1月4日ー9日にかけてSociety for Historical Archaeology(歴史考古学学会)が主催する歴史・水中考古学総会がテキサス州のオースチンありました。この学会は早くから水中考古学、おもに沈没船の研究に力を入れており、毎年何百人もの水中考古学者が集まり最新の研究を発表しています。プログラムはジェネラルセッション、陸上考古学セッション、水中考古学のセッションに分けられています。
プログラムを見る限り今年は、不思議といろいろと節目の年であったようですね。水中考古学誕生50年のセッションはジョージ・バス先生のトークから始まり(私もこのセッションでベトナムの調査について発表しました)、地中海ももちろんですが、カナダのゴールドラッシュの船、カリブ海のヘンリー・モルガン(あのラム酒のラベルで使われている海賊の人)など世界のいろいろな地域の調査が紹介されました。ヴァーサ号も50周年だとか。もうそろそろすべての遺物の保存処理と分析などが完了するそうです。最新のデジタルレコーディングなどを使ってヴァーサ号の船体を記録しているようです。メキシコ水中考古学誕生30周年でもあったようですね。メキシコは資金がないなか地域の協力を得ながらいろいろとがんばっているようです。また、短期のプロジェクトなどは低所得者層や災害で職を失った人をトレーニングしているそうです。保存処理などは単調な仕事などがあるので、効率が良いということでしょう。
その他のセッションでは最新のROV(水中ロボット)やサーヴェイの方法などなどいろいろと面白い発表がありました。また、サイパン戦争遺跡の全体的なサーヴェイも行われており、GISを使い遺跡の位置のデータベース化など行われているようです。私も子供のころサイパンに行って海の中にある戦車で遊んだ記憶があります。2010年にプロジェクトが始まったばかりなので、これから日本からも協力を得たいとのことです。特に発掘などはおこなわず、遺跡郡全体の把握を目的としています。
この学会には世界から水中考古学者が何百人と集まるわけですが、アジアからの参加は私が知っている限り無し…今後アジアでもこの学問が発展してくれることを願っております。
ペリーと言えば皆さんご存知、日本に開国を迫ったあの、ぺりーさんです。実は彼の家は名門海軍一家。彼のお兄さんも有名な海軍の船長でした。つい先日、お兄さんの船がアメリカ・ロードアイランド州沖で発見されたようです。1811年沈没で、今年がちょうど200周年!
実は地元ダイバーにより数年前に発見されていたそうですが、極秘?で調査がされていたようで、200周年に合わせて発表されたそうです。発見者は独自の調査により99%ペリーの船だと確信しているそうです。
専門家により調査はほとんどおこなわれていないようですが、アマチュアダイバーによって発見・調査されることはそう珍しくありません。貴重な水中文化遺産はこのように地域の人たちによって守られていくのが、今後の良いシナリオではないでしょうか?
You Tubeのビデオ
アメリカの歴史考古学学会(Society for Historical Archaeology-SHA)は毎年1月に学会を開催しています。その中で毎年ブックアワードでDeetz Awardがあり、特に新しい分野などに貢献した1冊の本が選ばれます。
今年は、このサイトではお馴染みのJames Delgado先生の”Khubilai Khan’s Lost Fleet”が選ばれました!Delgado先生はナショナルジオグラフィックテレビの取材で長崎県鷹島の元寇遺跡を訪れ、蒙古襲来に興味を持ったようです。その後も日本の水中考古学の活動を影ながら支えております。この本はそれほど専門的なことは書かれていません。考古学の本ではありますが、あまり詳しくはなく、歴史の本として売られているのか、考古学として売られているのか、微妙なところです。実は先生は私に「専門なところはお前が書くんだ」と、この本はその前座として書いたものなのです。。で、私の本は現在出版社で校正中なので、今年中には出版されるでしょうが、なにぶん英語で専門的なので、日本の読者にはほとんど届かないでしょう。機会があれば、日本語訳を出したいですね。ただし、新安沈没船の隔壁が12cmだ、蓬莱1号は8cmだ、などなど…専門書は面白く書くのは難しい!まあ、面白く書くことが目的ではないので仕方が無いか…
さて、先生の本ですが、専門的ではなくアメリカの一般向けの本ですので、日本の歴史や元寇について分かりやすく書いてあります。とても読みやすい物語のような感じです。日本人としては、物足りない気がするでしょうし、また、太平洋戦争の「神風」などにもページ数を費やしているのは、「やっぱり」アメリカ向けと感じてしまいます。それはそれでいいのでしょうし、このように海外で評価されているのは良いことでしょう。海外からみた蒙古襲来を学ぶにはとても面白いかもしれません。英語もそれほど難しくないですし、本を毎年数冊出すかなりの書き手なので、やっぱり表現力が巧いです。英語でこんな風に書けたらなといつも思います。そう考えれば英語を学ぶためには良い本でしょう。
