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水中考古学関連ニュース ダイジェスト(リンク)

水中考古学、全然聞いたことがない人は、ほとんど耳に入ってこないでしょう。しかし、世界には水中考古学のニュースであふれかえっています。ネットなどで検索をかけるとたくさん出てきます…あ、残念ながら、英語で検索した場合です。

そのようなニュースを羅列しても仕方がないのかなと思い、今日は、ある一定の条件のもと探したニュースを紹介いたします。その条件とは…

水中・海事考古学関連でさらに、

 1.すべてSNSなどから得た情報で、信頼性の持てるニュース記事のリンクが張られていたもの。

 2.検索はかけずに、すべて自分の知っている人(会ったことがある人)がのせた記事から得たリンクを紹介。

 3.2016年5月19日の0時から23時59分までにその友人がシェア・投稿したニュースに限る。

 4.あまりに日付が古い記事や、同じ記事は紹介しない。

 5.独断と偏見により、面白くない記事は載せていません(4件ありました)

 

つまりは、世界の水中考古学者はだいたい1日にこのくらいのニュースは平均的に見ていることになります。また、余談ですが、グーグルアラートなどでキーワードをかけていると、1日平均4~5件新着記事があります。ネットでかかりにくい記事、英語と日本語以外のニュース記事もあるので、世界で水中考古学関連のニュースは1日10件以上は出ているのかとは思います…これが、多いと見るか少ないと見るか。ちなみに、日本の新聞・テレビなどで考古学一般のニュースは平均1日何件ぐらいでているのでしょうか?

では、紹介いたしますが、注意点が一つ。私も今日ぱっと見て読んだ記事ですので、間違った情報を書いているかもしれませんが、その辺はご理解を。今回の目的は、24時間で水中考古学に関連するニュースがどれだけ出回っているかをしってもらおうかな、と思ったので。

 

1.イスラエル・ヘロデ王の港跡の沖に様々な遺物を積んだ船が発見! こちらのニュースなどメディア各種が伝えてます。

ローマ時代の沈没船のようですが、かなり貴重な遺物(コインや銅像など)が積まれていたようです。

 

2.水中から北米最古(かも?)の遺跡。

いわゆるクローヴィス時代よりも前の遺跡の可能性が指摘されております。1万4000年前。日本の海岸線などにも日本人の起源を探るのに重要な遺跡がありそうですね。骨などもかなり状態の良いものが発見されているようです。

発掘の様子のビデオなど詳しい説明はこちら

 

3.アラビアにおける水中考古学の本が出版

ユネスコからですが、この地域における水中考古学の取り組みなどについて書かれているそうです。ちなみに、アラビア語で最初に水中考古学について書かれた本は1965年出版されたそうで、50周年を迎えてからの現状の意味もあるのかどうか…

 

4. 水中カメラを利用した遺物などの実測について

最近の技術の発達により、水中で簡単に3次元実測できちゃいます。特に時間的制約のある水中では有効な方法。

 

5.大英博物館~エジプトの水中遺跡の特別展

あの有名な大英博物館にて、水中考古学の展示が行われるようです。エジプトの水中遺跡関連の展示ですね。数年前に横浜でも展示が行われたものを発展させたような内容かなと思います。

 

6.オランダがユネスコ水中文化遺産保護条約を批准?

書いているときにちょうど入ってきたニュース。えーと、オランダ語が読めないので… でも、どうやらオランダがユネスコ水中文化遺産保護条約を批准することになったのか… 英語の記事がないので、また、上で示した条件での実験中なので。このニュースに関しては、別に紹介するかもしれません。

 

日本のニュースに関しては、だいたい3日前までです。手法は同じく、フェイスブックなどを通して収集したニュース情報です。他にも日本語の水中考古学関連ニュースはあったのですが、誰もシェアしていなかったので…紹介していません。残念…?

1.水中考古学へのいざない (連載記事) 産経新聞・日本語ですよ!

産経新聞で連載記事です。井上たかひこさんが書かれています。2週間に一度の記事だと思いますが、日本・世界の水中遺跡を紹介するものです。実際に井上さんが発掘に参加した遺跡や、しっかりと情報を集めて書いているようです。

井上さんのこちらの本は詠まれた方も多くいらっしゃるのでは?

 

2.月刊ダイバー連載記事 こちらの連載は長く続いてますね!

根府川沖海底遺跡 海底に残された震災の記憶!

