水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

オイルマネー、グリーンピースと大英博物館

ちょっと面白いニュースなんですが、昨日出てたニュースで追記です。

最初はこちらのニュース~グリーンピースがとあるプロテスト活動を行っているそうですが、ちょっと面白い。

現在、かの大英博物館で水中考古学を大々的にテーマとした特別展を開催しています。エジプトなどで発見された水没した遺跡の展示です。日本でも数年前に横浜で開催されましたね。

ところが、これにグリーンピースがデモを開始。実は、この展示、イギリスのオイル会社(BP)が全面バックアップしています。地球温暖化を推し進める会社が、水没した遺跡の展示をするのはおかしいだろ!という理論でしょうか?BPをこのまま放っておくと、世界の多くの都市が海に沈んでしまうだろ!ということだそうです…

そのデモのスローガンが、Sinking Cities 『沈みつつある都市』です。これは、博物館の展示のスローガン Sunken Cities 『水没した都市』にちなんだもの。実際にニューオリンズなど沈みつつある町の写真などを掲げているそうです。

完全なるこじつけ、ほとんど洒落。オイル会社が良い・悪いは別として、世界の海から海洋資源を得る会社は、海の遺跡の保護にも積極的です。日本を除く多くの国では、パイプラインなど外洋の開発においても、モノを建設する際には水中遺跡の有無を調べるために事前探査を行っています。もちろん、原因者が負担しています。オイル会社のおかげで多くの水中遺跡が発見されているのは事実です。

ですので、オイル会社が水中遺跡の展示のスポンサーになるのは理に適っているのですが。違う視点からものを見ると面白いですね。

 

 

水中考古学関連ニュース ダイジェスト(リンク)

水中考古学、全然聞いたことがない人は、ほとんど耳に入ってこないでしょう。しかし、世界には水中考古学のニュースであふれかえっています。ネットなどで検索をかけるとたくさん出てきます…あ、残念ながら、英語で検索した場合です。

そのようなニュースを羅列しても仕方がないのかなと思い、今日は、ある一定の条件のもと探したニュースを紹介いたします。その条件とは…

水中・海事考古学関連でさらに、

 1.すべてSNSなどから得た情報で、信頼性の持てるニュース記事のリンクが張られていたもの。

 2.検索はかけずに、すべて自分の知っている人(会ったことがある人)がのせた記事から得たリンクを紹介。

 3.2016年5月19日の0時から23時59分までにその友人がシェア・投稿したニュースに限る。

 4.あまりに日付が古い記事や、同じ記事は紹介しない。

 5.独断と偏見により、面白くない記事は載せていません(4件ありました)

 

つまりは、世界の水中考古学者はだいたい1日にこのくらいのニュースは平均的に見ていることになります。また、余談ですが、グーグルアラートなどでキーワードをかけていると、1日平均4~5件新着記事があります。ネットでかかりにくい記事、英語と日本語以外のニュース記事もあるので、世界で水中考古学関連のニュースは1日10件以上は出ているのかとは思います…これが、多いと見るか少ないと見るか。ちなみに、日本の新聞・テレビなどで考古学一般のニュースは平均1日何件ぐらいでているのでしょうか?

では、紹介いたしますが、注意点が一つ。私も今日ぱっと見て読んだ記事ですので、間違った情報を書いているかもしれませんが、その辺はご理解を。今回の目的は、24時間で水中考古学に関連するニュースがどれだけ出回っているかをしってもらおうかな、と思ったので。

 

1.イスラエル・ヘロデ王の港跡の沖に様々な遺物を積んだ船が発見! こちらのニュースなどメディア各種が伝えてます。

ローマ時代の沈没船のようですが、かなり貴重な遺物(コインや銅像など)が積まれていたようです。

 

2.水中から北米最古(かも?)の遺跡。

いわゆるクローヴィス時代よりも前の遺跡の可能性が指摘されております。1万4000年前。日本の海岸線などにも日本人の起源を探るのに重要な遺跡がありそうですね。骨などもかなり状態の良いものが発見されているようです。

発掘の様子のビデオなど詳しい説明はこちら

 

