水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

学位・博士論文集

水中考古学の名門、テキサスA&M大学の生徒が書いた学位・博士論文がダウンロードできます。

世界で最初に水中(海事)考古学のプログラムをスタートさせた大学ですので、過去から現在にかけての研究の動向がわかります。若い学生などがこれに目を通して、何か研究のテーマでも見つけるヒントにでもなれば幸いです。

なぜかダウンロードに時間が要しますが、気長に...

良くある質問にお答えします!

水中考古学のサイトを運営していると、いろいろな質問が寄せられますが、圧倒的に多いのが、「@@@なんですが、水中考古学ってできますか?」という質問。一か月に2~3件このような質問をいただきます。それだけ、この学問をやりたい!と思っている人が多くなってきている証拠ですので、非常にありがたく思います。

そこで、すでに何回かこのサイト内などでも書きましたが、そのような質問に対しての簡単な私の意見を再度述べたいと思います。質問をしていただいた方にもお答えしますが、こちらも読んで参考にしていただければ幸いです。

ポイントとしては、水中考古学は特別な学問ではなく、単なる「考古学」であること。単なる考古学ではあるが、調査は学際的になるため、様々な形の専門家が必要になることです。そして、誰でも調査にかかわれるので、「自分の得意な分野で水中考古学のどのようにかかわれるか」、言い換えれば、「自分の分野のアプローチからどのように水中考古学に貢献できるか」を探ってみてください。つまり、道は二つあると言えます。考古学者としての道を進むか、もしくは、別の分野(歴史学・海洋学・保存処理など)をマスターしながら考古学調査に関わるかのパターンになると思います。

最初に、考古学者として目指すパターンについての説明です。水中考古学の父と呼ばれるジョージ・バス先生も、「水中で発掘を行う考古学は、多々単に考古学と呼ばれるべきだ」と言っていますし、「考古学者をダイバーに育てるのは簡単だが、ダイバーを考古学者として育てることは非常に難しい」と言っています。つまり、過去の人類が残した痕跡やモノから過去の生活を探る考古学の基礎が最重要になってきます。モノの見方、考古学の学史、方法論などを学びます。これは、考古学の講座がある大学ではどこでも学べるはずです。これは、海外でも日本でもOKですし、水中にこだわる必要はありません。「水中」考古学の基礎の98%は「陸」の考古学です。

次に、他の分野からこの分野に貢献するパターンについて。主に、文献史学、海洋学などがメインでしょう。水中考古学は、特に沈没船の調査などにおいて、タイプカプセルのような一括性の遺跡を発掘する機会が多く、また、一つの歴史の出来事の遺跡を検証します。 この場合、考古学者だけではなく、やはり歴史を学んだ専門家の意見が必要となります。そのため、歴史の分野での研究成果と考古学の発掘の成果を融合させるためには、考古学と歴史の両方面からのアプローチが大切になります。考古学者は歴史学から、そして、歴史学者は考古学から学ぶことがたくさんあります。お互いの研究を補えるはずでしょう。海洋学ですが、水中遺跡を見つけるためには、事前調査(サーヴェイ)が必要となります。これは、サイドスキャンソナー、マルチビーム、磁気探査、サブボトム・プロファイラーなどなど名前からすでに難しく聞こえる海洋調査機材を使用します。これらのデータ処理や実際の使用に際しては、やはり、海洋学の専門の先生が調査をしたほうがより効果的であることでしょう。

考古学者が歴史学をマスターしたり、海洋調査機材を覚えることも可能かもしれませんが、それよりも、その分野の専門家との共同・学際調査がより効率が良いことは明らかでしょう。しかし、考古学者もこれらの分野のことを少しは知っておかないと巧くこれらのメソッドを活用できないでしょう。また、協力するほうも考古学を少しは知っておくべきでしょう。水中にある文化遺産に興味を持つ人も多いでしょうが、この分野の発展には、そのように興味を持った様々な人たちの協力を得て研究を進めていくことが大切です。

