水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

メアリーローズ号 ついに全貌が明らかに!

イギリスを代表する水中考古学遺跡と言えば、ヘンリー8世のメアリーローズ号ですね。

80年代に発掘が行われ、保存処理が数年前にやっと完成。一部公開をしながら乾燥させておりました。そして、完全中阿地での公開にいたりました。

当時はコンピューターを使っての記録方法など画期的でした。また。イギリス皇室が自らファンドを立ち上げ調査を実施。なんと、チャールズ皇太子も水中で発掘を行いました。特にヨーロッパなどでは皇太子や大統領などが水中遺跡の視察を実際に水中で行うことは稀なことではありません。余談ですが、プーチンさんも潜水艇に乗ったり自ら潜ったりしています。

保存処理には30年ほどかかった計算になりますが、やっと生の目で当時の軍艦を見ることができるようになりました。あまりに昔から有名なので、まだ発掘処理してたの?と思った方もいるかもしれません。発掘を担当した先生方などもだいぶ高齢になておられますし、すでに亡くなられた方もいます。一つの沈没船を完全な形で公開まで漕ぎ着けるのは大変な作業です。

とはいうものの、最近の技術や化学の発達により、保存処理作業も少しは楽になってきております。その話はまた別の機会にでも…

と、またまた最後に余談ですが、メアリーローズ号の発掘を記念して記念切手が過去に発売されたようです。その際、切手をデザインする方に発掘担当者から写真を渡したそうです。その中に皇太子の写真もあったそうです。実際にその写真が切手になったそうですが、何かの手違いかわかりませんが、切手には皇太子の名前もなかったそうです。切手の説明は、「ダイバーが水中で作業をしている様子」とのみ書かれていたそうです。マスクをしてますから、誰だかわからなかったのでしょう。一国の皇太子が「a diver」として記念切手になった珍しい例だそうです…未確認情報ですので、情報の扱いにはご注意ください!

 

 

毎月連載 水中考古学へのいざない

井上たかひこさんが毎月連載記事を書いている産経WEST

昨日も最新記事が載りました。7月は北海道江差に沈む幕末の軍艦「開陽丸」の調査事業について。長崎の元寇遺跡である鷹島海底遺跡も有名ですが、実はこちらの軍艦の発掘が日本の水中考古学の幕開けとなった調査なんです。

北海道に旅行に行かれる際には、ぜひ立ち寄ってみたいですね。

詳しくは、井上さんの書かれた記事へ…

南シナ海と海洋考古学

海洋考古学沈没船遺跡が中国の南シナ海政策と語られることが近年では珍しくありません。中国とフィリピンのスカボロー礁での衝突と水中遺跡調査については、数年前にウォールストリートジャーナルの記事に取り上げられています。2009年フランス極東学院の学術会議でも、パラセル諸島(西沙諸島)での中国の水中考古学調査の背景への質疑がありました。アジア海域史は、Sinocentric system、華夷秩序の理解無しでは成り立ちません。中国を社会的・政治的・文化的に世界の中心にすえるという考え方は、華夷秩序を打ち立てた時代から九段線を主張する現在まで本質的には変わりないように見えます。この概念では南シナ海は周縁であり、周縁者は中国宮廷へ朝貢を行う立場です。一方で、東南アジア島嶼・半島部に囲まれる南シナ海はその海域を中心に独自のネットワークを築き上げてきました。古代から海域を往来し、ネットワーク維持を担っていたのは、東南アジアの航海民でした。中国の文物が古くから、海域ネットワークで遠くインド洋やアフリカまで運ばれていたのは間違いありません。様々な古代の沈没船遺跡からは、中国の陶磁器が多量に出土します。しかしながら、これらが必ずしも中国の商人が運んだものとは限りませんし、中国の船が使用されていたとの証拠でもありません。実際に南シナ海では、東南アジア在来の沈没船が多く発見されています。歴史の政治利用は、その解釈への影響という点で、一層の注意が必要です。

水中遺跡関連のニュース

そろそろ夏本番です!