 

番外編…

海外のニュースブログの記事ですが、海外でも人気の高い鷹島海底遺跡について書いてます。昨年発見された元寇船ですが、2016年5月2日に特集で組まれています。

オランダと日本の伝統の味!長崎平戸のスイーツ! とくに水中考古学というわけではないですが、海を介した交流には船が必要だったわけで、この当時の沈没船が発見されるといろいろなことがわかるでしょうね。平戸周辺にも水中遺跡がありそうですね。

 

 

沖ノ島・宗像大社を世界遺産へ

沖ノ島・宗像大社関連施設(遺跡)などを世界遺産に登録しよう!という動きがあるのをみなさんはごぞんじでしょうか?

沖ノ島は九州の沖に浮かぶ海の正倉院などと呼ばれる島で、島全体が御神体とされています。アクセス制限が厳しいので有名ですね。縄文・弥生など貴重な遺物が数万点発見されています。この沖の島と対岸の宗像大社など日本の歴史・文化を知るうえで貴重な存在です。九州から約60キロ離れた玄界灘に浮かぶこの孤島…その周辺など水中遺跡(主に沈没船)が相当あるのではないでしょうか?そんな場所をソナーなどで探査し、遺跡を発見出来たらどんな遺物が発見されるのでしょうか?

海の正倉院へ向かう船にはどんなものが積まれていたのでしょうか?海の中ですから有機物の保存が良好です。そのため、陸では完全に腐って見つかることのない珍しい遺物も多くあるのではないでしょうか?国宝級の発見が期待できるのかも…

そんなプロジェクト、現実のものにしてみたら面白そうですね!海事・水中考古学の魅力もアップするのではないでしょうか?

海の日ですね~

本日、7月20日は海の日と制定されています。

海の日は割と最近できたコンセプトですね。日本人の海離れが進んでいます…海離れについては、ここでは改めて書きませんが、多くの人が海に行く機会が減っているようです。海が嫌いな子供や海で遊んだことがない若者が増えているようです。最近、海に行った人はどれくらいいますか?海水浴だけなどではなく、本当に海と時間を共にした人はどれくらいいるのでしょうか?

四方を海に囲まれた島国である日本。海岸線の長さも世界6位です。アメリカ・中国・オーストラリアなどよりも日本のほうが海岸線が長く、多くの人にとって海は本当は身近な存在です。世界では海を見たことがない人がいますが、日本人で海を見たことがない人はいるでしょうか?それほど日本人と海は本当は深くかかわってきたのです。逆にあまりに生活の一部として身近であり、その大切さを忘れているのかもしれません。

さて、水中考古学ですが、海外では海事考古学(Maritime Archaeology)と呼ばれているのが一般的です。人類と水域(海・川・湖など)とどのようにかかわってきたかを学ぶ学問として捉えられています。つまり、その研究対象は港、船、人々の海産物の利用(釣りなど)、そして、水域を介した交易や戦争の歴史などです。つまり、船が山の上にあればそれを研究します。たまたま研究の対象となる遺跡・遺物が水没していることが多いために水中考古学と呼ばれることが多いのですが、日本では特に「水中の発掘の専門屋さん」としての間違ったイメージが定着しているようです。

この海事考古学は海からの視点で歴史を眺める学問です。実は水中海事遺跡は身近なところにたくさんあります。琵琶湖だけでも100件に及ぶ遺跡があります。長崎県には元寇で有名な鷹島五島列島(牡鹿島)にも遺跡はあります。長崎市内でも博物館や出島でも海や船に関する遺物などが展示されています。沖縄県にも水中遺跡は数件あります。また、鎌倉には鎌倉時代の港跡である和賀江島、千葉県には勝浦のハーマン号御宿のサンフランシスコ号、和歌山県串本のトルコ軍艦静岡県にも水中遺跡はいくつかありますし、北海道江差の開陽丸、瀬戸内海では水の子岩坂本龍馬のいろは丸など。村上水軍関連のスポットもいいかもしれませんね。

夏休み、水中・海事遺跡を見に行きませんか?

近場の水中・海事遺跡について実際に見に行きたい、知りたいという方がいればお気軽にお尋ねください!

