水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

ヴァーサ号の引き上げショートドキュメンタリー

今更ですが、おそらく水中考古学史の上で最大の発見、スウェーデンのヴァーサ号。1960年代に引き揚げられています。ほぼ完全な形で残っていた17世紀の軍艦。

引き上げの様子を含めた3分ほどのニュース映像が見れます。かなり貴重な映像だと思いますので、シェアします。

ちなみに、ヴァーサ号博物館は、北欧で入場者数NO.1の文化施設です。ストックホルムの人気博物館であるノーベル賞博物館とABBA博物館の入場者数を足してもヴァーサ号博物館の入場者数には届かないようです。

在日スウェーデンの大使館から引用。

ストックホルムには100以上の博物館・美術館があります。見逃せないトップ10は、ヴァーサ号博物館、王宮、近代美術館、市庁舎、ABBAミュージアムドロットニングホルム宮殿、ガムラスタン(旧市街)、野外博物館スカンセン、アーティペラグ、そして一つ付け加えるなら、観光ボートです。

だそうです。

これから北欧は観光シーズンですので、ぜひ!

世界最古の沈没船が発見!

トルコで世界最古の沈没船が発見され、発掘調査が行われています!

青銅器時代、およそ3600年前(1600 BCE)ですから、日本では縄文時代真っ最中!

もちろん、丸木舟など世界各地で発見されているので、最古の船ではありません。モノを運んでいた商船がなんらかの事故で沈没し、その遺跡が発見された、と言う場合に限っての最古です。とはいうものの、すごい発見です!

これまでは、ウル・ブルン沈没船で、同じくトルコで発見された船ですが、3300年前の商船でした。

今回の船は、復元すると14mほど、積み荷は銅のインゴットなど。キプロス島を最後に出航したと考えられています。今後の調査に期待大ですね!

先週のニュースまとめ

さて、先週の水中遺跡関連のニュースをまとめてみました。毎週、30~40件ほどの水中考古学関連のニュースがありますが、今週は、面白いニュースが詰まっていました。

ちょっと欲張りすぎかもしれませんが…徒然なるままに、ニュース記事を読んだ感想と簡単な解説をしています。

 

唐時代の陶磁器がスペインにも

これまで想定されていたよりもかなり早い時期から中国とヨーロッパは陶磁器の貿易で繋がっていたようです。まあ、ローマ時代にも繋がりはあったのですが、陶磁器の貿易など今までの想定よりも活発な交易が広がっていたようです。

 

チチカカ湖の祭祀遺跡~有機物や南米各地の宝が集まる

日本語のニュースです!南米チチカカ(ティティカカ)湖から祭祀遺跡が発見され、インカ帝国以前に数千キロに及ぶ交易範囲を持っていたことが判明。金や宝石など。また、骨など有機物が多く残っており、当時の状況そのままで残っていた。

 

水中遺跡の保護に向けて

毎日新聞のニュースです。2月に福岡県大野城市で行われた文化財行政担当者向け研究会の様子。これから自治体が進めていく水中遺跡の調査について、多くの自治体ではどのように取組むべきかイメージが沸かないようです。これまでの日本や諸外国の調査・活用の事例を広めていくことが大事。今後の水中文化遺産の保護に期待。残念ながら、ウェブ会員用。日曜日の新聞がある人は、是非読んでください。私も読みました…写真を見たら、あれ、私が映ってる…。

 

コロンビア政府VSトレジャーハンター

コロンビアでスペインの財宝を積んだ船が発見されています。が、過去にこの船を発見したとしてトレジャーハンター数社が国を訴えています。実際に、コロンビアはトレジャーハンターを雇って沈没船の探査をさせていたのですが、10数年ほど前にキッパリと関係を断ち切り、水中文化遺産の保護を宣言。また、スペイン政府も文化遺産として沈没船を保護し適切に活用することを要求。さあ、どうなる。

余談ですが、コロンビアの大学で水中文化遺産を学べる大学院があります。

 

水中遺跡、5つの遺跡の大発見

とくに新しい発見ではないが、これまでの水中遺跡の調査事例を紹介しています。ティティカカ湖の発見やアンティキティラ島など。

 

イタリア  学校の水中遺跡調査ライブ・ビデオで授業

シチリアで行われている水中遺跡の調査の様子を、イタリアの学校の授業にライブストリーミングする計画があるようです。子供たちは大喜びでしょうね。さて、シチリアの水中考古学行政のトップは、セバスティアーノ・トゥサ教授でした。トゥサ教授は、日本にも来て水中遺跡の調査を行っており、私も個人的にお付き合いさせていただいておりました。

