水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

アジア水中考古学研究所による鷹島海底遺跡の調査

先日の鷹島海底遺跡の発見は大きなニュースになりましたね。この研究は琉球大学の池田先生が行っているもので、大きな成果を得ることができました。

鷹島ではアジア水中考古学研究所(NPO)も数十年前から、水中考古学の学問的発展のため、調査・研究を進めています。今年度は8月初旬に調査を行う予定です。NPOの会員の方であればみなさんウェルカムですが、会員でない方も見学など可能なようです。水中遺跡の発掘作業は、少し専門性が高く初心者には近寄れないようなイメージがあるかもしれませんが、それは実際とは大きく違います。多くの人に水中遺跡の魅力を知ってもらってこそこの学問の発達はあり得るのです。

というわけで、現在会員の方、昔会員だった方、今回初めて知った方、是非アジア水中考古学研究所(ARIUA)のウェブサイトをご確認ください!

 

鷹島海底遺跡!

もう、水中考古学に興味のある人にはお馴染みですね!

鷹島海底遺跡の元寇船発見のニュース!今回の船は、今までになくしっかりとした船です。今は海底に現地保存をしながら、これからの活用を考えていきます。私も鷹島には10年以上も前から関わっていますが、やっと待ちに待ったものが見つかった!という感動でいっぱいです。実際に潜ってみるのと撮られた映像では全く感じ方はちがいますが、水中で見ると、大発見であることは間違いないことが確信できました。

RKB Newsが一番詳しく、信頼できる映像と解説を行っていますので、ご覧下さい。他のニュースなどと比べましたが、こちらが一番よく臨場感を得られます。

RKB News

 

現地保存の方法論などについて後ほど詳しく書いてみようかと思っています。あいにく日本語で水中遺跡の現地保存方法について書かれた論文や記事など殆どありません。ヨーロッパで行われている現地保存のプロジェクトのページなどはこちら。ニュースなどにも少し説明がありましたが、オーストラリアの専門家の方の書いた(ごく簡単な?)論文などはこちらからどうぞ…

その1  その2

 

他にもいろいろニュースが出てきていますね…グーグルサーチなどでもいろいろ調べることができますね。

毎日新聞

TBS News

梅雨が終わり…夏だ! 海だ、水中考古学の季節です!

なぜだかわかりませんが?夏は水中考古学のニュースが多い季節です。今年の夏はどんなニュースが出てくるのでしょうか?

海外では相変わらず多くの調査が行われています。ユネスコの水中文化遺産のニュースもあるかもしれません。また、今年は戦後70年ということもあり、戦争関連の水中遺跡は話題になりそうです。武蔵だけではありません、アジアの海には多くの戦争遺跡が残されています。これらをどのように保護していくか一つの大きな課題となっています。

また、国内では沖縄でも動きがありそうですし、元寇の鷹島海底遺跡も目が離せません!

数年前まで、水中考古学のニュースはあまりありませんでしたが、ここ数年はどんどん増えてきています。いろいろなニュースを発見次第お伝えしますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。

 

 

あなたの街の水中文化遺産を探してみませんか?

何度か紹介しているアジア水中考古学研究所(ARIUA)が行った水中文化遺産のデータベースプロジェクト。報告書ダウンロードできますので、興味のある方は是非!500以上もの水中遺跡を網羅、そして、いくつものプロジェクトについての詳細などなど。

次のステップはこのデータの活用、それぞれの遺跡の詳細な情報を調べることと周知化ですね。

プロジェクト報告書PDF

 

予想はしておりましたが…やはり

名護市辺野古に移設予定のアメリカ軍の基地の埋め立て予定地の海岸から琉球王朝時代の貿易船「碇石」に似た石が発見されたそうです。この碇石らしき石はすでに教育委員会に引き渡され、埋蔵文化財保護法に適応させ、試掘調査を行う可能性があるとか…

以前から、予想されていたことですので、「発見」には特には驚きはないですが、よく報告され、それが表(ニュース)になったなと思います。この先どうなるか…調査は原因者負担となると、米軍?それとも…?いろいろな要因が絡みそうで難しい問題になりそうですが、多くの人が真剣に水中文化遺産について考える(知ってもらえる)良い機会かなと思います。