今年のブックアワードに選ばれたのは少しびっくりしましたが、それだけ日本やアジアの水中考古学が海外から期待されているということでしょう。長崎県松浦市から発掘の報告書などが出されていますが、まだまだ日本を代表する水中遺跡を知らない日本人は多いことでしょう。もう少しポピュラーな蒙古襲来と考古学とか、水中考古学が明かす元寇の謎みたいな本があればいいですね。
ちなみに、長崎県鷹島には歴史資料館があり、現在保存処理中の遺物なども頼めば見せてくれるとおもいます。つり好きの人は是非ついでにどうぞ。
アメリカ・ミシガン湖の州立公園内で1800年代の沈没船の一部が公園を訪れていた一般客によって発見されたようです。
海岸を散歩していた人がもしかしたら古い時代の船の一部ではないかと思い連絡をしたそうです。専門家はまだ写真でしか確認しておらず、現地にはまだ船の一部が残されているようです。
特に大発見と言うわけでは、ありませんが、このようなニュースは時々見かけます。海岸を注意深く見てみるといろいろと発見があるかもしれませんね。もしかしたら、世紀の大発見があるかもしれません?沈没船はこのような一般の人からの情報により発見されたケースが殆どです。何か海岸で「もしかしたら」と思ったものがあったらぜひ連絡をおねがいします。
CNNのビデオはこちらから
2010年も残すところ数日となりました。以前から紹介しているユネスコが進める水中文化遺産保護条約ですが、今年も加盟国が増えました。年末ということもあり、おさらいです。ざっと簡単に説明しますと、水中文化遺産の保護について国が積極的に取り組みこと、国際協力を行うこと、遺物の売買禁止、無駄な引き揚げを抑えて遺産の保護管理を中心とすることなどがユネスコが薦めている方針です。
現在のところ36ヶ国が合意しています。今年は新たに7カ国が加わりました。特にイタリアとアルゼンチンが加盟したことは大きな意義があるでしょう。ところで、コンゴに海はあったの?と思うかもしれませんが、湖や川など水中にある文化遺産(水没遺跡など)の保護も目的としているので沈没船だけに限ったものではありません。ちなみにコンゴは海と繋がっています。アフリカの国々で水中文化遺産保護の意識が芽生えていることはすばらしいことだと考えています。
気になるのが、アジアの参加国なのですが…今のところカンボジアだけです。また、中国、アメリカ、オーストラリア、イギリスなどが参加していないのも非常に残念なことです。これらの国はすでに独自の法律などがあり、なかなか新しい国際法に対応するのが難しいと言う側面も持っています。しかし、スペインは2005年にすでに調印し、精力的に水中文化遺産の保護に乗り出しています。
2011年には私の勝手な予想では40カ国は超えると思いますが、どこかアジアの国が加わって欲しいものです。水中文化遺産は共通の財産であり、私欲のための引き揚げ、商業目的での利用、遺物の売買などは禁止されています。我々水中考古学者にてっては当たり前のことなのですが、国際法の整備となると様々な問題を抱えているようです。その解決のためには、海底ミュージアムや地域参加型の遺跡の保護活動、ダイバーや漁業関係者への呼びかけなどいろいろとやるべきことは残っているようです。多くの人が水中文化遺産の重要性を理解するところから始まっていくものと思います。
1 Albania 2009
2 Argentina 2010
3 Barbados 2008
4 Bosnia and Herzegovina 2009
5 Bulgaria 2003
6 Cambodia 2007
7 Croatia 2004
8 Cuba 2008
9 Democratic Republic of the Congo 2010
10 Ecuador 2006
11 Gabon 2010
12 Grenada 2009
13 Haiti 2009
14 Honduras 2010
15 Iran (Islamic Republic of) 2009
16 Italy 2010
17 Jordan 2009
18 Lebanon 2007
19 Libyan Arab Jamahiriya 2005
20 Lithuania 2006
21 Mexico 2006
22 Montenegro 2008
23 Nigeria 2005
24 Panama 2003
25 Paraguay 2006
26 Portugal 2006
27 Romania 2007
28 Saint Kitts and Nevis 2009
29 Saint Lucia 2007
30 Saint Vincent and the Grenadines 2010
31 Slovakia 2009
32 Slovenia 2008
33 Spain 2005
34 Trinidad and Tobago 2010
35 Tunisia 2009
