水中考古学の薦め

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”です。考古学は水中であれ地上であれ基本とすることは全く同じです。過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていくことでしょう。トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが日本では認知されてきていますが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護です。過去を大切にすること、それが第一原則です。今こそ日本人の海への関心を高めるべきです。地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていく。それが私の使命だと考えています。

2005年4月2日 Randall Sasaki

日本の水中遺跡 

以前にもお伝えしましたが、月刊ダイバーに連載されていた、水中遺跡の特集。プロカメラマンによる写真がきれいです。学術的な観点も少し交えて書かれています。ここから水中遺跡の魅力を知ってもらい、詳しく調べてもらえば世界が広がることでしょう。

古代の遺跡、貿易陶磁器の集まる場所、戦争遺跡、湖の遺跡、元寇の沈没船、などなど。

太平洋の(水中)戦争遺跡の取り扱いについて

戦争遺跡は、様々な感情を呼び起こします。すでに太平洋戦争から70年を経過していますが、それでも人々の記憶の中に残っています。

過去から学べない者は、将来同じ過ちを犯すことになります。過去を学ぶのに最もインパクトのあるモノ、直接的な証拠は考古学遺跡でしょう。世界各地には戦争遺跡が残されていますが、水中には、まだまだ多くの戦争遺跡が残されています。

しかし、水中では人々が気がつかない間に劣化が進んでしまうことがあります。また、人間が遺跡を破壊することもあります。太平洋の島々では、この戦争のメモリアルを次の世代にも残そうと、様々な取り組みが行われています。

つい先日、ミクロネシア連邦がユネスコの水中文化遺産保護条約を批准しました。太平洋戦争の遺産も、文化遺産として保護の対象として捉える動きが進んでいます。しかし、具体的にどのように保護していくのか、技術を持った人も少なく、難しい問題です。

ユネスコでは、新しく太平洋の戦争遺産に特化しかマニュアルー保存のガイドラインーを出版しました。戦争遺跡に限らず鉄製(金属)の水中文化遺産の現地(原位置)の保存方法についても使える情報を提供しています。

無料でダウンロード 

写真も、印象に残るものも多いのですが、忘れてはいけないのは、多くの方が命を落としたことです。遺骨収集の問題なども真剣に議論する必要があります。

呂500発見!

若狭湾沖で探査中の呂500号。

発見されたようです。今日も探査中だと聞いておりますが、伊121号など別の潜水艦や沈没船などを確認するそうです。

他の沈没船も発見されると良いですね。きちんと探査をすると色々と見つけることができます。世界には、数千年前の沈没船も発見されています。水没した遺跡だと1万年前のものもあります。(詳しくはこのサイトで色々紹介しています!)

今回は、破棄された場所などが記録にのこっていたり、漁師さんによる情報などもあったのでしょう。船体も大きいので見つけやすかったと思われます。

夢は遣唐使船を発見すること。

エモンズ 海底に沈んだ船を記録する

期間限定のようですので、お早めにダウンロードを。

沖縄の海に沈むアメリカ軍の船、エモンズ。近年、ダイビングスポットとして知られつつあります。ちょっと上級者向けの場所なので、なかなか簡単には行けません。

沈没船を正確に記録する方法として音波などを利用する方法がありますが、近年、その技術がどんどん正確・精密なものになってきています。水中・船舶考古学の世界的ジャーナルに、日本人の研究者が記録方法について論文を発表しています。

ちょっと難しいですが、ぜひぜひ今のうちに入手しておきましょう。

 

 

呂500など。深海から生放送

旧日本軍の潜水艦、呂500号や伊号潜水艦を発見する調査が行われています。船の上から生放送中!

にこ生

若狭湾沖だそうですが、見つかると良いですね!期間限定です!

発見後は、きちんと学術調査などが必要です。むやみに引き上げると環境を悪化させ、周りの生物環境や遺跡にも害を与える可能性も指摘されます。あのタイタニック号も、一部引き上げなど人が手を加えたことによる劣化の速度が早まったとも言われています。歴史のある潜水艦ですので、メモリアルとして保護・管理を考えましょう。

 

さて、期間限定ではなく、ある程度継続して深海の調査がライブで観れるサイトを紹介します。移動中などもずっと垂れ流し。海外の研究機関によるものです。

沈没船のほか、海底火山、生物の調査などが見れます。 放送されていないときもありますが、年間300日以上は放送していると思います。また、過去の動画のハイライトもいいですね。

OKEANOS EXPLORER 

NAUTILUS LIVE 

 