先週のニュースではありませんが、アジア水中考古学研究所から以下の文章を引用させていただいてます。

アジア水中考古学研究所を通じて、日伊の水中考古学の交流と発展に尽力しておられたイタリアの水中考古学者セバスティアーノ・トゥサ教授が2019年3月10日、エチオピア航空の飛行機事故により幽明境を隔てられました。
ケニアで開催のユネスコの水中文化遺産保護条約関連会議での基調講演のため、ナイロビへ向かわれていた途中でした。アジア水中考古学研究所として、トゥサ教授が安らかな眠りにつかれますように、心からのご冥福をお祈り申し上げます。

 

1540年代のオランダ船発見

大型タンカーから落ちたコンテナを捜索中に沈没船を発見!オランダ近海で発見された沈没船の中では最古のオランダ商船だそうな。オランダ大航海時代を目前にした時代で貴重な遺跡であるそうです。浚渫や工事などで、このように歴史的な船を発見することは、よくあります。陸と同じですね。

 

黒海の沈没船ドキュメンタリー映画作成

黒海は、古代の湖の上に海水が混じらずに「浮いている」世界でも珍しい「海」です。淡水で無酸素の層は、バクテリアなどもほとんど存在しない死の海の様相です。しかし、有機物は完璧に保存される状況にあります。沈没船のマストや帆を操作するロープなども腐らずに残っています。これまでに、様々な時代の数十隻の船が発見されています。また、昨年夏、ほぼ完璧な保存状況のローマ時代の沈没船が発見され世界各地でトップニュースとなりました。それらの沈没船のドキュメンタリー映像が作られているそうです。今から期待が持てますね!

 

カーボベルデ

日本にとって残念ながら馴染みが薄い国、あまりリゾート化されていないので、私の個人的な行ってみたい国ランキングでは上位に食い込んできます。そんなカーボベルデですが、ユネスコの水中文化遺産保護条約を批准しました。そう、政府がしっかりと国際的なスタンダードで水中文化遺産を守っていくと他国に宣言したことになります。

 

PO8…ブロックチェーン、トークン、文化遺産への投資など?

PO8という会社について。カリブのいくつかの島々で試験的な取組が開始されているようです。水中文化遺産の金銭的付加価値に対してトークンを発行し、それを売り買いできるシステム。遺物自体はPO8が保存処理・管理・博物館で公開するようです。遺物の価値が高まれば、トークンの値段も上がるとのこと。なんだか難しい話であり、遺物の所有権を売買してよいものか…管理にも相当お金がかかるはず。引き揚げ遺物も一括で管理されていればトレジャーハンターではない!と言えるかもしれないが…難しい問題です。

 

ギリシャで水中博物館(沈没船)がオープンするような

ギリシャは水中遺跡の調査に力を入れています。水中の遺跡を発掘する取り組みは19世紀から始まり、20世紀の初めに水中文化遺産について法律を作っています。ですが、遺跡の一般公開はなかなか進んでいなかったようです。ここへきて、現地に保存された沈没船遺跡をミュージアムとして公開・活用するようです。

 

ここから先は、おまけです!

 

大和 沈没から74年

戦艦大和…水中にあってもどんどん朽ちていくのでしょう。人々の記憶も薄れてゆく。戦争遺跡をどのように管理するのか、そろそろ真面目な検討が必要かと思います。

 

月城堀から1600年前に作られた最古の模型船と木製盾出土

韓国のニュースですが、日本語の記事です。最古の精工に作られた模型の船が出土したそうです。構造船やら準構造船やらの話をする前に一度じっくり観察・研究したい遺物です。

 

ラッコの調査。考古学的アプローチ

考古学的手法を用いてラッコがいつから道具を使って貝の殻を割り始めたのか研究が進んでいるようです。ラッコが割った殻から利き腕がわかるようです。過去の水辺で堆積して現在陸となった場所を調査しているのか、水中に溜まったラッコが割った殻を調査しているのか…不思議な記事ですが、面白かったです。日本語の記事。

ティティカカ湖の水中遺跡

何度か紹介していますが、ティティカカ湖の水中遺跡が盛り上がっています。ユネスコなども協力して水中遺跡の博物館の建設も予定されているとか。

今回は、紀元500ー1000年ごろの祭祀遺跡が発見されたそうです。南米各地から財宝やら集められているそうです。骨なども多く、有機物が当時のそのままの状態で残っていたそうです。

今後、さらに詳細な情報が出るかと思います。

日本語のニュースは、こちらから。

 

ヴが消える…。水中文化遺産は?

