV(水中ロボット)の性能の良さがうかがえます。アームで細かい操作もしています。エンジンを引き上げる様はまるで宇宙空間のようです...水中考古学と宇宙考古学が融合した感じです。ちなみに、これから保存処理などを施していくのでしょう。状態は良さそうなので、それほど処理には時間もかからないでしょうが、それでもすぐに展示というわけにはいかないでしょう。

さて、ユネスコの水中文化遺産保護条約では、100以上前に水没した「モノ」は遺産・遺跡としての保護の対象になるので、このエンジンはちょっとまだ新しいですね。このように、ちょっとした資産家が海底を調査して簡単に(?)価値のある遺跡を発見して引き上げることができる時代になっています。歴史的価値のあるものは知らない間に引き上げられてしまう可能性もあります。考古学者や歴史家ではなく、自己の目的のために遺産を荒らす人も中にはいます。お金儲けの目的だけで歴史の証人となる物が壊されるのは、やはり食い止める必要があると思います。

また、故意にではなく、このような歴史の重要な遺産が人知れず破壊される可能性もあります。例えば、海洋開発などで海底を試掘したり、パイプラインなどを通すときに、これらの遺跡に遭遇する可能性もありますし、実際に、そのようなケースも報告されています。海底に眠る遺跡を守るためには、これからどんどん進むであろう海洋開発にも水中考古学をきちんと取り組む必要があるのではないでしょうか?

文化庁「水中遺跡調査検討委員会(第1回)」の開催

文化庁が遂に動き出しはじめました。まだまだこれからどうなるかわかりませんが、大きな一歩です!

これからの日本の水中文化遺産の取り組みを考えるうえで大きな会議になりそうです。

一般やメディアの方々も聴講できるようですね。会議などちょっと難しいそうですが、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか?
平成25年3月22日(金) 14:00~(17:00)で、東海大学で行われるそうです。参加希望の方は、21日までにメールで事前申し込みが必要です。

今後の日本の水中考古学に期待しましょう!

ベトナムで水中考古学トレーニング始動

ベトナムの元寇を調査する白藤江の戦い考古学調査をはじめ、いくつかのプロジェクトが始動しています。その中で、水中考古学のトレーニングを地元の研究員などを中心に行うための取り組みも行われています。

イギリスのNAS(Nautical Archaeology Society)のトレーニングも行われことが決まりました。ベトナムから水中考古学者が育つ日も近くなってきています!

詳しくはこちらのウェブサイトで(英語ですが)

水中考古学へのいざない~講演会

水中考古学がますますポピュラーになる今日このごろ。一般の理解を深めるための水中考古学の講演会が行われます!

東京ミッドタウンでの講演で、平日(木曜日)の夜開催です。週の間は仕事で忙しく、週末は家族や趣味の時間でなかなか難しそうな講演会に出かけられない方必見です!完全初心者向けですが、働く人のための水中考古学を裏のテーマにプレゼンを作成中です。

水中考古学の興味がありながら、なかなか情報が得られないと思っていた人は、ぜひ参加してみては?

2013年3月14 日(木) 19:00~21:00
定員 80名 ※定員になり次第締め切らせていただきます。
主催 d-labo
会場 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー7F

人類は「海」と深い関わりを持ちながら発展を続けてきた。その歴史を探る学問に「水中考古学」という学問 がある。これまでエジプト・アレキサンドリアの水没遺跡、3000年以上も前の沈没船、大航海時代の船や、 アジアの大型商船、さらには日本の元寇(弘安の役)の際に台風で沈没した船などさまざまな研究の成果を 残してきた。水中考古学は世界では一般的な学問であるが、なぜか日本では着目される機会が少なかった。 ロマンに溢れる海を舞台にした水中考古学の学史、調査・研究事例、そしてその魅力に迫る!!