水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

BIKI 水中ドローン

魚型水中ドローンが開発されているようです。

お値段も手軽、もちろん、カメラも搭載。操作性も良さそうです。流れの速いところでは、ちょっと流されてしまいそうではあります。水中考古学の調査には、これだけのスペックでは難しいかもしれません。しかし、市販タイプでここまでできるとは、10年前には想像もしていなかったように思います。

水中ロボットのテクノロジーは考古学の分野にも応用されています。ですが、私が注目したいのが、このようなテクノロジーを通して、(実際に手にとって使うことがなくても)海という存在を身近に感じてもらえるのではないか?と期待をしているところです。また、たまたま水中に遺物を発見することだってあるかもしれません。

 

 

 

立命館大学の水中(考古)ロボットたち

立命館大学の水中ロボット開発。

用途は様々ですが、琵琶湖の水中考古学(水中遺跡)の調査にも使われています。「堤瑕無(ていかむ)」や「海観(みかん)」など、一風変わった名前のロボット達。人間が潜れない環境で、調査ができるのが強みです。

特に、琵琶湖の北限に近い、葛籠尾崎遺跡の調査に使われています。この遺跡は、水深70mあたりから完形の縄文土器が発見されている珍しい遺跡です。大正年間に発見され、おそらく、滋賀県で最初に見つかった中期の縄文土器の鉢などが有名です。

今後のロボットの活躍に期待です。

埋め立て地の下から船など

サンフランシスコやニューヨークなど、大都市は港町として栄えてきました。都市の拡張ととともに、港の一部を埋め立て、ドンドン海側へ土地を広げてゆく...そう、東京など日本の都市も同じですね。江戸の古地図と現代の地図を比べると、どれだけの土地が埋め立てられているかがわかります。

今日のリンク先のご紹介ですが、サンフランシスコの古地図と重ねていますが、面白いのは、船が発見された位置を記録していること。使われなくなった船などは、港の拡張と一緒にその場で埋められることが多かったようです。工事の際に、ビルの下から船が現れることもよくあります。有名な話では、ニューヨークのワールドトレードセンターの地下から船が発見されています。そう、911のテロで崩れたあのビルの下は船の遺跡だったんです。ビルの解体中に発見されています。

日本でも、埋め立て地の下にまだまだ遺跡があるかもしれませんね。普通、陸の場合は、遺跡がありそうな場所は、工事の前に遺跡があるか事前審査の対象になるエリアが決められています。しかし、昔海だった場所や埋め立て地は、「遺跡がない」と考えられているので、事前調査の対象外となっている場合が多いです。また、新しく埋め立てをする場合も、多くは考古学調査なしで工事が進んでしまいます。

もしかしたら、自分の住んでいる家の下に、沈没船が埋まっているかも?

 

 

旧日本軍の潜水艦

伊号潜水艦…。当サイトも、だいぶ前から続けていますが、潜水艦はよく扱っています。

伊58号は、個人的には最も興味のある潜水艦です。インディアナポリス号をフィリピンで撃沈したことで有名です。実は、このインディアナポリス号は、原子力爆弾を運んでいた船だったのです。原爆を無事に届け終わり、出港してすぐに日本軍に発見され、沈められました。もし、伊58号が、ほんの数日前にインディアナポリス号と遭遇していたら、歴史は大きく変わっていたことでしょう。

戦後、アメリカ軍の持ち物になった潜水艦ですが、海上処分されました。さて、この場合、所有権はどうなるのか?終戦を迎えた時点で、一度アメリカ軍が所有していたことになります。一応、アメリカの法律で、アメリカ軍に帰属していた船舶は、その所在に係わらず、アメリカが所有権を主張しています。日本の領海内ではありますが…ただし、アメリカ軍が破棄した船舶ですので、その時点で所有権を放棄したことになるのでしょうか?処分されているので、戦時中に沈んだ船とはちょっと扱いが違います。

また、今回(?)のような発見~すでに10年ほど前に発見してます~が報道されると、すぐに「引き揚げ」の話が出てきます。現在の技術で、確かに小さな破片などは回収できますが、その後どうするのでしょうか?空気に触れると劣化が進行しますので保存処理が必要です。回収品の大きさにもよりますが、2年間はほとんど触れることも出来ません。費用も掛かります。いったいどこに保管するのでしょうか?博物館を建てるなども考えられますが、収益は見込めるのでしょうか?