3.アラビアにおける水中考古学の本が出版

ユネスコからですが、この地域における水中考古学の取り組みなどについて書かれているそうです。ちなみに、アラビア語で最初に水中考古学について書かれた本は1965年出版されたそうで、50周年を迎えてからの現状の意味もあるのかどうか…

 

4. 水中カメラを利用した遺物などの実測について

最近の技術の発達により、水中で簡単に3次元実測できちゃいます。特に時間的制約のある水中では有効な方法。

 

5.大英博物館~エジプトの水中遺跡の特別展

あの有名な大英博物館にて、水中考古学の展示が行われるようです。エジプトの水中遺跡関連の展示ですね。数年前に横浜でも展示が行われたものを発展させたような内容かなと思います。

 

6.オランダがユネスコ水中文化遺産保護条約を批准?

書いているときにちょうど入ってきたニュース。えーと、オランダ語が読めないので… でも、どうやらオランダがユネスコ水中文化遺産保護条約を批准することになったのか… 英語の記事がないので、また、上で示した条件での実験中なので。このニュースに関しては、別に紹介するかもしれません。

 

日本のニュースに関しては、だいたい3日前までです。手法は同じく、フェイスブックなどを通して収集したニュース情報です。他にも日本語の水中考古学関連ニュースはあったのですが、誰もシェアしていなかったので…紹介していません。残念…?

1.水中考古学へのいざない (連載記事) 産経新聞・日本語ですよ!

産経新聞で連載記事です。井上たかひこさんが書かれています。2週間に一度の記事だと思いますが、日本・世界の水中遺跡を紹介するものです。実際に井上さんが発掘に参加した遺跡や、しっかりと情報を集めて書いているようです。

井上さんのこちらの本は詠まれた方も多くいらっしゃるのでは?

 

2.月刊ダイバー連載記事 こちらの連載は長く続いてますね!

根府川沖海底遺跡 海底に残された震災の記憶!

 

番外編…

海外のニュースブログの記事ですが、海外でも人気の高い鷹島海底遺跡について書いてます。昨年発見された元寇船ですが、2016年5月2日に特集で組まれています。

オランダと日本の伝統の味!長崎平戸のスイーツ! とくに水中考古学というわけではないですが、海を介した交流には船が必要だったわけで、この当時の沈没船が発見されるといろいろなことがわかるでしょうね。平戸周辺にも水中遺跡がありそうですね。

 

 

スリランカと中国のお話

今月8日、北京の人民大会堂でスリランカのウィクラマシンハ首相と中国の習近平国家主席はと会見したそうです。

日本のメディアではあまり大きくは報道しておりませんが…。海外のニュース記事からは、いくつか面白い点がみられます。面白いといっても、考古学者(特に水中・海事)に興味がある人が読めばですが。

スリランカと中国は(またインドも同じく)、近年になり海洋国家として経済・文化など海洋・海事・(海軍)に関する活動を活発にしてきています。その中で、特に両国の海洋政策について話し合われたようです。その中で、海洋事業(研究など)を一緒に進めていこうと話がありますが、その中の一つに、水中考古学が出てきます。

英語の勉強をしたい方は、是非読んで、どこに書かれているか探してみてください。さて、ぱっと流して読んでしまうと、それだけのニュースなのですが、よく考えてみると、2カ国のトップが合ったときに、「水中考古学の分野で協力しようよ!」と言っているわけです。しかも、スリランカという小さな島国で、決して経済的に恵まれた国ではありません。

このように、水中考古学は2国間の最高レベルでの話し合いにも出てくる話題なのです。20年前だと考えられなかったことですが、世界的に水中考古学が国際レベルで話し合われているわけです。詳しい内容は分かりませんが、何か良い研究に結びつくことを期待しています。

日本語のニュース

伊400号から遺物を回収!

