水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

船員徴用と水中戦跡

事実上の徴用と船員予備自衛官化がメディアによって取り上げられました。
http://mainichi.jp/articles/20160130/k00/00m/040/091000c

記事のなかで触れられているように、いくら強制が無いと言われても、有事の際の国やあるいは国民からの無言の圧力が想起されます。

戦後70年しか経ていない段階でこうした考えが防衛省から出てくることに危惧を抱く人は少なくないと思います。

太平洋戦争での民間船の徴用と船員の徴用、命を落としたあまりに多くの船員の方々に記事も触れていますが、

その悲劇の歴史の証人として、今でも太平洋諸国には多くの徴用船が沈んでおり、

一部の国ではこれらを水中戦跡として保護しています。

水中戦跡には軍艦では無く、徴用船が多く含まれるのが現実です。

権力の圧力による最初の犠牲者は弱者であるというのが歴史の常です。

戦後70年の水中戦跡

鷹島海底遺跡をはじめ水中文化遺産の取材をおこなっているRKB、戦後70年にあたる2015年には水中に沈む第2次大戦中の船舶についても現状を報告しています。

http://rkb.jp/news/news/30204/

取材ではパラオ共和国が取り上げていますが、同国の文化財関連法は周辺海域に沈む大戦中の船舶・航空機を水中戦跡として保護しています。

パラオの水中戦跡はこれまでの日本の研究機関の考古学者が参加しての調査が行われてきました。

http://repository.nabunken.go.jp/dspace/bitstream/11177/458/1/BA67898227_2010_012_013.pdf

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2015年にはユネスコ事業でパラオ共和国を初めとする太平洋諸国での水中戦跡の現状が多角的に報告されています。

 

ひとりごと…

すでに、何回かいろいろな場所で書いていますが、再度。

水中考古学にお金がかかるは微妙に嘘。というのも、遺跡を全掘すればもちろん陸上でも膨大なお金がかかる…。。

 

また、同量の一括性の資料、流通の過程を示す遺物、完全な形で残された遺物など陸の遺跡をいくつ掘っても沈没船がもたらす情報量にはなかなか追いつけない。そもそも、遺跡の重要度などという理論は考古学的倫理から外れる。水中遺跡はその環境により、陸では考えられないほど有機物などの保存状態が良好である。沈没船などがタイムカプセルと称されるのもこのためである。いくら陸の遺跡を掘っても、出てこない種類の遺物も多く見つかることがある。

現在、世界のスタンダードは陸も水中も、開発との共存、原因者負担による発掘である。(建設会社さんありがとう!)そのなかで、水中の遺跡を見てみよう。

最初に、海の開発は主に国や自治体のプロジェクトが多い。つまりは、公共の事業であり、税金を払う全ての人々が等しくその恩恵に預かる。個人で海の開発を行うことはほとんどないだろう。つまり、遺跡が工事計画地に存在した場合、すべての人民のメリットとなるよう対処するべきである。個人住宅の建設予定地に個人の負担でお金を使うのとは少しわけが違う。個人が発掘の費用にお金を出すのを躊躇するのは仕方のないことだろう…。くどいようだが、海の開発は公共の事業であり、公共の歴史理解を深めるのに少しのお金を払うのは決して悪いことではないと思う。

次に、海の開発とは、主に公共のスペースで行われる。そのため、建設予定地の変更を行うことが容易である。例えば、広い海にパイプラインを通す場合、そのルートを多少変更しても問題がない場合が多い。すぐ隣に他人の土地があるわけでもないので、数10メートルずらすのは簡単だ。つまり、遺跡があっても、掘る必要は少ない。陸の開発では、遺跡があったら、発掘などの対応を考える必要があるが、海上はルートを変更のみで終わる。開発業者にとっては楽である。遺跡が出ました、じゃ、ルートを変更で…という話でお金はあまりかからない。

しかし、面白いことに、海外では建設会社は、容易に可能なルート変更よりも、発掘をすることを選ぶことが多い。これはなぜか?もともと、海の上の開発には数億円単位の莫大なお金がかかる。そのため、水中遺跡の調査にすこし余分にお金をかけるのも苦ではないことが多い。言い換えると、陸の遺跡の発掘では、建設業者の負担は、事業全体に占める割合が大きいが、海の開発に伴う水中発掘は、建設事業全体に占める割合が少なくて済む。また、不思議と、海の発掘に惜しみなく資金を提供した業者は市民からも慈善事業として見られ、業者のイメージアップにつながることも多い。

