キャプテン・キッドの沈没船が確認されたのが数年前このサイトでも紹介しました。この船はドミニカ共和国のカタリーナ島で発見され、その一部がインディアナ大学のチームによって発見されました。積荷の記録や、樹種同定などから有名なキャプテン・キッドの沈没船の判断され、話題を呼びました。この度、観光客にそのまま展示する海底ミュージアムとして遺跡を活用していくことが決まったそうです。以前から話はありましたが、予算なども後援する団体などが正式に決まった模様です。
ニュースサイト1
ニュースサイト2
キャプテン・キッドの沈没船については「沈没船が教える世界史」〔メディアファクトリー新書)でもふれられていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
アメリカ最大(?)の考古学協会ーArchaeological Institute of America (AIA)が考古学に貢献した人に与えるBandelier Awardが今年はジョージ・バス先生に与えられました。何年か前、同じ賞がハリソン・フォード氏に与えられていろいろと騒動になったので覚えている人もいるかもしれません。
バス先生は水中考古学の一人者でこの学問をしっかりとした研究として世界に認めさせたことで有名です。1960年代にトルコで沈没船の発掘を初めました。陸上の考古学手法を考古学者自らが水中に持ち込んだことに意義があるとされています。バス先生はテキサスA&M大学で世界で始めて水中考古学が学べる学部を設立。
2001年にはアメリカ国家科学栄誉賞も受賞しています。
アメリカの一般向け考古学雑誌「Archaeology」にサイパンで行われている第二次大戦の水中遺跡についての記事が掲載されています。
もちろん遺物は戦車や戦闘機など水中に沈んだものですが、陸上の戦争遺跡なども視野に入れサイパン島全体の遺跡の分布を調べています。現在の状況のまま放置しておくと劣化が進み将来は調査ができなくなってしまうでしょう。これらの遺跡がなくなる前に調査を行いサイパン島の歴史の研究に役立ていくそうです。
これらの遺跡・遺物は戦争遺跡ですので発掘などは伴わない事前調査です。多くの日本人の方に知ってもらいたいプロジェクトです。この調査はフリンダース大学などが中心隣進めています。
17世紀、スウェーデンが国の威信をかけて建造したものの、最初の航海でストックホルム湾内で沈没したヴァーサ号は有名です。1960年代に発見され引き揚げ、発掘、保存処理が行われ、現在では船が丸ごと見れる博物館が建てられました。北欧で入場者数ナンバーワンを誇るヴァーサ号ミュージアムも船体の保存処理に20年、未だにまだ保存処理が行われていない遺物や研究もまだまだこれからという部分も多く残っています。
実は今年はヴァーサ号引き上げから50年!いろいろなベントなどあるようです。北欧にお住まいの人、近くに旅行に行く予定のある人は是非ヴァーサ号を見てきましょう!
アラブ・インド・ペルシャの商人は中国の唐の時代に中国に船で出向いて貿易をおこなっていました。このころの船、9世紀あたりの船が以前インドネシアで発見され、トレジャーハンターによって発掘されました。しかし、トレジャーハンターも出来る限りの記録は残しており、いろいろと学術ジャーナルなどに出版を行ってきました。詳しくはこちらで。遺物の殆どはシンガポール政府が買い取り、現在新しくリゾートミュージアムの建設に取り掛かっているようです。
木材の樹種同定やその造船技術からインド洋の船だと考えられています。当時の船はこのほかには発見されていません。簡単な竜骨をもち、船体は縄で互いに結び付けられ、釘などは使用していません。このタイプの船は縫合船と呼ばれています。文献・絵画・伝統造船の研究などからインド洋の船と断定されました。この船はオマーンで復元され、航海実験などもされています。
この度、スミソニアン博物館でこの沈没船の遺物が展示されることになったのですが、いろいろと話題を呼んでおります。というのも、この沈没船は考古学が目的で発掘されたのではなく、商業目的で発掘されたからです。スミソニアンや他の博物館は商業目的で発掘されたり売買された遺物などの展示は行わないことが原則です。
考古学者などがこの度この展示に意義を申し立てているわけです。しかし、一方で、この船はインドネシア政府が正式に許可を出し発掘を行っているので「合法」で「発掘」されているわけです。これはインドネシアなど水中文化遺産保護の法律が無い国〔日本もその代表例)ではどこでもありえることなのです。
