水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

メキシコ湾で調査中(ライブ映像もあり)

NOAA(アメリカ海洋大気局)がメキシコ湾で深海に沈む船を調査中です。

ライブ映像もあるようです。去年、発見され話題を呼んだ船ですが、あまりにポイントが深いので水中ロボットで探査しています。水中ロボから配信されるので、考古学者は遠隔で画像を見ながら支持をだし、映像を分析します。

コチラの沈没船ですが、2隻ほぼ同時期のものがすぐそばで発見されています。片方は武器などを多く積んでいますが、もう片方は武器などはなく積み荷だけ…私掠された船なのか?それとも一隻は護衛船か?

綺麗な映像が撮れていますので、ビデオだけでもご覧ください!

 

 

スコット・ランドの沈没船データベース

どうやら、スコットランドの沈没船データベースが先日ウェブで公開されたようです。言葉で説明するよりも見てください…

沈没船の位置、遺跡に関する情報や参考文献などすべて見ることができます。日本の水中遺跡もこれぐらいできれば。陸の遺跡のデータベースにも参考になるでしょうね。

 

パパハナウモクアケア

ハワイのパパハナウモクアケアで発見された沈没船は小説『白鯨(モビーディック)』のモデルとなった船として知られています。19世紀はアメリカで捕鯨が盛んでした。日本に開港を迫ったのは捕鯨基地としての役割を担うためでもありましたが…時代は変わるものですね。

この度、パパハナウモクアケアにある沈没船を題材にした映画が作成され、ハワイで先行上映されるようです。この海域はアメリカの国立公園(自然遺産文化遺産)であり、また世界遺産にも登録されています。ハワイで時間のある方は是非!

パパハナウモクアケアって言いにくいけど愛着がある響きのある地名ですね。講演会などでこの船について話す機会があれば発表の前に喋る練習が必要です。パパハナウモクアケアパパハナウモクアケア…

 

鷹島(元寇船)の水中遺跡の管理計画がまとまったようです

元寇の際に使われた船が発見され注目を集めている長崎県の鷹島海底遺跡について、今後の方針案がまとまったようです。

詳しくは、新聞記事をご覧ください

発見された船はひとまず海底で現地保存をし、周辺海底を探査してより多くの沈没船の発見・周知を行う予定です。現地保存と言っても、そのまま放置するわけではありません。遺跡が現在の状態で最善であるかどうかを審査し、モニタリングを行いながら水中でほとんどかえずに現状を管理を行います。遺跡の発掘行為は遺跡を破壊することです。また、保存処理など多くの資金を必要とし、また、永続的に保護・管理・活用していくためにはその体制もつくっていかなければなりません。そのためにも準備期間が必要です。

水中遺跡は、その特異な環境にあることから、陸の遺跡と同等に扱われないことがありますが、そもそも陸の遺跡と水中の遺跡の管理方法に関しては同じ考え方で良いはずです。発掘や探査方法は陸よりもテクニカルな面がありますが、しかし、そのマネージメントや活用方法は変える必要がありません。

今までは水中遺跡が出てきたら「引き上げる」かどうかという議論が中心でした。しかし、これは少しおかしな話です。というのも、現在、陸にある遺跡はそこにあることが判っていても発掘しないのが普通です。遺跡が埋まっていればある程度安定した(保存された)状態にあります。そのため、開発がおよび遺跡が壊されるときに初めて発掘調査をおこない、記録を取ります。日本の文化財行政はこれが基本です。しかし、開発がおよぶまでなにもしないわけではありません。様々な情報から遺跡のある場所を確認し、周知します。そして、その周知のエリアが開発されるときにはじめて発掘されるわけです。

水中の遺跡も保存処理や維持費にはお金がかかります。ですので、発掘せずに「積極的」に原位置での保存を行います。また、水中の開発の場合、基本的に工事などのプランを変えることは(工事の計画段階であれば)比較的容易です。陸上の工事のように決められた土地に限定されていないことが多いからですね。そのため、工事のプランを少し変えて遺跡の現状を維持することが最善のようです。

しかし、遺跡の現状が最上でない場合もあります。砂で遺跡をかぶせたり、囲いをつくるなど様々な方法で水中で安定した状態を保ちます。遺跡の保存に向いているのは、無酸素状態でpHが7程度、バクテリアなど有機物が少ないことなどなど。これらの遺跡の保存に最適な環境を水中で作り上げ、そして、きちんとその状態を保っていられるか、定期的に遺跡にもどりさまざまなサンプリングやデータを集めます。この作業がモニタリングと呼ばれています。酸素濃度やpH、堆積層などを一年を通して調べて遺跡が安定した状態にあるかを判断します。原位置保存のためのモニタリングやその方法なかなり専門的な話となってしまいますので、グーグルでin situ preservation, underwater cultural heritage management,などのキーワードで調べてみてください。