画像は著作権などあるので、ニュースの画像を見てもらいたいのですが、ソナー画像で、船体の周りになにやらモヤモヤとしているモノが見えますが…魚です!そう、沈没船は漁礁になるので、多くの生物が住んでおり、ひとつの生態系を形成しています。実は、地元の漁師さんなどは、絶好のポイントとして利用しています。沈没船を探す最善の方法は、実は地元の漁師さんなど海と日ごろから関わりを持っている人たちへのインタビューだったりします。

ひとつ、気になることですが…やはり鉄の船体ですので、海底でも徐々に劣化が進んでいきます。今は、まっすぐに立ったままですが、数年後には崩れてしまうこともあるでしょう。例えば、タイタニック号なども発見された当初からどれだけ劣化が進んでいるかの記録を取っていますが、予想以上に進行が早いようです。海水温度の上昇などもバクテリアなどの活動を活発にさせるので、劣化のスピードが早くなる可能性も考えられます。タイタニック号の調査によると、水中ロボットなどで訪れて、船体に傷をつけたりするだけでも、海底の環境が微妙に変化し、大きな影響を及ぼす可能性があるといわれています。

貴重な資料であることは間違いないので、慎重に研究などを進めて欲しいものですね。上手に活用すれば、地域の活性化などにも利用できるかもしれませんね。

NHK News

朝日新聞 News

海上シルクルート関連世界遺産登録に関する専門家会議

2017年5月30-31日にかけてロンドン大学で、「海上シルクルート関連世界遺産登録に関する専門家会議」が開催されます。
水中文化遺産も議論の対象となります。
http://whc.unesco.org/en/events/1378

中国からの助成もあって、ユネスコのシルクロード関係の研究が盛んになっています。

2015年には韓国慶州で、ユネスコが主催した「東方のシルクロード」圏の海上シルクロード交易路の重要性が陸上のシルクロードと合わせて議論され報告書が刊行されています。
http://www.unescobkk.org/fileadmin/user_upload/culture/Silk_Roads/The_Eastern_Silk_Roads_Story_2015_Conference_Proceedings_UNESCO_re.pdf

 

カタールの水中考古学

近年、世界各地で水中考古学の研究が進んでいます。ペルシャ(アラビア)湾にある国々もその例外ではありません。

カタール大学、ヨーク大学、イタリアの文化庁などとの国際研究事業として、カタール周辺水域の環境と文化遺産の調査を行うそうです。自前の調査船なども用意しているそうで、ワークショップやトレーニングプログラムなども実施し、大学など教育機関とも連携を図りながら進めるそうです。5か年計画で進めており、カタールおよび周辺諸国の歴史・文化の研究に貢献できるものと思います。

カタールは、交易なしには存在できない国であり、国家の歴史に海洋文化は大きく影響しています。水中文化遺産は、最新の探査技術を使用し、位置など情報はでべてデータベースで管理するそうです。また、考古学だけでなく、地域の海底地形図や環境を調べることにより、他の分野にも貢献できる研究となるそうです。

結果が出るのは、まだまだ先(5年後?)になりますが、周辺地域の水中文化遺産への取組に大きな功績を残せる規模の研究なので、今から期待大ですね。青銅器時代の貿易船、ローマ時代、アラブのダウ船、などなど。また、沈没船だけでなく、地盤沈下や海面上昇などによる水没遺跡も数多く存在していることでしょう。

 

 

コロンブスのアンカー発見か?