伊400号は、旧日本軍の大型潜水艦で、艦内に折り畳み型の飛行機を搭載したことで有名です。その400号は終戦のあと、アメリカ軍がハワイ沖に沈めました…数年前、調査の結果、伊400号を発見したのはちょっとした話題になりましたね。

発見の時の映像

さて、今回は、その伊号潜水艦から遺物を引き揚げたとのことでニュースになっています。

博物館などに展示して多くの人に歴史を知ってもらうために活用するそうです。

今回の引き揚げ(ベル)のビデオも視聴できます

普通、戦争遺跡からの遺物の引き上げなどは戦争のメモリアルとして現地保存するため引き上げは行いません。ですが、この潜水艦は戦果も上げられずに終戦を迎えました。アメリカ軍に回収された後に沈められてますので、遺物を揚げても(法的に)問題なしということになります。

これを機会に、戦争の正しい理解(平和に貢献するため)が必要ですね。

 

 

水中考古学の「範囲」…オイルと環境アセス

さて、水中・海洋考古学は、どんな学問なんでしょうか?

たぶん、多くの人は、水中に特化した考古学で沈没船の構造の歴史変遷や、積荷の研究などかなり専門的で幅の狭い分野だというイメージがあるのではないでしょうか?

しかし、実際には水中に存在する遺跡を対象として様々な研究が行わえており、学際的・多角的な分野なのです。沈没船が環境に及ぼす影響、そして、沈没船によって作られた生物環境が、その後の人間の活動によってどのように変かしていったのかも研究しています。考古学というより、環境・生物学ですね。

沈没船は、海の底、特に深海において、一つの小さな生態系を作り出す時があります。何もない深海に、ポツンと有機物や金属などあれば、さまざまなバクテリアや生物たちがそこで生きていくことができます。しかし、人間の活動がその生態系を破壊してしまう恐れもあります。

2010年、メキシコ湾でオイルのプラットフォーム事故により大量の油が海に流出した事件がありました。このとき、近くにあった沈没船にも影響があったのではないかと言われています。直接・間接的に、数百件の水中遺跡に影響を及ぼしたと言われています。実際に、調査は進められており、結果はいろいろと上がってきています。生物への影響はもちろん、沈没船の鉄製品の錆が以前にもまして劣化が進んでいるとか…

人間の行動は、生物環境に影響を及ぼしますが、考古学(遺跡)への影響も大きいようです。特に、あまり普段は気が付かない水中に眠る人類の痕跡もさまざま影響を我々から受けているようです。特に海外では、環境アセスというとき、考古学や歴史的景観も含まれており、海の底も例外はありません。

水中考古学は、奥が深い。

アメリカ海洋エネルギー庁のページ

レポート

水中考古学とエルトゥールル号遺物の保存処理

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少し前ですが、2016年2月の読売新聞に、東海大学海洋学部の学生が和歌山県串本町で1890年に同町大島沖で沈没したオスマン帝国海軍海軍エルトゥールル号の遺物の保存処理に携わるという記事がありました。エルトゥールル号プロジェクトは、パブリシティや地域へのアウトリーチをとても重視したプロジェクトで、地元串本町、和歌山県内の観光系のプログラムを持つ大学、さらに小中高校との交流がこれまでもメディアにたびたび取り上げられてきました。国外研究者による国内の遺跡での学術調査で、コミュニティアーケオロージを実践した貴重な事例だとも言えます。一方で、考古学を学ぶ大学生が同プロジェクトに参加したのは、2007年のプロジェクト開始以来、今回の東海大学の水中考古学を学ぶ学生が初めてのことだと思われます。10年近く継続して行われているエルトゥールル号プロジェクトは、これまで国内の考古学機関からは、それ程にはサポートを受けたことがありません。これには色々な要因がありますが、やはり沈没船遺跡、その年代が19世紀後半ということも、水中遺跡としての認知が進まない理由の一つとも考えられます。水中遺跡の代表的な例に沈没船が含まれますが、日本の水中考古学史上では、むしろ湖底遺跡や海底の遺物の散布地などが、水中遺跡調査の事例として取り上げられます。一方で、その学史上では1974年から調査が開始された、箱館戦争で沈んだ旧幕府軍艦開陽丸の水中発掘調査が欠くことができません。19世紀後半の沈没船の数例の調査の一つとしては、他にいろは丸があげられます。日本・トルコ外交史上重要な意味を持つエルトゥールル号、発掘調査、保存処理、活用というプロセスがプロジェクト開始以来着実に進行しています。調査団の船舶考古学研究所の(INA)紀要(英文)では、調査の誌上報告がされています。特に金属・木製品からなる約8,130点もの遺物の保存処理は、3万点以上の遺物が引き揚げられた開陽丸以来の大規模な海揚がり遺物の保存処理作業となります。開陽丸遺物の保存処理では、当時の様々な試行錯誤がその課題とともに報告されていますが、水中考古学発調査によって引き揚げられた遺物の保存処理に実績のある船舶考古学研究所のエルトゥールル号プロジェクトで現在用いられている保存処理作業は、遺物の調査発掘から公開・活用までが求められる日本の水中考古学にとっても得られるところが多いのではないでしょうか。