夏になると、なぜか水中考古学のニュースや記事などが湧いて出てきます。

 

1 7月9日の日本経済新聞

眠る水中遺跡 呼び覚ませ 
元寇船、平安期の瓦、オランダ商船…日本各地で探査広がる

2 また、産経新聞では、毎月一度水中遺跡に関するコラムが読めます。

井上たかひこさんが書いており、毎月一つの遺跡に絞ってかかれているようです。

 

3 月刊文化財は水中考古学特集を組んでおります。

1冊丸ごと水中考古学です。少し専門的かもしれませんが、様々な角度から日本の現状や世界の水中遺跡保護体制について書かれています。数年前の季刊考古学(123号)のように、水中考古を目指す人には必読の書となることでしょう。

 

4 月刊ダイバーも引き続き連載が続いていますね。

 

このほかにも、探せばいろいろと水中考古学の関する情報は出ています。最近、各地の調査などで忙しくしており、こちらのサイトをなかなかアップデートする時間もなかったので…お詫び申し上げます。フェイスブックやツイッターなどフォローしていただけると頻繁に情報を発信しておりますので、よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

オイルマネー、グリーンピースと大英博物館

ちょっと面白いニュースなんですが、昨日出てたニュースで追記です。

最初はこちらのニュース~グリーンピースがとあるプロテスト活動を行っているそうですが、ちょっと面白い。

現在、かの大英博物館で水中考古学を大々的にテーマとした特別展を開催しています。エジプトなどで発見された水没した遺跡の展示です。日本でも数年前に横浜で開催されましたね。

ところが、これにグリーンピースがデモを開始。実は、この展示、イギリスのオイル会社(BP)が全面バックアップしています。地球温暖化を推し進める会社が、水没した遺跡の展示をするのはおかしいだろ!という理論でしょうか?BPをこのまま放っておくと、世界の多くの都市が海に沈んでしまうだろ!ということだそうです…

そのデモのスローガンが、Sinking Cities 『沈みつつある都市』です。これは、博物館の展示のスローガン Sunken Cities 『水没した都市』にちなんだもの。実際にニューオリンズなど沈みつつある町の写真などを掲げているそうです。

完全なるこじつけ、ほとんど洒落。オイル会社が良い・悪いは別として、世界の海から海洋資源を得る会社は、海の遺跡の保護にも積極的です。日本を除く多くの国では、パイプラインなど外洋の開発においても、モノを建設する際には水中遺跡の有無を調べるために事前探査を行っています。もちろん、原因者が負担しています。オイル会社のおかげで多くの水中遺跡が発見されているのは事実です。

ですので、オイル会社が水中遺跡の展示のスポンサーになるのは理に適っているのですが。違う視点からものを見ると面白いですね。

 

 

水中考古学関連ニュース ダイジェスト(リンク)

水中考古学、全然聞いたことがない人は、ほとんど耳に入ってこないでしょう。しかし、世界には水中考古学のニュースであふれかえっています。ネットなどで検索をかけるとたくさん出てきます…あ、残念ながら、英語で検索した場合です。

そのようなニュースを羅列しても仕方がないのかなと思い、今日は、ある一定の条件のもと探したニュースを紹介いたします。その条件とは…

水中・海事考古学関連でさらに、

 1.すべてSNSなどから得た情報で、信頼性の持てるニュース記事のリンクが張られていたもの。

 2.検索はかけずに、すべて自分の知っている人(会ったことがある人)がのせた記事から得たリンクを紹介。

 3.2016年5月19日の0時から23時59分までにその友人がシェア・投稿したニュースに限る。

 4.あまりに日付が古い記事や、同じ記事は紹介しない。

 5.独断と偏見により、面白くない記事は載せていません(4件ありました)

 

つまりは、世界の水中考古学者はだいたい1日にこのくらいのニュースは平均的に見ていることになります。また、余談ですが、グーグルアラートなどでキーワードをかけていると、1日平均4~5件新着記事があります。ネットでかかりにくい記事、英語と日本語以外のニュース記事もあるので、世界で水中考古学関連のニュースは1日10件以上は出ているのかとは思います…これが、多いと見るか少ないと見るか。ちなみに、日本の新聞・テレビなどで考古学一般のニュースは平均1日何件ぐらいでているのでしょうか?

では、紹介いたしますが、注意点が一つ。私も今日ぱっと見て読んだ記事ですので、間違った情報を書いているかもしれませんが、その辺はご理解を。今回の目的は、24時間で水中考古学に関連するニュースがどれだけ出回っているかをしってもらおうかな、と思ったので。

 

1.イスラエル・ヘロデ王の港跡の沖に様々な遺物を積んだ船が発見! こちらのニュースなどメディア各種が伝えてます。

ローマ時代の沈没船のようですが、かなり貴重な遺物(コインや銅像など)が積まれていたようです。

 

2.水中から北米最古(かも?)の遺跡。

いわゆるクローヴィス時代よりも前の遺跡の可能性が指摘されております。1万4000年前。日本の海岸線などにも日本人の起源を探るのに重要な遺跡がありそうですね。骨などもかなり状態の良いものが発見されているようです。

