沈没船

日露戦争の巡洋艦

日露戦争で沈没した、ロシアの巡洋艦ドミトリー・ドンスコイ号が鬱陵島沖の海底で見つかったと韓国企業が発表したようです。

詳しいことはわかりませんが、「企業」「引き揚げの可能性」と書かれているので、考古学調査では無いようです。

日露戦争の巡洋艦発見!

面白い発見ですが、この発見から何を学ぶか?引き揚げはユネスコの理念に反しますし、保存処理にお金が相当かかります。また、周辺の自然環境も、実は沈没船があることで魚礁となっている場合もあるので、簡単に引き揚げとは言えないのが現実です。

 

海洋環境と水中遺跡

2016年3月に、とある記事を書きました。

水中考古学の「範囲」…オイルと環境アセス

という内容でしたが、メキシコ湾の原油流出事故により海洋生物への影響のほか、歴史的沈没船などにも悪影響をおよぼしているという内容です。特に、沈没船は、海洋生物の住みかとなり、生物学者なども研究対象としています。2016年の時点では、原油流出事故が沈没船とそこに住む生物たちへの影響について研究を行っているという内容でしたが、今回は、その研究成果が科学雑誌「ネイチャー」で発表されました!というお知らせです。

日本語のニュース記事

論文(English)!

原油流出事故のあった周辺の沈没船にいくつか重点を当ててモニタリングなどをおこなった結果を示しています。考古学者と生物学者が共に目的意識を持って調査したことは、意義のある研究だと思います。水中にある文化遺産の位置の把握だけでなく、そこに住む生物や環境に配慮し、また、開発やそのリスクなど、様々な問題を総合的に見る必要があります。そもそも、これらの遺跡は開発に伴う事前調査によって発見されたものです。

水中文化遺産のマネージメントが数人の専門家によるものではなく、国として取り組んでいく対象として捉えることが出来るかと思います。

コロンビアとスペイン 共同研究 例の財宝について

沈没船の積荷が何億ドルだか、財宝が何トンあるだとか、実質的な金銭価値は全く歴史・考古学者にとっては関係の無い話ですが、あいかわらずニュースになっています。実は、個人的にはニュースになること自体は、喜ばしいことだと思っています。

その「お宝」を見せるために博物館を建設し、持続して観光客を呼び込むことができれば、地域の活性化、経済効果や国民の歴史・文化への関心が高まり、国全体が豊かになる。そういう夢を与えてくれます。地元の人々の財産になれば良いですね。

コロンビアで発見されたサンホセ号ですが、詳しくは、こちらの記事をお読みください。サンホセ号発見!

もともと、1708年に沈没したサンホセ号は、スペイン軍艦ですので、所有権はスペイン政府にあります。コロンビアは発見場所が領海内であることで管理を主張、また、南米諸国の歴史的背景を考えると搾取された側であり、いまさらスペインが所有権を持っていることには納得できない部分もあるでしょう。これまでのニュースでは、スペインとコロンビアが対立しているように描かれていた部分もあったようですが、最新のニュース記事では、協力して調査することになると書かれています。

余談ですが、あるトレジャーハンターが、自分が発見したのだと主張しています。引き上げて売却すると国際的にも非難の対象となるでしょう。一時的な個人の財産が増えたところで、国民には何の得にもなりませんので。

スペインもコロンビアも、文化遺産としての調査と引き上げを計画しているようです。まだちょっとダークな部分も見え隠れしていますが、良い方向に向かっていることでしょう。スペインは、過去にはトレジャーハンターが引き上げた財宝を一括で国に返還させています。トレジャーハンターは大損害、スペイン側は博物館などでの展示活用を計画しているそうです。

もとのニュース記事

 

 

エモンズ 海底に沈んだ船を記録する

期間限定のようですので、お早めにダウンロードを。

沖縄の海に沈むアメリカ軍の船、エモンズ。近年、ダイビングスポットとして知られつつあります。ちょっと上級者向けの場所なので、なかなか簡単には行けません。

沈没船を正確に記録する方法として音波などを利用する方法がありますが、近年、その技術がどんどん正確・精密なものになってきています。水中・船舶考古学の世界的ジャーナルに、日本人の研究者が記録方法について論文を発表しています。

ちょっと難しいですが、ぜひぜひ今のうちに入手しておきましょう。

 

 