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勉強会のお知らせ

2015年度・第3回 アジア水中考古学研究所・東日本会員連絡会(水中文化遺産研究報告会)を開催いたします.

 

日 時:2016年2月21日(日) 13:30~17:00
場 所:東京海洋大学・越中島キャンパス 3号館4階会議室(405号室)
http://www.e.kaiyodai.ac.jp/contact.html

1.水中文化遺産講座
○「水中文化遺産と考古学-遺跡を残す意味を考える-」
(1) 「水中文化遺産と原位置保存」   岩淵聡文(東京海洋大学教授・ARIUA理事)
(2) 「なぜ遺物をすぐに取り上げないのか」  林原利明(ARIUA理事)
2.報 告
○「初島沖海底遺跡調査報告(2015年度・朝日新聞文化財団助成事業)」
3.水中文化遺産情報交換

UNESCO水中文化遺産 53か国目 (ガーナ)

非常に、地味なニュースかな、と思いましたが、UNESCO水中文化遺産保護条約に53か国目のメンバーが加わりました。

ガーナです…

2015年は、マダガスカル、アルジェリアや南アフリカが加わっており、近頃はアフリカ諸国にも水中文化遺産保護の波が押し寄せているようです。

つい最近までは、水中文化遺産というと、すぐに沈没船が連想され、そうなると、アフリカにとってはヨーロッパの船であったようです。そのため、国内でそれを自国の遺産として受け止めるには多少抵抗があったと聞きます。しかし、現在は、ヨーロッパとの関係も含め自分たちの遺産であり、また、水中文化遺産には実は自分たちのローカルな遺跡も多く存在することに気が付いて動き出しているようです。

船員徴用と水中戦跡

事実上の徴用と船員予備自衛官化がメディアによって取り上げられました。
http://mainichi.jp/articles/20160130/k00/00m/040/091000c

記事のなかで触れられているように、いくら強制が無いと言われても、有事の際の国やあるいは国民からの無言の圧力が想起されます。

戦後70年しか経ていない段階でこうした考えが防衛省から出てくることに危惧を抱く人は少なくないと思います。

太平洋戦争での民間船の徴用と船員の徴用、命を落としたあまりに多くの船員の方々に記事も触れていますが、

その悲劇の歴史の証人として、今でも太平洋諸国には多くの徴用船が沈んでおり、

一部の国ではこれらを水中戦跡として保護しています。

水中戦跡には軍艦では無く、徴用船が多く含まれるのが現実です。

権力の圧力による最初の犠牲者は弱者であるというのが歴史の常です。

戦後70年の水中戦跡

鷹島海底遺跡をはじめ水中文化遺産の取材をおこなっているRKB、戦後70年にあたる2015年には水中に沈む第2次大戦中の船舶についても現状を報告しています。

http://rkb.jp/news/news/30204/

取材ではパラオ共和国が取り上げていますが、同国の文化財関連法は周辺海域に沈む大戦中の船舶・航空機を水中戦跡として保護しています。

パラオの水中戦跡はこれまでの日本の研究機関の考古学者が参加しての調査が行われてきました。

http://repository.nabunken.go.jp/dspace/bitstream/11177/458/1/BA67898227_2010_012_013.pdf

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2015年にはユネスコ事業でパラオ共和国を初めとする太平洋諸国での水中戦跡の現状が多角的に報告されています。