最後になりますが、「水中考古学という学問」で成功をした人はいませんが、「考古学」でしっかりと成果をだして、水中考古学を行っている先生はいます。海外ではジョージ・バス先生などがその一人です。また、タイタニック号を発見したロバート・バラード先生も、「海洋学」で成果をだし、水中考古学に貢献しています。地球の70%以上を占める世界の海は広く、そして、その内の5%ほどしか人類はまだ見ていないそうです。研究の可能性は十分にあると思います。どの道を進むかは、本人次第ですが、今の自分の能力をさらに高めてそれをどのように水中にある文化遺産の保護・活用に役立てることができるかを考えるのが今後の進路を決める手掛かりになるのではないでしょうか?

アポロ11号のエンジン引き揚げ!

月面着陸に成功したアポロ11号のエンジンが大西洋海底から引き揚げられたそうです!

厳密には考古学調査とは言えませんが、なかなか面白いプロジェクトです。出資者は、ネットで有名なアマゾンの会長。ちょっとした映像が見られますが、最近のROV(水中ロボット)の性能の良さがうかがえます。アームで細かい操作もしています。エンジンを引き上げる様はまるで宇宙空間のようです...水中考古学と宇宙考古学が融合した感じです。ちなみに、これから保存処理などを施していくのでしょう。状態は良さそうなので、それほど処理には時間もかからないでしょうが、それでもすぐに展示というわけにはいかないでしょう。

さて、ユネスコの水中文化遺産保護条約では、100以上前に水没した「モノ」は遺産・遺跡としての保護の対象になるので、このエンジンはちょっとまだ新しいですね。このように、ちょっとした資産家が海底を調査して簡単に(?)価値のある遺跡を発見して引き上げることができる時代になっています。歴史的価値のあるものは知らない間に引き上げられてしまう可能性もあります。考古学者や歴史家ではなく、自己の目的のために遺産を荒らす人も中にはいます。お金儲けの目的だけで歴史の証人となる物が壊されるのは、やはり食い止める必要があると思います。

また、故意にではなく、このような歴史の重要な遺産が人知れず破壊される可能性もあります。例えば、海洋開発などで海底を試掘したり、パイプラインなどを通すときに、これらの遺跡に遭遇する可能性もありますし、実際に、そのようなケースも報告されています。海底に眠る遺跡を守るためには、これからどんどん進むであろう海洋開発にも水中考古学をきちんと取り組む必要があるのではないでしょうか?

文化庁「水中遺跡調査検討委員会(第1回)」の開催

文化庁が遂に動き出しはじめました。まだまだこれからどうなるかわかりませんが、大きな一歩です!

これからの日本の水中文化遺産の取り組みを考えるうえで大きな会議になりそうです。

一般やメディアの方々も聴講できるようですね。会議などちょっと難しいそうですが、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか?
平成25年3月22日(金) 14:00~(17:00)で、東海大学で行われるそうです。参加希望の方は、21日までにメールで事前申し込みが必要です。

今後の日本の水中考古学に期待しましょう!

ベトナムで水中考古学トレーニング始動

ベトナムの元寇を調査する白藤江の戦い考古学調査をはじめ、いくつかのプロジェクトが始動しています。その中で、水中考古学のトレーニングを地元の研究員などを中心に行うための取り組みも行われています。

イギリスのNAS(Nautical Archaeology Society)のトレーニングも行われことが決まりました。ベトナムから水中考古学者が育つ日も近くなってきています!

詳しくはこちらのウェブサイトで(英語ですが)

水中考古学へのいざない~講演会

水中考古学がますますポピュラーになる今日このごろ。一般の理解を深めるための水中考古学の講演会が行われます!

東京ミッドタウンでの講演で、平日(木曜日)の夜開催です。週の間は仕事で忙しく、週末は家族や趣味の時間でなかなか難しそうな講演会に出かけられない方必見です!完全初心者向けですが、働く人のための水中考古学を裏のテーマにプレゼンを作成中です。

水中考古学の興味がありながら、なかなか情報が得られないと思っていた人は、ぜひ参加してみては?