埋め立て地について

以前から時々書いてますが、埋め立て地について…

水中考古学のサイトでなぜ埋め立て地の話?と思われるかもしれませんが、実は、世界では「水中考古学」という言葉はあまり使われていません。遺跡はどこにあろうが、その意義は全く変わりませんし、水を抜いてしまえば、陸の考古学とおんなじですね。また、海面上昇や隆起によって、水位が変われば、陸にある遺跡も海に沈んでしまいます。船舶考古学や『海と人の関係』を探る考古学、海洋史観から歴史を探る考古学が主流であり、海事考古学、海洋考古学、船舶考古学などの呼び方が適切でしょう。

 

その船ですが、歴史的価値の高い沈没船などは、どこを探せばよいのでしょうか?じつは、ものすごく身近な場所にあります。船は陸のそばで沈没することが多いですし、また、使えなくなった船を港の端で破棄して埋め立て地を作る際に一緒に埋めたりしています。イギリスなどの保険の記録や、東インド会社の記録などを見ても、9割近くが当時の港の目と鼻の先で沈没・破棄されています。つまり、沈没船などの遺跡を発見するのに最も可能性の高い場所は、港ということになります。日本の水運の歴史を見ても、ほとんど陸から離れない場所の航海がノルマです。また、水没遺跡や住居跡なども、やはり陸の近くに存在しているはずです。深い海には、ほとんど遺跡なんて存在していないのです。

さて、埋め立て地に話を戻しましょう。

以前、こんなニュースをお伝えしました→ワールドトレードセンターの下から沈没船発見!

実は、埋め立て地の下から、たくさんの船の残骸が発見されているんです。今回お伝えしたいニュースはこちら。

では、日本の埋め立て地はどうでしょうか?

日本の埋め立て地の総面積、ちょっと調べようと思ったんですが、1,500平方キロ~2,000平方キロぐらいあるのではと思われます。正確な情報は、調査中です…つまり、浜松市以上東京都未満。残念ながら、これだけ広大な土地が、遺跡調査されずに開発されてしまった土地なんです。が、実は、その下にまだ埋もれている可能性も残されているのかもしれません。

海洋開発や浚渫などを行う前にはその周辺に遺跡がないか調査をするのが普通なんですが、日本ではまだまだ未整備な点が指摘されています。下の写真ですが、アメリカ・テキサス州のほんの一部ですが、工事などに先立ち、調査されて発見された水中遺跡(の可能性のあるポイント)が示されています。ポイントがまっすぐに伸びていますが、そこが調査により発見されたポイントです。一昔前の日本の遺跡地図も、開発によって道路に沿って遺跡が点在していました。

リンク先は、こちらで見れます。

 水中(だった)遺跡は、実は足元にあるかもしれません。これから海の近くに行くことがあれば、ぜひ海を見てください。そして、今、立っている場所は、もともと海だった可能性も高いです。地中深く、実は掘り起こせば沈没船があるかもしれません。そして、これから海の周りで開発があれば、その周辺の遺跡の調査も行う必要があります。陸上であれば、浜松市程のエリアが遺跡調査無しに開発されたとなればビックニュースですね。

考古学史は塗り替えられる…世界最古の沈没船発見?

世界最古の沈没船発見か?

トルコ沖でアンカラ大学の研究者によって発見されたようです。およそ4000年前に沈んだとされていますが、詳細はまだ不明。この付近にオスマン帝国時代の沈没船などもあり、そちらの船を調査中に偶然発見した模様。(ニュース記事からではあまり良く分かりません…)これから具体的な調査を進めていき、脱塩処理や保存処理などおこなうため、具体的な成果は見るには10年以上は掛かりそうですね…

今のところ、最古の発掘された沈没船はウル・ブルン沈没船で、3300年前ごろの船です。こちらもトルコで発見されています。もちろん、沈没船ではなく、船自体は残っているケースもあります。有名な例ではエジプトクフ王の太陽の船など。また、丸木舟なども数千年前のものもあります。

最古の沈没船ではないですが、つい先日、マルタ沖でフェニキア人の船でおよそ2700年前の沈没船が発見されています。こちらもいまのところ詳細はまだ分かっておらず、これら調査を開始するとのこと。

また、デンマークでも最古の船が水中から発見されたニュースが報道されています。こちらは丸木舟ですが、舷側版を足していたようで、修復の跡などが発見されています。デンマークは石器時代の住居跡なども多く発見されているので、その一つから船が発見されているようで、厳密な意味で沈没船ではなさそうです。(岸に破棄されたものが水位の変化で水没した?)遺跡が形成された要因が沈没によるものではないので…こちらは調査が進んでおり、先月デンマークに視察に行った際にもこの遺跡について話を聞いてきました。

