水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

原人の化石、台湾の海底沖から発見

ちょっと実はもの凄い発見が今ニュースで報じられています…まだ真相はこれからどんどん解明されていくのでしょう。

数万年前のものと思わえる原人の化石(下あごの一部)が台湾の沖で発見されていたようです。澎湖諸島周辺の海域で漁師の網に偶然引っかかって発見されたようです。

アジア、というか、人類の初期の歴史を考える上で重要な発見になりそうです。様々なニュースがネットなどで探せますので、詳しくは、そちらをご覧ください。ここでは、水中考古学の立場からひとこと。

もしかすると、海底の場所によっては数万年前の故環境・地形が有機物などを含めてしっかりと残っている可能性もありますね。日本の周りの海の底に大きな発見が眠っていることは間違いないでしょう。

とはいうものの、このような発見はそこまで驚くことではないと思っています。「ついに発見されたか!」というのが、私の個人的な最初の印象でした。そして、ニュースを読む前から、漁師によって発見されたんだろうなと思い、まさにその通りでした。水中では空気が遮断されるので有機物の保存は陸よりも格段に良好です。また、完全に砂に埋もれると、バクテリアなども活動ができないので、ほぼ完ぺきな状態で残っていることも考えられます。さらに、海の底ですと、開発や地形の変化からも比較的影響を受けにくい場合が多いようです。地殻変動や海水面の変化により埋もれた古地形は残っていて同然でしょう。埋没林など時々発見されていますね。

さて、次に漁師というのがポイントです。実は、世界の著名な水中遺跡のそのほとんどが、一般の人によって発見されています。新安沈没船、鷹島海底遺跡、ヴァーサ号、ウルブルン沈没船、などなど…すべて漁師さんなど一般からの情報提供により発見につながっています。逆に、「何も情報がない場所から考古学者が発見した水中遺跡」の名前を挙げるのは難しいです、なかなか思い浮かびません。

このような発見はまだまだ見つかる可能性があること、そして、水中文化遺産の認知をとして発見の漏れを防ぐこと。これが今後の考古学・歴史研究を発展させるうえで重要であると思います。もちろん、このような発見を報告する機関とその確認を行う機関の整備(法律などを含め)も必要でしょう。

原人 下あご 台湾 などで検索をすると、沢山ニュースが出てきます

水中考古学の魅力に迫る

九州の歴史・文化ポータルサイト、「かたらんね」がプロデュースするシリーズ「文化財で楽しむ九州アジア倶楽部」で、この度講演を行います!

タイトルは、「水中考古学の魅力に迫る」です。

以前、どこかでお伝えしていたので、日程の変更をお伝えします。

第1回 (変更前)2月14日(土)→(変更後)2月7日(土)
第2回 (変更前)3月 7日(土)→(変更後)3月29日(日)

場所はJR博多シティ9階 会議室3です。13:30分から受付開始、講演は14:00から2時間です。

第1回は世界の水中考古学を中心として、この学問の紹介をします。第2回は特に日本やアジアの遺跡について紹介します。もちろん、2回とも参加できればよいですが、どちらかだけでも内容が分かるようにプレゼンを考えて作っています。

水中考古学の魅力を知る良い機会だと思いますので、ぜひご参加を!

お問い合わせはこちらのフォームで。

オリハルコン!かも?沈没船から発見

ドラクエなどのゲームで登場することもある伝説の金属、オリハルコン。古代ギリシャなどの資料に時折登場するようで、実在したことは確かなようです。アトランティス伝説とも関連しており、科学的・歴史資料などからでは実証できない空想のメタルとして有名です。

オリハルコンは様々な金属を混ぜた合金であり、その製造技術は失われています。しかし、今回、オリハルコンではないかと思われるほかに例のない金属が水中遺跡から発見されたと報じられました。シチリア島近くで2600年前ほどに沈没した船から発見されたようです。

詳し分析などはまだのようです。実際にオリハルゴンであるかなどは検証する必要がありますが…ただ、このようなニュースは実際に調査にかかわった考古学者の手を離れてニュース記者、ブログライターなどによって誇張されて独り歩きしてしまう可能性もあるので、少し懸念しています。科学的(考古学)な話では、「珍しい金属が発見されたので検証をします」という状態です。今後に期待しましょう!

