沈没船

来週は講演会です

『海から眺める歴史』と題して、講演会をします。

水中・海事考古学に興味のある方はぜひご参加ください! 伊豆半島ですが、よろしく。東京から2時間以上かかりそうですが、近場にお住いの人はふるってご参加ください。

2018.11.16 FRI 18:00~19:30(受付 17:30より)

南伊豆町役場 湯けむりホール 

特定非営利活動法人 南の風創生本部/後援:南伊豆町教育委員会

PDFご案内

黒海でほぼ完全な沈没船発見

ここ数日、テレビのニュースなどでも話題になっています。黒海で2400年ほど前のほぼ完全な形の沈没船が発見されたそうです。かなり凄い発見で、詳細な調査をどんどん進めていってほしいですね。

ブルガリアなどを中心に進められているプロジェクトですが、10年ぐらい前から始まっています。すでに60隻以上の船を発見してニュースを小出しにしていましたが、ここで大きな発見のニュースを発表したようです。見た感じですと、98%ぐらいは船体が残っているのではないでしょうか?

ニュース記事によっては短絡的な見出しになっていますので、勘違いされた方も多いかと思いますが、いくつか注意点を…

●最古の船ではない~3300年前のウルブルン沈没船などのほうが古いですし、クフ王の船や丸木舟だって出土しています。

●奇跡的な保存状況~確かに。黒海はもともと湖だった所に海水が一気に流れ込んで形成された『海』です。淡水と海水は殆ど混ざらずに、死んだ湖の上に海がある珍しい場所です。湖はほとんど無酸素状態なので、バクテリアなども不活性のまま。そのため、奇跡的な保存状況が生まれます。このプロジェクトでは、60隻以上の沈没船が発見され、多くの船が驚くべき保存状態にあります。今回の船は、その中でも最も古い部類に入り、そのなかでも最も保存状況の良い船になります。他に状態の良い船だと、バルト海でも保存状況がよく、16世紀のヴァーサ号などは船体の98%ほど残っていました。9割以上の船体が残っている木造船はいくつか例があります。埋葬されたヴァイキングの船やエジプトのクフ王の船なども保存状況は100%に近いですね。

●他に例のない~これだけの保存状況の良い同時代に船は例がありませんが、同時代の沈没船はけっこう出土しています。例えば、キプロス島のキレニア号は、100年ほど時代はずれますが、70%ほど船体が残っていました。地中海では、一度に40隻以上の船が発見される!なんてニュースもありましたね。世界では、すでに数十万件の水中遺跡が確認され、周知・調査・保護されています。水中遺跡は、どこにでもあります。

●引き揚げるのか?~引き揚げません。水中で保存しておくほうが(特に黒海の場合)遺跡が守られることでしょう。将来、保存処理の方法が確立すれば引き揚げるかも….。

と、いくつか指摘しました。発見の興奮を損ねるような指摘かもしれませんが、それでも今回の発見が大発見であるのは明白です。

いくつか日本語で読めるニュース記事を紹介します。

CNN https://www.cnn.co.jp/fringe/35127638.html

ナショナルジオグラフィック https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/102500460/

Livedoorニュース http://news.livedoor.com/article/detail/15485833/

ポルトガルで発見された船

中国の陶磁器やスパイスを積んだ船がポルトガルで発見されたことがニュースになっていますね。

400年ほど前ですから、日本でいうと、戦国末から江戸初期にあたります。船体もよく残っているようです。ペッパーなど香辛料なども発見されており、インド方面から戻る途中に沈んだ船でしょう。香辛料!そうです、実は水中では驚くほど保存状況が良いことがあります。砂に埋もれると、無酸素・無菌状態になるため、数千年でも木愛や有機物がそのまま残っていることがあります。

西日本新聞のニュース

今回、まだ発見されたばかりなので、詳細がわかるのは、これからでしょう。調査に10年かかるかなと予想しています。

一応、動画のニュース。ただし、解説の日本語はまったく見当違いなことを書いています。翻訳を思いっきりまちがっているか、別の船の情報について書いています。なぜか場所はペッパーレックの沈没地点、そして、船の行先も逆…香辛料を積んでインドへ戻る船があるのか?謎ですね。