36 Ukraine 2006
福建省廈門市沖で2004年から2009年にかけてサーヴェイが行われていたようです。約 676,000 平方キロが探索され、考古学調査が可能な沈没船30隻ほどが発見されたそうです。(だいたい琵琶湖と同じ大きさの水域がサーヴェイされたようです)これらの沈没船はどれも積荷が良く残っていたようで、海のシルクロードの解明にむけ調査が進められることでしょう。
最近ではダイバーや漁業関係者が沈船を荒らすようで、ほとんどの沈没船がすでに被害に遭っているようです。これらの違法サルベージを取り締まりでは2006年には45件あり、遺物7000点以上が、そして、2005年には25件、2700点の遺物がこれらの違法ダイバーなどから回収されそうです。
今後中国は水中文化遺産の保護法をしっかりと成立させ、また同時に沈没船の調査も進めていく予定です。現在のところ、中国の水中考古学者の数は100人ほどと、まだまだ国の大きさに比べて少ないですが、どんどん力を入れていくそうです。
長年このウェブサイトをご覧の皆様におしらせがございます。どうも、ここ最近はニュースなどのアップデートの頻度が減ったなとお感じだったことと思います。それもそのはず、実は執筆活動を行っておりまして、少しサボってしまって部分もありました、お詫び申し上げます。今後はすこしずつまたペースを上げれればとかんがえていますので、よろしくお願いします。
さて、実はメディアファクトリーの新書でこの度「沈没船が教える世界史」が発売予定となっております!12月24日が発売予定日となっております。メディアファクトリーの新書のページでも多少情報がご覧になれます!新書ですので、読みやすく書いてあるので、誰でも興味があれば面白く読んでいただけると思います。お値段もお手ごろ価格!
水中考古学とか沈没船の考古学というとどうもオカルト、財宝、詐欺、など真面目にとらわれない部分も(日本では)多いようですが、この本を通して真面目な学問の世界を面白く分かりやすく知っていただけたらと考えています。後ほど詳しい情報などを改めてお伝えします。
最近は中国政府は水中考古学に力を入れていることは以前にもお伝えしましたが、また新たな動きがあったようです。
中国の国家海洋局と国家文物局が共同で水中文化遺産の保護に乗り出すようです。他の海洋調査などの一環で水中文化遺産も取り組むものであり、海洋調査の際には文化遺産も含めて調査を行うことになりそうです。さらには、すでに発見されている水中遺跡のパトロールなどもおこなうそうです。一部の沈没船などに興味のある人だけでなくより多くの他分野の研究者や民間企業なども必然的に水中遺産の保護に取り組むようになるのかもしれません。
沈没船などの発掘や保存処理にもどんどん力を入れているようですし、あくまで個人的な意見ですが、今後中国がこの分野ではアジアのリーダーシップを取っていく準備が整ったようなきがします。
朝日新聞からひとつ面白い記事を発見しました。
沖縄で特攻機に撃沈された米海軍艇エモンズが数年前発見されました。その周辺から日本軍の特攻機の破片も幾つか発見されたようです。特攻機の乗組員に関してはほとんど記録が残っていませんが、発見された破片などからどの飛行機だったか、どこから出撃したかなどを特定する努力を行っているようです。
また、遺族などとの連絡を取ったりとなかなか本格的な調査を行っているようです。日米のダイバーが中心で行われているようです。インタビューに答えた関係者らは「名もないものを解明したいという知的好奇心、それにつきる」と答えています。特に厳密に水中考古学調査を行っているわけではないですが、遺物を守って歴史を世界に伝えていこうという観点では同じだと思います。
画家である日比野克彦さんが開催している個展に毎週のようにイベントが行われているようです。
その中で一風変わった水中考古学のイベントもありますのでご紹介します。11月27日土曜日の開催です。
日 時: 11月27日(土) 14:00~16:00
会 場: 3331 Arts Chiyoda(アーツ千代田3331)
千代田区外神田6-11-14 http://www.3331.jp
参加費: 1000円(展覧会チケット込み)
定 員: 100名
申し込み方法: 事前申し込み(先着順)
下は日比野さんのサイトからの引用です
すぐ足下にある海底。簡単に見えないがゆえに「ない」ことにされてはいないだろうか?と日比野は問います。身近なのに遠い場所を見いだす視点を「21世紀の思考」と捉え、水中考古学者をゲストに招いてトークを展開します。
参加費:1000円(展覧会チケット込み、定員100名、申込み先着順)
◎林原利明(はやしばら・としあき)
東洋大学で考古学を学び、遺跡(陸上)調査に携わる。長崎県鷹島海底遺跡調査をきっかけに水中考古学の世界へ。現在は水中文化遺産・水中考古学を広く知ってもらうため活動中。ダイビング歴20年。西相文化財研究所・代表。特定非営利活動法人アジア水中考古学研究所・理事。