しばらくどうなるか見守ってみましょう…

「日本・世界の水中考古学の現状と課題~学問の魅力に迫る~」平成27年度考古学講座

平成27年度考古学講座のご案内

第2回「日本・世界の水中考古学の現状と課題~学問の魅力に迫る~」

釜山広域市との文化財交流事業講演会 「韓国の関羽信仰について」

講師

・九州国立博物館  佐々木 蘭貞 氏
・釜山市立博物館  柳 鉉 氏

概要

 今回の講座は「船」がテーマです。現在も水中に残る古代の船について,「水中考古学」の視点から実際の調査例をまじえて解説します。
また,釜山広域市と本市が行っている文化財交流事業の講演会もあわせて開催します。今回は釜山から先生をお招きし,ご専門の分野についてお話しいただきます。

日時

平成27年6月20日(土曜日) 13時30分から16時30分
(受付は12時30分より開始。)

場所

福岡市埋蔵文化財センター研修室 (福岡市博多区井相田2丁目1-94)

定員

200名(先着順とし,受講できない場合は当センターよりご連絡します)

申し込み方法

ホームページ( http://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/maibun-c/shisetsu/kozaannai.html)、ハガキ、FAXのいずれかに講座名・氏名・電話番号を明記のうえ、福岡市埋蔵文化財センター宛にお送りください。なお、送って頂いた個人情報を目的以外で使用することはありません。

お問い合わせ先

福岡市埋蔵文化財センター
〒812-0881 福岡市博多区井相田2丁目1-94
電話:092-571-2921/FAX:092-571-2825
H P:http://www.city.fukuoka.lg.jp/maibun/html/

日本の水中文化遺産の取り組み~今後の取り組み

日本は、「水中文化遺産」の保護について法律が存在せず、体制も未熟、政府の方針もはっきりした提示がなされていない珍しい国です。ユネスコ世界遺産などは日本国内のメディアで騒がれてはいるものの、おなじユネスコが進める水中文化遺産保護条約に関しては盛り上がりに欠けます。このユネスコ条約は、つい先日マダガスカルも批准しました。経済的に豊かでない国々でも水中にある文化遺産を守ろうとする動きは高まっています。

とはいうものの、ここ数年、日本でも取り組みが本格化しています。長崎県鷹島の元寇沈没船の発見や国の指定など存在感を現し始めています。

そんななか、政府も着実に動き出しています。「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)」のなかの重点戦略3:文化芸術の次世代への確実な継承,地域振興等への活用において、「水中文化遺産の保存・活用の在り方についての調査研究を進めるととも に,地方公共団体の取組を促す」と書かれています。国の方針として水中文化遺産研究をしっかりと進めていこう!しかも、重点的に取り組んでいこうということです!地味で全く報道されていませんが、大きな一歩ではないでしょうか?

同じパターンですいません…

マダガスカル沖で、キャプテンキッドの船ではないかと話題になった沈没船があったそうです。

この『調査』にとあるテレビ局が番組を作成していたのですが、どうやら遺物の無作為な引き上げなど問題がいろいろあったそうです。それを受け、ユネスコが専門の調査団を派遣することになったそうです。マダガスカルはユネスコの水中文化遺産保護条約を批准しているので、ユネスコの調査団の派遣を依頼することができます。

さて、実は、このテレビ局といっしょに『調査』をしていたのが、昨年ハイチでコロンブスの船の発見を大々的に公表したのと同一人物のようです。その時も、ハイチ政府からユネスコの調査団の派遣依頼があり、すぐに嘘であったことが判明。今回も、嘘であり、遺跡を破壊していたのでしょうか?