実は、20年ほど前に、同じく胡椒を積んだ船、通称ペッパーレック(胡椒沈没船)が発見され、調査されています。時代もちょうど西暦1600年ごろになります。日本人「ミゲル」がのっていたそうです。日本の文献には登場しない謎多き人物です。

そのペッパーレックについて調査した成果を書いた本がありますので、紹介します。

 

 

日露戦争の巡洋艦

日露戦争で沈没した、ロシアの巡洋艦ドミトリー・ドンスコイ号が鬱陵島沖の海底で見つかったと韓国企業が発表したようです。

詳しいことはわかりませんが、「企業」「引き揚げの可能性」と書かれているので、考古学調査では無いようです。

日露戦争の巡洋艦発見!

面白い発見ですが、この発見から何を学ぶか?引き揚げはユネスコの理念に反しますし、保存処理にお金が相当かかります。また、周辺の自然環境も、実は沈没船があることで魚礁となっている場合もあるので、簡単に引き揚げとは言えないのが現実です。

 

海洋環境と水中遺跡

2016年3月に、とある記事を書きました。

水中考古学の「範囲」…オイルと環境アセス

という内容でしたが、メキシコ湾の原油流出事故により海洋生物への影響のほか、歴史的沈没船などにも悪影響をおよぼしているという内容です。特に、沈没船は、海洋生物の住みかとなり、生物学者なども研究対象としています。2016年の時点では、原油流出事故が沈没船とそこに住む生物たちへの影響について研究を行っているという内容でしたが、今回は、その研究成果が科学雑誌「ネイチャー」で発表されました!というお知らせです。

日本語のニュース記事

論文(English)!

原油流出事故のあった周辺の沈没船にいくつか重点を当ててモニタリングなどをおこなった結果を示しています。考古学者と生物学者が共に目的意識を持って調査したことは、意義のある研究だと思います。水中にある文化遺産の位置の把握だけでなく、そこに住む生物や環境に配慮し、また、開発やそのリスクなど、様々な問題を総合的に見る必要があります。そもそも、これらの遺跡は開発に伴う事前調査によって発見されたものです。

水中文化遺産のマネージメントが数人の専門家によるものではなく、国として取り組んでいく対象として捉えることが出来るかと思います。

コロンビアとスペイン 共同研究 例の財宝について

沈没船の積荷が何億ドルだか、財宝が何トンあるだとか、実質的な金銭価値は全く歴史・考古学者にとっては関係の無い話ですが、あいかわらずニュースになっています。実は、個人的にはニュースになること自体は、喜ばしいことだと思っています。

その「お宝」を見せるために博物館を建設し、持続して観光客を呼び込むことができれば、地域の活性化、経済効果や国民の歴史・文化への関心が高まり、国全体が豊かになる。そういう夢を与えてくれます。地元の人々の財産になれば良いですね。

コロンビアで発見されたサンホセ号ですが、詳しくは、こちらの記事をお読みください。サンホセ号発見!

もともと、1708年に沈没したサンホセ号は、スペイン軍艦ですので、所有権はスペイン政府にあります。コロンビアは発見場所が領海内であることで管理を主張、また、南米諸国の歴史的背景を考えると搾取された側であり、いまさらスペインが所有権を持っていることには納得できない部分もあるでしょう。これまでのニュースでは、スペインとコロンビアが対立しているように描かれていた部分もあったようですが、最新のニュース記事では、協力して調査することになると書かれています。

余談ですが、あるトレジャーハンターが、自分が発見したのだと主張しています。引き上げて売却すると国際的にも非難の対象となるでしょう。一時的な個人の財産が増えたところで、国民には何の得にもなりませんので。

スペインもコロンビアも、文化遺産としての調査と引き上げを計画しているようです。まだちょっとダークな部分も見え隠れしていますが、良い方向に向かっていることでしょう。スペインは、過去にはトレジャーハンターが引き上げた財宝を一括で国に返還させています。トレジャーハンターは大損害、スペイン側は博物館などでの展示活用を計画しているそうです。

もとのニュース記事

 

 

