水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

来週は講演会です

『海から眺める歴史』と題して、講演会をします。

水中・海事考古学に興味のある方はぜひご参加ください! 伊豆半島ですが、よろしく。東京から2時間以上かかりそうですが、近場にお住いの人はふるってご参加ください。

2018.11.16 FRI 18:00~19:30(受付 17:30より)

南伊豆町役場 湯けむりホール 

特定非営利活動法人 南の風創生本部/後援:南伊豆町教育委員会

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黒海でほぼ完全な沈没船発見

ここ数日、テレビのニュースなどでも話題になっています。黒海で2400年ほど前のほぼ完全な形の沈没船が発見されたそうです。かなり凄い発見で、詳細な調査をどんどん進めていってほしいですね。

ブルガリアなどを中心に進められているプロジェクトですが、10年ぐらい前から始まっています。すでに60隻以上の船を発見してニュースを小出しにしていましたが、ここで大きな発見のニュースを発表したようです。見た感じですと、98%ぐらいは船体が残っているのではないでしょうか?

ニュース記事によっては短絡的な見出しになっていますので、勘違いされた方も多いかと思いますが、いくつか注意点を…

●最古の船ではない~3300年前のウルブルン沈没船などのほうが古いですし、クフ王の船や丸木舟だって出土しています。

●奇跡的な保存状況~確かに。黒海はもともと湖だった所に海水が一気に流れ込んで形成された『海』です。淡水と海水は殆ど混ざらずに、死んだ湖の上に海がある珍しい場所です。湖はほとんど無酸素状態なので、バクテリアなども不活性のまま。そのため、奇跡的な保存状況が生まれます。このプロジェクトでは、60隻以上の沈没船が発見され、多くの船が驚くべき保存状態にあります。今回の船は、その中でも最も古い部類に入り、そのなかでも最も保存状況の良い船になります。他に状態の良い船だと、バルト海でも保存状況がよく、16世紀のヴァーサ号などは船体の98%ほど残っていました。9割以上の船体が残っている木造船はいくつか例があります。埋葬されたヴァイキングの船やエジプトのクフ王の船なども保存状況は100%に近いですね。

●他に例のない~これだけの保存状況の良い同時代に船は例がありませんが、同時代の沈没船はけっこう出土しています。例えば、キプロス島のキレニア号は、100年ほど時代はずれますが、70%ほど船体が残っていました。地中海では、一度に40隻以上の船が発見される!なんてニュースもありましたね。世界では、すでに数十万件の水中遺跡が確認され、周知・調査・保護されています。水中遺跡は、どこにでもあります。

●引き揚げるのか?~引き揚げません。水中で保存しておくほうが(特に黒海の場合)遺跡が守られることでしょう。将来、保存処理の方法が確立すれば引き揚げるかも….。

と、いくつか指摘しました。発見の興奮を損ねるような指摘かもしれませんが、それでも今回の発見が大発見であるのは明白です。

いくつか日本語で読めるニュース記事を紹介します。

CNN https://www.cnn.co.jp/fringe/35127638.html

ナショナルジオグラフィック https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/102500460/

Livedoorニュース http://news.livedoor.com/article/detail/15485833/

小型AUVで水中遺跡調査〜水中遺跡調査の未来がみえる!

AUV 自立型(つまりケーブルなどがない)の水中ろぼの一種で、あらかじめプログラムされたコースなどを泳いで探査する。ソナーなどで危険を感知し、AIがコースを決めたたりとか、色々できるらしい。

つい5〜6年前までは、大型な機械で、1日数百万円以上かかっていたり、開発に数億円必要だったりと国家規模の研究や大実業家ぐらいしか手が出せなかったのですが、かなり小型化、そして、実験的ではありますが、小回りのきくプロジェクトで使われ始めています。

イタリアなどの大学の共同研究で、イスラエルなどで水中遺跡のマッピングなどで使われています。かなり小型化されており、ラジコン(水中ではラジコン使えませんが…)で動かすおもちゃのようです。また、水中でダイバーがタブレット端末を使う姿も、どこか近未来的。

昔は、水中でもレベル立てたり、テープメジャーとグリッドを持って調査をしていたのですが、もう、デジタル撮影による三次元化、小型ロボットと併用、水中でタブレットに記録…。10年後の水中考古学調査は、どうなっているのか?