日本の水中遺跡について少しでも興味のあるかたはにはすっかりお馴染みになった鷹島海底遺跡。水中遺跡として国の指定史跡となったのは初です。もちろん、水中にある周知の遺跡は他にもたくさんありますが、そのお話はアジア水中考古学研究所(ARIUA)をご覧ください。今日は鷹島についてのおはなしですが、もちろん、他の水中遺跡についても同じような管理・マネージメント・モニタリングをおこなっていかなければなりませんね!

スウェーデンのアトランティス発見…ではありません。

ある意味面白いニュースです。ニュースメディア(タブロイド)と考古学者のモノの考え方の違いが顕著に出ています…メディアは珍しいもの、面白いもの、売るためにインパクトのあるものを伝えようとしています。しかし、考古学者はそんなことは関係なく事実を伝えることに終始しています。

 

英語ですが、ニュースを二つ読んでもらいたいと思います。まずこちら。

このニュースの見出しは「石器時代のアトランティス発見!」と書かれてます。しかし、考古学者のインタビューではそれを完全否定(というか、そんなことどうでもよい)、「一時的なキャンプサイトであった」としています。石器や木器などが発見されています。埋葬の跡などがないか今後3年間でスウェーデン国家文化遺産局による学術調査が行われるそうです。

ニュースの記事はなぜかほとんどアトランティス伝説について書かれています...そういえば、2013年の5月にしんかい6500が、大西洋で堆積層を発見した際に、「アトランティス発見」というメディア側の売込みがありましたね...

 

そして、この次のニュースはこちら

 

こちらでは、もう少し詳しく発見について書かれています。1万1千年ほど前にこの地域にラグーンが形成されて遺跡が水没したようです。(もちろんもともと陸にあった遺跡)この時期の遺跡から有機物が発見されることはあまりなく、水中にある遺跡だからこそ木材など多く残っており、良い研究資料であるそうです。すでにこの地方では絶滅した動物の骨なども残っています。木材だけでなくロープなどの有機物も残っているようです。

調査したニルソン氏がインタビューに答えています…

Nilsson admitted that “lousy Swedish tabloids” had blown the story out of the water by labelling the find “Sweden’s Atlantis”

質の悪いタブロイド誌により話が大きくなりすぎた...そうです。しかし、貴重な発見であることは間違いないようです。

海事・水中考古学を学べる大学

海事・水中考古学を学べる大学のリストをユネスコが作成しています。

これらは、現在、大学(マスターレベル)でのプログラムが確立している大学の紹介ですので、例えば昔プログラムがあった大学や、水中考古学のクラスはあるけどプログラムがない大学は含まれていないようです。水中考古学のクラスがある大学はそれなりに(海外では)あるようです。

大学の数が多いのか少ないのか…まあ、人によって感じ方は違うでしょうか...ざっと眺めて、やはりヨーロッパはこの学問が一般的だなと感じることです。地域によってだいぶ差がありますね。

個人的には、これから10年、このリストがどのように変化するのかが楽しみです。

 

水中探査に使用するロボ達について〈入門編〉

水中遺跡の探査に使用するロボット君達には簡単に分けるとこの二つがあります…

ROVとAUVです。今日はこれらを簡単に紹介します。ネットで検索するといろいろな水中ロボットが見れますので、そちらも参考に!

ROV (Remote Operated Vehicle) 簡単にいうと、水中ロボットです。アームのついているものもあります。ただし、ケーブルでつながって操作しているので、いろいろなものに絡まる危険性などがあります。ケーブルだいたい±0の浮力です。ちなみに、ケーブルを使う理由は水中ではラジオ波が拡散するので、いわゆるラジコンのようには操作できません。

考古学調査では、特に機体はプラスの浮力のモノを使います。そして、スクリュー(プロペラ)は下向きに動かないように改良します。プロペラを下に向けると砂を巻き上げるのでNG。上に動くときは浮力で上がって、作業中は常に下に押さえつける感じです。あまり早く動けないので、発見した遺跡の確認調査や簡単な発掘に向いてます。日本語では遠隔操作無人探査機。商業用で購入が可能。レンタルも一般的になっています。