発掘の様子のビデオなど詳しい説明はこちら

 

3.アラビアにおける水中考古学の本が出版

ユネスコからですが、この地域における水中考古学の取り組みなどについて書かれているそうです。ちなみに、アラビア語で最初に水中考古学について書かれた本は1965年出版されたそうで、50周年を迎えてからの現状の意味もあるのかどうか…

 

4. 水中カメラを利用した遺物などの実測について

最近の技術の発達により、水中で簡単に3次元実測できちゃいます。特に時間的制約のある水中では有効な方法。

 

5.大英博物館~エジプトの水中遺跡の特別展

あの有名な大英博物館にて、水中考古学の展示が行われるようです。エジプトの水中遺跡関連の展示ですね。数年前に横浜でも展示が行われたものを発展させたような内容かなと思います。

 

6.オランダがユネスコ水中文化遺産保護条約を批准?

書いているときにちょうど入ってきたニュース。えーと、オランダ語が読めないので… でも、どうやらオランダがユネスコ水中文化遺産保護条約を批准することになったのか… 英語の記事がないので、また、上で示した条件での実験中なので。このニュースに関しては、別に紹介するかもしれません。

 

日本のニュースに関しては、だいたい3日前までです。手法は同じく、フェイスブックなどを通して収集したニュース情報です。他にも日本語の水中考古学関連ニュースはあったのですが、誰もシェアしていなかったので…紹介していません。残念…?

1.水中考古学へのいざない (連載記事) 産経新聞・日本語ですよ!

産経新聞で連載記事です。井上たかひこさんが書かれています。2週間に一度の記事だと思いますが、日本・世界の水中遺跡を紹介するものです。実際に井上さんが発掘に参加した遺跡や、しっかりと情報を集めて書いているようです。

井上さんのこちらの本は詠まれた方も多くいらっしゃるのでは?

 

2.月刊ダイバー連載記事 こちらの連載は長く続いてますね!

根府川沖海底遺跡 海底に残された震災の記憶!

 

番外編…

海外のニュースブログの記事ですが、海外でも人気の高い鷹島海底遺跡について書いてます。昨年発見された元寇船ですが、2016年5月2日に特集で組まれています。

オランダと日本の伝統の味!長崎平戸のスイーツ! とくに水中考古学というわけではないですが、海を介した交流には船が必要だったわけで、この当時の沈没船が発見されるといろいろなことがわかるでしょうね。平戸周辺にも水中遺跡がありそうですね。

 

 

スリランカと中国のお話

今月8日、北京の人民大会堂でスリランカのウィクラマシンハ首相と中国の習近平国家主席はと会見したそうです。

日本のメディアではあまり大きくは報道しておりませんが…。海外のニュース記事からは、いくつか面白い点がみられます。面白いといっても、考古学者(特に水中・海事)に興味がある人が読めばですが。

スリランカと中国は(またインドも同じく)、近年になり海洋国家として経済・文化など海洋・海事・(海軍)に関する活動を活発にしてきています。その中で、特に両国の海洋政策について話し合われたようです。その中で、海洋事業(研究など)を一緒に進めていこうと話がありますが、その中の一つに、水中考古学が出てきます。

英語の勉強をしたい方は、是非読んで、どこに書かれているか探してみてください。さて、ぱっと流して読んでしまうと、それだけのニュースなのですが、よく考えてみると、2カ国のトップが合ったときに、「水中考古学の分野で協力しようよ!」と言っているわけです。しかも、スリランカという小さな島国で、決して経済的に恵まれた国ではありません。

このように、水中考古学は2国間の最高レベルでの話し合いにも出てくる話題なのです。20年前だと考えられなかったことですが、世界的に水中考古学が国際レベルで話し合われているわけです。詳しい内容は分かりませんが、何か良い研究に結びつくことを期待しています。

日本語のニュース

伊400号から遺物を回収!

伊400号は、旧日本軍の大型潜水艦で、艦内に折り畳み型の飛行機を搭載したことで有名です。その400号は終戦のあと、アメリカ軍がハワイ沖に沈めました…数年前、調査の結果、伊400号を発見したのはちょっとした話題になりましたね。

発見の時の映像

さて、今回は、その伊号潜水艦から遺物を引き揚げたとのことでニュースになっています。

博物館などに展示して多くの人に歴史を知ってもらうために活用するそうです。

今回の引き揚げ(ベル)のビデオも視聴できます

普通、戦争遺跡からの遺物の引き上げなどは戦争のメモリアルとして現地保存するため引き上げは行いません。ですが、この潜水艦は戦果も上げられずに終戦を迎えました。アメリカ軍に回収された後に沈められてますので、遺物を揚げても(法的に)問題なしということになります。

これを機会に、戦争の正しい理解(平和に貢献するため)が必要ですね。

 

 

水中考古学の「範囲」…オイルと環境アセス

さて、水中・海洋考古学は、どんな学問なんでしょうか?

