水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

九州国立博物館ミュージアムトーク

毎週火曜日午後3時から九州立博物館ではミュージアムトークが行われています。毎週様々なトピックで実際に展示の前で博物館の職員などが遺物・歴史の魅力をわかりやすく語ります。

8月18日は、水中考古学特集です!30分という短い時間ですが、水中考古学の魅力と成果、鷹島海底遺跡についてなど語ります。九州国立博物館へまだ来たことがない人、または、最近言ってない人…どなたでもお気軽にお越しください。現在、特別展では大英博物館展を開催しております。大英博物館のみどころコレクションを取り揃えており、充実した展示となっております。勿論、4階の展示も毎週入れ替えをしているので、いつ来ても違った展示が楽しめます。

お子様の自由課題に水中考古学などいかがでしょうか?

 

鷹島海底遺跡~世界を代表する遺跡!

現在(8月初旬)、長崎県松浦市鷹島では水中遺跡の調査が行われています。この調査はアジア水中考古学研究所が行っている分布調査で、ボランティアなども参加できる事業です。

すでにお馴染みになりつつある鷹島の遺跡ですが、元寇(蒙古襲来)の際に使用された元軍の船が実際に発見されており、日本でも水中考古学を広めるきっかけとなった重要な遺跡です。日本で水中遺跡はおよそ500件ほど知られていますが、世界の調査は桁違いです。例えば、アメリカのメキシコ湾には数千の水中遺跡が発見・登録されています。

なのですが、実はこの鷹島の遺跡は世界を代表する遺跡なのです…数は少ない日本の水中遺跡ですが、そのクオリティーは高い…

ユネスコが進める水中文化遺産保護法ですが(日本は批准していない)、このUNESCOのオフィシャル紹介サイトに世界の水中遺跡の代表例として扱われています。

Underwater cultural heritage encompasses all traces of human existence that lie or have lain underwater and have a cultural or historical character. This includes three million shipwrecks such as Titanic, Belitung and the 4,000 shipwrecks of the sunken fleet of Kublai Khan. There are also sunken ruins and cities, like the remains of the Pharos of Alexandria, Egypt – one of the Seven Wonders of the Ancient World – and thousands of submerged prehistoric sites.

また、別のページでは沈没船遺跡の例として…

Famous shipwrecks include:

  • the Titanic shipwreck;
  • the shipwrecks of the Armada of Philipp II of Spain;
  • the sunken fleet of Kublai Khan off Japan;
  • the ships of Christopher Columbus;
  • the Spanish galleons that connected America to Spain; and
  • the Greek Antikythera wreck.

とされています… タイタニック、アルマダ(スペイン無敵艦隊)、鷹島の遺跡、コロンブスの船、スペインのガレオン船、アンティキセラ沈没船…日本の水中遺跡はタイタニック号と肩を並べるほど世界では有名であり、また重要なんです!

また、海外の考古学雑誌なども日本の遺跡を、世界の沈没船10大発見!としております。個人的な意見かもしれませんが、海外で一般の人に日本の有名な遺跡を一つ挙げてくださいというと、この遺跡を言う人がけっこういます。Takashimaの名前は出てこなくとも、Khublai Khan’s Wreckと出てきます。他には、Jomonとか言う人もいますが、遺跡の名前ではないですね…一度、Edoとか言う意見もありました…

このような世界に誇れる貴重な遺跡をどのように守っていくか、真剣に考える必要がありますね。

どうでもよい話ですが、注意が必要です。

以前、ちょっと紹介しましが、キャプテンキッドの船をマダガスカル沖で発見したと発表した方のお話ですが…ちょっと補足ですが、このキャプテンキッドがどこかの島に財宝を隠したという伝説があり、それが有名な小説『宝島』のもとになった話です。まあ、それが漫画『ワンピース』のテーマにもなっていますね…

さて、この事実を確かめるべくUNESCOが調査に入ったとお伝えしましたが、キャプテンキッドの船ではないとの結論がでました。しかも、船体ではなく、実は港の遺構だったとか…そして、銀製の遺物として引き揚げたものも、実は鉛の塊。もう、トレジャーハンターとか売名行為の時代は終わったような気がしますね。すべて捏造だったのかと…

実は、この人、ちょっと前にハイチでコロンブスの船を発見したと言い出した人なのですが、それも専門家によって否定。次はどこへいくのでしょうか?