AUV (Automous  Underwater Vehicle) こちらは、自分で勝手に決められたコースを走ってデータを収集してくる優れものです。様々な探査機材(音波探査・磁気探査)を積み込めます。長時間潜って広い範囲を探査することができます。遺跡があるかないかのサーヴェイに適していますが、発掘などには向いていません。自立型無人潜水機といいます。マサチューセッツ大学(MIT)などでハイブリッドAUVなども考古学への利用のため開発を進めていましたが… AUVはまっすぐに決められたコースなどを走り、探査の効率を高めるのが普通でした。でも最近は、自分で考えて遺跡の上を回って、写真実測・レーザー測量のデータをあつめて三次元実測も行ったりしています。AUVはまだまだ単価が高いので、国の施設や大学が使っています。日本の場合は東京海洋大学が考古学探査で使用しています。

ちなみに、ASV (Autonomous Surface Vehicle)  もあります。こちらは、AUVとほぼ同じですが、Underwaterではなくて、サーフェスです。船のように水面から調査します。発掘は無理ですが、単価がAUVより安くすみます。また、遠隔操作も可能なものもあるようです。

 

はて、潜水艦(潜水艇)は使わないの?と思った方はいるでしょう。しかし、潜水艦などはあまりにも高価になるので水中考古学には向いていません。スポンサーや国の役人などVIPを遺跡に招待するにには使えそうですが、作業には使いませんね。20年くらい前でしたら使っていましたが、ROVやSUVがあるので必要ないですね…残念。小型潜水艇はたまに使われているようですが、メリットがあまりないようです。

 

ニュースのまとめ

ここ2~3日の水中考古学関連のニュースをまとめました。本当は、毎日これぐらいはお伝えしたいのですが…世界のニュースなので英語がメインです。セノーテの動画は綺麗ですね...

 

タイタニック・テーマパーク中国にオープン予定

http://www.reuters.com/article/2014/01/13/us-china-titanic-idUSBREA0C06S20140113

 

スリランカ沖で蒸気船発見

http://www.nation.lk/edition/news-online/item/24945-largest-steamer-shipwreck-discovered-off-batticaloa.html

 

ワイト島(イギリス)にある8000年前の水没遺跡が失われつつある…

http://www.iwcp.co.uk/news/news/archaeology-at-risk-52385.aspx

 

マヤ文明のセノーテ(水中洞窟)のビデオ。ナショナルジオグラフィックチャンネル

http://news.nationalgeographic.com/news/2014/01/140116-maya-mexico-yucatan-cenote-bones-haunted-taboo-archaeology-science/

 

スコットランド沖のサーヴェイで新たに沈没船を数隻発見。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-highlands-islands-25757943

 

オーストラリアに最初に到達したのは、ポルトガル?

http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-25763688

講演会『日本・沖縄の水中文化遺産の調査成果と活用について』

このところ講演会のお知らせが続いてます…どれも行きたい。

日本・沖縄の水中文化遺産の調査成果と活用について

日時:平成26年2月22日(土)18:00開場 18:30~20:30

会場:久米島博物館ロビー

《基調講演》

講演1 片桐千亜紀(沖縄県立博物館・美術館)
「久米島水中文化遺産見学会の様子~海底遺跡ミュージアム構想の実践~」

講演2 小川光彦(NPO法人アジア水中考古学研究所)
「琉球列島・久米島と東アジア海域の碇石」

講演3 吉崎伸(NPO法人 水中考古学研究所・(公財)京都市埋蔵文化財研究所)
「瀬戸内の水中考古学と海底探査船美術館」

講演4 中西裕見子(大阪府都市魅力・観光課)
「イギリスの沈没船メアリーローズ号の保存と展示」

定員:80名(先着順・予約不要)
入場:無料
対象:一般

主催:久米島町教育委員会・久米島博物館
共催:社団法人 久米島町観光協会

南シナ海の水中文化遺産:ベトナム海事考古学の最前線

来週行われます講演会のお知らせです。東海大学(清水キャンパス)で行われます。静岡県ですよ!

さて、静岡はちょっと遠いな…と思われるかもしれませんが、特別ゲストです!海外で活躍する木村氏が貴重な水中考古学のお話をする、またとない機会です!近くに住んでいる方はもちろん、関東・名古屋、もしくは関西在住の方でもぜひ足を運んでみては?

2013年度第2回海洋文明学科公開講演会

講演タイトル:『南シナ海の水中文化遺産:ベトナム海事考古学の最前線』

講演者:木村淳

日時:平成26年1月24日(金)17:30-18:30

場所:東海大学清水キャンパス3401教室

ベトナムを中心とする南シナ海の海底遺跡や沈没船遺跡研究の最前線と水中文化遺産を巡る海外研究の現状について講演。

どなたでも参加可能

問い合わせ:東海大学海洋文明学科 小野林太郎(rintaro@tokai-u.jp)