ニューヨークでエルトゥールル号の記念イベント

1890年、和歌山県串本で、トルコの軍艦エルトゥールル号が沈没。多くの犠牲者を出すも、献身的な日本人の介護に心を打たれたトルコ人の話は有名です。

イラン・イラク戦争の際、イランの空港に取り残された日本人を救ったトルコ旅客機。彼らは、エルトゥールル号で我々を助けてくれたから、その恩返しをしているだけだ、と言われたとか。

今でも、トルコは親日国で、トルコ人が日本人の美徳を語る時には、よくエルトゥールル号の事故の話が出てくるそうです。そんな沈没船ですが、トルコの研究者などにより発掘作業が行われています。

その引き上げ遺物が11月にニューヨークで展示されるようです。詳しい情報が分かり次第お伝えしますが、とりあえず速報ということで。

トルコと日本の友好を記念するイベントだそうで、コンサートなども企画されているようです。トルコの船ですが、日本に存在する水中遺跡から発掘された遺物がニューヨークで展示される…。ちょっぴり複雑な気分。

松浦市鷹島の蒙古襲来に関する沈没船なども、世界では大きな話題をよんでいます。世界的に著名な水中遺跡がありながら、気がついていないのは、その国に住む日本人、というありがちな話ではありますが。「日本の水中遺跡の成果」のような博物館展示を行ったら、世界では大盛況になるのかもしれません。

フランクリン探検隊の船(北極・カナダ探検)

カナダの歴史を少しでもかじったことのある人ならば、フランクリン探検隊(フランクリン遠征)については、よくご存知かと思います。

1845年、イギリス海軍のもと、カナダ北方の探検に出発したものの、行方不明となり、結局隊員全員が死亡。しかし、10年以上も行方がわからなかったり、探検隊を探すための探検隊が組織されたり、行方の捜索のため報奨金が約束されたり…。カナダの歴史の一大事件として知られています。

そんなフランクリン探検隊の船ですが、近年、ついに考古学者によって発見され、一部発掘されています。もちろんカナダでは大きなニュースになりました。

この船、実はイギリス海軍の船なので、所有権はイギリス。しかし、イギリスは、所有権などすべての権利をカナダ側に譲渡。イギリスでも知名度の高いフランクリンですが、カナダへのギフトとしています。では、所有権はカナダのもの?と思いきや、実は発見場所が、イヌイト族(カナダの原住民)の土地。そのため、カナダ政府とイヌイトの共同所有となっています。

カナダ国立公園局の考古学チームが調査を担当しています。今回、フランクリン隊の遺物が公開されています。

ポルトガルで発見された船

中国の陶磁器やスパイスを積んだ船がポルトガルで発見されたことがニュースになっていますね。

400年ほど前ですから、日本でいうと、戦国末から江戸初期にあたります。船体もよく残っているようです。ペッパーなど香辛料なども発見されており、インド方面から戻る途中に沈んだ船でしょう。香辛料!そうです、実は水中では驚くほど保存状況が良いことがあります。砂に埋もれると、無酸素・無菌状態になるため、数千年でも木愛や有機物がそのまま残っていることがあります。

西日本新聞のニュース

今回、まだ発見されたばかりなので、詳細がわかるのは、これからでしょう。調査に10年かかるかなと予想しています。

一応、動画のニュース。ただし、解説の日本語はまったく見当違いなことを書いています。翻訳を思いっきりまちがっているか、別の船の情報について書いています。なぜか場所はペッパーレックの沈没地点、そして、船の行先も逆…香辛料を積んでインドへ戻る船があるのか?謎ですね。

実は、20年ほど前に、同じく胡椒を積んだ船、通称ペッパーレック(胡椒沈没船)が発見され、調査されています。時代もちょうど西暦1600年ごろになります。日本人「ミゲル」がのっていたそうです。日本の文献には登場しない謎多き人物です。

そのペッパーレックについて調査した成果を書いた本がありますので、紹介します。

 

 

クック船長の船、ポルトガル船も(万暦帝時代)発見!