2013年3月14 日(木) 19:00~21:00
定員 80名 ※定員になり次第締め切らせていただきます。
主催 d-labo
会場 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー7F

人類は「海」と深い関わりを持ちながら発展を続けてきた。その歴史を探る学問に「水中考古学」という学問 がある。これまでエジプト・アレキサンドリアの水没遺跡、3000年以上も前の沈没船、大航海時代の船や、 アジアの大型商船、さらには日本の元寇(弘安の役)の際に台風で沈没した船などさまざまな研究の成果を 残してきた。水中考古学は世界では一般的な学問であるが、なぜか日本では着目される機会が少なかった。 ロマンに溢れる海を舞台にした水中考古学の学史、調査・研究事例、そしてその魅力に迫る!!

鷹島神崎遺跡国史跡指定記念シンポジウムーいよいよ来襲(来週)です!

鷹島海底遺跡での沈没船の発見、そして、去年の国の遺跡の指定をうけ、その記念としてシンポジウムが行われます。

下記は松浦市のホームページからの引用です。お近くの方はぜひご参加ください。遠くの方もぜひどうそ!

平成23年10月に琉球大学の池田榮史教授を中心とする研究グループが、鷹島海底遺跡の範囲で鷹島町神崎免の海岸から約200m、水深20mから25mの海底面を約1m掘り下げた地点から730年前の1281年(弘安4年)の蒙古襲来時に沈没した元の軍船を発見されました。
 これまで、鷹島海底遺跡からは、船の部材や碇・イカリ石などの船舶に関する遺物、鉄製冑・「てつはう」(読みは、てっぽう)などの武器・武具類などは出土していましたが、船体そのものの発見はありまえせんでした。元の軍船の実態は『蒙古襲来絵詞』が有名ですが、その実物が海底で発見されたことは世界的にも大変貴重な資料です。
 このような中で、平成24年3月27日に海底遺跡としては日本で初めてとなる国史跡に鷹島海底遺跡の一部が「鷹島神崎遺跡」として指定されました。
 この国指定を記念して、鷹島神崎遺跡を国内外に知らせ、その保護の重要性を広く発信するため中国・韓国・日本の研究者を招聘してシンポジウムを開催いたします。
 入場は無料です。是非ご来場ください。

日時  平成25年1月26日(土) 午前10時~午後4時20分
会場  長崎県松浦市鷹島町里免1102番地1
      鷹島スポーツ・文化交流センター

アンティキティラ島から再発見!

アンティキティラ島の機械(コンピューター)といえば、オーパーツなどとも騒がれたこともありますが、きちんとした考古学上の発見で、ローマ時代の沈没船から発見されています。

この沈没船は20世最初に発掘された沈没船ですので、考古学のスタンダードでは決してありませんでした。その後、クストーなどにより再調査がおこなわれています。きちんとした考古学調査は行われたことがなかったといってもよいでしょう。

去年、この遺跡の再調査が開始されました。そこでいろいろと面白い発見がなされているようです。水中遺跡は遺物に保存処理を施さないと何もわからないことが多く、まだまだ情報が出てくるのもこれからでしょう。今後、金属探知機などで綿密に遺跡を調査するようです。

また、面白い発見としては、実は、横にもう一隻船が沈んでいたそうです。同じ船団の船であるようですので、今後の発見が期待できます。しばらくは目が離せなさそうですね。

2013年のごあいさつ

あけましておめでとうございます!もう2013年ですね。今年も水中考古学の応援をよろしく申し上げます。

応援といっても何のことなのでしょうか...実は、世界の水中文化遺産のそのほとんどが考古学者ではない一般住民によって発見、時には管理されています!また、水中考古学が発達している国ほど一般市民の水中文化の理解度が高いといえます。これからの若い世代にも早いうちからこの学問に慣れ親しんでもらう必要もあります。つまり、専門家以外への周知、市民全般において水中考古学という言葉が認知されればされるほど発展が進む学問です。ですので、皆様には水中考古学を知らない人にどんどん話して、周知化を進めることにあります。また、漁業関係や海で働く人、地方自治などにかかわる人はその周囲の遺跡の有無なども調べたり、どのような取り組みがあるか調べることも大切です。また、海に出た時には「自分が遺跡を発見する可能性が十分にある」ことも理解し、そのようなものがあったら関連機関(教育委員会およびアジア水中考古学研究所)に連絡を入れることなどを覚えておいてください。