1980年代に発見されたウル・ブルン沈没船も最古の例の席を譲るときがきたようですね…今度本を出版する機会があれば書き直さないと行けませんね。

沈没船を研究することについて…

先日、お隣韓国で沈没船事故があり多くの方が亡くなり、また、いまだに行方不明者も多くいます。韓国だけでなく日本を含め世界では船を運行する者、海に関連する仕事をする人にとって大きなショックとなったのではないでしょうか?悲しい事件ではありますが、このような事故が二度と起きないよう様々な安全上の対策が必要であることを痛感させられる事故です。我々水中考古学者、特に過去の沈没船を研究の対象としている人にとっても複雑な気持ちで見つめる事件となりました。すぐ近くでは数隻の過去の沈没船(高麗時代など)が発見されている海の難所でありますし、日本ともゆかりの深い新安沈没船もそれほど遠くない海域で発見されています。

過去の沈没船を研究する人にとって忘れてはならないことは過去の事故をまのあたりにしているということです。我々が研究しているのは、考古学ではありますが、歴史の1ページを生々しく映し出すこともあります。もちろん、その事故現場で命を落とした人もいます。それが数百・千年前であれ、それは変わらない事実であると自覚しています。沈没船の研究を行う前には世界各地において文化・風習は違えど、様々な儀式を行います。日本ではお供え物をしたり供養をしたりしますし、韓国でも過去の霊に対して敬意を払ってから発掘作業を行っていました。西洋でもいろいろな儀式などを行っています。

考古学者はその事故現場から発見された遺物ひとつひとつに対して過去に人が使用したものであることを理解し、十分敬意を払います。重要なのは、過去の歴史を教えてくれるだけではありません。いままでは、あまりこの点についてはこのサイト上では書いていませんでした。もっと書くべきであったと思い反省しています。また、トレジャーハンターなど引き揚げた遺物を売買して自分達だけの利益とする人がいることは考古学的観点のみでなく、人道的立場からも個人的に理解できません。海に沈んでいる過去の遺物はできる限り保護されるべきであると私は考えています。

沈没船の研究を通して一つ言えることは、人間は同じ過ちを何度も繰り返すということです。文献・考古学資料の両方からわかることですが、船の沈む原因の多くは人為的ミス、特に危険回避に十分責任を感じていなかったことが多いような気がします。ロイド社やオランダ東インド会社の資料などを見てもわかりますが、嵐などで沈没することは珍しい例です。沈没事故の90%は岸に近いエリアで起こっています~主に衝突、浅瀬に乗り上げる、積み荷のバランスが悪い、利益を求めたがゆえの積みすぎなどなど。今回の事故も歴史上に幾度となく起こった事故とあまり変わりがないように思います。どうして人は同じミスによる災害を繰り返すのでしょうか?

沈没船の考古学を災害考古学として捉え、実際にその観点から研究を行っている専門家もいます。あまり自分の気持ちを巧く表現できたかわかりませんが、少しでも伝われば幸いです。災害を扱う研究者として歴史や考古学を通して多くの人に災害について知ってもらいたい、何とか次の災害を防ぎたい…そう切実に願う考古学者も多くいると思います。

メキシコ湾で調査中(ライブ映像もあり)

NOAA(アメリカ海洋大気局)がメキシコ湾で深海に沈む船を調査中です。

ライブ映像もあるようです。去年、発見され話題を呼んだ船ですが、あまりにポイントが深いので水中ロボットで探査しています。水中ロボから配信されるので、考古学者は遠隔で画像を見ながら支持をだし、映像を分析します。

コチラの沈没船ですが、2隻ほぼ同時期のものがすぐそばで発見されています。片方は武器などを多く積んでいますが、もう片方は武器などはなく積み荷だけ…私掠された船なのか?それとも一隻は護衛船か?

綺麗な映像が撮れていますので、ビデオだけでもご覧ください!