エモンズ 海底に沈んだ船を記録する

期間限定のようですので、お早めにダウンロードを。

沖縄の海に沈むアメリカ軍の船、エモンズ。近年、ダイビングスポットとして知られつつあります。ちょっと上級者向けの場所なので、なかなか簡単には行けません。

沈没船を正確に記録する方法として音波などを利用する方法がありますが、近年、その技術がどんどん正確・精密なものになってきています。水中・船舶考古学の世界的ジャーナルに、日本人の研究者が記録方法について論文を発表しています。

ちょっと難しいですが、ぜひぜひ今のうちに入手しておきましょう。

 

 

埋め立て地について

以前から時々書いてますが、埋め立て地について…

水中考古学のサイトでなぜ埋め立て地の話?と思われるかもしれませんが、実は、世界では「水中考古学」という言葉はあまり使われていません。遺跡はどこにあろうが、その意義は全く変わりませんし、水を抜いてしまえば、陸の考古学とおんなじですね。また、海面上昇や隆起によって、水位が変われば、陸にある遺跡も海に沈んでしまいます。船舶考古学や『海と人の関係』を探る考古学、海洋史観から歴史を探る考古学が主流であり、海事考古学、海洋考古学、船舶考古学などの呼び方が適切でしょう。

 

その船ですが、歴史的価値の高い沈没船などは、どこを探せばよいのでしょうか?じつは、ものすごく身近な場所にあります。船は陸のそばで沈没することが多いですし、また、使えなくなった船を港の端で破棄して埋め立て地を作る際に一緒に埋めたりしています。イギリスなどの保険の記録や、東インド会社の記録などを見ても、9割近くが当時の港の目と鼻の先で沈没・破棄されています。つまり、沈没船などの遺跡を発見するのに最も可能性の高い場所は、港ということになります。日本の水運の歴史を見ても、ほとんど陸から離れない場所の航海がノルマです。また、水没遺跡や住居跡なども、やはり陸の近くに存在しているはずです。深い海には、ほとんど遺跡なんて存在していないのです。

さて、埋め立て地に話を戻しましょう。

以前、こんなニュースをお伝えしました→ワールドトレードセンターの下から沈没船発見!

実は、埋め立て地の下から、たくさんの船の残骸が発見されているんです。今回お伝えしたいニュースはこちら。

では、日本の埋め立て地はどうでしょうか?

日本の埋め立て地の総面積、ちょっと調べようと思ったんですが、1,500平方キロ~2,000平方キロぐらいあるのではと思われます。正確な情報は、調査中です…つまり、浜松市以上東京都未満。残念ながら、これだけ広大な土地が、遺跡調査されずに開発されてしまった土地なんです。が、実は、その下にまだ埋もれている可能性も残されているのかもしれません。

海洋開発や浚渫などを行う前にはその周辺に遺跡がないか調査をするのが普通なんですが、日本ではまだまだ未整備な点が指摘されています。下の写真ですが、アメリカ・テキサス州のほんの一部ですが、工事などに先立ち、調査されて発見された水中遺跡(の可能性のあるポイント)が示されています。ポイントがまっすぐに伸びていますが、そこが調査により発見されたポイントです。一昔前の日本の遺跡地図も、開発によって道路に沿って遺跡が点在していました。

リンク先は、こちらで見れます。

 水中(だった)遺跡は、実は足元にあるかもしれません。これから海の近くに行くことがあれば、ぜひ海を見てください。そして、今、立っている場所は、もともと海だった可能性も高いです。地中深く、実は掘り起こせば沈没船があるかもしれません。そして、これから海の周りで開発があれば、その周辺の遺跡の調査も行う必要があります。陸上であれば、浜松市程のエリアが遺跡調査無しに開発されたとなればビックニュースですね。

考古学史は塗り替えられる…世界最古の沈没船発見?

世界最古の沈没船発見か?