ユネスコの水中文化遺産保護条約などが様々な国で採用されていますが、多くの国がまだ加盟しておりませんし、多くの問題点をのこしております。水中にある遺跡は陸上とは違うスタンダードを取る人が多くいることは事実であり、費用の調達などを考えると実際に発見したから直ぐに発掘と言う具合に進めるわけではありません。この沈没船は発見から発掘・保存処理・出版まで数年で成し遂げています。考古学のスタンダードで発掘をおこなうと、研究の成果を出すのに倍以上の時間〔15年ほどでしょうか)、費用も掛かります。また、トレジャーハンターの言い分では、世界の貴重な沈没船の多くは埋立地の建設や漁業により多くの船が発見されずに破壊されているので、考古学のスタンダードでは記録を残せずに消えていく船のほうが多いであろうということです。実際に堤防の建設や海の上に建物を建設する際には多くのエリアがまともな事前調査を行わずに埋め立てられているのが現状です。幾つもの貴重な文化遺産が今自分が立っているコンクリートに地面の下にあることも可能性としてはあります。
この当時のインド洋・東南アジアの沈没船は研究が進んでいないことから非常に価値のある文化遺産です。この沈没船の発掘ない世などはそれなりに調査され、出版されています。このように研究されずに破壊されている沈没船が幾つもあるかもしれません。考古学者が望むようなスタンダードではないかもしれませんが、それでも当時の海洋交流の歴史に一石を投じる貴重な発掘でした。考古学者の中にはこの沈没船の報告書などは自分の研究には使わないと言う学者も多くありません。
日本では水中考古学や沈没船の研究はあまり馴染みがないので、絵空事のように感じるかもしれません。また、同じ文化財であるはずなのにどうして水中にあるということだけで陸上の遺跡と別の扱いを受けるか疑問に思う人も多いのではないでしょうか?しかし、世界の多くはトレジャーハンターと考古学者の論争は活発になされています。日本では水中で遺跡を発見しても文化財保護法が適用されるかは現在のところきちんとした法律がないためケースバイケースとなっております。海難救助法が当てられるか、遺失物として処理されるか、はっきりしていません。実際に外国のトレジャーハンターが日本で活動を行っていることも事実として受け止めなくてはなりません。
この沈没船のようにある程度研究され出版されればまだ「まし」といいうことでしょうか?日本も水中文化遺産保護を真剣に考えなくてはならない状況にあると思います。少しでも多くの人が沈没船を貴重な文化遺産と受け止めキチンと保護するべき対象であると認知すれば状況は変わると信じています。トレジャーハンターなどは資金調達のために、自分達のプロジェクトに資金提供をしてくれそうな裕福層には大々的に宣伝を行いスポンサーや投資を募っていますが、多くの一般市民には積極的に広報活動を行っていないように見受けられます。一般の人々が沈没船研究の可能性と重要性に気がつくことが世界の水中文化遺産の保護の近道だと考えています。
トヨタ財団が後援していただいたSHIPWRECK ASIAプロジェクトからインターネット上でレポートをダウンロードすることが出来ます。
ここまでアジアの沈没船をひとつにまとめた出版物は他にないと思います。泉州・新安・蓬莱沈没船などのほか、南京の造船場発掘報告書概要などもあります。この造船場は鄭和の船団を作ったことで知られています。また、韓国の沈没船などの研究もあります。どれも沈没船などを紹介する内容になっております。アジアの沈没船研究の重要な文献となることでしょう。
SHIPWRECK ASIA トヨタ財団プロジェクト の詳細は »
今回の大地震と大津波は我々の想像をはるかに超えるものでした。被害の状況はまだまだわかりませんし、世界のメディアは日本のニュースがいつまでも流れている状態です。災害にあわれた方、現在避難所などで苦しい思いをしている方々に何か出来ることはないのか、いろいろと考えておりました。一刻も早く行方不明者が救出されること、少しでも新しい生活になれることを期待しております。
