水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

ドンスコイ 号について

日露戦争、日本海海戦で沈んだドンスコイ 号の「再」発見と詐欺についてです。

この会社が話した内容は、最初に発見した(嘘)、大量の金がある(嘘)、 引き上げて地元の発展に貢献できる(嘘)、仮想通貨でもうかる(嘘)、  株価の操作などなど。ひどい話ですね。

この会社が言わなかったこと。

1)沈没船は文化的・歴史的価値があり、世界では保護が行われるのが常識となっている。

2)鉄の船は、海底では劣化が進むので、むやみに近づいてはだめ。

3)引き上げた後、保存処理や管理などを考えると、毎年少なく見積もっても百億円は必要となり、公開も20〜30年以上は先となるので、数千億円の事業となる。これとは別に、博物館の建設が必要となり、もちろん、船体を丸ごと温度湿度を一定にした空間で保つ施設が必要。引き上げ費用も別予算です。

4)ちなみに、大量の金がもしマーケットに出回った、もしくは、保有していることがわかったら、どうなるでしょう?金の価値は暴落するでしょうね。15兆円の金塊を積めるほど大きな船ではありません。積めるとしたら、数百トンほどなので、1兆円にはとどきません。もちろん、暴落したら、それ以下ですね。保存処理費用にもなりません。

 

というわけで…。

世界トップクラスの水中・海事考古学の研究施設を持つ韓国ですが、このような事件が起こってしまったのは悲しいです。文化遺産をネタに稚拙な手口で人からお金を取るのは、やはり許せないです。

日本でも、似たような手口でお金を集めた事件も数回あったので、注意が必要です。ドンスコイ 号についてですが、今後、なんらかの形で文化遺産として、戦争メモリアルとして保護しながら、学術調査を実施してほしいと思っています。

ちなみに、よく話がまとめられたニュース動画があるので、ご覧ください。

ニュースは、こちら

アニメ アンゴルモア 対馬の元寇を描く

珍しく、アニメの紹介です。

対馬の元寇をテーマに書かれた漫画、『アンゴルモア』のアニメ化。7月から放送されています。

詳しくは、こちらのリンク先で

基本、深夜~明け方にかけて放送中です。録画して見る、ビデオレンタルが基本になるのかなと思います。が、そんな中、夜8時から放送している局があります!そう、対馬です!やっぱり地元では視聴率稼げるんだろうな。いや、内容は、やはり戦闘が多いので子供向けではありません。

応援よろしくお願いします!また、対馬にもぜひ!

  • サンテレビ
    7月10日より毎週火曜24:30~
    リピート放送 7月13日より毎週金曜24:30~
  • TOKYO MX
    7月11日より毎週水曜25:05~
  • KBS京都
    7月11日より毎週水曜25:05~
  • テレビ愛知
    7月12日より毎週木曜26:05~
    (初回放送は26:10スタート)
  • TVQ九州放送
    7月12日より毎週木曜27:00~
    (初回放送は27:05スタート)
  • BS11
    7月13日より毎週金曜25:00~
  • 対馬市CATV
    7月14日より毎週土曜20:00~
  • NBC長崎放送
    7月15日より毎週日曜25:20~
    (初回放送のみ25:50スタート)
  • RCC中国放送
    7月18日より毎週水曜25:25~

 

元寇の小説などは多くありましたが、対馬の合戦のみに的を絞った漫画は記憶にありません…まあ、エンターテインメントとして漫画ですので、史実ではないことや、時代錯誤は見られます。ですが、歴史に興味を持ってもらうには良いきっかけだと思います。対馬に行ってみたい!と思ってもらえればうれしいです。

 

アフリカの水中考古学

 

近年、水中考古学の調査が世界的に進んでいます。中国や韓国は国が水中考古学専用の調査船や水中ロボットをによる調査を行っています。また、カリブ海はもちろんのこと、インド洋、イスラム諸国でも調査が進んでいます。サブサハラ・アフリカ(北アフリカ以外のアフリカ)も例外ではありません。

特に、ケニア、タンザニア、モザンビークなど東海岸、そして、南アフリカ、ナミビアなどでも水中遺跡の調査が積極的に進められています。研究者の間では調査が話題になっても、これまでなかなか一般には知られていない部分もおおくありました。