メールはこちらへ(shipwreckarchaeology@gmail.com)

 

 

スペインとトレジャーハンターと考古学。現地保存も…

数年前、アメリカのトレジャーハンター会社が沈没船を引き揚げ、莫大な量の銀貨が発見されたニュースを覚えているでしょうか?その後、時価数億円と言われた遺物をスペイン政府が自国の船であり、文化財保護の観点から遺物の返還を要求しました。その後の裁判において、スペイン政府が勝訴し、遺物はスペインのものとなりました。現在、その遺物が展示されているようです。

さて、そこで、良く聞かれるのが、トレジャーハンターの言い分です。今日は、ちょっと詳しく水中考古学者の観点から見てみましょう。

トレジャーハンターの言い分・・・沈没船の発掘には莫大な費用が必用。いま引き揚げなければ数年後には盗掘や台風・津波、底引き網や開発などで失われてしまう。莫大な費用の見返りとして遺物の売却が必要である。すべて記録として保存・研究ができるので、歴史にも貢献できる。引き揚げないと遺物も歴史も失われてしまう・・・ということが良く聞かれるが果たしで本当でしょうか?

考古学の立場

確かに莫大な費用が必要で、それは船を丸ごと引き揚げる場合。また、一度引き揚げると保存処理などを行う必用があり、永続して湿度・温度を管理する必要があり、非現実的な方法であることは確かです。現在の考古学の常識では船を丸ごと引き揚げることは中国など一部の力のある国でしかおこなうことはできません。水中遺跡は現地で非破壊調査による記録を行い、現地保存を行うことが常識となりつつあります。ユネスコ水中文化遺産保護では現地保存を第一オプションとしています。Nautical Archaeology Societyの水中考古学トレーニングマニュアル(200ページ)にも水中の発掘は『他の方法で保存できない場合のやむを得ない』行為として紹介し、数ページしかその方法について書いていません。

現地保存とはなんでしょうか?そのメリットは?水中遺跡は海底で砂に埋もれていれば保存状態は良好であり、数百年単位で保存が可能であると考えられています。(数千年前の沈没船も発見されていますし…)つまり、遺跡を安定した状態に置き、バクテリアの活動や砂の動きなどをモニタリングし、常に遺跡を安定した状態に保つことにより、お金をそれほどかけずに遺跡を保護することができる、といえます。しかし、この方法では何も研究できない!と思うかもしれません。しかし、実際には非破壊(非発掘・小規模トレンチ)調査でも充分研究ができます。

沈没船を丸ごと引き揚げると確かに膨大な資料が手に入ります。もちろん、これらの情報を今すぐにでも得たい気持ちもあります。それでは、例えば、陸の場合の考古学を見てみましょう。同じような状況が考えられないでしょうか?(我々水中考古学者は「水中と陸」の考古学の境をなくすことが目標。しいていえば、水中考古学者と呼ばれることに一番抵抗を感じるのは水中考古学者自身。実際にこの名称は対外的な名前で、水中考古学と自分では呼ばない研究者が多いです~この点に関しては後日解説しましょう!)膨大な量の考古学資料を得られる遺跡として、平城京跡地を見てみましょう。今、平城京跡地をすべて完掘する計画を国民は受け入れることができるでしょうか?もしくは平安京、博多遺跡群など。同じような莫大な資料を得るとともに、莫大な費用も掛かるし、研究も追いつかないでしょう。そのため、陸では開発行為がある場合においてのみ調査が行われる場合がほとんどです。これらの陸の遺跡を発掘するための費用を出土した遺物を売ることで賄うという考えは生まれますか?それよりも今、発掘できるところを小規模ながら進めていき、研究もすこしづつ進めていく方法を取っています。これが陸であれ水中であれ考古学という学問が置かれている状況にあると思います。そのための現地保存があります。

水中遺跡の多くは開発との共存が比較的楽であることが考えられています。海の上に構造物を建てる際には多くの場合、数10メートル単位でプランの変更をすることが可能です。実際に、アメリカ・メキシコ湾では、海の上に構造物をつくる際には考古学の事前調査を行うことが義務化されており、油田から敷かれたパイプライン工事の事前調査などで2000件以上もの水中遺跡が発見されています。他の国々でも、工事に先立ち水中遺跡が発見されるケースは多く、それらの遺跡を保護するため工事の計画を少しずらして行う場合がほとんどです。この場合、遺跡の特徴など非破壊調査で記録を残すことが重要です。