今、ひとつメディアの間で話題になっている水中遺跡関連のニュースがあります。

1492年にスペインから出港し大西洋を越えてアメリカ大陸(の沖の島)に到達したコロンブスが使ったと思われるアンカーが発見された…らしいです。が、まだまだ疑いの余地があるかなというところです。アンカーの年代や発見地点などはだいたい一致しているようです。あまり学術的ではない調査のように見受けられるが、少し残念です。これは、本当にコロンブスが乗っていた船のアンカーであれば、大きな発見であることは間違いありません。

一つおもしろいのは、この遺跡が発見された方法。実は、1960年代に、宇宙から発見されていたそうです。ちょっとSFっぽく、地球外生命体の話に聞こえますが…アメリカNASAの宇宙飛行士であるゴードン・クーパー氏は、マーキュリー・アトラス9号に乗り、地球を22週したそうですが、その際に、特殊な機材を使用して地球を観察したそうです。主に、ロシアの核施設や原子力潜水艦などを探るための機械だったそうです。(当時は、もちろんトップシークレット)。このスパイミッションのさなか、カリブ海において、沈没船らしきモノを発見し、その位置を記録していたそうです。

その記録を友人である、沈没船ハンターの手に渡って、今回の発見に至ったという…

グーグルアースなどを利用して遺跡を発見したニュースも時々聞きますが、50年程前の宇宙飛行士の記録からというのにロマンを感じますね。

 

 

水中考古学へのいざない カリブの海賊は「荒くれの大男」ではなく意外と小柄だった

毎月連載、産経WESTの、「水中考古学へのいざない」

井上たかひこさんが、毎月書かれている記事。早くも、12回目となりました!今回は、海賊船の話のようです。井上さんの記事を読む前にひとこと。

大航海時代以降、カリブ海で活躍した海賊。実は、海賊船を特定するのはかなり難しいんです。運んでいた積荷が、「略奪品」なのかどうか…きちんとした「商品」なのか。また、れっきとした商船であっても武器は積んでいます。これといって決めてとなる遺物がありません。また、スペインが海賊と呼んでも、イギリスから見れば、英雄である場合もありますし…

歴史資料には、自他共に海賊と認められた(?)人もおり、その海賊船の名前なども記録されています。つまり、ある特定の船を見つけてそれを証明することができないかぎり、海賊船を発見したとはいえません。沈没する過程でバラバラになったり、その後、波の影響でかなり広範囲に遺物が広がっている遺跡もあります。特に、時代が古くなると、遺跡の船の名前を特定することは簡単なことではありません。

文献史料などで沈没地点がある程度分かっていても、近くに別の船が沈んだ可能性も充分に考えられます。実際に、遺跡を調査してみて、全く違う船だったといる話は頻繁に聞きます。また、時代の違う沈没船が重なり合って発見される例もあります。古い例では、トルコのヤシ・アダ沈没船は4世紀と6世紀の船が重なった状態で発見されています。

では、今回の記事では、いったいどんな海賊船の話なのでしょうか? こちらからお読みください!

東海大学海洋考古学プログラムセミナー:水中写真測量

近年のデジタルカメラ利用は、精度の高い立体地形図・遺跡図作成のための写真測量法に及んでいる。写真測量法は対象物全体を様々な角度で撮影し、ピクセルデータから、対象物の深度データをコンピューター上の空間に再構築し、3次元立体モデル・図を作成する技術である。水中環境でも極小の誤差での遺跡測量が可能で、3次元データを作成できる。活動時間に制限がある水中調査で、測量作業等を補完する技術として、世界的にその使用が拡大している。水中考古学調査における、写真測量法の第一人者である山舩晃太郎氏に、写真測量の現状について報告してもらう。

 

演題:「水中デジタル写真がつくる3次元海底遺跡の世界」 山舩晃太郎(株式会社アパラティス代表)
日時:2017年4月28日(金曜日)16:30-18:00(質疑応答含)
会場:東海大学海洋学部清水キャンパス3号館3424室

JAMSTEC 深海デブリ (ゴミ?) データベース

日本、そして世界の深海の調査をリードするJAMSTECが、この度、深海のデブリの映像等を含むデータベースを公開しました。

スペースデブリ(宇宙ゴミ)も、近頃一般的な言葉となりつつありますが、深海にもたくさんのゴミが落ちています。中には正体不明の物体も…まだ良く見ていませんが、沈没船の一部も映っているかも…