日本語のニュースです。詳しく書かれています。

こちらは、アーケオロジーニュース。実物の金属の写真も掲載されています。

日本語版ニュースの元ネタその1

元ネタその2

南海1号沈没船 発掘作業進行中

中国、宋の時代の沈没船である南海1号沈没船ですが、発掘作業がどんどん進んでいるようです。まだ詳しいことはわかりませんが、東南アジア・アラビア、そして、東アフリカにも運ばれた商品が積まれた船であったようです。この時代のごく一般的な商船であったのではないでしょうか。

ご存知の方も多いかと思いますが、沈没船を周りの土ごとごそっと丸々引き上げて、新設した博物館に持ってきてその場で発掘しています。世界的に見てかなり非現実的な、お金のかかる発掘作業方法です。また、遺物の保存処理の観点から見ても、果たして継続して保存していけるのか、また、引き上げたことによりどれだけ劣化が進んでいるのか、なかなか難しい課題が残されています。研究の成果やその歴史価値などよりも、引き上げたことに意義がある、そんな調査ですね…世界で真似できる国があるとは思えませんし、真似したいと思う国もないでしょう…さすが中国。

ユネスコは水中遺跡の管理方法に関しては一貫して現地保存を第一オプションとしています。これは、引き上げにかかる費用や保存処理の問題点を考えると、引き上げることなく水中でそのまま管理したほうが遥かに効率よく保存可能で、また引き続き研究していくことができるからです。

中国だけでもすでに多くの歴史的価値のある沈没船が発見されているので、この方法がこれから主流になることはないでしょうが、調査の経過を見守っています。世界にはすでに数千年前の沈没船から古代・中世・近代・現代など歴史・考古学的価値のある沈没船が数万隻発見され調査されています。南海1号沈没船よりも保存状況が良く、そして、文化的価値の高い沈没船もたくさんあるでしょう。その中で、なぜこの沈没船が引き上げられたのか…

いろいろと考えさせられる調査です…

日本語の(ショート)ニュース

英語(動画)ニュース

去年に続き…お正月から

今年もやってきましたね。昨年もお正月から時代感覚のないテレビ番組を放送していましたが、今年も第2弾があるそうです。来年こそはやめていただきたい。

ユネスコは水中文化遺産の保護を呼び掛けており、現在50か国ほど条約を受け入れていますす。ユネスコの条約を受け入れていない国でもその理念には賛同し合意している国も多くあります。日本は世界で数少ない水中文化遺産を保護(規定・規制)する法律がない国です。私の知っている限り、水中文化遺産について規定がない(いわゆる)先進国はありません。多くの人はわかっているとおもいますが、トレジャーハンター行為は世界の多くの地域では罰せられます。

まあ、エンターテイメントとして捉えて見ても面白いのかもしれません。しかし、他にも犯罪を美化して取り上げる番組があれば、そちらのほうが見る価値がありそうですね。どのようにして(またどのような)犯罪を扱うのか、興味があります。

沖縄の水中文化遺産

 本日は、ブックレビューです。南西諸島水中文化遺産研究会編『沖縄の水中文化遺産』です。

タイトルからすると、少し堅苦しそうですが、実はとっても読みやすい本なんです。ずっと語り聞かせるような、お話を聞いているような、(話術の巧い人のプレゼンを聞いている?)ような…スタイルで統一されています。沖縄(南西諸島)の水中文化遺産・水中考古学の魅力を聞かせてくれる本です。テンポもよく、飽きが来ません。筆者のこの学問に対する情熱と、いろんな人に読んでもらいたい!そんな思いが伝わる本です。

第1章では実際の一つの調査例から水中文化遺産の研究の方法を見ることができます。淡々と調査の結果を語るのではなく、実際のプロジェクトの発端から苦労した点など物語のように描かれています。水中文化遺産の調査は水中に潜っての調査が多いかと思いますが、実は文献資料の整理や聞き込み調査など様々な側面があることを教えてくれます。また、筆者自身が知らなかった事実をどのようにして解明していったかとプロセスとその努力についてドラマ(ドキュメンタリー)のようです。事実や意見だけを述べる専門書ではなく、筆者の学びのプロセスも隠すことなく書いているので、歴史の専門書は苦手な人でも面白く読め、そして、共感を得ることができるのではないでしょうか?また、歴史の本が好きな人でも新鮮に感じ、そして、共感する部分が多いと思います。