そんな中、こちらの本の紹介。発売は来月となりますので、もちろん私は読んでいません。期待の一冊といったところでしょうか?これらの地域の研究、これまでの調査の問題点、今後の課題、政府の取り組みなどについても書かれているようです。地域の水中遺跡と海事史についても書かれているようです。私も、注文する予定です。

 

沈没船の所有権について その2

所有権について。

予定していたお話とは、違いますが。

沈没船が発見された場合、とある国が所有権を主張しながら、別の国が主体となり発掘することはよくあります。特に船という道具が、国境を越えるために作られたモノですから、多くに国々で領海内に他国籍の沈没船が数万件あるのは常識です。

軍艦などが発見されると、所有権が問題となることが良くあります。これは、他国の権限を制裁・強行できる法律がないためであり、また、軍艦の取り扱いについても、正式に決められた国際法はありません。曖昧なものや、複数の国の間での合意などはありますが、整備されていません。ユネスコ水中文化遺産保護条約は、実は所有権や軍の所有する船舶については、「これまでの慣習に従う」として、特に規定はしていません。ただし、海洋基本法もそうですが、基本理念として、利害関係者および社会・人類の共有の財産として適切に判断することが望まれています。

これまで、慣例として軍艦など国が所有していた船は、その国に所有権があると考えられています。たまに、沈没船が長期放置されたのだから、管理責任を放棄していると考え、所有権も存在しないと主張する人もいます。多くに国は、軍が所有したモノは、時間がいくら経過しても、船籍(所有権)は失われないとしています。そして、それを宣言している国も多くあります。

そこで、こちらのリンク先。ちょっと読みにくくて申し訳ないです。

https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2004-02-05/html/04-2488.htm

アメリカが、自国の軍船などの所有権を他国にも向けて宣言した際、いくつかの国から、軍船などの取り扱いについて意見を聞いております。その回答が、文章で各国から提出されています。

 

まず、日本の回答を見て見ましょう。

`According to international law, sunken State vessels, such as warships and vessels on government service, regardless of location or of the time elapsed remain the property of the State owning them at the time of their sinking unless it explicitly and formally relinquishes its ownership. Such sunken vessels should be respected as maritime graves. They should not be salvaged without the express consent of the Japanese Government.” Source: Communication from the Government of Japan, September 13, 2003.

回答は、アメリカの領事館を通して提出されています。「日本の(軍)船はどこにあっても、日本が所有権を保有している。日本が正式な文章によって権利を譲渡することは可能であるが、海の墓として尊重されるべきである。」遺骨などもあるため、リスペクトしなさい!ということですね。

さて、次にロシア

Russian Federation: “Under international law of the sea all thesunken warships and government aircraft remain the propertyof their flag State. The Government of the Russian Federation retains ownership of any Russian sunken warship, including the warships of the Russian Empire and the Soviet Union, regardless the time they sank. These craft are considered places of special governmental protection and cannot be salvaged without special permission of the Government of the Russian Federation.” Source: Communication from the Government of the Russian Federation, October 3, 2003.

帝国時代のものも含めてすべてロシアが所有していますということで、許可なく引き揚げはできません!ということです。所有権ですから、その権利を破棄したり譲渡することができますし、国からOKが出れば問題ないわけです。国といっても、外務省なのか、その上なのか、軍なのか?

 

では、まとめ。

戦闘中に沈められた船であれば、国の所有は変わりませんが、捕獲・譲渡の場合は所有権は移ります。なので、日本の場合、無条件克服後は、すべてアメリカ軍の所有となります。

自沈した場合は、戦闘中であれば撃沈されたものであると想定しているようですが、場合によっていろいろあるようです。戦争終了後に破棄した場合は、所有者なし。発見した側が所有となります。

色々書きましたが、現在、ユネスコ水中文化遺産保護条約は、世界60カ国が批准しています。また、批准していない国々の多くは、ユネスコの理念やイコモス憲章の理念をベースに水中文化遺産の保護に取り組んでいます。所有権はあったとしても、さまざまな利害関係者と密に連絡を取りながら、最善の対策をとって保護を進めていくのが基本となっています。特に戦争遺跡は、実際にその場所で亡くなった方も大勢います。それらの方々をリスペクトし、メモリアルとして保護していくことが世界の常識となりつつあります。

日露戦争の巡洋艦

日露戦争で沈没した、ロシアの巡洋艦ドミトリー・ドンスコイ号が鬱陵島沖の海底で見つかったと韓国企業が発表したようです。

詳しいことはわかりませんが、「企業」「引き揚げの可能性」と書かれているので、考古学調査では無いようです。

日露戦争の巡洋艦発見!