トルコ沖でアンカラ大学の研究者によって発見されたようです。およそ4000年前に沈んだとされていますが、詳細はまだ不明。この付近にオスマン帝国時代の沈没船などもあり、そちらの船を調査中に偶然発見した模様。(ニュース記事からではあまり良く分かりません…)これから具体的な調査を進めていき、脱塩処理や保存処理などおこなうため、具体的な成果は見るには10年以上は掛かりそうですね…

今のところ、最古の発掘された沈没船はウル・ブルン沈没船で、3300年前ごろの船です。こちらもトルコで発見されています。もちろん、沈没船ではなく、船自体は残っているケースもあります。有名な例ではエジプトクフ王の太陽の船など。また、丸木舟なども数千年前のものもあります。

最古の沈没船ではないですが、つい先日、マルタ沖でフェニキア人の船でおよそ2700年前の沈没船が発見されています。こちらもいまのところ詳細はまだ分かっておらず、これら調査を開始するとのこと。

また、デンマークでも最古の船が水中から発見されたニュースが報道されています。こちらは丸木舟ですが、舷側版を足していたようで、修復の跡などが発見されています。デンマークは石器時代の住居跡なども多く発見されているので、その一つから船が発見されているようで、厳密な意味で沈没船ではなさそうです。(岸に破棄されたものが水位の変化で水没した?)遺跡が形成された要因が沈没によるものではないので…こちらは調査が進んでおり、先月デンマークに視察に行った際にもこの遺跡について話を聞いてきました。

1980年代に発見されたウル・ブルン沈没船も最古の例の席を譲るときがきたようですね…今度本を出版する機会があれば書き直さないと行けませんね。

沈没船を研究することについて…

先日、お隣韓国で沈没船事故があり多くの方が亡くなり、また、いまだに行方不明者も多くいます。韓国だけでなく日本を含め世界では船を運行する者、海に関連する仕事をする人にとって大きなショックとなったのではないでしょうか?悲しい事件ではありますが、このような事故が二度と起きないよう様々な安全上の対策が必要であることを痛感させられる事故です。我々水中考古学者、特に過去の沈没船を研究の対象としている人にとっても複雑な気持ちで見つめる事件となりました。すぐ近くでは数隻の過去の沈没船(高麗時代など)が発見されている海の難所でありますし、日本ともゆかりの深い新安沈没船もそれほど遠くない海域で発見されています。

過去の沈没船を研究する人にとって忘れてはならないことは過去の事故をまのあたりにしているということです。我々が研究しているのは、考古学ではありますが、歴史の1ページを生々しく映し出すこともあります。もちろん、その事故現場で命を落とした人もいます。それが数百・千年前であれ、それは変わらない事実であると自覚しています。沈没船の研究を行う前には世界各地において文化・風習は違えど、様々な儀式を行います。日本ではお供え物をしたり供養をしたりしますし、韓国でも過去の霊に対して敬意を払ってから発掘作業を行っていました。西洋でもいろいろな儀式などを行っています。

考古学者はその事故現場から発見された遺物ひとつひとつに対して過去に人が使用したものであることを理解し、十分敬意を払います。重要なのは、過去の歴史を教えてくれるだけではありません。いままでは、あまりこの点についてはこのサイト上では書いていませんでした。もっと書くべきであったと思い反省しています。また、トレジャーハンターなど引き揚げた遺物を売買して自分達だけの利益とする人がいることは考古学的観点のみでなく、人道的立場からも個人的に理解できません。海に沈んでいる過去の遺物はできる限り保護されるべきであると私は考えています。

沈没船の研究を通して一つ言えることは、人間は同じ過ちを何度も繰り返すということです。文献・考古学資料の両方からわかることですが、船の沈む原因の多くは人為的ミス、特に危険回避に十分責任を感じていなかったことが多いような気がします。ロイド社やオランダ東インド会社の資料などを見てもわかりますが、嵐などで沈没することは珍しい例です。沈没事故の90%は岸に近いエリアで起こっています~主に衝突、浅瀬に乗り上げる、積み荷のバランスが悪い、利益を求めたがゆえの積みすぎなどなど。今回の事故も歴史上に幾度となく起こった事故とあまり変わりがないように思います。どうして人は同じミスによる災害を繰り返すのでしょうか?

沈没船の考古学を災害考古学として捉え、実際にその観点から研究を行っている専門家もいます。あまり自分の気持ちを巧く表現できたかわかりませんが、少しでも伝われば幸いです。災害を扱う研究者として歴史や考古学を通して多くの人に災害について知ってもらいたい、何とか次の災害を防ぎたい…そう切実に願う考古学者も多くいると思います。