さて、現地保存のメリットをもう少し見てみましょう。遺跡保存の考え方の一つに活用という観点があります。地域に遺跡の重要性を知ってもらい歴史を守る大切さを考えてもらうこと、とここでは簡単に説明をします。無機物など比較的水中で安定した状態にある遺跡は一般公開をし、地元だけなく観光客を相手に遺跡ツアーを行っている場所も多くあります。太平洋やカリブ海の小さな島などはダイビング産業で地域の経済が成り立っている町や村も存在しています。そこに住む人々にとっては大切な文化資源として水中遺跡があります。その経済基盤を研究目的で莫大な費用をかけて引き上げることはできるでしょうか? それよりも、地域と協力をし、可能な限り現地で保存をしながら研究を進めることが最善であると考えられます。もちろん、定期的に訪れる研究者も地域の経済にプラスの効果をもたらすので、お互いの関係は継続してプラスになっていくことでしょう。

少し余談になりますが、世界の海難事故のデータを見ると、沈没事故の9割は港の近くなど水深50mよりも浅い場所で発生しています。つまり、陸に近く今でもアクセスしやすい場所です。陸に近いと実は水中遺跡の保護には向いていません。溶け込んだ酸素の量が多く(有機物が腐りやすい)、また、砂の動きも多く、ダイバー、漁業、開発なども遺跡の破壊につながることが多々あります。そのため、しっかりと水中文化遺産の保護の観点から遺跡の場所を把握し管理することが最も望ましいと考えられています。その逆に、深海(公海)には沈没船はほとんどありません。深い海ほど遺跡は安定した状態にあり、今、手を付けなくとも数百年その状態を保つことができると考えられています。安定した状態にある遺跡を掘る必要は特別歴史的価値のある遺跡でない限りあまり考えられない、というのが考古学者の考え方のようです。

ここまで少しダラダラと文章をつづってきたが、まとめてみましょう。遺物を引き揚げ売却を行う行為(または場合によっては地域の現状を考えない研究行為)は、その時だけは誰かが得をするけど、継続してみんなが共有することはできなくなります。また、遺物の金銭的価値を基準とするため、本当に歴史的価値のある遺跡が発掘されるケースも少なくなります。大量生産された商品は考古学・歴史価値が少ないので、あえて発掘する必要はあまりありません。水中遺跡で行う研究は、1)遺跡がどのように地域の人々と関わっているか、2)遺跡がどれだけ安定した状態であるか、3)非破壊調査や小規模発掘などからどのようような歴史・考古学価値のある遺跡であるか、などを主に考えることが第一目的です。それらの情報をもとに、どのように保存・活用していくかを考えます。様々な条件を吟味し、もしくは、発掘というオプションも考えられます。その場合、遺物は地域に還元するために博物館などでしっかりと管理されるべきでしょう。

トレジャーハンターには困ったもんだ。考古学ではないのだから…

1857年9月、アメリカ・カリフォルニア州の沖でニューヨークに向かう途中の船がハリケーンに遭遇し、沈没。乗客や乗組員含め425名の方が亡くなりました。この船、SSセントラル・アメリカ号は様々な理由で現在でもとても有名です。

ここ数日、日本の某テレビ局など数社で似たようなニュースが報じられているようですが、アメリカのトレジャーハンティング会社がこのSSセントラル・アメリカ号から金塊をサルベージしたそうで、売却すると相当な金額になるようです。

もちろん、これは考古学調査ではないので、残念ながら歴史的資料はあまり得ることができません。また、この沈没事故で亡くなった多くの方々への配慮を考えた行為であるとは思えません。悲劇の事故のはずなのですが…注目を浴びるのは積まれていた金塊で、それも売却して個人的にお金を儲けるためだけの行為。

実は、この船は20年ほど前に別のトレジャーハンターが一部引き上げを行って一躍有名になりました。本なども書いています。しかし、スポンサーに配当金を払うはずだったそのトレジャーハンターが金塊を持ち逃げ指名手配となっています。未だに見つかっていないそうです。金塊は溶かして闇ルートで売られたのか?本人はどこに?

先日からニュースとなっている韓国の沈没船。タイミング悪く水中考古学のネタを放送する予定だったポケモンはテレビ局が放送を自粛・延期(中止)しました。また、WOWOWも映画タイタニックの放送を延期。そのような中で、このようなニュースを扱ってしまって良いのか?また、一部ではありますが、この行為を考古学と勘違いしている人もいるようです。

ちなみに、来週からハワイでアジア・太平洋地域の水中文化遺産の保護を呼び掛ける学会が開催されます。UNESCOの水中文化遺産保護条約や人道的・考古学的な水中遺跡(沈没船を含めた)を知る上では良い機会ではないでしょうか?アジア・太平洋地域から多くの水中考古学のエキスパートが集まります。インドネシアやスリランカなど近年水中考古学に力を入れている国からの発表などいろいろと新しい情報が聞けることでしょう。報道機関・関係者の方にもそろそろ本当の水中考古学を知ってもらう良い機会であると思います。