何度も書いていますが、一般市民の参加があってこそ初めて発見につながる分野であり、それなしで考古学者が水中遺跡を見つける可能性はほとんどありません。

さてさて、少し去年の出来事や今年の展開についてお話します。

昨年からフェイスブックやツイッターなどで情報を公開しており、あまりこのサイト自体のアップデートは頻度が減ったかもしれませんが、今年は少しバランスよく情報を公開していきたいと考えております。さて、去年は、タイタニック沈没から100年、鷹島の海底遺跡の国指定などを受け、日本国内外で盛り上がりを見せております。しかし、その一方で、ユネスコの水中文化遺産保護条約を採択した国が増えなかったという事実もあります。ユネスコの提唱する文化財保護以外のオプションも考えられるからでしょうか?

今年の水中考古学の見所ですが、引き続き日本国内では鷹島海底遺跡のニュースが聞かれることでしょうが、アジア水中考古学研究所の水中文化遺産データベース事業の報告書や他の出版物など学術面でいろいろと進展があると思われます。

NHKスペシャル 蒙古襲来(幻の巨大軍船)

11月3日の夜7:30よりNHKスペシャルで蒙古襲来(水中考古学)についての特集があります!長崎県鷹島で元寇の船が発見されたことなどを中心とした内容だそうです。

NHKもここ数年取材を続けていたそうです。主に水中考古学の成果などで、軍船の特徴や、水中発掘、探査の様子など色々紹介するそうです。内容は専門的な話は殆どなさそなので、全く水中考古学や元寇について知らなくても楽しめそうな内容に仕上がっていると思います。

鷹島の遺跡は数十年もいろいろな研究者が関わってきた貴重な海底遺跡です。ここ数年は、琉球大学の池田教授が中心となっています。もともと、今回の発見も、東海大学の根元教授の探査の成果が発揮された結果ですし、それ以前は、アジア水中考古学研究所(ARIUA)などが調査を進めてきました。ARIUAの調査ではすでに500件以上の木材が引き揚げられ、6mほどある隔壁材や、大型の椗などが発見されています。

いままでの、これらの地道な調査のもとに、今回の発見がありました。現在、国の指定遺跡となりましたが、今後ますます発見が相次ぐことでしょう。実は、今回の発見は、それほど保存状態の良い船ではないというのが水中考古学の専門家からの意見です。引き揚げには資金が掛かりますので、慎重を要します。この発見よりも、もっと凄い発見がまだまだま待っているはずです。それらを探すことがこれからの作業になると思われます。これ以上の船はたくさん眠っているはずです。

実は、水中では陸上に比べて遺跡が残りやすいのです。酸素から遮断されますから、陸上ではほとんど残ることのない有機物(木材など)が残っていることが多くあります。3000年以上も前に沈没した船なども世界では発見されています。今回の発見は日本の水中考古学にとってはセンセーショナルなものですが、世界ではすでに何千もの水中遺跡が発見・発掘されています。番組では韓国や中国でも水中考古学の成果を紹介するそうですので、そちらも楽しみですね。韓国の新安沈没船や、中国の数々の沈没船のような船が日本近海にまだまだ眠っているはずです。また、もちろん、蒙古襲来で使われた船だけではありません。古代・中世の船など見えないだけで実は多くの水中遺跡が発見を待っています。

さて、番組の内容にもどりますが、実は私も出演予定です。ここでも何度か紹介しているベトナムの元寇(白藤江の戦い)の調査の様子が紹介されます。番組の最後のほうで3-4分ほどですが、出るそうです。百聞は一見にしかずですから、是非、多くの人に見てもらいたいですね。11月には簡単な調査も計画されています。

それでは、明日の夜の放送をお楽しみに!また、見た方は感想もお願いします!