陸の遺跡だったらこのようなことはあまり起きないのではないでしょうか?実は、このようなケース、珍しくはないようです。最近は、世界で水中文化遺産保護の条約が広まっているので少なくはなってきていますが、水中文化遺産の価値について認識の薄い国は人知れず遺跡が破壊されているケースもあります。また、正確な数はわかりませんが、埋め立て地や海の上の開発のほうが遺跡をより多く破壊しているといわれています。

水中遺跡の保護、そして、水中遺跡を守る働きを今後も広めていく必要がありますね。

こちらのニュースでも詳しく報じられています

台湾の水中考古学

ここ数年、台湾も水中文化遺産の保護に積極的に動いています。韓国や他の国々の水中の文化遺産の調査・保護の取り組みを見て自国領海内の文化遺産の保護の体制を作りつつあります。ちなみに、台湾がお手本としたのが、フランスの体制。トレーニングなども行っているそうです。裏情報(?)によるとアメリカの大学などにも視察に行っていたような…

国や大学、民間研究団体などが協力をし、台湾周辺では新しく80件ほどの水中遺跡が発見されているようです。2006年からは国が主体となりプロジェクトを進めているそうです。また、水中文化遺産保護の草案なども出来上がっているようで、ユネスコ水中文化遺産保護条約を意識して作られています。水中文化遺産保護に関する違反行為なども厳しく罰せられるようです。ユネスコといえば、つまりは原位置保存が第一オプション。考古遺物を含めた意味での環境の保全と開発との共存(原因者負担)をほのめかしているようです。

むやみやたらな引き上げや、お宝さがしなど言っている時代は終わっているようですね。

以下に、いくつかリンクを紹介します。日本語の資料は検索中です…英語・中国語ならいろいろあるようです。

台湾の水中文化遺産に関する法律その1

台湾の水中文化遺産に関する法律その2

去年のニュースですが、少し詳しく書かれています(英語)

台湾の水中文化遺産保護の法律についてのニュース

武蔵をどう保存するか?

つい先日、フィリピン沖で旧日本軍の戦艦「武蔵」が発見されたニュースが話題となっておりました。映像などを見る限り、間違いないそうです…

発見をしたのが、マイクロソフトとゆかりの深いポール・アレン氏。かなりの資産家で世界各地で様々な活動をしています。アレン氏によると、フィリピン、日本と協力し、お互いの感情を尊重した処置を取りたいとのこと。トレジャーハンターなどに発見されなくてよかった…現在、すでにフィリピン国立博物館と協議を行っているとのことで、館長さんも近々来日するとのこと。

さて、太平洋戦争の船は太平洋に広く存在しています。パラオ、ミクロネシア諸島などなど。中には、ダイビングスポットとなっている場所もあります。(さすがに武蔵のあるポイントは深すぎです) さて、しかし、実際にこれらの船に乗っていた人で亡くなった人もいますし、まだ遺骨も残されている場合もあります。これらを簡単に「遺跡」とか「ダイビングポイント」などと呼んでいいものではないと個人的には思います。しかし、例えば太平洋の島に住む人にとっては侵略行為に思えたかもしれませんし、また、現在はダイビングなど町の産業に欠かせない収入源となっている場合もあるようです。なかなか難しい問題です。

さて、日本側からの立場でものを考えると、遺骨収集、それに伴う発掘など様々な対応が考えられます。どのように対応するか、みんなが合意できる方法を考えるべきであると思います。今はまだ答えが出ないケースが多いようです。ですが、待っていると歴史・記憶が忘れられていくだけでなく、その痕跡も劣化していきます。特に鉄製品は水中では錆でボロボロに…水中の環境によっては木材のほうが長持ちするケースも多いようです。

これらの船舶をどうするのか?が問題です。放っておくと、どんどん劣化が進みます。それを食い止める手段はないのでしょうか?実は、水中考古学者は様々な海域で劣化していく遺跡をどのように保護していくかの研究を始めています。海底の酸素濃度、塩分、温度、pH、生息する植物やバクテリアの種類、海流などなど様々な要因が劣化の進行に影響を及ぼします。現在、戦争遺跡などを定期帝に「モニタリング」して環境や遺物の分析を行っています。

武蔵の沈む海域は比較的安定していると思いますが、それでも、劣化はかなり進行しているようです。今後、どのように対応するのか…劣化する鉄製の船を保存しようとする動きは軍艦だけではありません。有名なタイタニックも劣化のモニタリングを行っています。比較的新しい分野の研究ですので、まだまだ多くのことを学べます。今できることは、このような研究ではないのかと個人的には思います。