クック船長が乗っていたエンデバー号が発見されたかも、というニュースが入って来ています。ニューじランドやハワイ島などを探検したクック船長は、航海の歴史に大きな功績を残しています。

エンデバー号もキャリアが長い船でしたので、今回発見されたエンデバー号は、世界周航を終えてから、輸送船として働いていた時に沈没したものです。それでも、クック船長が愛用した船!ということでメディアでは注目を集めています。

調査はまだまだこれからです。日本語ニュースはこちら

クック船長の船ほどメディアから注目を受けていませんが、実は、もう一つ大きなニュースが入って来ています。

ポルトガル沖で、新たな沈没船が発見されたようです。水深12mと、浅い海での発見にかかわらず、木材などの保存状況も良いそうです。また、発見された大砲などからポルトガルの船であることが分かっています。

英語ニュース

大型の船であったようです。積荷は、胡椒。そして、万暦帝時代の中国の陶磁器などを搭載していたようです。調査はまだまだこれからですが、ここ10年で最大の発見と言われています。

中国・明の万暦帝は、1570年〜1620年ごろ。日本の戦国から鎖国が始まるころ。日本人も多く海外に出て行った時代です。ちょうど、1600年ごろのポルトガル船で、ペッパーレックと呼ばれる船も20年ほど前に発掘されていますが、日本人も乗っていたようで。刀の鍔なども発見されています。記録によると、ミゲルという名前で日本の名前は分かっていません。沈没事故から助かり、ローマで暮らしていたそうで、日本に帰ることはなかったようです。日本には全く記録に出てこない人物のようです。

今回の船ですが、まだ船の名前などは特定されていません。日本に来たことのある船だったりすると面白いのですが…。ペッパーレックのように、大きな成果が期待されています!調査には、10年を要するとは思いますが…。

ハーマン号の調査 千葉県

幕末、そして、戊辰戦争では、様々な船が活躍しました。幕末の船といえば、黒船(サスケハナ号など)、ディアナ号、開陽丸、咸臨丸、昇平丸、ハーマン号、ヘダ号、回天丸、観光丸、いろは丸、などなど。思いつくままに書いてみても沢山出てきます。

さて、意外と歴史の表舞台に出てこなかったのが、ハーマン号。熊本藩士を乗せた蒸気外輪船ですが、運悪く戊辰戦争で函館に向かう最中に多くの犠牲を払い千葉県沖で沈んでしまいました。さて、そのハーマン号ですが、今から十数年程前に発見され、調査が進められています。

今年の夏にも調査が行われていましたが、果たして成果は?

読売新聞の記事がありましたので、ぜひ!

読売新聞の記事

松浦市鷹島で水中考古学セミナー開催

元寇終焉の島、鷹島で水中考古学セミナーが開催されます!

県や市町村の文化財担当者、学生、一般の方、どなたでも奮ってご参加ください。日本の水中考古学の発展の中心となった鷹島で水中考古学の最前線について学べます。

平成30年10月6日~10月8日

詳しい情報は、松浦市のウェブサイトよりご確認ください。

 

以下、松浦市ウェブサイトのから引用。

松浦市立水中考古学研究センターでは、平成30年10月6日~10月8日の日程で「あなたも水中考古学の魅力に触れる」をテーマに、水中考古学公開セミナーを開催いたします。
今回のセミナーは地方自治体職員、大学生に加えて、一般の方の参加も募集しております。参加費は無料となっております。
3日間の日程で開催しますが、全日参加でなくとも結構です。どうぞ奮ってご参加ください。

なお、参加を希望される場合は事前申し込みが必要となります。平成30年9月28日(金)までに参加申込書を提出してください。公開セミナー詳細及び参加申込書は下記よりダウンロードできます。

詳しくは、こちら

 

歴史秘話ヒストリア 蒙古襲来!

来週水曜の夜! 19日は蒙古襲来特集!

NHK歴史秘話です。19日(すい)夜10:25

鎌倉時代の元寇(蒙古襲来)に焦点を当てています。もちろん、松浦市鷹島にも取材に来ていたそうです。水中考古学の成果をテレビで見るチャンスですね。