たぶん、多くの人は、水中に特化した考古学で沈没船の構造の歴史変遷や、積荷の研究などかなり専門的で幅の狭い分野だというイメージがあるのではないでしょうか?

しかし、実際には水中に存在する遺跡を対象として様々な研究が行わえており、学際的・多角的な分野なのです。沈没船が環境に及ぼす影響、そして、沈没船によって作られた生物環境が、その後の人間の活動によってどのように変かしていったのかも研究しています。考古学というより、環境・生物学ですね。

沈没船は、海の底、特に深海において、一つの小さな生態系を作り出す時があります。何もない深海に、ポツンと有機物や金属などあれば、さまざまなバクテリアや生物たちがそこで生きていくことができます。しかし、人間の活動がその生態系を破壊してしまう恐れもあります。

2010年、メキシコ湾でオイルのプラットフォーム事故により大量の油が海に流出した事件がありました。このとき、近くにあった沈没船にも影響があったのではないかと言われています。直接・間接的に、数百件の水中遺跡に影響を及ぼしたと言われています。実際に、調査は進められており、結果はいろいろと上がってきています。生物への影響はもちろん、沈没船の鉄製品の錆が以前にもまして劣化が進んでいるとか…

人間の行動は、生物環境に影響を及ぼしますが、考古学(遺跡)への影響も大きいようです。特に、あまり普段は気が付かない水中に眠る人類の痕跡もさまざま影響を我々から受けているようです。特に海外では、環境アセスというとき、考古学や歴史的景観も含まれており、海の底も例外はありません。

水中考古学は、奥が深い。

アメリカ海洋エネルギー庁のページ

レポート

水中考古学とエルトゥールル号遺物の保存処理

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少し前ですが、2016年2月の読売新聞に、東海大学海洋学部の学生が和歌山県串本町で1890年に同町大島沖で沈没したオスマン帝国海軍海軍エルトゥールル号の遺物の保存処理に携わるという記事がありました。エルトゥールル号プロジェクトは、パブリシティや地域へのアウトリーチをとても重視したプロジェクトで、地元串本町、和歌山県内の観光系のプログラムを持つ大学、さらに小中高校との交流がこれまでもメディアにたびたび取り上げられてきました。国外研究者による国内の遺跡での学術調査で、コミュニティアーケオロージを実践した貴重な事例だとも言えます。一方で、考古学を学ぶ大学生が同プロジェクトに参加したのは、2007年のプロジェクト開始以来、今回の東海大学の水中考古学を学ぶ学生が初めてのことだと思われます。10年近く継続して行われているエルトゥールル号プロジェクトは、これまで国内の考古学機関からは、それ程にはサポートを受けたことがありません。これには色々な要因がありますが、やはり沈没船遺跡、その年代が19世紀後半ということも、水中遺跡としての認知が進まない理由の一つとも考えられます。水中遺跡の代表的な例に沈没船が含まれますが、日本の水中考古学史上では、むしろ湖底遺跡や海底の遺物の散布地などが、水中遺跡調査の事例として取り上げられます。一方で、その学史上では1974年から調査が開始された、箱館戦争で沈んだ旧幕府軍艦開陽丸の水中発掘調査が欠くことができません。19世紀後半の沈没船の数例の調査の一つとしては、他にいろは丸があげられます。日本・トルコ外交史上重要な意味を持つエルトゥールル号、発掘調査、保存処理、活用というプロセスがプロジェクト開始以来着実に進行しています。調査団の船舶考古学研究所の(INA)紀要(英文)では、調査の誌上報告がされています。特に金属・木製品からなる約8,130点もの遺物の保存処理は、3万点以上の遺物が引き揚げられた開陽丸以来の大規模な海揚がり遺物の保存処理作業となります。開陽丸遺物の保存処理では、当時の様々な試行錯誤がその課題とともに報告されていますが、水中考古学発調査によって引き揚げられた遺物の保存処理に実績のある船舶考古学研究所のエルトゥールル号プロジェクトで現在用いられている保存処理作業は、遺物の調査発掘から公開・活用までが求められる日本の水中考古学にとっても得られるところが多いのではないでしょうか。

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