水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

Trouvadore号発見!

Trouvadore は1841年に沈没したスペインの船で、当時奴隷を運んでいました。船はタークス・カイコス諸島付近で沈没しましたが、何人か無事に脱出した人々は近くの島に住み着き生活を始めました。今日この周辺の島に住んでいる人は何らかの形でこの船(の歴史)と関わっています。

今回はアメリカの政府機関NOAAとShips of Discoveryとい研究機関の共同で調査が行われたようです。このほかにも1816年に沈没したアメリカ船Chippewaも発見されています。この他に別のアメリカ船Onkahyeも同海域で沈没したようですが、まだ発見されていません。これらの船は19世紀にアメリカが奴隷貿易の取り締まりのためにカリブ海に派遣したものです。

沈没船データベース

http://oxrep.classics.ox.ac.uk/index.php?option=com_ships&act=view&task=show

 

こんなサイトがあります...

簡単に言えば調査された沈没船のデータベースなのですが、これはすべてローマ時代の沈没船です。今(2008年11月11日11時11分現在)のところ212件の遺跡が紹介されています。ただし、このデータベースは海事考古学者がまとめたものではなく、歴史や古典考古学の学者さんなどがまとめたものです。つまり、特に船や「水中」考古学の専門家や興味のある研究者が作ったものではないといことになります。簡単に何が言いたいのかといいますと、それだけこの学問が一般的に価値のあるものとして認識されていることでしょうか?

日本ではなぜかいまだに水中考古学を特別視したり興味本位だけで見られている気がします。特に自分は何か特別なことをしている気はしませんし、普通の考古学の研究です。でも、なぜでしょうか?たまたま自分の研究対象としているもの(船というごく一般的な道具、そしてそれを使った人間の行動パターン)がたまたま水の中にあることが多いためどうも別に見られているようです。

それはさておき、まだ立ち上げたばかりのデータベースのようで、まだまだあまりデータがないようですが、少しずつ情報が足されているようです。このような沈没船データベースはいろいろなところで作られています。例えば、オーストラリアやアメリカの州ごとにデータベースがあったりします。このようなシステムを元にそろそろ日本でも沈没船・水中遺跡のデータベース化を本格的に進めていきましょう!と考えている今日この頃です。

Journal of Maritime Archaeologyの最新号は海事考古学を大学でどう教えるかを議論

Springerから出版されているJournal of Maritime ArchaeologyのVol.3、Issue.2は「海事考古学における教育とトレーニングについて」の特集です。NASの新しいトレーニング教本を含めて、ここ最近では海事考古学で何を、どのように教えていくのかということに関して、改めて見直しが行われているようです。

アボリジニのロックアート(岩絵)と考古学

オーストラリアの先住民であるアボリニジの人たちが芸術に長け、ロックアートと呼ばれる岩絵を残していることをご存じの方がいるのではないのでしょうか。岩絵には1万年以上前の記録から近代までの時代幅は大変広いのですが、岩絵は彼らが日常体験した経験などを伝える大切な記録でもあります。岩絵のなかには船が描かれたものも多く、船のほとんどが異文化との接触の記録を伝えるものとして残されています。岩絵の船のなかで、船名が特定されているものもあり、さらには考古学的調査が実際の沈没船で行われた事例もあります。西オーストラリアで調査された19世紀の蒸気船ゼンソー(Xantho)はロックアートにも、その姿が描かれています。ナショナルジオグラフィックの記事にある、グリフィス大学の調査には海事考古学者も関わっています。

ユネスコ水中文化遺産保護法!20カ国

水中考古学を少しでもかじった人ならご存知でしょうが、ユネスコが水中文化遺産の保護条約に取り組んでいました。正式に国際法となるには20カ国の承認が必要でした。今月始め、20カ国が水中文化遺産に保護に取り組むことが決まり、ついに正式に国際法としての効力を発揮することになります。来年1月2日から水中文化遺産保護に関する国際法が生まれます。

この国際法にはまだまだいろいろな問題点がありますが、ひとつのハードルを越えましたので、今後法律の改定などが進む可能性もあります。

詳しくはこちらのニュースを。


ユネスコ水中文化遺産保護法!20カ国 の詳細は »

オハイオ州 考古学月間も

先日はルイジアナ州の考古学月間を紹介しましたが、今日はオハイオ州の考古学月間を紹介します。

オハイオ在住の人はカレンダーを探してみてください。近くでイベントが開催されているかもしれません。

さて、ルイジアナと同じくこちらもポスターには水中考古学を前面に出してきています。オハイオ州って海がないじゃないの?と思ってる人もいるかもしれません...ですが、もちろん五大湖があります。たとえ陸であっても川や湖の交通は重要でした。そのため、世界各地を見ても大きな都市は川・湖など大きな水のそばにある場合が多いようです。オハイオ州も水が人々の生活に大きな役割をはたし、水上交通が都市の発達に大きな役割を果たしました。そのため水中考古学もまた重要な位置づけがされています。

ウェブサイトリニューアル!

日本および世界の水中考古学・海事考古学の最新情報を提供しております水中考古学/船舶・海事史研究のウェブサイトをリニューアルいたしました。2005年4月にオープンして以来の初のリニューアルとなりました。今後も日本の水中考古学・海事考古学の発展のために、積極的に情報提供を行っていきますので、ご支援のほどどうぞよろしくお願いいたします。

ルイジアナ州 考古学月間

ルイジアナ州(ニューオリンズがある州)では10月は考古学月間として、州をあげて考古学の理解を一般に広げるためのイベントが行われています。

今年の目玉は州が作成したポスターから見てもわかるとおりMardi Gras沈没船です。ニューオリンズの沖で沈没し、オイルのパイプラインを作るときに発見された船です。深海であったためROV(水中ロボット)を使って一部発掘されました。ルイジアナ州でのプロジェクトですが、発掘・保存処理はテキサスA&M大学が関わっています。

アレクサンドリアの海底遺跡博物館とフランク・ゴディオ氏

アレクサンドリアに沈んだクレオパトラ宮殿について耳にした人がいるのではないでしょうか。先にこのWeb-siteで紹介したUNESCOの水中文化遺産保護のプロモーション動画にもその映像があります。この遺跡に海底博物館を建設する話があるようです。遺跡の調査には多くの考古学者が関わっています。なかでもフランク・ゴディオ氏(Franck Goddio)はよく知られています。氏は多くの水中遺跡のプロジェクトを手掛けてきました。http://www.franckgoddio.org/Default.aspx 一方で氏が関わったプロジェクトは必ずしも学術的でないとの批判もあります。水中遺跡の価値を広く周知することは大切ですが、その価値を十分に調査するステップもまた同様に重要です。

20ヶ国批准目前。スロベニア共和国(The Republic of Slovenia)が19番目の批准国

スロベニア共和国がユネスコ水中文化遺産条約を批准するようです。条約発効まであと1ヶ国の批准を残すのみとなりました。年内の条約発効が現実のものとなってきました。条約発効後の話も出てきております。現在の批准国の多くは水中文化財や遺産に関して専門家や機関を持っていません。批准国によって組織される委員会が機能するのか疑問もあがっています。一方で、現在の批准国やこれから批准を目指す国には、適切な管理・保護を行えるように体制づくりを進める動きもあります。オーストラリアのフリンダース大学院の海事考古学プログラムはアジアの批准国であるカンボジアからフェローを招聘して、水中文化遺産保護・管理のエキスパート育成に助力する計画です。