沈没船

考古学史は塗り替えられる…世界最古の沈没船発見?

世界最古の沈没船発見か?

トルコ沖でアンカラ大学の研究者によって発見されたようです。およそ4000年前に沈んだとされていますが、詳細はまだ不明。この付近にオスマン帝国時代の沈没船などもあり、そちらの船を調査中に偶然発見した模様。(ニュース記事からではあまり良く分かりません…)これから具体的な調査を進めていき、脱塩処理や保存処理などおこなうため、具体的な成果は見るには10年以上は掛かりそうですね…

今のところ、最古の発掘された沈没船はウル・ブルン沈没船で、3300年前ごろの船です。こちらもトルコで発見されています。もちろん、沈没船ではなく、船自体は残っているケースもあります。有名な例ではエジプトクフ王の太陽の船など。また、丸木舟なども数千年前のものもあります。

最古の沈没船ではないですが、つい先日、マルタ沖でフェニキア人の船でおよそ2700年前の沈没船が発見されています。こちらもいまのところ詳細はまだ分かっておらず、これら調査を開始するとのこと。

また、デンマークでも最古の船が水中から発見されたニュースが報道されています。こちらは丸木舟ですが、舷側版を足していたようで、修復の跡などが発見されています。デンマークは石器時代の住居跡なども多く発見されているので、その一つから船が発見されているようで、厳密な意味で沈没船ではなさそうです。(岸に破棄されたものが水位の変化で水没した?)遺跡が形成された要因が沈没によるものではないので…こちらは調査が進んでおり、先月デンマークに視察に行った際にもこの遺跡について話を聞いてきました。

1980年代に発見されたウル・ブルン沈没船も最古の例の席を譲るときがきたようですね…今度本を出版する機会があれば書き直さないと行けませんね。

沈没船を研究することについて…

先日、お隣韓国で沈没船事故があり多くの方が亡くなり、また、いまだに行方不明者も多くいます。韓国だけでなく日本を含め世界では船を運行する者、海に関連する仕事をする人にとって大きなショックとなったのではないでしょうか?悲しい事件ではありますが、このような事故が二度と起きないよう様々な安全上の対策が必要であることを痛感させられる事故です。我々水中考古学者、特に過去の沈没船を研究の対象としている人にとっても複雑な気持ちで見つめる事件となりました。すぐ近くでは数隻の過去の沈没船(高麗時代など)が発見されている海の難所でありますし、日本ともゆかりの深い新安沈没船もそれほど遠くない海域で発見されています。

過去の沈没船を研究する人にとって忘れてはならないことは過去の事故をまのあたりにしているということです。我々が研究しているのは、考古学ではありますが、歴史の1ページを生々しく映し出すこともあります。もちろん、その事故現場で命を落とした人もいます。それが数百・千年前であれ、それは変わらない事実であると自覚しています。沈没船の研究を行う前には世界各地において文化・風習は違えど、様々な儀式を行います。日本ではお供え物をしたり供養をしたりしますし、韓国でも過去の霊に対して敬意を払ってから発掘作業を行っていました。西洋でもいろいろな儀式などを行っています。

考古学者はその事故現場から発見された遺物ひとつひとつに対して過去に人が使用したものであることを理解し、十分敬意を払います。重要なのは、過去の歴史を教えてくれるだけではありません。いままでは、あまりこの点についてはこのサイト上では書いていませんでした。もっと書くべきであったと思い反省しています。また、トレジャーハンターなど引き揚げた遺物を売買して自分達だけの利益とする人がいることは考古学的観点のみでなく、人道的立場からも個人的に理解できません。海に沈んでいる過去の遺物はできる限り保護されるべきであると私は考えています。

沈没船の研究を通して一つ言えることは、人間は同じ過ちを何度も繰り返すということです。文献・考古学資料の両方からわかることですが、船の沈む原因の多くは人為的ミス、特に危険回避に十分責任を感じていなかったことが多いような気がします。ロイド社やオランダ東インド会社の資料などを見てもわかりますが、嵐などで沈没することは珍しい例です。沈没事故の90%は岸に近いエリアで起こっています~主に衝突、浅瀬に乗り上げる、積み荷のバランスが悪い、利益を求めたがゆえの積みすぎなどなど。今回の事故も歴史上に幾度となく起こった事故とあまり変わりがないように思います。どうして人は同じミスによる災害を繰り返すのでしょうか?

沈没船の考古学を災害考古学として捉え、実際にその観点から研究を行っている専門家もいます。あまり自分の気持ちを巧く表現できたかわかりませんが、少しでも伝われば幸いです。災害を扱う研究者として歴史や考古学を通して多くの人に災害について知ってもらいたい、何とか次の災害を防ぎたい…そう切実に願う考古学者も多くいると思います。

メキシコ湾で調査中(ライブ映像もあり)

NOAA(アメリカ海洋大気局)がメキシコ湾で深海に沈む船を調査中です。

ライブ映像もあるようです。去年、発見され話題を呼んだ船ですが、あまりにポイントが深いので水中ロボットで探査しています。水中ロボから配信されるので、考古学者は遠隔で画像を見ながら支持をだし、映像を分析します。

コチラの沈没船ですが、2隻ほぼ同時期のものがすぐそばで発見されています。片方は武器などを多く積んでいますが、もう片方は武器などはなく積み荷だけ…私掠された船なのか?それとも一隻は護衛船か?