そこで、私が気にしているのが日本です。というのも、なぜか日本では世界のトレジャーハンター達の情報がほとんど出回ることがありません。あっても、発見のニュースだけで、その後の「嘘」についての報道はあまり出てきません。これハンター達のプレスリリースの方法が徹底しているからなのですが…日本のメディアは、わざわざ海外のニュースを拾ってきて翻訳することはあまりせず、向うから送ってくるニュースは流すからだと思われます。(詳しい仕組みはわかりませんが…)

例えば、数年前にアメリカのサルベージ会社によって発見されたスペイン船の時もそうでした。発見当時は時価数億円がどうだのと大きく報道されていました。その後、スペイン政府が訴訟を起こし、会社に対しすべての遺物の返還を要求しました(文化遺産保護のため)。スペインの要求は受け入れられ、会社にとっては大きな損失となりました。しかし、このニュース発表があった後に日本で報道されたとある娯楽番組では「発見された財宝番付」で上位にランクインしていました。

さて、本題に戻りましょう。どうでもいい話をなぜここでまた書くのか…実は、世界で行き場をなくしたトレジャーハンター達は日本へ来ることが多いようです。それは、自分たちの良い情報だけを活用し利益を上げることができるからです。わざわざ英語でサーチを行って昔のニュース記事を見つける人も少ないでしょう。沈没船の調査の話や投資話など疑わしい話があったら注意が必要です。また、沈没船から引き揚げた遺物を売ったりするのもUNESCOが反対している行為です。

沈没船・水中遺跡に関して儲かる話があったら、確実に怪しいと思ってよいでしょう。非学術的な水中遺跡の発掘が合法な国が世界にはまだ数か国残っています。もちろん、合法であっても(水中遺跡の保護の法律がなくても)遺跡を破壊する行為には変わりがありませんから。

そんなことよりも、本当の学術的な水中考古学の世界を!

アジア水中考古学研究所による鷹島海底遺跡の調査

先日の鷹島海底遺跡の発見は大きなニュースになりましたね。この研究は琉球大学の池田先生が行っているもので、大きな成果を得ることができました。

鷹島ではアジア水中考古学研究所(NPO)も数十年前から、水中考古学の学問的発展のため、調査・研究を進めています。今年度は8月初旬に調査を行う予定です。NPOの会員の方であればみなさんウェルカムですが、会員でない方も見学など可能なようです。水中遺跡の発掘作業は、少し専門性が高く初心者には近寄れないようなイメージがあるかもしれませんが、それは実際とは大きく違います。多くの人に水中遺跡の魅力を知ってもらってこそこの学問の発達はあり得るのです。

というわけで、現在会員の方、昔会員だった方、今回初めて知った方、是非アジア水中考古学研究所(ARIUA)のウェブサイトをご確認ください!

 

鷹島海底遺跡!

もう、水中考古学に興味のある人にはお馴染みですね!

鷹島海底遺跡の元寇船発見のニュース!今回の船は、今までになくしっかりとした船です。今は海底に現地保存をしながら、これからの活用を考えていきます。私も鷹島には10年以上も前から関わっていますが、やっと待ちに待ったものが見つかった!という感動でいっぱいです。実際に潜ってみるのと撮られた映像では全く感じ方はちがいますが、水中で見ると、大発見であることは間違いないことが確信できました。

RKB Newsが一番詳しく、信頼できる映像と解説を行っていますので、ご覧下さい。他のニュースなどと比べましたが、こちらが一番よく臨場感を得られます。

RKB News

 

現地保存の方法論などについて後ほど詳しく書いてみようかと思っています。あいにく日本語で水中遺跡の現地保存方法について書かれた論文や記事など殆どありません。ヨーロッパで行われている現地保存のプロジェクトのページなどはこちら。ニュースなどにも少し説明がありましたが、オーストラリアの専門家の方の書いた(ごく簡単な?)論文などはこちらからどうぞ…

その1  その2

 

他にもいろいろニュースが出てきていますね…グーグルサーチなどでもいろいろ調べることができますね。

毎日新聞

TBS News

梅雨が終わり…夏だ! 海だ、水中考古学の季節です!

なぜだかわかりませんが?夏は水中考古学のニュースが多い季節です。今年の夏はどんなニュースが出てくるのでしょうか?