水中遺跡地図

いろいろとデジタルベース化が進んでいるのは、当たり前ですね。周知の遺跡地図も日本各地でGISベースで公開されています。開発などに際して周知の遺跡を調べるのに便利ですし、また、自分の家の近くの遺跡を調べたい!というときも便利ですね! 実は、私が前住んでいた家は周知の遺跡に隣接していたので、もし掘るとなると発掘許可が必要です。

さて、アイルランド周辺の海の遺跡の地図が先日一般公開されたので紹介していましたが、ニュース記事になっていたので、再度紹介します。

記事によると、355,000平方マイルの中に、3,554件の水中遺跡と思われるポイントが登録されているそうです。これは、開発に伴い発見されたり、漁師さんなどが発見したものです。しかし、これらのポイントの多くはいつの沈没船なのか、どのような遺跡なのか(もしくは単なる海底地形なのか)、わかっていません。周辺で開発などがあった際に調査をするようですが、「遺跡の可能性大!」というポイントを周知しているにすぎません。

そして、アイルランド周辺には、1万4000件ほどの海難の記録があります。その多くも、詳細がわからないようです。わからないことだらけですが、ポイントを押さえているのと、また、開発前の事前調査や遺物発見時には報告する義務などがありますので、ポイントはどんどん増えていっているようです。記録に残らなかった海難事故、そして、様々な理由により消滅した水中遺跡も多くあります。

さて、日本も同様に水中の遺跡を管理する必要があります。アイルランドの355,000平方マイルは、およそ92万平方キロ。日本の排他的経済水域と領海を合わせると、450万平方キロぐらいでしょうか。アイルランドの5倍ほどですね。

その5倍のなかに、どれだけの水中遺跡があるのでしょうか?全国の海難記録の総数を出すのは難しいですが、20世紀以前の記録で市町村に残されている文献だけでも8千件以上はあるかと思います。最近の海難記録までを含めると、1万件は超えるのではないでしょうか?さらに、記録に残らなかった海難事故を考えると…。

気が遠くなるような水中遺跡がありそうですね。アイルランド地図を見ていただくと分かりますが、多くの移籍は陸の近くにあります。海底ケーブルや浚渫、埋立地などで壊さないようにすることが大事です。しっかりとした事前調査と水中であっても工事現場には遺跡がある可能性は高いことを周知することが大切です。多い場所では20〜30mおきに遺跡があったり、時には数世紀離れた沈没船が重なって発見されることもあります。

TIMEが選ぶ偉大な科学者

アメリカ・タイムマガジン社がえらぶ偉大な学者( history’s greatest scientists)の中に、水中(海事)考古学の先駆者であるジョージ・バス教授が選ばれたようです。歴史的に著名な科学者の中の一人に選ばれたようで、ホーキング博士、心理学のフロイト博士、ガリレオさんなど偉人が並んでいます。水中という環境に人類の痕跡を求めて自ら調査に向かった姿勢、そして、そこから人類の交易の歴史の新たな形態を見出した点、その後の世界的な分野のひろがりなどが評価されています。

1960年代からトルコを中心に研究をはじめ、3300年前の沈没船、ウルブルン沈没船などを発掘しています。アメリカのテキサスA&M大学で1976年に世界で初めて水中考古学を専門で学べる大学院のプログラムを設立しました。その後、世界各地でこの分野を学べる大学が増えています。日本では、なぜか馴染みの薄い学問分野ですが、世界各地では陸も水中も分け隔てなく水中遺跡がきちんと管理されています。周知の遺跡もそれぞれの国で数千~数万件発見され、開発とのバランスを保ちながら遺跡の保護や研究が進んでいます。

タイムマガジンは、ニュースウィークなどと肩を並べるニュース雑誌の最大手ですね。日本の書店にも並んでいるのでしょうが、ネットでは元記事が読めないようです(残念)。ともあれ、バス先生は、アメリカ国家科学栄誉賞もいただいている方です。アメリカではノーベル賞に最も近い賞であると言われています。水中考古学が広く国民に理解されていることがよくわかりますね。

私がちょうど学生として入った時にリタイアしましたので、先生の最後の最後の学生です。生徒を自宅に呼んでオペラ鑑賞会をしていました。よく遊びに行きましたが、レッド・チェッペリンが嫌いだったようです…。和歌山の串本に一度遊びに来ていたので、那智滝に連れていったら感動していたことを覚えています。だいぶお年なので、今度アメリカに行く際には、時間を作って会いに行く予定です。

チチカカ湖の水中考古学を支援しよう!

チチカカ湖の水中遺跡発掘プロジェクトを支援!