第2章では世界や日本の水中文化遺産の事例、そして、第3章では沖縄と南西諸島の水中文化遺産について書かれています。こちらも、自分たちが調査した遺跡についてはその発見方法や調査方法、苦労した点などについて書かれています。遺跡の紹介だけでなく、その発見が大きな歴史の流れの中でどのような意味を持っているのかを捉えて紹介しています。水中考古学というと、どうしてもその特異性から「水中で発見されました、はい、すごいですね」で終わってしまうイメージがあるようです。特に、ニュースなどのメディアなどは「発見」だけがトピックとなってしまいがちなのですが、この本はちゃんと一歩踏み込んでくれます。沖縄の歴史についても初心者にわかりやすく情報を伝えてくれます。

そして、最後の第4章。水中考古学のメソッドなどについて書かれています。この本を通してのことですが、調査の様子などをわかりやすく、筆者の体験をもとに解説しています。水中での調査だけでなく、陸上の調査や文献資料なども詳しく書かれています。水中考古学とは、つまり特殊な学問ではなく、誰でも参加できる学際的な歴史の探求であることがよくわかると思います。

沖縄にある数例の遺跡の紹介ですが、水中考古学の世界がよくわかる1冊です。日本語で書かれた水中考古学の本はいまのところまだ珍しいので、ぜひとも読んでみたいですね。水中文化遺産はごく身近な存在であり、国民全体が共有の財産として保護していく必要がある貴重なモノであることを感じ取ってもらいたいです。

表紙もかっこいいです…

 

今週もいろいろとお知らせのまとめ

 

今週も水中考古学のニュースをまとめてお伝えします!

 

日本のニュース

水中考古学について、東京海洋大学の岩淵先生インタビュー

http://www.athome-academy.jp/archive/history/0000001103_all.html

 

アジア水中考古学研究所東日本連絡会の様子

http://blog.canpan.info/ariua/archive/701

 

何度か紹介していますが、沖縄県立博物館の水中文化遺産の展示。1月18日まで!全国の水中遺跡が集結!講演も頻繁に行われていますので、要チェック。

http://www.museums.pref.okinawa.jp/museum/topics/detail.jsp?id=1273

 

NHK暮らし解説「ようこそ水中考古学の世界へ」

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/202674.html

 

 

世界のニュース

地味なニュースですが、インド洋の海の歴史の理解には重要な一歩です。インドの海事史などを中心に研究するための会議が行われた模様。インド洋を中心とした人間の交流を水中考古学などを含めた学際的な研究が行われています。学際・国際交流が盛んですね。

http://www.deccanchronicle.com/141117/nation-current-affairs/article/2-day-national-meet-coastal-maritime-history

 

アンティキティラ島の再々調査のビデオなど。例の古代のコンピューターの残りのパーツなど発見できればよいなと個人的には思ってます。

http://greece.greekreporter.com/2014/11/17/new-video-of-antikythera-shipwreck-treasures/

http://greece.greekreporter.com/tag/antikythera-shipwreck/

 

グーグルマップ(アース)で見つけられる沈没船が話題になっているようです。

http://www.inquisitr.com/1615753/mysterious-shipwreck-discovered-off-boston-in-google-earth-images/

 

アイルランドのケリー州からのニュース。以前からその存在が知られていた17世紀の沈没船のようですが、水位の変化により50年ぶりに海底面から顔を出したそうです。このまま放置すると酸素に触れて劣化が進むため調査を行うようです。ちなみに、ここで見るように世界では周知の水中遺跡がたくさんあります。しかし、それらを発掘せずに現地で保存しています。保存処理することなく保存できるからです。しかし、開発などにより自然の環境が変化し現地保存ができなくなった場合には発掘をすることになります。陸の遺跡と変わらないマネージメントが行われているよい例ですね。

http://www.irishexaminer.com/lifestyle/features/exploring-a-17th-century-shipwreck-in-kerry-with-underwater-archaeologists-298431.html

 

ギリシャのデロス島で「小さなポンペイ」発見、だそうです。海底面にかまどが発見されたようで、土器などもその中に入った状態のようです。遺跡形成の要因が気になります。詳しい調査はこれからです。

http://news.discovery.com/history/archaeology/small-underwater-pompeii-found-off-greek-island-141120.htm

今週のニュースです。

今週のニュースです。今日は少数精鋭、少し長めに解説しています。

 

韓国で朝鮮王朝時代の沈没船発見される!高麗時代の船は数隻発見されているので、記録の残る伝統造船技術とそれ以前の考古伯資料をつなぐ良い資料となるでしょう。韓国の水中考古学は良い発見がいっぱいありますね、さすが。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/Locality/2014/11/05/3000000000AJP20141105000900882.HTML