綺麗な映像が撮れていますので、ビデオだけでもご覧ください!

 

 

中国の水中考古学

中国の水中考古学について、日本語で読める記事があったので。

中国は国家プロジェクトとして水中考古学を推し進めています。他の国に比べてもこの分野への熱の入り方はけた違いです。これ自体は素晴らしいことなのですが、この記事の抜粋でいくつか気になる点を挙げます。

「南シナ海には1000艘もの沈没船が眠っていることが確認されているが、水中で作業できる考古学関係者は100人にも満たず、作業は困難を極めている」

さて、沈没船の数ですが、とびぬけて多い数ではないということ。スウェーデンでは3000件以上の水中遺跡が保護対象の遺跡として登録されています。しかし、スウェーデンで実際に水中専門で作業している考古学者はそれほど多いわけではありません。ここではスウェーデンという国を例にとりましたが、メキシコや他の国でも状況はそれほど変わりません。何十万とある水中遺跡のマネージメントをごく少人数でおこなっています。

この記事を読んだときに私が最初に感じたのは、「水中遺跡」というものを陸上とは違う「特別なケース」としてみていることです。

日本では年間8千件以上もの陸上遺跡が発掘されていますが、まだまだ陸上の遺跡が無数にあります。遺跡のある場所は「周知の遺跡」として認知され遺跡台帳に登録されます。周辺で開発があった場合に破壊されるために、保存記録として発掘を行います。遺跡がそこにあるとわかっており、重要な遺跡であっても発掘しないケースがほとんどです。陸上の遺跡をただそこに遺跡があるからガンガン掘っていくなどは考古学者の数や資金の面から見ても相当困難です。でも、困難だからといってニュースでそれが取り扱われることはないですね…というよりも、現在の経済状況や世界の考古学行政(および学術調査)の常識から考えて、遺跡があるという理由のみで発掘することはないと考えられます。

遺跡が開発によって破壊されるときにのみそのエリアを発掘すること、これが行政考古学の前提となっています。そのためには、周知の遺跡の範囲をしっかりと把握すること、新しい遺跡の発見、開発業者などにもしっかりと遺跡を大切にすることを認識させ遺跡があった場合の対処が重要となっています。陸上の考古学ではその時の経済の状況などを考え開発とのバランスを取りながらマネージメントを行っています。日本(と世界)の陸上の考古学は調査だけでなく、遺跡の保存・活用と開発のバランスを図るマネージメントが重要です。そして、水中考古学が発達している国では水中であっても陸上と同様なマネージメントを行っています。陸と水中の遺跡の区別がないことが重要であり、水中考古学という言葉は使われません

海の上で開発が行われるケースは陸に比べて多くはなく、そして、そのほとんどが、自治体主体で行われる開発や、大企業でも国・県などから補助金などをもらって行うことが多いようです。開発の範囲に水中遺跡があっても、工事の範囲を動かすことが可能な場合が多いようです~陸に比べて工事範囲に関しては計画の段階から遺跡の範囲を考えてプランを立てれば、融通が利く場合が多いようです(海は広いですから)。開発のエリアを変更することができずに、やむを得ず水中で発掘を行わざるを得ない場合、特に発掘を行った経験のある考古学者が遺跡発掘の監督を行います。実際の作業は潜水ができる作業員が行い、記録などを取る場合に考古学者が行うことが多いようです。日本でも陸上の発掘で実際に掘っている作業員さんは考古学の訓練はとくに受けてないですね?水中でも同様に対応できるというのが、大体の国において行われています。

しかし、中国の記事を読むと、「水中遺跡があるから掘らないといけない」という印象を受けます。開発があった時のみではないようです…また、発掘を行うのも専門の訓練を受けた人のみなのでしょうか?これでは、どう考えても困難になるのは当たり前ですね?ユネスコが進めている水中文化遺産の保護ですが、こちらも開発とのバランス、遺跡の現状保持を第一のオプションとして捉えています。中国はちょっと異質な感じがします。

ユネスコの水中文化遺産を承認した国は2014年中には(私の予想では)50か国を超えると思われます。それらの国々は基本的には開発とのバランスを考え、陸の遺跡と水中の遺跡との対応の違いを無くすことを目的として取り組んでいます。現在、日本では水中考古学の体制が整っていませんが、どのように国としての体制を作るか考えたとき、参考になるのは、中国ではないような気がします。もちろん、資金や人員が確保でき、そして保存処理もきちんと対応できれば中国のような対応もできますが、日本の現状を考えるとそれは無理な気がします。しかし、現状維持を前提とした場合は充分対応できるのではないでしょうか?その方法などについては、また後ほど…