海外では相変わらず多くの調査が行われています。ユネスコの水中文化遺産のニュースもあるかもしれません。また、今年は戦後70年ということもあり、戦争関連の水中遺跡は話題になりそうです。武蔵だけではありません、アジアの海には多くの戦争遺跡が残されています。これらをどのように保護していくか一つの大きな課題となっています。

また、国内では沖縄でも動きがありそうですし、元寇の鷹島海底遺跡も目が離せません!

数年前まで、水中考古学のニュースはあまりありませんでしたが、ここ数年はどんどん増えてきています。いろいろなニュースを発見次第お伝えしますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。

 

 

あなたの街の水中文化遺産を探してみませんか?

何度か紹介しているアジア水中考古学研究所(ARIUA)が行った水中文化遺産のデータベースプロジェクト。報告書ダウンロードできますので、興味のある方は是非!500以上もの水中遺跡を網羅、そして、いくつものプロジェクトについての詳細などなど。

次のステップはこのデータの活用、それぞれの遺跡の詳細な情報を調べることと周知化ですね。

プロジェクト報告書PDF

 

予想はしておりましたが…やはり

名護市辺野古に移設予定のアメリカ軍の基地の埋め立て予定地の海岸から琉球王朝時代の貿易船「碇石」に似た石が発見されたそうです。この碇石らしき石はすでに教育委員会に引き渡され、埋蔵文化財保護法に適応させ、試掘調査を行う可能性があるとか…

以前から、予想されていたことですので、「発見」には特には驚きはないですが、よく報告され、それが表(ニュース)になったなと思います。この先どうなるか…調査は原因者負担となると、米軍?それとも…?いろいろな要因が絡みそうで難しい問題になりそうですが、多くの人が真剣に水中文化遺産について考える(知ってもらえる)良い機会かなと思います。

しばらくどうなるか見守ってみましょう…

「日本・世界の水中考古学の現状と課題~学問の魅力に迫る~」平成27年度考古学講座

平成27年度考古学講座のご案内

第2回「日本・世界の水中考古学の現状と課題~学問の魅力に迫る~」

釜山広域市との文化財交流事業講演会 「韓国の関羽信仰について」

講師

・九州国立博物館  佐々木 蘭貞 氏
・釜山市立博物館  柳 鉉 氏

概要

 今回の講座は「船」がテーマです。現在も水中に残る古代の船について,「水中考古学」の視点から実際の調査例をまじえて解説します。
また,釜山広域市と本市が行っている文化財交流事業の講演会もあわせて開催します。今回は釜山から先生をお招きし,ご専門の分野についてお話しいただきます。

日時

平成27年6月20日(土曜日) 13時30分から16時30分
(受付は12時30分より開始。)

場所

福岡市埋蔵文化財センター研修室 (福岡市博多区井相田2丁目1-94)

定員

200名(先着順とし,受講できない場合は当センターよりご連絡します)

申し込み方法

ホームページ( http://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/maibun-c/shisetsu/kozaannai.html)、ハガキ、FAXのいずれかに講座名・氏名・電話番号を明記のうえ、福岡市埋蔵文化財センター宛にお送りください。なお、送って頂いた個人情報を目的以外で使用することはありません。

お問い合わせ先

福岡市埋蔵文化財センター
〒812-0881 福岡市博多区井相田2丁目1-94
電話:092-571-2921/FAX:092-571-2825
H P:http://www.city.fukuoka.lg.jp/maibun/html/

日本の水中文化遺産の取り組み~今後の取り組み

日本は、「水中文化遺産」の保護について法律が存在せず、体制も未熟、政府の方針もはっきりした提示がなされていない珍しい国です。ユネスコ世界遺産などは日本国内のメディアで騒がれてはいるものの、おなじユネスコが進める水中文化遺産保護条約に関しては盛り上がりに欠けます。このユネスコ条約は、つい先日マダガスカルも批准しました。経済的に豊かでない国々でも水中にある文化遺産を守ろうとする動きは高まっています。

とはいうものの、ここ数年、日本でも取り組みが本格化しています。長崎県鷹島の元寇沈没船の発見や国の指定など存在感を現し始めています。

そんななか、政府も着実に動き出しています。「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)」のなかの重点戦略3:文化芸術の次世代への確実な継承,地域振興等への活用において、「水中文化遺産の保存・活用の在り方についての調査研究を進めるととも に,地方公共団体の取組を促す」と書かれています。国の方針として水中文化遺産研究をしっかりと進めていこう!しかも、重点的に取り組んでいこうということです!地味で全く報道されていませんが、大きな一歩ではないでしょうか?