沈没船を研究することについて…

先日、お隣韓国で沈没船事故があり多くの方が亡くなり、また、いまだに行方不明者も多くいます。韓国だけでなく日本を含め世界では船を運行する者、海に関連する仕事をする人にとって大きなショックとなったのではないでしょうか?悲しい事件ではありますが、このような事故が二度と起きないよう様々な安全上の対策が必要であることを痛感させられる事故です。我々水中考古学者、特に過去の沈没船を研究の対象としている人にとっても複雑な気持ちで見つめる事件となりました。すぐ近くでは数隻の過去の沈没船(高麗時代など)が発見されている海の難所でありますし、日本ともゆかりの深い新安沈没船もそれほど遠くない海域で発見されています。

過去の沈没船を研究する人にとって忘れてはならないことは過去の事故をまのあたりにしているということです。我々が研究しているのは、考古学ではありますが、歴史の1ページを生々しく映し出すこともあります。もちろん、その事故現場で命を落とした人もいます。それが数百・千年前であれ、それは変わらない事実であると自覚しています。沈没船の研究を行う前には世界各地において文化・風習は違えど、様々な儀式を行います。日本ではお供え物をしたり供養をしたりしますし、韓国でも過去の霊に対して敬意を払ってから発掘作業を行っていました。西洋でもいろいろな儀式などを行っています。

考古学者はその事故現場から発見された遺物ひとつひとつに対して過去に人が使用したものであることを理解し、十分敬意を払います。重要なのは、過去の歴史を教えてくれるだけではありません。いままでは、あまりこの点についてはこのサイト上では書いていませんでした。もっと書くべきであったと思い反省しています。また、トレジャーハンターなど引き揚げた遺物を売買して自分達だけの利益とする人がいることは考古学的観点のみでなく、人道的立場からも個人的に理解できません。海に沈んでいる過去の遺物はできる限り保護されるべきであると私は考えています。

沈没船の研究を通して一つ言えることは、人間は同じ過ちを何度も繰り返すということです。文献・考古学資料の両方からわかることですが、船の沈む原因の多くは人為的ミス、特に危険回避に十分責任を感じていなかったことが多いような気がします。ロイド社やオランダ東インド会社の資料などを見てもわかりますが、嵐などで沈没することは珍しい例です。沈没事故の90%は岸に近いエリアで起こっています~主に衝突、浅瀬に乗り上げる、積み荷のバランスが悪い、利益を求めたがゆえの積みすぎなどなど。今回の事故も歴史上に幾度となく起こった事故とあまり変わりがないように思います。どうして人は同じミスによる災害を繰り返すのでしょうか?

沈没船の考古学を災害考古学として捉え、実際にその観点から研究を行っている専門家もいます。あまり自分の気持ちを巧く表現できたかわかりませんが、少しでも伝われば幸いです。災害を扱う研究者として歴史や考古学を通して多くの人に災害について知ってもらいたい、何とか次の災害を防ぎたい…そう切実に願う考古学者も多くいると思います。

水中探査に使用するロボ達について〈入門編〉

水中遺跡の探査に使用するロボット君達には簡単に分けるとこの二つがあります…

ROVとAUVです。今日はこれらを簡単に紹介します。ネットで検索するといろいろな水中ロボットが見れますので、そちらも参考に!

ROV (Remote Operated Vehicle) 簡単にいうと、水中ロボットです。アームのついているものもあります。ただし、ケーブルでつながって操作しているので、いろいろなものに絡まる危険性などがあります。ケーブルだいたい±0の浮力です。ちなみに、ケーブルを使う理由は水中ではラジオ波が拡散するので、いわゆるラジコンのようには操作できません。

考古学調査では、特に機体はプラスの浮力のモノを使います。そして、スクリュー(プロペラ)は下向きに動かないように改良します。プロペラを下に向けると砂を巻き上げるのでNG。上に動くときは浮力で上がって、作業中は常に下に押さえつける感じです。あまり早く動けないので、発見した遺跡の確認調査や簡単な発掘に向いてます。日本語では遠隔操作無人探査機。商業用で購入が可能。レンタルも一般的になっています。