 

 

中国の水中考古学

中国の水中考古学について、日本語で読める記事があったので。

中国は国家プロジェクトとして水中考古学を推し進めています。他の国に比べてもこの分野への熱の入り方はけた違いです。これ自体は素晴らしいことなのですが、この記事の抜粋でいくつか気になる点を挙げます。

「南シナ海には1000艘もの沈没船が眠っていることが確認されているが、水中で作業できる考古学関係者は100人にも満たず、作業は困難を極めている」

さて、沈没船の数ですが、とびぬけて多い数ではないということ。スウェーデンでは3000件以上の水中遺跡が保護対象の遺跡として登録されています。しかし、スウェーデンで実際に水中専門で作業している考古学者はそれほど多いわけではありません。ここではスウェーデンという国を例にとりましたが、メキシコや他の国でも状況はそれほど変わりません。何十万とある水中遺跡のマネージメントをごく少人数でおこなっています。

この記事を読んだときに私が最初に感じたのは、「水中遺跡」というものを陸上とは違う「特別なケース」としてみていることです。

日本では年間8千件以上もの陸上遺跡が発掘されていますが、まだまだ陸上の遺跡が無数にあります。遺跡のある場所は「周知の遺跡」として認知され遺跡台帳に登録されます。周辺で開発があった場合に破壊されるために、保存記録として発掘を行います。遺跡がそこにあるとわかっており、重要な遺跡であっても発掘しないケースがほとんどです。陸上の遺跡をただそこに遺跡があるからガンガン掘っていくなどは考古学者の数や資金の面から見ても相当困難です。でも、困難だからといってニュースでそれが取り扱われることはないですね…というよりも、現在の経済状況や世界の考古学行政(および学術調査)の常識から考えて、遺跡があるという理由のみで発掘することはないと考えられます。

遺跡が開発によって破壊されるときにのみそのエリアを発掘すること、これが行政考古学の前提となっています。そのためには、周知の遺跡の範囲をしっかりと把握すること、新しい遺跡の発見、開発業者などにもしっかりと遺跡を大切にすることを認識させ遺跡があった場合の対処が重要となっています。陸上の考古学ではその時の経済の状況などを考え開発とのバランスを取りながらマネージメントを行っています。日本(と世界)の陸上の考古学は調査だけでなく、遺跡の保存・活用と開発のバランスを図るマネージメントが重要です。そして、水中考古学が発達している国では水中であっても陸上と同様なマネージメントを行っています。陸と水中の遺跡の区別がないことが重要であり、水中考古学という言葉は使われません

海の上で開発が行われるケースは陸に比べて多くはなく、そして、そのほとんどが、自治体主体で行われる開発や、大企業でも国・県などから補助金などをもらって行うことが多いようです。開発の範囲に水中遺跡があっても、工事の範囲を動かすことが可能な場合が多いようです~陸に比べて工事範囲に関しては計画の段階から遺跡の範囲を考えてプランを立てれば、融通が利く場合が多いようです(海は広いですから)。開発のエリアを変更することができずに、やむを得ず水中で発掘を行わざるを得ない場合、特に発掘を行った経験のある考古学者が遺跡発掘の監督を行います。実際の作業は潜水ができる作業員が行い、記録などを取る場合に考古学者が行うことが多いようです。日本でも陸上の発掘で実際に掘っている作業員さんは考古学の訓練はとくに受けてないですね?水中でも同様に対応できるというのが、大体の国において行われています。

しかし、中国の記事を読むと、「水中遺跡があるから掘らないといけない」という印象を受けます。開発があった時のみではないようです…また、発掘を行うのも専門の訓練を受けた人のみなのでしょうか?これでは、どう考えても困難になるのは当たり前ですね?ユネスコが進めている水中文化遺産の保護ですが、こちらも開発とのバランス、遺跡の現状保持を第一のオプションとして捉えています。中国はちょっと異質な感じがします。

ユネスコの水中文化遺産を承認した国は2014年中には(私の予想では)50か国を超えると思われます。それらの国々は基本的には開発とのバランスを考え、陸の遺跡と水中の遺跡との対応の違いを無くすことを目的として取り組んでいます。現在、日本では水中考古学の体制が整っていませんが、どのように国としての体制を作るか考えたとき、参考になるのは、中国ではないような気がします。もちろん、資金や人員が確保でき、そして保存処理もきちんと対応できれば中国のような対応もできますが、日本の現状を考えるとそれは無理な気がします。しかし、現状維持を前提とした場合は充分対応できるのではないでしょうか?その方法などについては、また後ほど…

ユネスコの水中文化遺産について 

 

SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト

トヨタ財団が後援していただいたSHIPWRECK ASIAプロジェクトからインターネット上でレポートをダウンロードすることが出来ます。

ここまでアジアの沈没船をひとつにまとめた出版物は他にないと思います。泉州・新安・蓬莱沈没船などのほか、南京の造船場発掘報告書概要などもあります。この造船場は鄭和の船団を作ったことで知られています。また、韓国の沈没船などの研究もあります。どれも沈没船などを紹介する内容になっております。アジアの沈没船研究の重要な文献となることでしょう。


SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト の詳細は »