 

クック船長の船~調査継続中。海域にすでに数隻発見されている船の可能性もあるそうです。また、何をしてクック船長の船であったと断定できるのか?答えを求めて研究は続く。

http://www.wptz.com/sports/underwater-jigsaw-puzzle-of-captain-cook-ship/29518960

 

こちらは少し難しいニュース。マルタ島で新しく海岸の道路を拡張するそうだが、その工事により影響が及ぶエリアは海にもおよび、考古学調査を必要とする範囲は海上にまで広く及んでいます。「陸」の開発ではありますが、海への影響も考え、きちんと事前審査する必要があるとのこと。陸の調査ですこしだけ護岸工事をする必要があるそうですが、それによりそのエリアの植生や潮の流れが変化する可能性があるそうです。そうなると、例えば砂が今までは堆積していた場所が今度は砂が流されてしまう可能性もあります。砂に埋もれていれば安定していた遺跡もこのことにより破壊されてしまう…護岸工事など原因者負担でどこまで考古学の事前審査を行うか難しい問題です。

海の場合、周知の遺跡と隣接するエリアでも工事をしてしまうと、広くその影響がでるため、遺跡のあるエリアだけでは充分な対策にならないということです。難しい問題ですね。

http://www.timesofmalta.com/articles/view/20141109/environment/Ecology-archaeology-and-roadworks-at-Burmarrad.543320

沖縄県立博物館・美術館 博物館特別展 『水中文化遺産~海に沈んだ歴史のカケラ~』

水中文化遺産の保護が日本国内で一番進んでいる場所、それが沖縄県です。海がきれいですし、納得ですね。沖縄の水中文化遺産の多くはきちんと周知の遺跡となっており、法律により保護されています。他の市町村も多くのことを学ぶことができるでしょう。

沖縄の水中文化遺産地図はコチラで拝見できます!

さて、その沖縄ですが、ただいま沖縄県立博物館において、特別展 『水中文化遺産~海に沈んだ歴史のカケラ~』が開催sれています!

【会  期】2014年11月8日(土)~2015年1月18日(日)

 

ちなみに、今週末は、このブログの管理しております私の講演もありますので、お近くにお住まいの方、もしくは、沖縄に来られる予定のある方は是非ご参加を!

11月15日(土)14:00~16:00(開場13:30)

講師:ランディー 佐々木 氏(福岡市文化財部)
場所:3F 講堂
定員:200人(当日先着順、予約不要)
※入場無料

キーワード
水中文化遺産  UNESCO  海事考古学  開発と文化財の共存  現地保存

近年、「水中考古学」が日本でもニュースなどで取り上げられる機会が増えてきたが、実際にこの学問を理解しそれを実践している人はまだ少ない。世界ではユネスコの水中文化遺産保護の働きかけなどもあり、一般にも広く認知された学問として発達してきた長い歴史がある。沖縄ではこの分野への理解が深いが、それでも世界に比べるとまだ学問としての認知度は低いことは否めない。
そこで、世界の水中文化遺産の保護・活用や近年の研究のトレンドについて紹介する。また、この講演を通して、沖縄での取り組みを活かしながら、日本国内全体で今後どのような水中(海事)文化遺産の保護・マネージメントを敷いていけば良いかを考えるきっかけとなれば幸いである。

 

ちなみに、沖縄の水中文化遺産の本も先日発売されたばかり!

 

 

本日のニュース

毎日いろいろと水中考古学のニュースが入ってきますが、今日のまとめ。

 

http://www.startribune.com/nation/280530592.html

フロリダの水中考古学チームが地中海で紀元前200年ごろの沈没船を調査中。

 

http://www.cbsnews.com/news/divers-explore-ancient-shipwreck/

コチラも上と同じニュース。ビデオ付。発掘風景が格好いい!

 

http://antiguaobserver.com/us-archaeologists-searching-for-artefacts-from-1677-franco-dutch-naval-battle/

トリニダード・トバゴで1677年のオランダ・フランスの戦いで沈んだ船を調査中。

 

http://luminanews.com/2014/10/blackbeards-cannon-exposed-in-exhibition/

海賊黒髭の沈没船の調査継続中。また大砲を引き上げたそうです。

 

http://www.app.com/story/news/local/ocean-county/2014/11/01/th-century-shipwreck-uncovered-brick/18350965/

アメリカ・ニュージャージー州で堤防建設中に19世紀の沈没船発見。工事ストップ中。