面白い発見ですが、この発見から何を学ぶか?引き揚げはユネスコの理念に反しますし、保存処理にお金が相当かかります。また、周辺の自然環境も、実は沈没船があることで魚礁となっている場合もあるので、簡単に引き揚げとは言えないのが現実です。

 

沈没船の所有権について その1

さて、沈没船の所有権について。非常に難しい問題です。沈没船を発見したら、自分のもの?

一昔前であれば、「発見した人」が所有権を獲得するケースが考えられました。これは、特に沈没船を保護する法律がなかったので、一攫千金を望んだトレジャーハンターが勝ち組だったわけです。ただし、最近では、水中文化遺産保護の法律などが出来上がっており、トレジャーハンターが活躍できる場所は限られてきています。

ただし、もし、明確に沈没船の所有者がいたらどうなったでしょう?

ここ100年ほどの間の船であれば、所有者がいるケースが多いようです。文献資料などで沈没船が特定できればですが、もとの所有社(なんたら開運など)、もしくは、保険金をかけていた場合、保険会社が所有権を主張することもできます。

また、国が所有権を主張する場合もあります。海軍の船は、基本的に、沈没しても、その国の所有権は継続していると考えられています。これは、例えば戦国時代に日本へ来たガレオン船も国の船と考えられているため、勝手に引き上げてしまったら、国際問題へと発展します。(海洋調査や浚渫工事中などに発見したら必ず報告しましょう!もし本当に外国の船だったら賠償金の支払いや国際裁判など大変です。外務省とか、場合によっては安倍さんも対応するような事件となる可能性もあります。時価何億円の財宝を✖️✖︎会社が破壊!スペイン政府から賠償要求!とかニュースになったら大変) 第2次大戦の時のアメリカ軍のモノも同じですね。実は、日本政府も同じように外国に対して日本の所有権を主張しています。

最近では、いろいろなケースがあり、厳密に所有権を行使する例は少なくなっています。それよりも、沈没船を地域の文化遺産としてみた場合に、どのように管理するのが最善であるかを利害関係者で話し合って決めることが多くなっています。

そこで、タイタニック号。この船が発見された1980年代は、まだ沈没船を保護する法律がありませんでした。つまり、サルベージ 法が適応されます。この場合、慣習として、何かを最初に引き上げた人が所有権を得ます。発見したロバートバラード博士は、遺物を一切引き上げずに調査を終えています。彼曰く、「タイタニックのような沈没船は、人類共通のメモリアルとして残す必要があり、墓荒らしのような行為はしたくなかった。また、他の人も同じようにこの事故で亡くなった人に敬意を払って、引き揚げる人はいないだろう」

しかし、現実は甘くなかったようです。ベンチャー企業が引き上げを行なってしまい、その会社がタイタニックの遺物のオーナーとなってしまいました。詳しい法律の話はしませんが、いろいろありまして、結局、裁判所からの判断により、引き上げた遺物は一括で管理され、また、研究や一般への公開は積極的に行うことが条件として課せられました。

これで、一件落着?にはなりませんでした。こんどは、所有権を持っている会社が経営破綻。所有権を売却・譲渡することに。現在、名乗りを上げている会社がいくつかあるようですが、イギリスの博物館が権利を得る可能性があるようです。

ナショナル・ジオグラフィック社のニュースタイタニックについて

現在、タイタニックに類似するような遺跡が発見されても、おそらくドロドロ劇はないかと思います。色々な問題があるでしょうか、遺跡として保護していくには誰(どこの国)が活用・運営するかなどで問題となるでしょう。

 

ちょっとシリーズに挑戦。次回は、これらのケースを紹介しようかと思います。

沈没船はフランスのもの!トレジャーハンターにモノ申す。

イギリスからカナダへ所有権の譲渡

 

ユネスコ 文献資料などなど

ユネスコ世界遺産は、日本ではポピュラーで多くの方が興味・関心を持っているようです。しかし、なぜかユネスコが勧める水中文化遺産保護条約には日本国内での関心は高まっていないようです。

そもそも、水柱文化遺産ってなんなのか?また、どのような取り組みが行われているのか?