AUV (Automous  Underwater Vehicle) こちらは、自分で勝手に決められたコースを走ってデータを収集してくる優れものです。様々な探査機材(音波探査・磁気探査)を積み込めます。長時間潜って広い範囲を探査することができます。遺跡があるかないかのサーヴェイに適していますが、発掘などには向いていません。自立型無人潜水機といいます。マサチューセッツ大学(MIT)などでハイブリッドAUVなども考古学への利用のため開発を進めていましたが… AUVはまっすぐに決められたコースなどを走り、探査の効率を高めるのが普通でした。でも最近は、自分で考えて遺跡の上を回って、写真実測・レーザー測量のデータをあつめて三次元実測も行ったりしています。AUVはまだまだ単価が高いので、国の施設や大学が使っています。日本の場合は東京海洋大学が考古学探査で使用しています。

ちなみに、ASV (Autonomous Surface Vehicle)  もあります。こちらは、AUVとほぼ同じですが、Underwaterではなくて、サーフェスです。船のように水面から調査します。発掘は無理ですが、単価がAUVより安くすみます。また、遠隔操作も可能なものもあるようです。

 

はて、潜水艦(潜水艇)は使わないの?と思った方はいるでしょう。しかし、潜水艦などはあまりにも高価になるので水中考古学には向いていません。スポンサーや国の役人などVIPを遺跡に招待するにには使えそうですが、作業には使いませんね。20年くらい前でしたら使っていましたが、ROVやSUVがあるので必要ないですね…残念。小型潜水艇はたまに使われているようですが、メリットがあまりないようです。

 

水中考古学と東海大学

去る2013年5月、鷹島海底遺跡の特定に寄与した茂在寅男氏が逝去された。当時の長崎県北松浦郡鷹島町沖で、元寇関連遺跡特定のため、初めての組織的な調査が行われたのは昭和55年のことである。東海大学海洋学部教授に在籍されていた茂在氏は、同調査において中心的な役割を果たされた。当時の調査手法には、考古学的見地から疑問の余地も投げかけられたが、昭和50年代の一連の調査が、その後の鷹島海底遺跡解明の動きの端となったのは事実である。東海大学には、文学部に考古学専攻があり、西表島では水没した貝塚で海洋学部と共同での調査が実施されている。また、同大学の海洋学部の海洋文明学科はアジア水中考古学研究所の調査などに参加している。東海大学の海洋資源学科の探査機器が、琉球大学との共同調査において、元軍船の発見に寄与したことは記憶に新しい。あえて付言をすれば、上述の東海大学と水中考古学の40年に及ぶ関わりは、一貫した研究体制や支援の下での出来事というよりは、水中遺跡の研究価値を見出した個々人の慧眼によるところが大きいようである。

良くある質問にお答えします!

水中考古学のサイトを運営していると、いろいろな質問が寄せられますが、圧倒的に多いのが、「@@@なんですが、水中考古学ってできますか?」という質問。一か月に2~3件このような質問をいただきます。それだけ、この学問をやりたい!と思っている人が多くなってきている証拠ですので、非常にありがたく思います。

そこで、すでに何回かこのサイト内などでも書きましたが、そのような質問に対しての簡単な私の意見を再度述べたいと思います。質問をしていただいた方にもお答えしますが、こちらも読んで参考にしていただければ幸いです。

ポイントとしては、水中考古学は特別な学問ではなく、単なる「考古学」であること。単なる考古学ではあるが、調査は学際的になるため、様々な形の専門家が必要になることです。そして、誰でも調査にかかわれるので、「自分の得意な分野で水中考古学のどのようにかかわれるか」、言い換えれば、「自分の分野のアプローチからどのように水中考古学に貢献できるか」を探ってみてください。つまり、道は二つあると言えます。考古学者としての道を進むか、もしくは、別の分野(歴史学・海洋学・保存処理など)をマスターしながら考古学調査に関わるかのパターンになると思います。

最初に、考古学者として目指すパターンについての説明です。水中考古学の父と呼ばれるジョージ・バス先生も、「水中で発掘を行う考古学は、多々単に考古学と呼ばれるべきだ」と言っていますし、「考古学者をダイバーに育てるのは簡単だが、ダイバーを考古学者として育てることは非常に難しい」と言っています。つまり、過去の人類が残した痕跡やモノから過去の生活を探る考古学の基礎が最重要になってきます。モノの見方、考古学の学史、方法論などを学びます。これは、考古学の講座がある大学ではどこでも学べるはずです。これは、海外でも日本でもOKですし、水中にこだわる必要はありません。「水中」考古学の基礎の98%は「陸」の考古学です。