ここ数年、何かと話題に挙がるネットを通したクラウド・ファンディングですが、UNESCOのバックを受け、チチカカ湖の水中考古学プロジェクトも支援を受け付けています。

チチカカ湖での発掘を支援したい!という方は、もちろん歓迎しますが、ビデオだけでも見てください。水中発掘の様子がよくわかります。インカ時代の遺跡がタイムカプセルのように残っているそうです!20遺跡ほど発見されているようです。

ペルーやボリビアなど、それほど文化財の保護にはお金をかけられないのですが、貴重な遺跡をなんとか調査し、保護を進めていくことを目指しています。

海の日について

「海の日」っていつだったか覚えてますか?

もともと7月20日は、「海の記念日」だったのが、国民の休日となりました。しばらくして、いわゆるハッピーマンデーとして変動することとなり、7月の第3月曜日になっています。子供にとっては夏休みである場合も多いですね。

7月20日の海の記念日の由来は実は古いんです。明治天皇が、それまでの軍艦ではなく巡視船の明治丸に乗って東北巡行に向かい、目的を終えて横浜に帰港した日を記念しています。現在、東京海洋大学のキャンパスにある明治丸です。

本日のニュースで 報道されていましたが、 2020年のオリンピックに際して、休日をまとめることが決められたそうです。オリンピック観戦や運営などをスムーズに行うことが目的なようですが。そもそも、史実に由来した記念日を好き勝手動かすと、その意味が薄れる気がします。例えば、ある都合により誰かの誕生日を動かすことってできますか?

まとめて休日が取りやすいようにとか、オリンピックがあるから動かすということは、「海を考える」ことよりも、それらの理由が優先されているように思います。明治天皇のイベントは、ひとつのきっかけとして、また、巡視船や訓練船として長いキャリアを誇り、多くの人に愛された明治丸も象徴として適していると思います。国民の「海離れ」が進んでいるのも確かなので、この際、少しでも真剣に考えていただければと思います。

私は「海の日」を、日本の歴史の中で海が果たした役割について考える日だと理解しています。海に囲まれた日本は、海無しには生きられず、全ての歴史事象は海と関わっています。例えば、今の自分と海は関係無い、と言えるでしょうか? 海と日本人の関わりはあまりにも深いので、逆に特定できないのかもしれませんが、例を一つ。まあ、ありがちな説ですが、非常にわかりやすいです。

日本の文化の象徴として、文字があります。もちろん、漢字は中国から伝わりました。海を介して伝わっています。日本は、早くから漢字に影響を受け、早くから独自の形に変えて、自らの文化としました。韓国やベトナムも漢字文化を受け入れ、ながらく中国の漢字の影響が強く、自らの文化として変化させていくのに時間を有しています。これは、海が文化を受入れるハイウェイとして機能し、また、必要であればバッファーゾーンとしても機能したことを意味していると言えます。日本人にとって、付かず離れずの関係を保つことができたのは、日本文化の形成に大きな影響を及ぼしています。

また、歴史以外で言えば、日本の気候でしょう。海があるから比較的緩やかな四季の変化を見ることができるとも言えますね。豊かな海の資源も健康な暮らしを支える役割を果たしています。

海の文化を忘れないためにも、海の日のきっかけとなったことも大切なのかもしれません。オリンピックは、大きなイベントです。ですが、日本の文化の礎である海をないがしろにしてもよいのでしょうか?

では、明日から海を介して日本に伝わったものを全て使うのやめましょう…。もう、インターネットも使えませんね、海外の技術を多用していますから。石油も日本じゃほとんど取れません。海があっての石油です。 魚も食べません。オリンピックも、海外から伝わったものですよね?マラソンも、ギリシャ側がペルシャの軍隊がマラトンに上陸したところを奇襲をかけて勝利した戦いに由来しており、まあ、制海権をめぐる争いです。

どれだけ海が大切か、考えるきっかけになれば良いと思っています。「海の日」を国民の休日としているのは、日本だけのようですので、それは誇りに思って良いことでしょう。

海を守り、人間と海の関係を調べ、考える。そんなきっかけとなってくれれば幸いです。海の日を動かしたことによって、その意味を調べてくれる人、考えてくれる人、そんな人が増えてくれれば、動かして良かったなと思えるのかも。海のようにおおらかに。

呂500号探査プロジェクト放送

私は、今回は関わっていませんが、旧日本軍の潜水艦関連のプロジェクト、最近増えてますね。見つけられたのかな?

ドイツの潜水艦で、実戦経験あり。日本が譲り受け訓練艦として使用されていたと伺っています。終戦後、米軍により若狭湾で破棄。

70年以上がたっていますが、海底に大きな鉄の塊があれば、地元の漁師さんは大体わかっていますからね。探査の基本として、成功の秘訣の8割が事前調査・下調べ。的確な機材を使用するかが残り、あと運が少し。

さて、6月12日、22時から放送予定だそうです。お楽しみに!

こちらから〜ニコ生で放送