国名表記に「ヴ」が消えるそうです。

カリブ海の「セントクリストファー・ネーヴィス」は「セントクリストファー・ネービス」に、西アフリカの「カーボヴェルデ」が「カーボベルデ」にそれぞれ変更されます。

と、ありますが、そのカーボヴェルデ、ユネスコ水中文化遺産保護条約を批准しました。

水中文化遺産保護条約を批准した国は、60数ヶ国になり、世界各地で水中遺跡の保護が進んでいます。日本もがんばろう!

チチカカ湖で大発見

さて、チチカカ湖にある水中遺跡から大発見が報じられています。

祭祀遺跡ですが、南米各地から集められた宝石や金などが発見されています。2,000kmほど離れた場所の遺物もあるそうです。骨など有機物を含め、当時の状況がそのまま水中に残されているようで、荒らされた痕跡もほとんどないそうです。1000年前の祭祀の様子をそのままうかがい知ることができるそうえ、地域の考古学者は盛り上がっていそうです。

ニュースリンクはこちら

沖ノ島関連研究会 (2月26ー27日)

お知らせ!

来週、福岡西新プラザで講演をします。宗像の世界遺産に関連した研究会です。私の出番は26日です。古代の航海と造船技術について徒然と語ります。

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 特別研究事業

第1回国際検討会

古代東アジアの航海と宗像・沖ノ島
2019年2月26日(火)、27日(水)
於:九州大学西新プラザ(大会議室A・B)

詳細は、こちら

沈没船の物語 水中考古学の世界 (博多で講演)

来たる2月11日、JR博多シティにて講演いたします。

「沈没船の物語 水中考古学の世界」

⽇時︓2019年2⽉11⽇(⽉・祝)13:00 〜16︓00 (JR博多駅 くうてん 10階 )

⼊場無料 、当⽇参加も歓迎

 

1.⻄洋の船︓神話の船から⼤航海時代まで  ⼭舩 晃太郎(Texas A&M University)

2.東洋の船︓海底からよみがえる真実  佐々⽊ 蘭貞(九州国⽴博物館)   

3.最新技術がとらえる沈没船  菅 浩伸(九州⼤学) 

詳しくは、こちら

主催︓九州⼤学 浅海底フロンティア研究センター 九州⼤学⼤学院 地球社会統合科学府

共催︓九州国⽴博物館

後援︓福岡市,⽷島市


沈没船の物語 水中考古学の世界 (博多で講演) の詳細は »

韓国がんばってます。水中文化遺産のミュージアム(新)

先日もお伝えしました。韓国では、12月にあたらしく水中文化遺産を専門で扱う博物館がオープン。木浦にある博物館の別館になります。すこしだけソウルに近い、泰安郡にあります。

おもに高麗時代の船など。韓国ではすでに10隻以上の古代の沈没船を引き上げています。数万点の陶磁器など完形品が発掘されています。

博物館の動画が紹介されていたので紹介します。

博物館紹介ビデオ Youtubeリンクはこちら

国立海洋文化財研究所

 

 

浅海底フロンティア研究センター 

九州⼤学 先導的学術研究拠点 浅海底フロンティア研究センター

⼀般公開シンポジウム

浅海底の戦争遺跡  その記録と伝承

⽇時︓2019年 1⽉12⽇(⼟)13:00〜17:00

場所︓九州⼤学 椎⽊講堂 ⼤ホール (⼊場無料)

プログラム

「沖縄戦と戦争遺跡 」  ⽚桐千亜紀(沖縄県⽴埋蔵⽂化財センター)

「最先端の地理学で可視化する⽶軍艦エモンズ」  菅浩伸(九州⼤学 浅海底フロンティア研究センター)

「⽔中考古学から⾒たエモンズの戦い」  吉崎伸(京都市埋蔵⽂化財研究所)

「⽔中⽂化遺産と戦争の記憶 ― ハワイ・USSアリゾナの事例」  中⻄裕⾒⼦(⼤阪府教育庁)

「太平洋戦争の歴史と記憶のあり⽅」   マシュー・オーガスティン(九州⼤学⼤学院 地球社会統合科学府)

 

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九大で水中考古学ー戦争遺跡に関する一般向けシンポジウムが開催されます!USSエモンズのマルチビーム画像や写真による実測・フォトグラメトリーなどなど。

他ではほとんど聞く機会がないので、ぜひぜひご参加ください! 残念ながら、私は当日参加できません(途中までなら可能かも…)九州国立博物館でちょうど同じ日の夜(18時)から『夜のュージアムトーク』にてお話をします。世界に存在する海の中の博物館について小話をします。昼間は九大まで行けない方は、夜は九博で!

九大~九博まで、車で1時間で移動できれば、両方参加できるかも…