次に、他の分野からこの分野に貢献するパターンについて。主に、文献史学、海洋学などがメインでしょう。水中考古学は、特に沈没船の調査などにおいて、タイプカプセルのような一括性の遺跡を発掘する機会が多く、また、一つの歴史の出来事の遺跡を検証します。 この場合、考古学者だけではなく、やはり歴史を学んだ専門家の意見が必要となります。そのため、歴史の分野での研究成果と考古学の発掘の成果を融合させるためには、考古学と歴史の両方面からのアプローチが大切になります。考古学者は歴史学から、そして、歴史学者は考古学から学ぶことがたくさんあります。お互いの研究を補えるはずでしょう。海洋学ですが、水中遺跡を見つけるためには、事前調査(サーヴェイ)が必要となります。これは、サイドスキャンソナー、マルチビーム、磁気探査、サブボトム・プロファイラーなどなど名前からすでに難しく聞こえる海洋調査機材を使用します。これらのデータ処理や実際の使用に際しては、やはり、海洋学の専門の先生が調査をしたほうがより効果的であることでしょう。

考古学者が歴史学をマスターしたり、海洋調査機材を覚えることも可能かもしれませんが、それよりも、その分野の専門家との共同・学際調査がより効率が良いことは明らかでしょう。しかし、考古学者もこれらの分野のことを少しは知っておかないと巧くこれらのメソッドを活用できないでしょう。また、協力するほうも考古学を少しは知っておくべきでしょう。水中にある文化遺産に興味を持つ人も多いでしょうが、この分野の発展には、そのように興味を持った様々な人たちの協力を得て研究を進めていくことが大切です。

最後になりますが、「水中考古学という学問」で成功をした人はいませんが、「考古学」でしっかりと成果をだして、水中考古学を行っている先生はいます。海外ではジョージ・バス先生などがその一人です。また、タイタニック号を発見したロバート・バラード先生も、「海洋学」で成果をだし、水中考古学に貢献しています。地球の70%以上を占める世界の海は広く、そして、その内の5%ほどしか人類はまだ見ていないそうです。研究の可能性は十分にあると思います。どの道を進むかは、本人次第ですが、今の自分の能力をさらに高めてそれをどのように水中にある文化遺産の保護・活用に役立てることができるかを考えるのが今後の進路を決める手掛かりになるのではないでしょうか?

水中考古学を学びたいのですが...

「水中考古学を学びたいのですが...」から始まる質問は良く聞きます。必ず、「が」や「だけれども」などの言葉がついてくる質問です。どこから始めれば良いのか分からない、難しそう、将来仕事がなさそう、日本で出来ないけど英語ができないから海外行けない、などなど。たぶん、2つのタイプ(道筋)に分けることが出来ると思います。ひとつは、考古学など歴史はあまり勉強したことがないけど、関わりたい人が最初のタイプ。二つ目のタイプは、歴史・考古学を勉強してきて、そのまま水中にも興味があるが、自分に出来るか心配というタイプです。

この質問について、個人的な見解を示したいと思います。最初に、水中考古学とは本来とても学際的な学問であるということを理解することと、そして、水中考古学という定義は曖昧で、本当は「考古学」にしかすぎないことです。

最初に、タイプ1について。このタイプの人の道は基本的に簡単にお答えできます...水中考古学の調査は一見すると、実に大変そうです。事前調査のサーヴェイなどはソナーや時期探査機などを使ったり、水中ロボットも使い、海洋学やマリンエンジニアさながらです。そして、発掘になると潜って発掘して、力仕事ですね。さらには、保存処理。化学薬品などをつかって処理するさまはサイエンティスト。もちろん、遺物の分析などは考古学・歴史が大切。こう見ると、誰が見てもものすごく大変な学問としか見えません。しかし、これらは、どれもその分野の専門家と協力して行っています。つまり、水中考古学の成果のために、別の分野の人が時には雇われたり、協力して作業を行っています。つまり、様々な分野の人があるひとつの目標(水中文化遺産を保護・活用)することに協力をしています。

つまり、逆を言えば様々な分野に進んでも、「水中考古学」に関わることが出来るわけです。水中の文化遺産にロマンを感じれば、自分の好きな分野を伸ばしながら、それをどのように活かせるかを考え、協力することが出来るわけです。「水中考古学者の必要条件」というものはありません。あえて言えば、水中にも遺跡があることを理解して保護・活用していきたいと思う心、ではないでしょうか?