最後になるが、海の建設を行う際には、事前にその土地の地質などの調査を行うのが普通である。この調査には音波探査などによる海底面の調査や、堆積層の確認などがある。これらの調査は、基本的には水中で遺跡の探査をおこなうプロセスとなんら変わりがない。ただ、得られたデータを、考古学見地から見る必要があるだけである。つまり、もともと工事の際に行う基礎データ収集に際して、考古学者がそのデータの提供を受け、分析するだけで、水中遺跡の有無が分かってしまう。陸の試掘のようなプロセスを必要としないのである(というか、工事会社がもともと建設のために探査を行う)

以上を考えると、水中遺跡の探査や発掘などにお金がかかるといのは、嘘であることに気がつくのではないか?確かに、局部的にみるとそうかもしれないが、開発対応の中でみると、陸に比べて幾分かお安く見える。

もちろん、学術調査となると少し話が変わってくるが、自治体や建設業者にとってはそれほど高いわけではない。逆に、なぜ、世界的に進む水中遺跡の保護を我が国で行って来なかったかが疑問である。

もし、水中遺跡の調査にはお金がかかると言っている人がいれば、教えてあげてください。

 

 

 

 

 

ケニアで水中遺跡ミュージアム構想と世界の動き

2015年末現在、インターネットで水中考古学や沈没船関連の検索をすると、とある国の大統領が発表した沈没船発見のニュースで賑わっているようです。国として「貴重な文化遺産として保護し広く国民と共有する」と宣言しているにも関わらず、メディアなどの部外者が財宝だどうだの騒いでいます…そもそも遺跡として保護することを明確にしているにも関わらず、一部のアメリカなどのメディアが遺物の価値が重要であるように報道してしまったため、日本のメディアもそれが重要であるかの如く報道しています…現実には、多くの国で水中と陸上の文化遺産は全く同等に扱われているのが普通です。日本とアメリカの一部のニュースと、それ以外の国のニュースを比べると微妙な温度差があるのがわかります。残念なことです。

さて、それを踏まえて次のニュース。個人的にはこちらのニュースのほうが大ニュースであり、今後の研究の起爆剤になる重要な動きであることは、間違いありません。

アフリカ東海岸のケニアでは大航海時代のポルトガル船などの水中遺跡がありますが、海底遺跡ミュージアムパークを設立するそうです。この地域では、ほかにもモザンビーク、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、マダガスカル、ナミビアなどの国がこの事業に関わり、地域の水中考古学の発展に貢献できるよう協力して取り組んでいるようです。インド洋でも広く水中文化遺産の保護の動きが活発になっています。これらの国は、どれも日本のGDPと比べると経済的に弱い国でありながり、水中の文化遺産の保護に向けて積極的に活動を強めています。

また、つい先日、グアテマラもユネスコ水中文化遺産保護条約の締結国のメンバーに加わりました。台湾も、国際的な立場からユネスコと関わっていませんが、その条約を基に水中文化遺産の国内法を整備しています。ユネスコの条約に批准せずとも、水中文化遺産の保護が世界的な動きとして定着しています。特に、世界では開発に伴う調査で多くの遺跡が発見されています。

水中には多くの遺跡があります。デンマークやオランダなど日本と比べると小さな国でも数千件の水中遺跡があります。日本には多くの水中遺跡がありました…残念ながら、その多くは護岸工事や埋め立てなどにより破壊されてしまいました。これは、開発に伴う考古学調査が陸上では当たり前でありながら、水の上では行われてこなかったことが大きな原因です。例えば、アメリカのメキシコ湾では、油田開発に伴うパイプラインの施設工事の事前調査だけで2000件以上の水中遺跡が報告されています。日本でも、最近は幾つかの水中遺跡の発見が報告されていますが、破壊された遺跡はその数千倍でしょう。

残念ながら、真面目に水中文化遺産を保護する取り組みを始める時期はとっくに過ぎているのかもしれません。真面目な水中遺跡の保護について考えてみる機会になれば幸いです。近年、水中文化遺産や水中考古学についての本などが出版されていますので、ぜひご覧ください。

 

 