手っ取り早く情報を得るには、ユネスコのウェブサイトが良いかもしれません。ユネスコが考える水中遺跡の定義や水中考古学についていろいろな情報誌や論文、パンフレットなどがダウンロードできます。

意外と写真を多く使っているので、パンフレットなどから挑戦して見てはいかがでしょうか?

入り口はこちら

 

 

 

海洋環境と水中遺跡

2016年3月に、とある記事を書きました。

水中考古学の「範囲」…オイルと環境アセス

という内容でしたが、メキシコ湾の原油流出事故により海洋生物への影響のほか、歴史的沈没船などにも悪影響をおよぼしているという内容です。特に、沈没船は、海洋生物の住みかとなり、生物学者なども研究対象としています。2016年の時点では、原油流出事故が沈没船とそこに住む生物たちへの影響について研究を行っているという内容でしたが、今回は、その研究成果が科学雑誌「ネイチャー」で発表されました!というお知らせです。

日本語のニュース記事

論文(English)!

原油流出事故のあった周辺の沈没船にいくつか重点を当ててモニタリングなどをおこなった結果を示しています。考古学者と生物学者が共に目的意識を持って調査したことは、意義のある研究だと思います。水中にある文化遺産の位置の把握だけでなく、そこに住む生物や環境に配慮し、また、開発やそのリスクなど、様々な問題を総合的に見る必要があります。そもそも、これらの遺跡は開発に伴う事前調査によって発見されたものです。

水中文化遺産のマネージメントが数人の専門家によるものではなく、国として取り組んでいく対象として捉えることが出来るかと思います。

コロンビアとスペイン 共同研究 例の財宝について

沈没船の積荷が何億ドルだか、財宝が何トンあるだとか、実質的な金銭価値は全く歴史・考古学者にとっては関係の無い話ですが、あいかわらずニュースになっています。実は、個人的にはニュースになること自体は、喜ばしいことだと思っています。

その「お宝」を見せるために博物館を建設し、持続して観光客を呼び込むことができれば、地域の活性化、経済効果や国民の歴史・文化への関心が高まり、国全体が豊かになる。そういう夢を与えてくれます。地元の人々の財産になれば良いですね。

コロンビアで発見されたサンホセ号ですが、詳しくは、こちらの記事をお読みください。サンホセ号発見!

もともと、1708年に沈没したサンホセ号は、スペイン軍艦ですので、所有権はスペイン政府にあります。コロンビアは発見場所が領海内であることで管理を主張、また、南米諸国の歴史的背景を考えると搾取された側であり、いまさらスペインが所有権を持っていることには納得できない部分もあるでしょう。これまでのニュースでは、スペインとコロンビアが対立しているように描かれていた部分もあったようですが、最新のニュース記事では、協力して調査することになると書かれています。

余談ですが、あるトレジャーハンターが、自分が発見したのだと主張しています。引き上げて売却すると国際的にも非難の対象となるでしょう。一時的な個人の財産が増えたところで、国民には何の得にもなりませんので。

スペインもコロンビアも、文化遺産としての調査と引き上げを計画しているようです。まだちょっとダークな部分も見え隠れしていますが、良い方向に向かっていることでしょう。スペインは、過去にはトレジャーハンターが引き上げた財宝を一括で国に返還させています。トレジャーハンターは大損害、スペイン側は博物館などでの展示活用を計画しているそうです。

もとのニュース記事

 

 

海賊黒ひげ 転職するなら

さて、水中考古学関係の仕事、水中遺跡に関わる仕事が将来できたらな…と、思っている人!

日本では現在、水中遺跡の調査研究で飯を食べていける人は、ほんの数名です(一応います)。海外では、それほど珍しい仕事ではありません。1周間に平均して3〜4件の募集があるようです。潜る仕事は意外と少なく、保存処理や探査、遺物の整理作業などが多いです。

水中遺跡の仕事募集の掲示板をご紹介しておきます。前提として、英語など他の言語ができないと少し難しいでしょう。ときどきアフリカとか中近東あたりの募集もありますし、カリブ海や南米なども多いので、スペイン語・フランス語あたりが話せれば活かせます。

水中考古学 水中遺跡 海事考古学関連の仕事探しはここ!

Maritime Archaeology Jobs

現在、注目の仕事は、「海賊黒ひげ」沈没船プロジェクトのお仕事。考古学と保存処理のポジション(2枠)募集しているようです。