ユネスコの水中文化遺産について 

 

SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト

トヨタ財団が後援していただいたSHIPWRECK ASIAプロジェクトからインターネット上でレポートをダウンロードすることが出来ます。

ここまでアジアの沈没船をひとつにまとめた出版物は他にないと思います。泉州・新安・蓬莱沈没船などのほか、南京の造船場発掘報告書概要などもあります。この造船場は鄭和の船団を作ったことで知られています。また、韓国の沈没船などの研究もあります。どれも沈没船などを紹介する内容になっております。アジアの沈没船研究の重要な文献となることでしょう。


SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト の詳細は »

AJ Goddard

AJ Goddardという小さな船が100年以上前にカナダとアラスカの国境付近の湖で沈没しました。ちょうど、カナダのゴールドラッシュ時代の船ですが、殆ど歴史から忘れ去られていました。しかし、つい最近、この船が発見されて話題を呼んでいます。小さな船ですが、冷たい淡水で沈み、その後の開発なども付近で行われなかったため、保存状況が良く、当時の生活の様子が驚くほどよく再現されています。

特に、最新の水中3次元レーザー技術開発のためのテストとしても使われていました。また、当時のレコード〔蓄音機で使った)も発見されて現在そこの記録された音楽も復元されています。なかなか小さいながら面白い船です。リンクを幾つか紹介しますので、ご覧ください。

3Dモデルのビデオ

INAウェブサイト

ニュース(100年以上前のレコード)

「沈没船が教える世界史」書評の書評

「沈没船が教える世界史」メディアファクトリーから好評発売中です。様々なかたからいろいろと書評をいただいていますが、なかなか良いものが多いので非常にうれしく思います。まだ買ってない人は是非本屋さんへ!

レビューされたキーワードをピックアップして見ますと…

面白い
読み易い
知らないことがいっぱいあった
一気に読める
世界史のおさらいになる
内容が濃い

などなどです。ネガティブなポイントをリストしてみますと…

図・写真などが少ない
一つ一つの沈没船に対して情報量が少ない

など挙げられます。私も図や写真などをもっと入れたかったのですが、一般図書ですと著作権など写真の使用量などで経費がかさむこと、またページ数に限りがあることなどいろいろと調整が難しいです。それぞれの船に対しての情報が少ないのも、世界史の大きな流れの中でそれぞれの沈没船の重要性を押さえておきたかったでしょう。実は、今回出版した本では取り扱われなかった沈没船についてもすでに書いた原稿がありますし、今回この本で紹介された沈没船でも大幅にカットされた部分があります…いつか続きを書いてみたいですね…ただしもう少し沈没船一つ一つ詳しく書ければおもしろいでしょうね。雑誌などの月刊コラムなどに毎回違った沈没船を紹介できたらいいなと思っています。

この本を書くにあたって「読みやすさ」を重視していました。読んで欲しい人は高校生・大学生です。あまりそこまで専門では在りませんので、読んだ人が興味を持ってくれるように心がけました。特に沈没船、水中考古学、歴史に興味の無かった人に読んでいただいてこんな世界があったのか!と感じてもらいたいです。また、もともとこれらの主題に興味のある人はさらに読み進めて同業者として一緒に研究していきたいです。これからの若い世代に向けてかかせていただきました。

さて、レビュー〔書評)のなかに出てくるキーワードでもうひとつあるのが、漫画「ワンピース」です。海賊や船が活躍するストーリですが、昔の海賊の沈没船などが実際に水中から発見されるのはやはりこのマンがが好きな人には面白く読めるそうですね。ワンピースの作者の尾田栄一郎氏にも読んでもらいたいですね。なにかストーリーのヒントにでもなれば良いですが、どうでしょう?
 

Trouvadore号発見!

Trouvadore は1841年に沈没したスペインの船で、当時奴隷を運んでいました。船はタークス・カイコス諸島付近で沈没しましたが、何人か無事に脱出した人々は近くの島に住み着き生活を始めました。今日この周辺の島に住んでいる人は何らかの形でこの船(の歴史)と関わっています。

今回はアメリカの政府機関NOAAとShips of Discoveryとい研究機関の共同で調査が行われたようです。このほかにも1816年に沈没したアメリカ船Chippewaも発見されています。この他に別のアメリカ船Onkahyeも同海域で沈没したようですが、まだ発見されていません。これらの船は19世紀にアメリカが奴隷貿易の取り締まりのためにカリブ海に派遣したものです。

どの沈没船2?

[ 問題 ]

下の簡略図はどの沈没船のものでしょう?
外板の張り方のパターンを分かりやすく色分けしてあります…

  1. テクタシュ・ブルヌ沈没船
  2. ポンタナ・ロンガリーニ沈没船
  3. キレニア号
  4. 泉州沈没船
  5. 新安沈没船


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