つまり、歴史が得意でなくても、泳げなくても、化学などが苦手、でも関係ないということです。水中の文化遺産を守るという意思があれば、あとは自分のできることで協力することが出来ます。新しいことはそれほど学ななくても、自分の経験を活かすことを考えるのが先決でしょう。また、水中考古学だけで生活をすることなど考えなくてもよいでしょう。他の自分の専門で生活をしながら、協力できるときに協力することが出来ます。たとえば、化学などが好きなら、普通に遺物の保存処理を学べば良いわけです。そのなかで、水中の遺物の対処法を考えて、協力することが出来ます。水中に特化することはないはずです。また、海洋学でも同じです。自分の分野でしっかりと学び、学んだ知識をどのように活かせるか考えてみてください。

実は、このような関わりを持ってくれる人が重要なのです。一見すると、部外者のように受け止められがちですが、それぞれ別の専門の道を極めた人に協力を得、調査をすることには大きな意義があります。

次に、「考古学・歴史好き」のタイプ2ですが...これも基本的にはタイプ1と同じです。最初に考古学の基礎をしっかりと学ぶ必要があります。その上で、水中調査に必要なことはタイプ1の専門家としっかりと対話できるだけの知識を付け足せば良いだけです。例えば、サーヴェイについては、ソナーや磁気探査などの基本が分かっていれば充分で、どのように考古学に応用できるかを勉強すれば良いわけです。そして、タイプ1の専門家と協議をし、有効な調査方法を見出していく方法をとります。保存処理なども、同じく、難しい知識や実践・実績ではなく、応用力が必要となります。しかし、重要なのは、考古学的な見方です。これらの専門家と協力して得られたデータを元に、研究の成果をだすのは、タイプ2を選んだ人の責任です。これは、まさに考古学的モノの見方です。水中考古学の父と呼ばれるジョージ・バス先生も口癖のように言っていた事に、「考古学者をダイバーに訓練することは比較的簡単だが、ダイバーを考古学者として育てるのは時間を要する」と。

つまり、水中考古学で「陸の考古学者」が見て難しいと思うことは、実は簡単に修得できることであって、それほど重要ではない。実は、もっと重要なのは、「考古学者としての素質」であると。いくらダイビングや他の技術を学んでも、考古学的素質や観察力などがなければ、技術も意味を持ちません。しっかりと学者として学ぶことが先決となります。実際に、資料などの分析などの時間を考えると、1日の発掘で得られた情報(1-2時間の作業)は数か月分のデスクワークに匹敵します。「水中考古学者」の仕事の時間的割合を考えると、実際に水中での作業は全体の1%にも満たないのかもしれません。爪先の技術ではなく、学問の体の幹の部分である考古学が最重要となります。水中であろうと、どこであろうと、考古学は考古学ですので、それをしっかりと学ぶこと。遺物や遺跡の見方・分析方法を学ぶことになります。

こう考えると、どこの大学に行けば良いとか、理系が苦手、留学はしたくない、将来仕事がない、などの問題は解決すると思います。考古学を学べば、考古学者として生活をしていくことができます。地中海などの歴史に興味があれば、留学も考える必要もあるかもしれませんが、例えば、日本の考古学を学びたいのであれば、留学する必要などあるのでしょうか?どこの大学でも、しっかりと歴史・考古学を学んでおけば必要な知識は得られます。モノの見方やセオリーなどドンドン学んでいきましょう。別に、水中の考古学がないから...と考える必要はありません。基本は全く変わりません。

さて、最後に...

今、水中考古学を勉強したい!と考えている人はじっくりと自分はどっちのタイプか考えてみてください。タイプ2の人は、この幹の部分が出来上がれば、それに付け足してフィールドワークに応用できます。そして、自分では分からない部分はタイプ2の人と協力します。タイプ1の人は自分の専門性を高めながら、どのようにタイプ2に人(考古学者)と協力できるか考えます。どちらのタイプも水中考古学の発展には必要です。自分の得意・不得意は誰にでもあります。抽象度を高く持ち、小さな概念にとらわれることなく、全体を見渡して、自分がどのように学んでこの分野に貢献できるか、考えてみてください。上にも書きましたが、それぞれが共通する点は、学んできたことではなく、「水中の文化遺産を保護・活用すること」です。この考えに賛同できる人は、水中考古学に関わりを持つことが出来る人であると思います。


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