今回の地震により思わされたことは、水中考古学者は海の災害の跡地を発掘しているようなものです。例えばジャマイカ島のポート・ロイヤルも地震による液化現象と大津波に飲み込まれ壊滅した町です。水中考古学者がこの町を発掘したときに驚くほどにリアルな町並みが水中にあったことが確認されました。しかし、それは同時に災害の後であることを生々しくも語ってくれます。このような特別な遺跡を掘る者は安易な気持ちではいけないと思います。何百年前の悲劇であってもそれは水中に忘れられずに眠っていました。遺跡や遺構を発掘する際にはやはりそれなりの責任感や使命感がなければいけないのかもしれません。発掘を行う際に当時の人々の記憶をよみがえらせているのだと言う自覚が少し強くなった気がします。今回の日本の災害は何か新しい使命感のようなものを運んできたのかもしれません。今回の地震の話は何百年もすると忘れられてしまうかもしれませんが、もしかしたら将来の考古学者が発掘を行って我々の記憶を呼び覚ましてくれるかもしれません。
自分で出来ることは限られているように思えますが、出来るだけのことはしていきたいと思っています。ボランティアなどあるかもしれませんが、やはりプロに任せておくのが最善だとおもいます。そこで、日本財団の東北地方太平洋沖地震支援基金をお知らせします。
詳しくはウェブサイトでご覧ください。また、出来るだけ多くの方にこの基金のことを広めていただければ幸いです。
AJ Goddardという小さな船が100年以上前にカナダとアラスカの国境付近の湖で沈没しました。ちょうど、カナダのゴールドラッシュ時代の船ですが、殆ど歴史から忘れ去られていました。しかし、つい最近、この船が発見されて話題を呼んでいます。小さな船ですが、冷たい淡水で沈み、その後の開発なども付近で行われなかったため、保存状況が良く、当時の生活の様子が驚くほどよく再現されています。
特に、最新の水中3次元レーザー技術開発のためのテストとしても使われていました。また、当時のレコード〔蓄音機で使った)も発見されて現在そこの記録された音楽も復元されています。なかなか小さいながら面白い船です。リンクを幾つか紹介しますので、ご覧ください。
3Dモデルのビデオ
INAウェブサイト
ニュース(100年以上前のレコード)
「沈没船が教える世界史」メディアファクトリーから好評発売中です。様々なかたからいろいろと書評をいただいていますが、なかなか良いものが多いので非常にうれしく思います。まだ買ってない人は是非本屋さんへ!
レビューされたキーワードをピックアップして見ますと…
面白い
読み易い
知らないことがいっぱいあった
一気に読める
世界史のおさらいになる
内容が濃い
などなどです。ネガティブなポイントをリストしてみますと…
図・写真などが少ない
一つ一つの沈没船に対して情報量が少ない
など挙げられます。私も図や写真などをもっと入れたかったのですが、一般図書ですと著作権など写真の使用量などで経費がかさむこと、またページ数に限りがあることなどいろいろと調整が難しいです。それぞれの船に対しての情報が少ないのも、世界史の大きな流れの中でそれぞれの沈没船の重要性を押さえておきたかったでしょう。実は、今回出版した本では取り扱われなかった沈没船についてもすでに書いた原稿がありますし、今回この本で紹介された沈没船でも大幅にカットされた部分があります…いつか続きを書いてみたいですね…ただしもう少し沈没船一つ一つ詳しく書ければおもしろいでしょうね。雑誌などの月刊コラムなどに毎回違った沈没船を紹介できたらいいなと思っています。
この本を書くにあたって「読みやすさ」を重視していました。読んで欲しい人は高校生・大学生です。あまりそこまで専門では在りませんので、読んだ人が興味を持ってくれるように心がけました。特に沈没船、水中考古学、歴史に興味の無かった人に読んでいただいてこんな世界があったのか!と感じてもらいたいです。また、もともとこれらの主題に興味のある人はさらに読み進めて同業者として一緒に研究していきたいです。これからの若い世代に向けてかかせていただきました。
さて、レビュー〔書評)のなかに出てくるキーワードでもうひとつあるのが、漫画「ワンピース」です。海賊や船が活躍するストーリですが、昔の海賊の沈没船などが実際に水中から発見されるのはやはりこのマンがが好きな人には面白く読めるそうですね。ワンピースの作者の尾田栄一郎氏にも読んでもらいたいですね。なにかストーリーのヒントにでもなれば良いですが、どうでしょう?
現在発売中の週刊朝日にトルコの水中考古学について写真が載っています!グラビアで写真家の赤木正和さんがトルコの水中遺跡(水中ミュージアム)などで取った写真が掲載されております!赤木さんのウェブサイトも拝見して見てください!