シルクロード世界遺産と「海上のシルクロード」ユネスコ国際会議

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2015年12月1-3日にかけて韓国慶州でユネスコ主催のConference of the Eastern Silk Roads Story 2015が開催されました。中国、韓国、イラン、アフガニスタン、カザフスタン、日本、イギリスの研究者らが東西交流の交易路シルクロードの海上版、「海上のシルクロード」について議論。日本からはシルクロード研究の創価大学林俊雄教授、海事考古学・水中文化遺産専門の東海大学木村淳特任講師が研究発表を行いました。今回の国際会議は、ユネスコがこれまで進めてきたシルクロード世界遺産群の研究の集成にあたり、海上交易路の重要性にも着目して今後の研究の方向性について議論するものでした。水中文化遺産についての発表もありました。またシルクロード遺産に関連して、朝鮮半島と日本を結ぶ海上路に位置する沖ノ島の重要性が、何度も言及されました。海上のシルクロードまたは海の陶磁器路と水中文化遺産、今後の研究進展が期待されます。

http://en.unesco.org/silkroad/about-silk-road

徳川家紋入りの瓦、水中ロボットを使い調査

伊豆半島の初島沖には徳川の家紋が入った瓦をのせて沈没したと思われる船の遺跡があります。数年前に発見・報告されていましたが、今回、改めて調査が行われました。

調査を行ったのは、アジア水中考古学研究所(ARIUA)と東京海洋大学。ARIUAは、長年鷹島海底遺跡などで調査を行い、また、全国の水中遺跡のデータベースなども作成しています。

今回の調査は水中ロボットを使い、集積する瓦などの遺物を撮影すること。今後、ロボットなどを使用した調査が増えていくことに期待がかかります。

詳しくは、朝日新聞の記事で。もしくは、研究所のブログなどもご覧ください!

水中考古学の本

井上たかひこさんは、これまでに水中考古学の本を数冊書かれてきました。その中でも、この本は彼のベストであることは、間違いないでしょう。

専門的に一見見えますが、それでいて、読みやすく面白い。とてもテンポがよく描かれています。水中考古学を踏み出すための第一歩としては良書であると思います。発掘のシーンなども本人の体験談を巧く取り入れながら、学術的な要素も書き込んでいます。

青銅器時代のウルブルン沈没船、スウェーデンの軍艦ヴァーサ号、鷹島の沈没船から幕末の船まで、幅広く書かれていますが、一貫して水中考古学の成果で歴史がどのように変わったのか、そして、この学問が人類の歴史の解明には必要であることをテーマにして書かれてます。本人の情熱も感じられます。

まだまだ、元気に本を書いて欲しいですね。次に私が出そうと考えている本も再構成を迫られそうです…水中考古学、いや、考古学や歴史を学ぶ人には必読の一冊となることを願います。そのポテンシャルは十分あるのではないでしょうか?

海洋考古学からみた海、船、ヒト

海洋教育フォーラム-1

東海大学研究者らによる海洋考古学関連のトークが11月28日に清水で開催されます。テーマは考古学と海の生き物、水中探査ロボット、海底遺跡の公開、水中文化遺産とユネスコなど。水中考古学、海事考古学、水中文化遺産が学べる東海大学海洋学部の研究者らによる一般の方々向けのイベントです。主催は日本船舶海洋工学会で、静岡市教育委員会・教育新聞社の後援を受けています。

日韓国交正常化50周年記念 国際交流特別展「新発見の高麗青磁 ―韓国水中考古学成果展」

いよいよ始まりましたね、韓国の水中考古学展。大阪なので生きやすい人も多いのではないでしょうか?

日本で水中考古学遺跡の遺物を展示することは珍しいので、ぜひ足を運んでみてください。韓国の水中考古学の取り組みもきっとわかるでしょう。国の体制だけを見ると、韓国に比べ日本の水中考古学はまだまだだと感じてしまいますが…日本近海にも多くの沈没船など水中遺跡があるはずです!

興味のない人ある人、期間中に博物館へGO!

九州国立博物館ミュージアムトーク

毎週火曜日午後3時から九州立博物館ではミュージアムトークが行われています。毎週様々なトピックで実際に展示の前で博物館の職員などが遺物・歴史の魅力をわかりやすく語ります。

8月18日は、水中考古学特集です!30分という短い時間ですが、水中考古学の魅力と成果、鷹島海底遺跡についてなど語ります。九州国立博物館へまだ来たことがない人、または、最近言ってない人…どなたでもお気軽にお越しください。現在、特別展では大英博物館展を開催しております。大英博物館のみどころコレクションを取り揃えており、充実した展示となっております。勿論、4階の展示も毎週入れ替えをしているので、いつ来ても違った展示が楽しめます。

お子様の自由課題に水中考古学などいかがでしょうか?